UAも2000超えたのでがんばります。
俺が”ガンダム”になると決めたあの日から、親父は俺に付きっきりで個性の特訓を手伝ってくれた。
ちなみに、個性の名前は親父の強い要望で「機動戦士」と書いて、”モビル・スーツ”と読むことになった。
けど──その力は、想像以上に繊細で、扱いが難しい個性だった。
「よし、師伝!物は試しだ! さっそくガンダムに変身してみろ!」
「変身してみろって言われても……」
俺は眉をしかめ、自分の手のひらをじっと見つめる。
あの日みたいな緑色の輝きもなければ、あの時の心の熱さも感じられなかった。
もしかしたら、あの変身は、夢だったんじゃないか……そんな気すらしてくる。
「……あのとき、“母さんを守らなきゃ”って強く思ったら、体が勝手に動いて……。どうやって変身したのかなんて、正直わかんないよ」
「ふむ……、そうか」
親父は腕を組み、少し考えるような仕草をした。
やがて、真剣な目で俺を見据える。
「師伝、お前の個性は“感情”に反応するんじゃねえか? 母さんを守りたい──。その気持ちに、”ガンダム”が答えてくれた。ガンダムってのはな、誰かを守るために作られたもんだからな」
少し間を置いて、親父はどこか懐かしむように口を開いた。その時の目は、ただのアニメ好きの目じゃなかった。何かを背負ってるような、そんな目だった。
「バナージ・リンクスって少年がいた。彼は普通の少年だった。けど、ある日戦いに巻き込まれた──。何故かって? それはバナージがガンダムに乗れたからな。ユニコーンガンダムっていう、不思議な機体さ」
親父はすぐに、棚から1つのフィギュアを取り出してきた。そのフィギュアは、白く、頭に1本の角が生えた凛々しい姿をしていた。恐らく、これがユニコーンガンダムなのだろう。
「ユニコーンガンダムに乗るようになってからは、バナージはいろんなものを失った。家族、親しい人、平和な日常、仲間、そのすべてをな……」
「……かわいそう」
「そうだな。だけどバナージは、それでも戦い続けたんだ。なんでだと思う?」
「……なんで?」
「“守りたかった”んだ。自分が好きになった人を、そして、好きになった人が住む世界を。師伝、お前も一緒だ。あのとき、母さんを守りたくて変身したんだろ? だったら、あの時の強い想いをもう一度思い出してみろ。あの時、お前がガンダムになる決意をさせたものは何か───。それを思い出せ。それができれば、きっと個性は……、いや、ガンダムは応えてくれる」
親父はニッと笑って、俺の頭に手を置いた。
俺はそっと目を閉じて、心の中を深く探ってみる。
──向かってくる男。
──周りの人の悲鳴。
──何もすることはできないのか、と感じた自分の無力さ。
──でも、間に合ったというあの奇跡の瞬間。
(……守りたい。母さんを。親父を。俺の家族を。俺の世界を──)
その瞬間、胸の奥から、まるで炎が燃え上がるような感覚が身体中を駆け巡った。
「……きたか?」
親父の声が聞こえた。
手の先から発光が走る。肩から胸へ、足から腰へ──。
ガシャガシャと音を立てて、俺の身体が装甲に包まれていく感覚。
全身に金属が纏いついていくような、あの“変身”の感覚が蘇る。
けれど今回は、前よりも“はっきり”していた。
自分の意思で、意識して、明確に「変わろう」と思っていたからだ。
そして─────。
「……できた! 親父、見て!」
「おお……っ!! 見事だ、師伝!! ガンダムだ、シャイニングガンダムになってるぞ!」
俺は、シャイニングガンダムの姿のまま、手を開いたり閉じたりしながら、感触を確かめる。関節の動きもスムーズ、装甲の硬度も高い。そして何より、心がブレていない。
「すげぇ……! なんか、前より体が軽い!」
「“自分の意思”で出したガンダムだ、そりゃあ変わるはずさ」
親父は誇らしげに笑っていた。
そしてこの日から、俺の本格的な”個性訓練”が始まった。
思い返せば、色々な事をやった。親父秘蔵のガンダムシリーズのDVDを見てのモビルスーツの研究。ガンダムを初めて見る俺にとってはとても楽しい時間だった。親父の解説を聴きながら鑑賞するそんな時間が、日々の楽しみでもあった。他には、変身の限界を知るための特訓なんかもやった。瞬時に色んな機体に変身、変形したり、武装を生み出したり、消したりなど色々やった。中でも、長時間変身した状態で、生活するというのは大変なものであった。体の筋肉が悲鳴を上げても、根気で耐え抜いた。親父曰く、「明鏡止水の境地に入れば痛くも痒くもなくなる」と言っていたが、よくわからなかった。それらの個性訓練に加えて、基礎体力をつけるためのランニング、筋トレ。これを毎日行っていった。
そしていつしか、時は流れて───。
「流派!東方不敗は!」
「王者の風よ!」
「「全新系裂!天破侠乱!」」
「「見よ!東方は赤く燃えているっっっ!!」」
拳と拳同士がぶつかり合い、激しい音が鳴る。
「フッ、師伝よ。腕を上げたな」
「まだまだだと思うな、親父のキレにはかなわない」
俺と親父はお互いに笑いながら、河川敷に倒れ込む。ゆっくり沈む夕日を見つめながら、息を整える。
俺は中学3年生になった。身長も伸び、体つきも初めて変身したあの時より良くなっていったと自分でも思う。
「そういえば、師伝。お前、明日雄英高校の入試を受けるんだろ?」
「………うん」
「そうか。なら、あんときの約束を果たさないとな」
「おう……! 俺は“ガンダム”になる。みんなを守るヒーローとしてのガンダムに!」
親父は、ゆっくりと立ち上がる。そして、手を差し伸べてきた。
その掌は固く、分厚く、幾度も俺を引き上げてくれた手だ。
「……いい目だ。師伝、お前の目はあの日と同じだ」
「……あの日?」
「母さんを守るために立ち上がった、あの時の目だよ。あの時から、お前はもう“ヒーロー”だった」
胸の奥がじんわりと熱くなる。
親父の言葉は、いつだって不思議と俺の背中を押してくれる。
夕日が沈みきり、河川敷が夜の色に染まる。
川面に映る街の灯りを見つめながら、俺は拳を握った。
(明日──必ず合格する。俺は雄英で、ヒーローとして、そしてガンダムとしての一歩を踏み出すんだ)
その夜、俺はいつもより少し早く布団に入った。
眠れるかどうか不安だったが、まぶたを閉じるとすぐに意識が沈んでいく。
夢の中で、俺は何度もガンダムや他のモビルスーツに変身し、見知らぬ人々を救っていた。
そして、翌朝。
制服の胸元を整え、深呼吸を一つ。
玄関先では、親父と母さんが並んで立っていた。
母さんはにこやかに、親父は妙に凛々しく。
「行ってこい、師伝」
「気をつけてね、あんまり無茶しちゃだめよ」
俺は笑顔で頷き、靴ひもをきゅっと結び直した。
ドアを開け、外の空気を胸いっぱいに吸い込む。
(行くぞ──俺の“ガンダム”としての戦いが、ここから始まる!)
国立雄英高校。数多くのヒーローを輩出している有名校。そのヒーロー科は難関といわれているが、それでも競争率は高い。東日本では最大のヒーロー育成機関だ。
そして俺は今、その雄英高校の入試会場に立っている!
今から実技試験なので気合を入れて入試前に軽くストレッチをする。
「ほっ、よっ、はっ!」
前屈、股割り、回し蹴り……、いつも親父との特訓で行ってきたことを繰り返す。拳を打ち込む、体を大きく伸ばし、さらに打ち込む。なんだか不思議な目で見られている気がするが気にしない。最後までやり遂げ、一息ついていると学校の人に案内された。どうやら試験会場にはバスで向かうとのこと。
デカすぎないか?この学校。
試験会場に到着すると、すでに大勢の受験生が集まっていた。
ピリついた空気の中、誰もが自分の内なる緊張と戦っている。
俺は軽く肩を回し、深呼吸。
――こういう時こそ、いつも通りを意識だ。
親父から教わった呼吸を意識しながら、力を一点に込める感覚を確かめる。
「おっ、同じことしてるやつ発見!」
突然、横から明るい声がした。振り向くと、金髪をツンツンに立てた少年が、まるで旧知の友達に声をかけるような笑顔を向けていた。
彼もまた腕を回したり足をほぐしたりしている。
「俺、上鳴電気! あんた、名前は?」
「努紋 師伝だ。ドモンでいい」
「ドモンか! なんか名前からして強そうだな。しかも落ち着いてるし」
「そうか? 結構緊張しているんだけどな」
「へぇ? なんか、お前とは波長合いそうな気がするな」
「そうか?」
「うん。わかるんだよ、そういうの。なあ、もし戦っているときに出会ったらさ、共闘してみねーか?」
一瞬だけ考えてから、俺は口角を上げた。
「悪くないな」
上鳴は満足そうに笑い、手のひらをこちらに向けて差し出してくる。
俺もそれに応えるように、軽く拳を合わせた。
――こういう出会いは、案外長く続くもんだ。
その時、スピーカーからプレゼント・マイクの元気な声が響き渡った。
「受験生諸君、ゲート前に集合してくれよなぁ!」
上鳴と目を合わせ、互いに笑みを浮かべながらゲートへ向かう。
胸の鼓動は速くなるが、不思議と不安は薄れていた。
ゲートの前に立ったあと、俺は深呼吸をし、頭の中で強く”なりたい機体”をイメージする。
全身が熱くなり、視界が一瞬、緑色の光で染まる。
己に眠る闘志が熱く燃え上がるのを強く感じる。
そして次の瞬間、俺の身体はシャイニングガンダムへと変わっていた。
機械仕掛けの関節音が響き、手のひらにはあの日と同じ光が宿る。
変身に少し時間を使い過ぎてしまったのか、もう試験は始まっていた。周りの受験者はみんなものすごい勢いでロボットを攻撃していた。
とりあえず俺も地面を蹴り、近くにいたロボへ接近する。そして一発、頭に拳をぶち込んだ。ロボットは簡単に壊れた。もっと強いと思っていたのだが、これならば安心だ。
地面を大きく踏み込み、スラスターを使って大きくジャンプする。そして、そのまま。
「バァァァルカン!!」
頭からバルカン砲を放射しながら、周囲に固まっているロボを一掃していった。
「うぉぉぉぉぉっ!! かっこいい!」
声がした方を振り向くと、先ほど話したばかりの上鳴が俺を見ながら目をキラキラと輝かせていた。
「上鳴!」
「そ、その声はドモン!? ドモン、もしかしてお前ロボットになる個性なのか!?」
「おう、今は俺の個性”
「ガンダム? なんだ、それ?」
「俺の個性に関係するものだ。ガンダムのことならなら後でじっくり話してやる。___それよりまずはこの試験に合格することを考えよう」
「お、おう!そうだな。 ....あ、そーいや俺の個性、言ってなかったっけな。俺の個性は”帯電”!電気を体に纏わせることでこーやって電気を出したりできんだぜ」
上鳴は手からバチバチと音がなる青白い光を見せてくれた。
「ほう、なかなか良い個性じゃないか」
「だろ! ...ってまずいまずい! 早くあいつら倒さねーと!」
「そうだな」
俺と上鳴は共に駆けだし、次々とロボットを倒していく。
「喰らいな!オレの電気を!」
「出ろ、ビーム・ソード! 面!胴!めぇぇぇぇん!」
上鳴の電撃がロボからロボへと伝わり、周囲のロボットたちは一気にその場に倒れ込む。俺をそれに続いてビーム・ソードを活かしながら、残ったロボットを粉砕していく。他の受験生たちが苦戦していたところに2人で乗り込んだりもした。
「ドモン! このまま行けば、俺らよゆーで合格できんじゃね!?」
「油断するな、まだ何が起きるか分からない!」
そういった直後、地響きが鳴り、試験会場の奥から影が覆いかぶさってきた。
巨大な0ポイントロボだ。ビルよりも高いその巨体が、試験会場を踏み潰すように迫ってくる。
「うわっ……! なんだよアレ!?」
上鳴が顔を引きつらせる。
巨大ロボはゆっくりとこちらに振り返り、その“顔”の赤いセンサーがギラリと光った。
「上鳴! こっちだ!」
俺は上鳴を掴み、咄嗟にビルの影へ滑り込んだ。次の瞬間、コンクリートの地面が抉れるほどの衝撃波が走る。
「あっぶねぇ....。ドモン、ありがとな」
「礼はいい、それよりも、あいつをなんとかしないと」
ズシン、ズシンと音を立てて動く巨大ロボ。どうすればいいのか必死で考える。
ああいう図体がでかいやつは何かしら弱点を持ってるはずだ、考えろ!
その時、あるモビルスーツのことが脳裏によぎった。
「機動戦士Zガンダム」に登場する「ハンブラビ」という機体だ。
そういえば、あの機体には”あれ”があったじゃないか。
カミーユ、そしてZガンダムを苦しめたあの技が!
ハンブラビのあの戦術を真似すれば、この場をうまいこと切り抜けられるかもしれない。
幸い、ここには電気を扱うことのできる上鳴がいる。なんという偶然だ。ここはいちかばちかやってみるしかない。
「上鳴、俺に作戦がある」
「マジかよ!? 一体どんな作戦なんだ?」
「あいつはでかいとはいえただのロボット。だから、あいつに高圧電流を流し込めれば電子機器をショートさせてある程度動きが鈍らせることができるはずだ。だから上鳴、俺があいつの気を引いているうちに隙をみて一気に電気を流し込んでくれ」
「お、おう。でも動きを鈍らせたあとはどーすんだ?」
「俺があいつをぶっ潰す、この手で」
「はぁ!? できんのかよ!?」
「俺を信じてくれ」
真剣な眼差しで上鳴を見つめる。少しの沈黙のあと、上鳴は覚悟を決めた表情をした。
「…分かった、やってやろうじゃねーか!」
「よし! じゃああとは任せたぞ!」
俺はビルを蹴飛ばし、0ポイントの巨大ロボの前に出る。そろそろ個性の使いすぎで体が思うように動かなくなってくるはずだ。
だから、ここからは体力勝負だ!
「こんなロボット、すぐに片付けてやる!」
俺は気を引き締め、拳を構えた。
――が、その時だった。耳の奥にかすかな声が届く。
「……たすけ…て…」
「な、なんだ!? この声は...」
周囲には誰もいない。しかし、確かに感じる、”人の気配”を。
その瞬間、頭に何かが流れる。視界が淡い緑色に染まり、世界が静まり返った。
風の流れ、瓦礫の崩れる音、遠くの金属が軋む響き――。
すべてが立体的に、くっきりと浮かび上がる。
……もしかして、これが親父ががよく語っていた“ニュータイプ”ってやつなのか?
俺の目は、ビルの崩れた陰に向かって自然と吸い寄せられた。
そこにあったのは――。
光の輪郭をまとった、見えないはずの人影。
「……そこにいるのか!」
駆け寄ると、透明な姿の少女が必死に瓦礫を押しのけようとしていた。
「今助けてやるからな!」
瓦礫を持ち上げ、彼女を一気に引き寄せる。
「あ、あなた、だれ!? 私が見えるの!?」
「説明はあとだ! 今は逃げるぞ!」
「きゃっ!」
俺は彼女をお姫様抱っこのような形で抱えて、その場を離れる。安全そうなところへ向かい着地する。
「よし、ここまで来れば大丈夫だ」
「あ。ええと、助けてくれてありがとう! わたし葉隠透っていうの!」
「俺はドモン、努紋師伝だ!」
俺はスラスターの出力を最大にし、巨大ロボへと向かう。そして、空中でまた新たな機体をイメージする。
「今使えそうなのは、こいつだなっ!」
シャイニングの装甲が分解し、白と紺を基調としたスリムなシルエットが再構築されていく。
「F91ガンダムは、努紋師伝で行きます!」
F91に変身した俺は、ロボへと一直線に向かう。
「なんとぉぉぉー!!」
体の痛みを歯を食いしばりながら耐える。フェイスガードが展開されると同時に背部のヴェスバーも展開する。激しいブースト音とともに俺の身体は一気に加速した。
光り輝く残像が二重、三重に伸び、まるで何体ものガンダムが同時にロボへ襲いかかるように見せかける。
「どれが本物か……、分かるかよ!」
ロボの拳が空を切り、俺はその隙に背後へ回り込む。
ヴェスバーを連射し、脚部の関節と動力パイプを撃ち抜く。
「いまだ、上鳴!!」
「おうっ! 行くぜ、全力放電!!」
上鳴の電撃がロボの全身を走り抜け、巨体がビリビリと痙攣する。
「トドメだ!」
ガンダムF91の装甲が再び光に包まれ、俺は元のシャイニングガンダムに戻る。
スラスター全開で胸部装甲に突撃し、頭部のフェイスカバーを展開させる!
「お前を倒して、俺はヒーローになるっ!」
体が金色に光り輝く。体に残る最後の力がふつふつと湧き上がってくる!!
「俺のこの手が光って唸る!!」
「お前を倒せと輝き叫ぶ!!!!!!」
「必殺ぅぅ! シャァァァァイニングゥゥゥゥフィンガーァァァァ!!!!」
黄金の掌が巨大ロボの胸を貫き、内部機構を握り潰す。
凄まじい爆発と共に、巨体は崩れ落ちた。
そこから、俺の体も限界を迎えたようだ。体の装甲が剥がれ、意識がだんだんと薄れていく。
「おやじ...、おれ、がんばったよ...」
そう言い残したあと、俺は地面に落下した。
そして、落下と同時に試験が終了した。
.....なんか最後に「ウェ~~~イ」っていう気の抜けた上鳴の声が聞こえた気がしたんだが。
もっといろんなモビルスーツ出してーな。
感想等もらえると嬉しいです。作者のモチベにつながります。