次の日。
個性の反動もだいぶ収まり、軽い筋肉痛のまま登校していると、校門前にマスコミが沢山いた。何だよあの人の数は。あのままじゃ学校に入るのにも一苦労じゃねーか。スマホで時間を確認すると朝のチャイムが鳴るまであと二十分程度しかなかった。遅刻は担任が担任なだけに面倒な気がするので絶対出来ねぇ。
.......仕方ない、こっそり個性を使おう。
正面突破は悪手だし、飛び越えれば目立つ。
なら――、見つからなければいい。
そうして俺は頭の中で、一機のモビルスーツを思い描く。派手な火力で押し切る機体でも、真正面から暴れる機体でもない。だが、敵地への潜入や奇襲においては一級品。ガンダムでありながら、主役たちの掲げる「白・青・赤」の栄光を真っ向から拒絶するかのような機体――。
「ブリッツガンダム、出る」
漆黒の装甲が身体を覆い、右腕のトリケロス、左腕のグレイプニールが静かに姿を現した。
そして俺は、深く息を吸う。
「ミラージュコロイド、展開」
次の瞬間、黒い機体が漆黒の装甲が陽炎のように揺らぎ、朝日に溶けるように姿を消した。
「ん? 今、誰かいたか?」
「いや……、気のせいじゃないか?」
首をかしげる記者たちのすぐ横をすり抜け、そのまま校門を突破する。
ミラージュコロイドを解除すると同時に全力疾走。階段を駆け上がり、チャイムが鳴る少し前に教室へ滑り込んだ。
「……ふぅ、セーフ」
席に腰を下ろして大きく息を吐く。
「まったく、朝から貴重な体力使わせんなっての」
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無事に教室に到着し席に着いて数分、チャイムが鳴り相澤先生も来てHRが始まる。
「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見させてもらった。爆豪、もうお前ガキみてぇなマネすんな。能力あるんだから」
爆豪の方を見ながら先生が言う。爆豪は自覚があるんだろう、分かってると言い注意を受け止めている。
「そんで緑谷、お前はまた腕ぶっ壊して一件落着か。個性の制御、いつまでも『できないから仕方ない』じゃ通さないぞ。俺は同じことを言うのが嫌いだ。ただ、ソレさえクリアすればできることは増える。焦れよ」
「はいっ!」
緑谷は元気よく返事してんな。
あれ………、相澤先生がこっち見てる。まさかこれって次俺が説教される?
「努紋、お前戦闘中に考え事すんな。場合によっちゃお前は死んでる。それとちゃんと限界を知っとけ。現場で倒れられちゃ迷惑だ」
「はい....。」
「さてHRの本題だ…。急で悪いが今日は君らに…」
「学級委員長を決めてもらう」
「学校っぽいのキタ──ッ!!!!」
「委員長! やりたいですソレ俺!!」
「俺も!」
「ウチもやりたいス」
「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!!」
「リーダー!!やるやる!!」
みんなが一斉に手を挙げている。
俺は委員長なんて性に合わない。そんなことより読みかけの小説の続きを読む方がよっぽどいい。そう思いながらページを開く。
「あれ、努紋くんは立候補しないの?」
「ああ、葉隠さんか。うん。俺に務まる気がしないしな。荷が重すぎるってやつ」
「へー、私は向いてると思うけどなぁ。こう、熱血指導してくれそうだし!」
「なんだよそりゃ」
そんな中、飯田が声を荒げる。
「静粛にしたまえ!!【多】を牽引する責任重大な仕事だぞ……!『やりたい者』がやれるモノではないだろう!!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務……!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら……これは投票で決めるべき議案!!!」
飯田が皆に熱く問いかける。
....でもよぉ、飯田。お前手がそびえ立ってるぞ。誰よりも学級委員長になりたがってんじゃねーか。みんなもやんややんやと言い合ってるし。
「日も浅いのに信頼もクソもないわ、飯田ちゃん」
「そんなのみんな自分に入れるだろ」
「だからこそ、だからこそだ!複数票を取った者こそが真に相応しい人間という事にならないか?どうでしょう先生!?」
「時間内に決めれば何でも良いよ」
相澤先生は寝袋に入り、投げやりな返事を返してそのまま教壇の横で眠りについた。
これが...、教師なのか...?
そして投票の結果、ほぼ全員が自分に票を入れる中で複数票を獲得したのは3票の緑谷、2票の八百万さんだった。
「僕に3票ォォォーーー!?」
「誰だデクに入れたのは!?」
「まあ、お前には票は集まらんわな」
「ンだとロボ野郎!」
「俺に1票!? 一体誰が入れたんだ!?」
「他に入れたのね」
「お前もやりたがってたのに、何がしたいんだ」
まさかの他者に投票した飯田に皆が呆れる。
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午前の授業が終わり、昼休みとなった。
俺は上鳴に誘われ、切島、葉隠さん、八百万さんと学食でお昼ご飯を食べることになった。
「いやー、今日も元気だご飯が美味い!」
「おい努紋、お前そんな大食いキャラなのか!?」
「カツ丼3杯はお腹壊すよ!!」
こんな美味しいカツ丼、初めて出会ったんだ。食わなきゃ、これは使命だ。
「……そう言えば、努紋さん。前からお聞きしたかったのですが、努紋さんの個性はどのようなものなのでしょうか?」
「もぐもぐ……俺の個性? えーとね」
口いっぱいに頬張っていたカツ丼を飲み込み、お茶で流し込む。
「簡単に言えば、昔のロボットアニメに出てくる機体を、自分の体で再現する個性だな」
一瞬、食卓が静まり返る。
「巨大ロボット?」
切島が箸を止める。
「そう。そのロボットは『
「へぇー! だからあんな見たことない姿になってたのか!」
上鳴が納得したように頷く。
「え、待って待って! じゃあ全部違うロボットなの!? 同じ個性なのに!?」
葉隠さんが身を乗り出す。
「ああ。変身する機体によって性能も武装も戦い方も全部変わる。昨日使ったグフ・カスタムは地上戦向きだし、バルバトスは近接戦が得意。Zガンダムは機動力重視って感じだな」
「すごい……、まるで複数の個性を持っているようですわ」
八百万さんが感心したように呟く。
「そんな便利な能力じゃないって」
俺は苦笑しながら肩をすくめた。
「見た目だけ真似すればいいわけじゃない。その機体がどういう性能で、どんな戦い方をして、どんな人間が乗っていたのか。そこまで理解して、頭の中でイメージを組み立てないとまともに動かせないんだ」
「だから戦闘中に機体ごとで動きが全然違ったのか……!」
切島が昨日の戦闘を思い返すように腕を組む。
「その代わり、複雑な機体ほど頭を使うし、武装を一度にたくさん出したり、強化形態を使うと体力が一気に吹っ飛ぶ。俺が今こうしてめっちゃご飯食べてるのも、昨日保健室送りになったのも、その反動だよ」
「なるほど……、非常に強力ですが、相応の制約がある個性なのですね」
八百万さんが納得したように頷く。
「まあ、ロマン全振りの個性ってこと」
そう言って笑うと、上鳴が吹き出した。
「いやいや、ロマンで片付ける個性じゃねぇだろそれ...」
なんてたわいのない会話をしていると、いきなり激しいサイレンが鳴り、アナウンスが流れてきた。
-セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難して下さい。
食堂が一瞬でざわつき、周囲の生徒たちは焦ったように立ち上がり、一斉に出口へ向かって走り始めた。
「押すなよ!」
「前が詰まってる!」
「あっ、待って!」
人の流れはあっという間に大混雑になり、様々な生徒の悲鳴と怒号が入り混じる。
「みんな、こっちだ!」
俺は上鳴たちの腕を引っ張り、人混みから少し離れた壁際へ誘導した。
「ふぅ……危ねぇ」
「ありがとう努紋くん!」
葉隠さんが胸を撫で下ろす。俺は人だかりの向こうを見つめ、小さく眉をひそめた。
「……セキュリティ3って何なんだ?」
「警備システムの段階のことかしら……?」
八百万さんも状況を把握できていないようだった。
その時、上の方から聞き覚えのある声が響いた。
「おい、あれ!」
切島の指さす先を見ると、我らが飯田天哉がプカプカと浮いているのが見えた。すると高速で回転しながら壁に激突した。そして、非常口みたいなポーズをして叫び始めた。
「皆さん! だいじょーぶ!! ただのマスコミです! 何もパニックになる事はありません! だいじょーぶ!!」
「飯田君? 非常口に……」
「なんだあれ……。フフッ」
どうやら飯田の話を聞く限り、マスコミの侵入らしい。朝いた奴らか...。が、それよりもなんだあのポーズ。さっきも思ったけどまんま非常口じゃん。ウケる。
とはいえ飯田のおかげでパニックは無事に収まった。
そして午後、緑谷は委員長を辞退して代わりに飯田が推薦された。まぁ、あの行動を見れば誰もが納得する。あの場に飯田がいなかったらパニックは収まってなかっただろうし。
でも、でも、その一件以来、当分の間みんなからは非常口飯田とからかわれていた。
まぁ、面白かったもんな。あのポーズ。
何度も個性の説明させてすまん、努紋くん....。
次はUSJ編に行きたいかな。
次回がいつになるか分かりませんが、気長に待っていただけると幸いです。
感想、評価等もらえると嬉しいです。作者のモチベにつながります。
ではまた次回お会いしまししょう。