黄金野郎が行くキヴォトス漫遊記   作:Another2

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前作書き終えてないのに前作の要素を引っ張って新作を描くドアホは私です、対戦よろしくお願いします。




【黄金野郎、キヴォトスに立つ】

──やり遂げた、そんな思いで胸が満たされる。

 

 思い返せば怒涛の人生であったと自負している、並いる強豪を撃ち倒し、半神を倒し、星や神に至るまで撃ち倒し、人の律を築いた、もう…私の役目はない、もう目を閉じても良いだろう。

 

「……私のミスでした」

 

 んん…女の声、年齢の程は…出会った時期のメリナに近いだろうか?もう出迎えか、もう少しゆっくりしても良いだろうに。

 

「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況」

 

 ええい、人が寝てる時は静かにする物だと知らんのか、構いなく喋りよって、頭が冴えてきてしまったじゃないか。

 

「結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……」

 

 目を開けるとそこは見知らぬ部屋、窓の向こうの景色が動いているのを見るにどうやら移動しているらしい、そして対面の座椅子にはボロボロの女が居た。

 

──おいおい、あの世に興味は無いが連れて行くのに同乗者が居る物なのか?

 

「……今更図々しいですが、お願いします、グラム先生、きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません、何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……」

 

「いや、お前誰よ」

 

「……え?あの、認識してるんですか?私の事を?」

 

 何を今更、奇遇にも同じ部屋で同じ様に運ばれてるのだから認識もクソもあるか。

 

「当然だろう、そこに居るんだし……で、誰なの君」

 

「いや、その、えぇ……?いきなり予想外と言いますか、いやでも対話が可能でしたらお話し出来ますね」

 

 そしたらこの女、聞いてもない事を喋りやがった。

 要点は自分が所属してるキヴォトスって所がやばい、そこで俺に生徒達を指導する先生として立って欲しいとの事だ。

 

無理だな、人選ミスだろう」

 

 そう、そうなのだ、一応王として民を指導した覚えは、つい先程まであるが先生…要は教職に関しては俺はあまり向いていない、それこそレナラやラニの領分だ。

 

「別に私じゃなくても良いだろう、他に適任がある筈、私はその……力で解決するクチだから、あんまりそういうのはな……」

 

「いえ、だからこそなんです、清く聖人のような人間ではダメだったんです、最期を乗り越える為には力強い方でなくてはならなかった」

 

「論外だな、私一人の力の有無で世界の存亡が決まるなら一度滅んでやり直した方がマシという物だ、もう少し交渉って物を勉強してくるんだな」

 

 なんで死んだ後にまでこき使われなきゃならん、いい加減休ませろ。

 

「……今、キヴォトスには()が迫っています」

 

「……夜は太陽があるなら何処にでも来る、それの何が拙い」

 

「ただの夜ではありません、生命を脅かす暗い雨の夜です、私達の世界(ブルーアーカイブ)には存在しません、これは……()()()()()()の物では無いのですか?」

 

──夜の雨、かつてラニが語ったな、確か夜の王が率いる勢力だとかなんとか……結局面倒事か。

 

「……確かにそれは私の世界(ELDEN RING)の代物だな、成程、死にたて新鮮の老人を叩き起こすだけはあるようだ、いいぞその話、乗った」

 

「ありがとうございます、先生……それともう一つ大事なのは経験ではなく、選択、あなたにしかできない選択の数々……」

 

「──経験も大切だと思うがね、まぁ肝に銘じておこう」

 

「かつてあなたは責任を負う者について、私に話してくれました、あの時の私には分かりませんでしたが……今なら理解できます、大人としての、責任と義務、そして、その延長線上にあった、あなたの選択、それが意味する心延えも」

 

「ですから、先生、私が信じられる大人である、あなたになら、この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……そこは繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです」

 

──だから先生、どうか……

 

 私は再び立ち上がり対面の女の頭に手を置き、ただ一言告げた。

 

「任せろ」

 

 その瞬間に私の視界は明点し私の身体はその光に包まれた。

 

 

ブルーアーカイブ万歳‼︎

 

 

 後に彼女──連邦生徒会統括室主席行政官兼連邦生徒会長代理 七神リン──はこう述べている。

 

『先生とお会いした時の事ですか?勿論忘れる事など出来ません、あの時程の衝撃は早々あるものではありませんよ』

 

「……先生、起きてください、グラム先生‼︎」

 

 

『はい、お会いした当初、先生は睡眠中でした、先生を案内する為に部屋に入室したのですが……その、物凄く堂に入っていまして……ご存知の通り先生は足を組んでご自身の手を枕代わりにして睡眠を取られます、はい、とても行儀が良いとは言えません、ですが……その当時の私はその寝姿が余りにも形になり過ぎていて、注意しようにも出来なかったのです、まあ……決してそれだけが理由ではありませんが』

 

 

──おいまたか、私の人生に於いて寝てる所を叩き起こすの女という相場が決まっているのか?いや…最初の時は自力で起きたな、決して朝に弱いという訳ではない筈だ。

 

「少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね、なかなか起きないほど熟睡されるとは……夢でも見られていたようですね、ちゃんと目を覚まして、集中してください」

 

──あの娘が言うにはまずこの娘で間違いないだろうが…一応聞くか。

 

“……君がリンって娘で合ってる?”

 

「ええ、間違いありません、もう一度、あらためて今の状況をお伝えします」

 

 そこからは概ねあの娘──連邦生徒会長らしい──から聞いたのと同じ内容だな、強いて言えば夜の雨については何も触れられなかったが……まぁなんとかするか。

 

“まぁ概ねは本人から聞いた通りで安心したよ、それで?早速何私はをすればいい”

 

「はい、この様な状況になってしまったこと、遺憾に思います……今はとりあえず、私についてきてください」

 

 ヨシ、幸先良く水先案内人(メリナ枠)回収、それにしても知らん建築技法だな……木材や石材でもない、エルデの地にはなかった建築技術だ。

 もしかしなくてもこれは相当未来世界に飛ばされた可能性があるな、やっぱり人選ミスなんじゃねえのかこれ。

 

“リン…で良いんだよな呼び方、不都合無いならこう呼ぶが”

 

「はい、お好きな様にお呼びください、それで……如何致しましたか?」

 

“恐らくだが…私は君達から見たら滅茶苦茶古代人だから互いに一切の常識が通じないと言う事だけ念頭に置いといて欲しい、出来る限り其方に合わせるが…すまんね”

 

「成程……会長が記していた、ちょっと特殊な人とはそう言う事情なのですね、わかりました」

 

 それにしても立った時の地面との距離からして、もしかしなくても大分縮んだな?元々の背丈から逆算すると…まぁ大体220cmって所か。*1

 

 

『その、皆さんもご存知の通り先生はその……大変背丈が高く筋肉質な人ですから、眠っていてもその威圧感は相当なものだったんですよ』

 

 

 昇降機に乗り込み一気に下層に降り込む、その間に映る外の光景その全てがエルデの地には無かったものだ、その上キヴォトスとは複数の学園からなる学園都市らしい、私が居た時代には学術機関はレアルカリアしか存在しなかった…ので、後に新しいのを設立したんだが。

 

“その…学園都市と言ったか、つまり此処の人間は誰しもが勉学と教育に励む事が出来るという訳なのか?”

 

「全ての人が、と言う訳ではありません、ですが……概ねその認識でよろしいかと、何か問題が?」

 

“いや…その事実を確認出来ただけでこの世界に来た価値があったと言う物だと、認識しただけだよ”

 

 

先生、仕事の時間だ

 

 

 一階層まで降りて昇降機から出てリンに着いて行き入口付近に近づくに連れて騒ぎが大きくなる、後通り際に殆どの人間が私を見ていた、まぁ目立つ見た目なのは自覚しているが…どうやらこの世界の住民にとって私は少しばかり大きいらしい、背丈の平均は大凡メリナやミリセント程*2と仮定するか。

 

 皆──、一様に声を失っていた。

 先程までの喧騒が嘘のように静かであった、代わりに──皆が同じ所…細かくは、同じ人物を見た。

 

その背丈…優に2mを超えていよう超サイズ

身体の肉付き…一流の職人が手掛けた彫像の様な代物

戦闘力…猛獣や戦車が可愛らしく見える領域

雰囲気…人の上に立つ長を思わせる

 

 其れ等の情報が一目見て読み取れる、全ての生物が一度見たら振り返って二度見せざるを得ない程の圧倒的な存在感──当の本人は物珍しそうに周囲を見ている──がその大人から発せられていた。

 

“それで…これから何処へ向かうんだ?此処が私の勤め先ではないのだろう?”

 

「はい、連邦生徒会長が設立した連邦捜査部“シャーレ”の部室はここから約30km程*3離れた場所にあります」

 

“走ればすぐだな、善は急げと言うしすぐに向かおう”*4

 

 と、そこまで話した辺りで漸く周りの生徒達が再起動した。

 

シャーレの先生(年齢不詳)はこの時の事をこう述べる。

 

餌に群がる鳥達の様だった。

 

 ううむ、参ったな、これでは一向に動けん、エルデの地なら問答無用で蹴散らすのだが、ここでそれは拙かろう、さてどうしたものか…。

 

「あぁ……面倒な人たちに捕まってしまいましたね」

 

 面倒て君な…

 そこからリンが程良く彼女達──名前を聞くの忘れた──の要望等を捌いている、その際のリンの表情、アレはあっちで政をやってた際にいやでも見た類の顔だな。

 耳を傾けて聞いていたがなにやら風力はつでんしょ(発電所)なるものがしゃっとだうん(シャットダウン)しただの、連邦矯正局…まぁ監獄の様な所だろう、そこから脱獄囚が出ただの、あとすけばん(スケバン)なる人物が他の人間達を襲ってるらしいだの、戦車やへりこぷたあ(ヘリコプター)という兵器が不法に流出してるらしい。

 ところで戦車ってあの戦車だよな、こっちにも普及してたのか、チャリオット。

 よく分からない単語が幾つかあったが総じて言えば治安が著しく不安定らしいと言うのは彼女達の訴えでよく分かった。

 それでまぁ平たく言うならば、それをどうにかする為にさんくとぅむたわあ(サンクトゥムタワー)なる場所にあくせす(アクセス)すれば行政権が戻るらしい、まあ概ね聞いた通りだな。

 

「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど…」

 

『シャーレの部室?……ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?』

 

 おっと雲行きが。

 

『矯正局を脱出した停学中の生徒達が騒ぎを起こしたの、そこは今戦場になってるよ』

 

“戦場に…ね”

 

『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの、巡行戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの、まるでそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど?まあでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な……あっ先輩、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!』

 

 職より食を優先か…まぁ分からなくはないがな、それにしても…

 

“いつの世も戦いか…ままならんものだな人の世は”

 

 まぁそんなこんなで私達はシャーレがある地区に向かう事になったのだ。

 

 

集団

そして遠距離戦の予感…

 

 

 移動を終えて現場に向かったのだがまさか都の中で戦場が繰り広げられているとは思わなかった。

 それに此処の人間は豆粒の様な物を打ち出す物を武器として扱っているらしく皆それぞれが大きさや形状は違えど似た様な物を持っている。

 現に今もやれほろおぽいんとだん(ホローポイント弾)が何とか言っている、当たると傷痕が残るとか何とか、確かに当たるとちょっと痛そうではあるが…

 

“弓とは大きく異なる…弩に近しい物か”

 

「弩…クロスボウとも呼ばれる武器ですね、確かかなり昔の飛び道具であったとか」

 

“よく知っているな、そう、私が居た所だと飛び道具の類は弓が主流で、後は精々が弩と言った所だ、技術の進歩を感じる”

 

 因みに今はあの三人が此処で待機しておいてくれと言うので渋々待機しつつ戦闘指揮を飛ばしている最中となっている、従って今は後方支援担当の生徒──火宮チナツというらしい──と共に後方から戦場を俯瞰している。

 私としてもそれは有難いもので終ぞ手加減の下手は治らんかった、日常生活を送る上では何とかなるにせよ戦闘の場ではどうしてもな…力んでしまう。

 

『先生、今回の騒ぎを引き起こした生徒の正体が判明しました』

 

“聞こう”

 

『はい、生徒の名はワカモ、百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒で似たような前科いくつもある危険な人物です』

 

 通信機…これは非常便利な物だ、これ一つで遠方への連絡が容易に出来る、一々早馬と共に伝令兵を駆けさせる必要も無く、また転送で一々送ったりしなくて済むのだ、尤も私は使い方が知らなかったので取扱いの方法を教えてもらったがな、その際に信じられない物を見る目で見られたが…爺だからな、こういう物には疎いんだ。

 

 

──先生と初めて出会った時の事?また随分と懐かしい、ええ、はっきりと覚えてますよ。

 

 元スケバン歴6年の現シャーレ警備員隊長如月カレン(三年生)は語る。

 

──あの時はワカモに唆されて乗った仕事でした、まぁ当時の私達も少なからず連邦生徒会に恨みはありましたから、与えられた指示は適当に暴れておく事、それのみです。

 最初は順調でした、ですが次第に同胞達の勢いが欠けてきました、はい、知っての通り先生達が来た方向からです、その時先生はミレニアムの生徒やゲヘナの生徒、それからトリニティの生徒を引き連れて出向いてきました。

 ご存知かと思いますが、当時の私達スケバンと言った不良という存在において、ある種“暴力”とは生きる為に必須の力だったのです、なにせ力がなければその日の生活もままなりませんから。

 ですがそれ以上に必要な力が相手の戦力を見誤らない事、もっと言えば自分と相手の戦力差でしょうか、私は自慢じゃないですが不良として長くやってましたからある程度は分かります。

 はい、当然出会った事がありますよ、今の風紀委員会委員長と正義実現委員会委員長のお二人とは、あの二人は正直言って……一個人が放っていい戦力じゃない、絶対に戦ってはいけない存在、逃げるしかありません、まぁ逃げられるかどうかは別ですが。

 そんな経験がある私だからでしょうか、ちょっとした予感……の様な物がありまして、ほら、虫の知らせってあるじゃないですか、それです、私はあの二人と出会った時の、いや、それ以上の悪寒を感じとり、そしてそれはすぐに正解であったと感じさせられました。

 

──皆同じ事を言ってました、()()()と。

 自分が持っている武器、ハンドガン、サブマシンガン、アサルトライフルまで多種多様な武器を持った他の皆が一斉に感じた事でしょう、無論私も。

 自分の手に持つ武器、しかも物によっては両手でしっかり持たないといけないような物もある武器が、先生を認識した瞬間に鞄につけるストラップサイズにまで縮んだと、小さくなったんです、とても武器とは言えない。

 私ですか?私が感じたそれは他の皆とは少し違って……何で言えばいいかな……ああ、そうだその時はトリニティから鹵獲したという巡行戦車があったんですが、それを万全に整備を施された状態で弾がしっかり込められていて狙いが定まっている……私が先生から感じた戦力そのものです、後ろの方にうっすらとそんな映像がありましたから。

 対して私が持つ戦力は……弾一発分です、それもハンドガンの弾一発、しかもそれを撃つべき銃はない……私と先生にはそれだけの戦力差があったのです、はい、無論勝てるはずがありません。

 今だから言えますが、正直言って死ぬかと思いましたよ、戦うとか逃げるだとか、そんなレベルじゃない、逃亡の余地すらない戦力差でした。

 そんな時にふと思った事がありまして、幼少の頃、ゲームをよく遊んだ私は戦闘の際にこの戦いからは逃げられないっていう場面を幾度か経験した事があります、漫画やアニメでも何故自分よりも強い奴と出会って逃げないのかと疑問に感じました、逃げれば生き残れるのに……そう何度も思わざるを得ませんでしたが、その謎があの時わかったのです。

 人は……いや

生物は自分より圧倒的に強い存在と出会うと逃げる事すら思考の外に置いてしまう。

 

──無論勇気を振り絞って争うことも出来るでしょうが当時の私にはとてもとても……

 そんな時に先生が尋ねてきました。

 

“主要人物は何処にいる”

 

──心臓を物理的に鷲掴みにされた気分でしたよ。

 ですが、腐ってもこの道で6年も活動してる私にも僅かとは言え面子って物があります、まあ……不良というのは舐められたら終わりですから。

 えぇ、吐きませんでしたよ、ワカモの場所は、何の関わりもありませんし何か恩があるわけでもない、それでもこんな私にでも付いてきてくれる舎妹達が居ましたから、他の妹分達に矛先を向けられるくらいなら自分が受ける、そんな淡い気概ですよ。

 私が絶対に吐かないと感じるや否や先生は私の頭に手をやってこう言いました。

 

“いい根性だ、私の所に居た奴等よりよっぽど強い精神をしている”

 

──後で知ったんですけどこれ先生の故郷の兵士と比べられてたらしいです、まあその時の私は知るはずもないですけど。

 

“これからもその精神力、損なわない事だ、精々励むといい”

 

──私は馬鹿で頭も悪いですけど、何となく、褒められたんだと思います、人にそれも大人の人に褒められるというのは経験がありませんでした。

 だからその時決心したんです、この人に付いて行こうと。

 

 

 

恐らくエビ

 

 

 いやぁ、なかなか根性ある奴だった、人は決して弱くなってばかりというわけでもないらしいな。

 

「よし!建物の入り口まで到着!」

 

 先頭を走っている彼女──早瀬ユウカという──が目的の場所に着いた事を述べる、漸くか…複数人連れて旅をするのはメリナ達で慣れてる故何も問題無いが、流石に走ればすぐの所をこうまで時間がかかると多少なりとも気が滅入る。

 

「気をつけてください、巡行戦車です……!」

 

 おお、遂に見えたか戦車(チャリオット)、久しいその姿を我が目に……なんだこの鉄塊は。

 

“これが現代の戦車(チャリオット)か?”

 

「チャリオット…あぁ昔の戦車の名称ですね、今の時代では戦車(タンク)と呼ばれる事が多いかと」

 

 私の疑問に大きな翼を生やした生徒(羽川ハスミ)が答える、これが現代における戦車か…一目で分かるその戦力、全身を硬い鉄板の類で包みそしてあの長く伸びた包から何かしらを発射するのだろう、脚部に車輪がついている事から走行可能、更にはそれを操る人間はその鉄板の中にいる…道中散々また車と同じだな、それに武器を兼ね備えたのか、故に戦車と……いやしかしなぁこれはどっちかというと…

 

“どっちかというとザリガニに近い様な…”

 

「はい?ザリガニ?え?あれが?」

 

“あぁ、いやこっちの話、気にしなくていい”

 

「気にしますけど⁉︎」

 

 

──あの時の光景は今でも忘れません。

 

 トリニティ総合学園正義実現委員会所属花川ハスミ(三年生)は語る。

 

──ご存知の通りクルセイダー一型戦車はトリニティ総合学院にて正式に採用されている戦車です、従ってその性能は折り紙付きと言えるでしょう。

 当時その場に居た生徒の中で同じ学園に所属しているスズミさんはその脅威を認識していました、まさか彼女も自身が所属する学校の戦車と戦うことは想定していなかったでしょうから。

 クルセイダー一型戦車の装甲はとても厚く、当時の私達が携行する火器では装甲を貫く事は難しく私の銃で薄い所を狙ってなんとかと言った所でした。

 結論から述べます、私達はその戦車に対して一発も弾丸は使っておりません。

 

──あの時の戦場で真っ先に動いたのは先生でした、武器も持たずヘイローもない、銃弾一発で致命傷になりかねないと当時は思っていた私達を他所に、先生は単身戦車に向かっていったのです。

 無論戦車も撃っていましたよ、ですが先生はその大きな身体の割にとても身軽な方でして、難なく避けていましたよ、砲弾。

 そこから戦車の正面装甲部分に立つと左手で戦車を抑えていました、そんな程度で止まる車両ではない筈なのですが、先生の力が強すぎるのか車輪の方が空回りし始める始末です。

 そこから先生は残った右手を大きく振りかぶり、思い切り装甲に向けてぶつけました、所謂殴りですね。

 言うまでもありませんが、装甲車両の正面部分の走行は特に厚く設計されています、並大抵の弾丸が効かないのはこの為です、ですからその後に起きた事を踏まえると先生の拳は其れ等を優に上回る威力を有している事になります。

 はい、貫いていたのです、先生の拳が、戦車の正面装甲部分を。

 正直な所……クルセイダー戦車を単騎で制圧するくらいなら正義実現委員会の委員長……ツルギなら難なくこなすでしょう、ですがそれはツルギが武装しており戦車の強みと弱みをしっかり理解してこその事です、流石のツルギであっても、いえ、他のキヴォトスの生徒であっても戦車に素手では挑まないッ‼︎

 

──失礼、取り乱しました、ですが私の心中お察し下さい、それ程の衝撃だったのです。

 他の御三方も同様です、呆然としていましたよ、なんて声をかけたら良いのか、或いは立ち尽くすしか出来なかったのか、その両方でしょうか。

 当然その戦車に搭乗していた中の不良達からしたらたまった物ではないでしょう、装甲を貫くという事は内部に先生の腕が生えてきているという事なのですから、無論悲鳴は上がっていましたよ、私達は不良生徒が相手ながら皆心境は同情で一致していました。

 そうしたら先生がですね、拳を引き抜いて言うんです。

 

“出ろ、これ邪魔だから”

 

──全員即座に出てきました、アレでは最早委員長命令です、そう思えるくらい動きに無駄が無く、理想的とも言える戦車からの降り方でした。

 呆けてる私達を他所に先生はシャーレの建物内に入って行きました、追いかけようにも戦車に騎乗していた不良生徒達が余りにも恐怖で震え上がっていまして……宥めるのに大変でしたよ。

 

 

この先、可愛い奴があるぞ

 

 

──漸くついたが、既に先客がいるようだな。

 

 私にとって他人は全て餌であり破壊対象、今回の事もまたその一環でしかない。

 あんな所に閉じ込めた連邦生徒会に対しての嫌がらせも兼ねて此処にお邪魔したが此処にある何もかもが正体不明、ともなれば何を壊せば良いのかもわからなくなる。

 

“暗い所で仮面は余計に視界を悪くするから、気をつけると良い”

 

 声、それも男の声だ、となると噂の外から来たという人間、そう認識し振り返ると。

そこに怪物が立っていた。

 今までは、自分がその視線を向けられていた、だが今その自分が恐怖の視線を相手に向けている。

 勝てない、そう認識するのにきっと一秒も要らなかった。

 

“察するに、君が例のワカモなんだろうが…今回の仕事に君を捕らえるってのはないしな…”

 

 その言葉に一応の安堵が流れる、一先ず死に直面する事は無さそうだ。

 

“行きなさい、君には会わなかったことにしよう”

 

「私を……見逃すというのですか?今回の騒動の、主犯なのですよ?」

 

“人間誰しも束縛から解放されたい物だ、子供なら余計にな、早く行きなさい、追っ手が来てしまうよ”

 

「そ、それではお言葉に甘えて……」

 

“それから、私は基本此処に居るだろうから、気が向いたら来ると良い、その時はちゃんともてなせるといいんだが”

 

 ワカモを見送り暫くするとリンがやってきた、どうやら無事見つからず逃げ切れたらしい。

 

「ここに、連邦生徒会長の残したものが保管されています、幸い、数一つなく無事ですね、どうぞ、受け取ってください」

 

 そう言われて渡されたのは板だった、いや本当に板にしか見えない、なんだこれ、小盾にも満たない大きさ、物を防ぐものではない。

 

「これは連邦生徒会長が先生に残した物、“シッテムの箱”です」

 

 箱なのかこれ、滅茶苦茶薄いけど紙しか入らなくないかこれ。

 

「普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からない物です、製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みの全てが不明、連邦生徒会長は、このシッテムの箱は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました」

 

 この私がいた時代にこんなものはなかった。

 

「私達では起動すら出来なかった物ですが、先生ならこれを起動させられるのでしょうか、それとも……では、私はここまでです、ここから先は全て先生にかかってます、邪魔にならないよう、離れています」

 

 そんな、触った事もない物いきなり手渡しといてお願いしますはだいぶ無理だぞそれ、ど、どうするんだこれ、このスイッチ?を押せば良いのか?

 

 起動スイッチらしき物を押すと画面が明るくなり文字が入力される、すごい、画期的な代物だ。

 どうやらシステム接続パスワードなる物を入力しなくてはならんらしい、なんだそれ。

 あぁいや、確かあの送迎の中であの女が言っていた筈、確か──

 

我々は望む、七つの嘆きを。

我々は覚えている、ジェリコの古則を

 

 こんな感じの奴、だった気がする。

 だいぶ怪しかったが接続パスワードとやらが承認されて今の所持者として設定されたらしい、成功…で良いんだよな。

 

『シッテムの箱へようこそ、グラム先生、生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します』

 

 その瞬間私の視界の風景が一変した、まず間違いなく私は先程までシャーレの建物の地下にいた筈だ、だが今はどうだ、倒壊した壁、地平線まで見える外、何より床一面が浸水している、この学舎の様な部屋、そこに一人だけ人間が居てはそいつが怪しいと思うのは仕方なかろう。

 

「むにゃ、カステラにはぁ……イチゴミルクより……バナナミルクのほうが……」

 

 クソッコイツ‼︎寝ぼけてやがる‼︎

 

「えへっ、まだたくさんありますよぉ……」

 

 私は目一杯息を吸った、起きないと話が進まないんだから仕方なのない事だ。

 

“起きろォ‼︎”

 

「うわぁっ⁉︎何ですか⁉︎敵襲ですか⁉︎」

 

“はいおはよう”

 

「え?あれ?あれれ?せ、先生⁉︎」

 

“君が起きるまで5分も掛かりました、問題だぜこれはよ”

 

「この空間に入ってきたっていうことは、ま、ま、まさかグラム先生……?」

 

“そう、そして寝坊助のお前をまず叱る所から始める人だ”

 

「う、うわああ⁉︎そ、そうですね⁉︎もうこんな時間⁉︎」

 

 なんというか物凄く忙しない子だ、一先ず落ち着かせてから色々と事情を聞いた。

 曰く、彼女の名はアロナということ、そしてこのシッテムの箱の管理者であり私の秘書を務めるということ。

 

「やっと会うことができました!私はずっと、ずーっと待っていました!」

 

 その割には寝てたがな、それにしてもこの子…あの時出会った連邦生徒会長に何処となく似ているな、娘がいたのかあの子。

 

「ではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います♪」

 

“ああ、なんかそんなのもあったな、早速頼む”

 

「うう……少し恥ずかしいですが、手続きだから仕方ないんです、こちらの方に来てください」

 

 そう言われて一歩、私はアロナに近づいた。

 

「もう少しです」

 

“いやこれ以上近づくと…”

 

「あ…か、屈んでください!」

 

 仕方ないので片膝立ちになった。

 

「さ、さあ!この私の指に、先生の指を当ててください」

 

 そう言われたので大人しく指を当てる。

 

E.T

 

「……はい、確認終わりました!」

 

“凄いな、今の技術だとこんな事が出来るのか”

 

「はい!私は凄いんです!」

 

 …所でもし仮にこれを起動したのがメーテールだったらコイツはどうしたんだろうか、指しかないんだがなあれ。

 一先ずアロナにいまのキヴォトスの状況を説明する、どうやらアロナでも連邦生徒会長の居場所は分からんらしい、代わりに当初の目的であるさんくとぅむたわあ(サンクトゥムタワー)の問題はなんとかなるらしい、これで一段落と言った所か。

 

“早速頼む”

 

 そして待つこと数十秒、どうやら権限修復はなんとかなったらしい、今やキヴォトスは私の支配下にあるのも同然らしいがそう言った支配権力の類は生前に文字通り死ぬほど懲りたのでもう十分だ、なので連邦生徒会の連中に委任する。

 

「でも……大丈夫ですか?連邦生徒会に制御権を渡しても」

 

“此処は私の国ではないのでね、そういう物の類は身の丈を超えているのさ”

 

「わかりました、これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」

 

 …どうやら無事に制御権の移管が済んだらしい、表にいるリンがそう伝えているので間違いないだろう。

 色々とお礼を言われたりなにやら表の不良達の怯え具合はなんなのかだとか聞かれたがまぁ置いておこう、私はリンにシャーレの部室に案内される。

 

「ここがシャーレのメインロビーです、長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることになりましたね」

 

 リンがドアを開けて中に入る、私は少しデカ過ぎるので少し屈んで中に入るしかない、この世界は大きい奴に優しくないのか。

 

「……後ほど改築の依頼手続きを出しておきますね」

 

“申し訳ない”

 

「ここがシャーレの部室です、ここで先生のお仕事を始めると良いでしょう」

 

 ふむ、結構広くて良い場所じゃないか、かつての円卓と比べると開放感もある、実に素晴らしい。

 

「……シャーレは、権限だけはありますが目標のない組織なので、特に何かをやらなきゃいけない……という強制力は存在しません、キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りでき、所属に関係なく、先生が希望する生徒たちを部員として加入させることも可能です」

 

“一個人が持つには余りにも多大な権限だな”

 

「面白いですよね、捜査部とは呼んでいますが、その部分に関しては、連邦生徒会長も特に触れていませんでした、つまり、なんでも先生がやりたいことをやって良い……ということですね」

 

“本当に自由そのものじゃないか”

 

「……本人に聞いてみたくても、連邦生徒会長は相変わらず行方不明のまま、私達は彼女を探すのに全力を尽くしているため、キヴォトスのあちこちで起こる問題に対応できるほどの余力がありません」

 

 まあいきなり組織の頭が消えたらそうなるよな。

 

「今も連邦生徒会に寄せられてくるあらゆる苦情……支援物資の要請、環境改善、落第生への補習授業、部の支援要請などなど……もしかしたら、時間が有り余ってるシャーレなら、この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね、その辺りに関する書類は、先生の机の上にたくさん置いておきました、気が向いたらお読みください」

 

 これが全て書状の類か…まぁこの手の類の仕事は前の政務の要領でやれば良いだろう。

 

「それではごゆっくり、必要な時には、またご連絡いたします」

 

 その後今回付き合ってくれた四人と色々と話し合い最終的には連絡先なる物を交換する様になった、因みにこの板──端末、タブレットとも言うらしい──の扱い方がてんでわからなかったのでその辺も教えてもらったり最後まで世話になってしまった。*5

 

 そして今、私しかいなくなった部室で一人私は漸く一息つける状況になった事に一先ずは肩の力を抜く。

 恐らくだが彼女達の反応を見るに私はあんまり戦わない方がいいかもしれない、どうやら私はこの世界に於いて少々強過ぎるらしい、無論無闇矢鱈に引け散らかすつもりもないがそれでも過度に戦闘面における干渉は避けた方がいいだろう、私は強過ぎる武力の類がどの様な影響を及ぼすのかよく知っている。

 加えて、夜の雨についても情報を集めなくては、此方はまず間違いなく私が出向かねばならない代物だろう、取り敢えず一先ずは…

 

“此処の勉強からだな”

 

 その日、キヴォトスの生徒は直感的に理解した、今この瞬間自身の『強さ』のランクが一つ下がった事を、その正体がシャーレに赴任した先生であると気づく時は近い。

*1
その実なんと50cmもの減少

*2
約160cm前後

*3
東京の新宿から静岡の横浜・千葉の幕張位の距離

*4
徒歩の意

*5
交換直後に電話通信を行い利便性を確認した黄金翁である。




分ければよかったのに一括でやろうとするからこんなに文字が膨れ上がる。

・黄金野郎改め黄金先生(年齢不詳老衰済み)
 前作の旅を終えて王の勤めを果たし終えた人、ルート的には大体原作褪せ人よりちょっとハードな道を歩んだ位(当社比)
 基本的に同じだけどちょっと違う程度の並行世界だと思えば。
 エルデの地にはこんなハイテクな物は無いのであたふたしてる爺である、一人称は意図的に“私”に、偶に俺が漏れる。
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