最強ランクマ勢のTS娘、クラスのポンコツ美少女と一緒にチャンネルを始めたらバズりました。   作:家葉 テイク

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本日既に更新してますので、ご注意ください。


38:見えて来たものは ①/二択のうちの三択め

 『ウィステリアフィールド城塞』は、地上二階、地下一階、それから屋上という構成の城塞だ。

 城塞の東西南北には監視用の塔が設置されており、監視用の塔同士は互いに()()()()()()で行き来することができる。城壁と城塞の間には中庭が広がっており、そこには泉や花畑なんかの、溶岩と城塞の世界には似つかわしくないファンシーな光景も存在する。

 特筆すべきは、城塞内部だろう。

 車が何台も走れそうなほど広い城内には、二つの脅威が存在している。──『ギミック』と迷獣(モンスター)だ。

 

 

「つっても、俺達が知ってる情報なんて殆どないんだがな」

 

「腕が鳴りますよ。どっからでもかかって来いですよ!」

 

「威勢は良いんだよなあ、いつも」

 

 

 ──一応、『ギミック』については割れている。移動中に発動し、スタート地点まで戻される『ギミック』。下手に逆らおうとすると身体が両断されるらしい。

 それと、どんな迷獣(モンスター)がいるかくらいは、事前に城壁を登って上から確認済みだ。

 『WF城塞』の場合、城の外や中庭は安全地帯である。基本的に迷獣(モンスター)は入って来ないので、ゆっくりすることができる。しかしその外──屋上とか城壁上の通路には、人の背丈の倍ほどもある巨大な甲冑が闊歩している。

 頑丈そうな上に、炎が効きづらそうな見た目だ。俺の探索技能(スキル)は搦め手以外通じないと考えていいだろう。まぁもちろん、搦め手が通用するならばやりようなどいくらでもあるが……。

 

 

「…………こうなってくると、使いづらいなあ……。俺の探索技能(スキル)

 

 

 いや、『手作りの絢爛(カジュアルトーチ)』は最強の探索技能(スキル)なんだけどさ。

 ただ、()()()()()使用するとなれば、カーマシア砂漠でやったような『照明器具』の解除⇒発現によって灯油のみを取り出す運用もなかなかやりづらい。

 あと、地味に『可燃物かつ照明器具』なチョイスを出すのも大変なんだよな。今も暇があったら思いつきをメモってるけど、既に割とネタ切れの感もある。

 あと、お昼にやったアーバージェリー戦でも、『手作りの絢爛(カジュアルトーチ)』を『練成』系として運用する時の『射程短すぎる問題』に地味に悩まされたし。あの時は一五メートル程度の間合いを常に維持しながら、射程超過解除(『手作りの絢爛(カジュアルトーチ)』は射程二〇メートルなので、それを超えると『照明器具』が解除される)に気を配りつつ戦っていたのだが、あれも結構面倒くさかったしな……。

 中級者向け程度の異界迷宮(ダンジョン)なら問題なく対処できるだろうが、流石に上級者向けの異界迷宮(ダンジョン)で同じようなことが続けられるかと言うと、少々自信がない。

 ……う~ん、能力の調整が必要だなぁ……。

 

 

「クロにしては珍しくバトル系で弱気な発言ですよ」

 

「正確な現状把握だよ。要は、俺にはまだ伸びしろがあるってこと」

 

「それ以上まだ強くなるんですか……」

 

 

 なんでドン引きするんだよ! いいだろ別に! 際限なく強くなったって!

 

 そんな感じでくだらない話をしつつ、俺達は城門を通り、まず中庭へとやってきた。

 この迷宮の『奥』は城塞の中なのだから完全に寄り道なのだが、だからといって全体の中で明らかに浮いている中庭をスルーして進んでいくのもね。ちゃんと全部見て回りたいというか。

 

 

「はえー、全然雰囲気違いますね」

 

 

 そこは石畳の島とは違い、瑞々しい草花で覆われている生命力に満ち溢れた空間だった。なんというかほっと一息つきたくなる光景だが──俺からすれば。

 

 

「……ナツカ、『ギミック』見えるか?」

 

「今のところはないですけど……もうちょっと情緒的な感想を述べても罰は当たらないと思いますよ」

 

「だって草で地面が覆われてるんだぞ? 罠が隠されてるかもしれないだろ。異界深度(フロアレベル)的にも」

 

 

 異界深度(フロアレベル):8といえば、上はもう9と10しかない。そして異界深度(フロアレベル):10といえば、破局氾濫(オーバーフロー)ギリギリの水準である。平常の異界深度(フロアレベル)が8となったら、もうどこで即死トラップがあってもおかしくない空間だと思っておかねば。

 もっとも、ナツカの目がある分、不意のトラップについては少しは気を抜いていられるのが幸いだが……。

 

 

「この迷宮で夜を明かすとしたら、此処がいいかもな」

 

「草原で寝転ぶのは気持ちよく寝れそうですよ」

 

 

 言いながら、俺達は中庭を歩いていく。

 中庭は城壁と城塞本体の間の空間に広がっているので、必然的にその形状は城塞の輪郭をなぞる輪状になる。俺達は城門から見て右手側の中庭を歩いているのだが──右手奥側までやってきたところで、ふと前方に泉が見えてきた。城壁を登って確認したときに一応安全は確認しているが、一応近づいたら襲い掛かって来る迷獣(モンスター)の可能性は否定できないため、一五メートルほどの地点で一旦足を止める。

 

 

「こういう距離感もなぁ…………」

 

 

 『練成』系を装うなら、射程はもう五〇メートルは欲しいところだ。欲を言えば二〇〇メートル。

 だが、俺の現状のビルドでそれを実現するとなると、けっこう色んなところに『制限』を加えないと無理が出るんだよなぁ……。

 

 ぶつくさ呟きながら、俺は燭台を発現し、それを泉の中へと投げ入れる。こうすれば、中に迷獣(モンスター)がいれば飛び出して反応してくるだろう。

 ぽちゃんという音を立てて、燭台が泉の中に落ちる。すると──

 

 ざばん!! と音を立てて、中から女が現れた。

 

 …………。

 ……いや、女ァ!? 探索者か!? あの中に!? 何故ここに待機を──

 

 

「いやこれ、『ギミック』か!?」

 

 

 ──一瞬混乱しかけた俺だが、女が手に持っているのが『金の燭台』と『銀の燭台』だったことで、すぐに状況を理解する。

 これは……『泉の女神』だ。クソっぬかった。泉の中にものを入れるのが発動条件の『ギミック』!! ナツカに確認してから動くべきだった! アレが原典通りの問いかけで済ましてくるなら構わないが、攻撃的に動く場合はマズイ……!

 

 

「ナツカ下がれ! 五メートルな!」

 

「え? まぁ分かりましたけど……」

 

 

 とりあえず、起点となった『照明器具』を解除することで『ギミック』の途中終了を試みる。

 『ギミック』のトリガーにされたことで任意解除できなくなっている可能性も考え、任意解除を念じると同時に二〇メートルの射程超過解除を狙って後退も行う二段構えだ。

 任意解除は……やはり無理か! だが射程超過解除なら……!

 

 

「…………な、」

 

 

 ──と考えていた俺は、次の瞬間、異界迷宮(ダンジョン)のトンデモっぷりに驚愕することとなる。

 

 

『アナタが落としたものは、この金の燭台ですか? それともこちらの銀の燭台ですか?』

 

 

 ──後退しようとした俺は、見えない壁に阻まれるようにして、それ以上後ろに下がることができなくなっていた。

 

 

「何ィィいいいいッ!? これは……ッ!!」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?!?

 マジかよこの『ギミック』、解除できなくするどころか、解除する為の行動も制限してくるのか!!

 くっそ……ッ!!

 

 その場で後ろ宙返りをして、見えない障壁に足をかけてみる。……反発する力場自体はあるのか。磁石同士を近づけたときのような抵抗を感じるが……手でも触れて『照明器具』の発現を念じたが、発現はできなかった。物質として障壁が存在しているわけではないらしい。

 

 

「ナツカ、こっち来れるか!?」

 

 

 見えない障壁を蹴って城壁の方へ飛び移りながら、俺はナツカに言う。

 壁から生やした小型の設置型トーチに掴まって『泉の女神』の上を取りつつ、俺は状況を観察する。──女神は、ナツカの方には目もくれず、俺の方へ視線を向けて回答を待っているようだ。……この『ギミック』の対象は俺って訳ね。

 敵対的かどうかも分からない以上、御伽噺の流れに乗るのがベターな動きとは思うが……。

 

 

「別に問題ないと思いますよ」

 

 

 ナツカの方は、特に問題なく俺が障壁を感じていた場所を素通りできていた。……俺個人にのみ影響するらしいな。

 あるいは射程外移動のときのみ発生していたか。同タイミングで働きかけられていればまた違った挙動をしたかもしれないが……今考えることではないか。

 

 

「悪い! 俺が『ギミック』を踏んだっぽい! どうなるか分からんから、一旦隠れててくれ!」

 

「いやあの、これボーナスポイントだと思いますよ?」

 

「……はいぃ」

 

 

 泉の女神がどう動くか分からないからめちゃくちゃ警戒していたというのに、ナツカの一言で一気に脱力してしまった。

 お前がそう言うならそうなんだろうけどさぁ……。俺が警戒した意味……。いやナツカに確認すればよかったんだが、即断即行が癖になっててぇ……。

 俺は飛び降りて、生やしていたトーチを解除する。当たり前だが、こっちは解除できるんだな、うむ。

 

 で、俺は放置していた泉の女神に視線を向けつつ、

 

 

「なぁこれ、どう答えるのが正解なんだ?」

 

「そこまではさしものナツカさんも分かりませんよ。ただ、ミスってもそう悪くはなさそうだと思いますよ」

 

「無難に答えるかぁ」

 

 

 泉の女神の前まで来た俺は、その奥の泉の方を指差して、

 

 

「どっちも違う。俺が落としたのは普通の燭台だ」

 

 

 と答えた。

 すると女神はにっこりと微笑んで、

 

 

『正直者には、全てを授けましょう』

 

 

 と言った。

 すると女神の前の泉がひとりでに盛り上がり、その上に俺が落とした燭台が浮上するようにして現れた。女神はその燭台に──金と銀の燭台をぶつけ合わせた。

 

 

「はぁ!?」

 

「おお」

 

 

 想定外の挙動に驚愕する俺達をよそに、三つの燭台は一つになり──最後には、俺が落とした燭台だけが残った。

 

 

『この燭台は、金の相と銀の相を併せ持っています。正直者のアナタにこれが相応しい』

 

「あ、ありがとうございます……?」

 

『これからも、己の心に正直であることを忘れないように。では、これにて』

 

 

 それだけ言って、泉の女神は水面(みなも)の下へと消えて行ってしまった。

 金の相と銀の相を併せ持っている……? …………っていうか、金と銀と合体した瞬間燭台の反応がなくなった(『照明器具』の位置は感覚で把握できる)んだけど、これ別物になってないか?

 …………任意解除もできないし。やっぱりこれ、見た目は同じだけど全く別物というか、俺の探索技能(スキル)の支配下から外されているというか……。

 

 

「なにこれ」

 

「さぁ……分からないですよ。それよりそれ、解除できないんですか?」

 

「なんか能力制御下から外れてるっぽい。どういう挙動なんだこれ」

 

 

 とりあえず、これから高難易度の探索をするというのに片手が埋まるのは論外のため、燭台は此処に置いておこう。探索が終わったらまた拾いに戻ってくればいい。

 と、地面に置こうと燭台を傾けようとして、

 

 ……()()()()、と。

 

 まるで捻じ曲がるみたいにして、燭台が金へと変化した。

 

 

「うわっ!? こういうヤツなの!?」

 

「はえー、金の相ですよ」

 

 

 すご……。これ、純金か? 売ればまぁまぁな金額になるんじゃ?

 いや……それもあるが、純金なら加工が比較的容易になる。加工してから『相』を元に戻せば、加工が難しい材質の素材を簡単に造形できるんじゃなかろうか。

 

 

「あ、クロ」

 

 

 そこまで思考が至ったところで、不意にナツカが泉の方に視線をやりながら言う。

 

 

「今日はもうあの泉はやめといた方がいいですよ。多分、次は危ないです」

 

「………………了解」

 

 

 ……こわっ。

 一日一回限定のボーナスギミックってことね。

 

 

「ナツカはやっとかなくていいのか?」

 

「ナツカさんは別に金とか銀にしたいものないですし……それに多分、ナツカさんもやったら危ないので」

 

「えっ、お前もダメなんだ」

 

 

 イベントに同席していた探索者は全員一日一回限定に引っかかるのかね。そういうとこちゃんとしてるんだな。

 

 

「じゃああんま近くにいかないように気をつけろよ。適当に投げた燭台が対象なら、多分蹴った土とかでも『ギミック』起動すると思うし」

 

「まぁ気を付けるに越したことはないですよ」

 

 

 そんなことを言いながら、俺とナツカは中庭を進む。

 ちょうど門から見て左手奥のあたりに差し掛かったところで、今度は小屋が見えた。今度は前回の失敗を生かして、俺はナツカの方へ視線を向ける。

 

 

「特にギミックはなさそうだと思いますよ。休むならあの小屋を使うのがいいんですかね?」

 

「まぁ野晒しよりは良さそうだけど、木の床だと硬くて逆に嫌じゃないか?」

 

 

 俺は硬い木の板よりは草原の上で寝転んで寝たい気分だ。

 何にせよ、『ギミック』がないなら警戒も必要ない。

 俺は特に心配せず扉を開けて、小屋の中身を確認する。ただ、小屋の中には何もなかった。椅子とか机とかもない。箪笥もないし、当然暖炉のようなものもない。本当に小屋があるだけの空間だった。おまけにちょっとボロい。

 

 

「うーん殺風景」

 

「何の意味もない小屋ですよ」

 

異界迷宮(ダンジョン)ではよくあることだろ」

 

 

 特にナツカの反応もなかったので、探索することもなく扉を閉じる。

 この小屋についてはのちほどヴィヴィアネさんにでも確認しておこう。もしかしたらなんかの名残とかかもしれないし。

 そのまま折り返しの左手側を進んでいくと、ちょうど半ばごろに差し掛かったあたりでキレイな花畑に直面した。

 思わずうっとりしてしまうほどファンタジーな絵面だ。こういうとこでお花を摘んでるお姫様みたいなのって、いいよね。綺麗で可愛いし。キララのときにやってみたい。

 

 

「ナツカ、此処は大丈夫か?」

 

「う~ん、なんかありそうではあると思うんですけど、パッとしないですよ」

 

「そんなことあるのか」

 

 

 なんかの条件を満たせばギミックの発動準備が整うとかか?

 もしくは泉の女神発動前なら動くとかそんな感じの可能性もあるな。良く分からんし、これについてもあとでヴィヴィアネさんに聞いてみるか。

 心のメモ帳に記録しながら、俺達は花を潰さないように花畑を迂回しながら移動することに。

 

 その後は、特筆するようなこともなく──。

 俺達は、最初の城門のところまで戻って来た。

 

 

「ふーむ、中庭をぐるっと一周するだけでもまぁまぁ撮れ高でしたよ。配信してないのがもったいないくらいですよ」

 

「一応カメラは回してるから、Dlogとしては出せるけどな」

 

 

 Dlogというのは、『ダンジョンブログ』のことである。

 ビデオブログ(Vlog)を語源とする言葉で、要は異界迷宮(ダンジョン)探索の記録を短尺動画にすることを言う。デビュー前のアレなんかも、分類としてはDlogの一種だ。まぁ、あれだけ間断なく投稿することはDlogでは通常ないが……。

 

 

「えっ、いつの間に」

 

「俺がこんな撮影チャンスを逃すわけがないだろう」

 

 

 だから、配信してるわけでもヴィヴィアネさんの目があるわけでもないのにちゃんと設定守って戦ってたんだよ。いやまぁ、ヴィヴィアネさんの目についてはちょっと考えてることもあるのだが……。

 

 

「まぁ企画やってる最中に何Dlog撮ってんのって話でもあるから、公開するのはもうちょっとほとぼり冷めてからになるけどな。ストックストック」

 

「流石はナツカさんの相棒ですよ。頼りになる~」

 

「なんかウザいなそれ……」

 

 

 雑なヨイショに悪態をつきつつ、俺は改めて城内へと視線を向ける。

 中庭は、イージーモードだった。迷獣(モンスター)もいなかったしな。本番はこれからである。

 手足をぷらぷらとさせて準備運動をしてから、横で屈伸をしてうっかりベアークローを地面に突き刺しているアホに向けて、俺は言う。

 

 

「よし、じゃあ行くぞ。準備はいいか?」

 

「ちょっと待ってほしいですよ。これを抜くので」

 

「もうその武装やめなよ…………」

 

 

 なんで間合いミスってんだよ。何年やってんだお前。




 あと一~二話くらいガッツリ探索回が続きます。
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