最強ランクマ勢のTS娘、クラスのポンコツ美少女と一緒にチャンネルを始めたらバズりました。 作:家葉 テイク
感想五〇件突破ありがとうございます!!いつもとても嬉しいです!
城内は、先ほども観察した通り車が何台も一遍に通れそうなほど広い廊下が続いていた。だいたい、広さは一般道の四車線ほどだろうか。巨大な赤い絨毯が床いっぱいに敷かれており、入口からでは見通せないほどの先まで続いている。
……およそ『城』という規模感ではないが、まぁ
「さて、行くか。今のところ変なとこあるか?」
「それいちいち聞くのめんどくさいですよ」
「仕方ないだろ……どこに何があるか分からないんだし……」
確かに、いちいち確認してたらダルいと思われても無理はないのだが……。
…………いや、高難易度の迷宮に潜るって話なんだからそのくらい慎重に挑むのは普通じゃない!? 俺はおかしくなくない!?
まぁいい。ともあれ、ナツカがこう言うということは、特に変なものはないということだ。
まずは
「なんだか全体的にサイズが大きいですね」
廊下を歩きながら、ナツカは辺りを見渡して言う。
ナツカの言う通り、壁に掛けてある絵画も、廊下脇に置かれた花瓶も、めちゃくちゃ大きい。この廊下の通りだけが大きいかと思いきや、幾つかの分岐している廊下も同じように大きい。サイズ感の違いという意味ではカーマシア砂漠のピラミッドを思い起こさせるが、ナツカが一切不思議そうにしていないので単純にサイズが大きいだけなのだろう。外から見てもそんな感じだったし。
城壁の上から見た限りでは、此処には同じく巨大な動く鎧甲冑が
「質量が大きいってことはつまり攻撃力が高いってことだ。敵の攻撃を受け止めようとするなよ。一発で乙るぞ」
「合点承知ですよ」
「あと、『爆弾』作ってるか? 敵に出くわしてから作っても遅いからな?」
「……………………」
あっ! コイツ『爆弾』作るの忘れてやがる!! TAL空域の時あれだけ言ったのに!
………………。
……ちょっと今動くか。
「今のうちに作れほら早く。俺が周囲の警戒やっとくから」
俺がそう言うと、ナツカはしょぼしょぼとしながら、
「……素材、ないですよ」
「お前、TAL空域の時にも同じこと言ってたよなァーッ!?」
「怒らないでほしいですよ! さしものナツカさんも中庭の雑草を引っこ抜いて『爆弾』にしておくアイデアはなかったですよ。あと雑用みたいでカッコ悪いですし」
「…………まぁそれは分からんでもないが……!」
いくらその辺にあるものを『爆弾』にできるとはいえ、小石とか雑草とか土とかそういうのを『爆弾』にするのは、手軽さゆえに芸術点が低いからなぁ……。
仕方がない。俺が出しておいてやるか……。
俺は床に手を当てながら、
「ほら、これでも使え」
とナツカに向けて言う。
すると、俺が触れたところから豪華な燭台が伸びた。何段もロウソクが立ててある、デカい教会とかにありそうな代物だ。
一段目のロウソクは八本、二段目のロウソクは四本、三段目のロウソクは一本なので、全部で一三本ある計算になる。
「ロウソクの取り外しは簡単にできるから、それで『爆弾』を作れ。細長いから持ち運びもまぁまぁ便利だろ」
「おお、流石だと思いますよ! ところで威力設定はどうしますよ?」
「範囲は最低、威力は最高とかでいいんじゃないか? 敵の硬さがどれほどのもんか分からないしな」
「了解ですよ」
俺の指示を聞いて、ナツカは素直にロウソクを合成しにかかる。完全にナツカの外界への警戒が切れ、俺がナツカの方に視線を向けたちょうどそのタイミング──
ぬう、と。
数メートル先。分岐した廊下の角から、体高四メートル程度の騎士甲冑の
物音がした方に向けて、俺はステンレス製のガーデントーチを発現し勢いよく投擲する。
奇襲が成功したと見ていたであろう騎士甲冑は、それでも咄嗟に剣を振るい、ガーデントーチを斬り払う。
そう。金属製の剣で、ステンレス製のガーデントーチを──内部に液体燃料の詰まったそれを、思い切りだ。
当然、両断されたガーデントーチから漏れ出た液体燃料は、切断時の火花に引火して一気に燃え上がった。さらにそれだけではなく、液体燃料は鎧の間にも入り込んで燃焼していく。
……破壊のタイミングで照明をONにすればもっと確実に引火はできた(ガーデントーチの照明をONにするとは、火がつくということなので)のだが、それだとちょっと
炎に巻かれた騎士甲冑が、ガチャガチャチャ! と、一瞬強張るのが確認できた。
……わざわざ物陰に隠れてこちらの隙を窺う程度の知能があるのだ。『何かされた』と認識して警戒したのだろう。だが──当然ながら、金属の騎士甲冑に液体燃料に引火した程度の火は意味をなさない。内部に本体でもいれば話は違っただろうが、どうも動きからして中身は空のようだ。カーマシア砂漠の
騎士甲冑は、炎に呑まれるのも気にせずに再び剣を構え直す。
炎が意味を成さないと学習された以上、俺の再攻撃は最早完全に無視して突貫してくることだろう。俺はそれを踏まえた上で、
「ナツカ、下がるぞ!」
「えっ、わっ!?」
騎士甲冑に気付いて警戒していたナツカの腰を持って座らせるように肩に担ぎ、俺はさらに地面を撫でながら距離を取る。街灯その他もろもろが使えるならともかく、
ともかく今は、搦め手を使うほか対抗する術がない。ナツカの爆弾が間に合っていればよかったのだが、ご覧の通り全然やりかけだからな……。
ガシャシャン!! と、騎士甲冑は俺を追って炎を纏いながら歩を進めていく。その足が先程まで俺達がいたあたりに差し掛かったところで──
──『
「お前の待ち伏せに気付いておいて、俺がただ巨大燭台を発現する為だけに地面に触れていたと思っていたのか?」
現れるのは、巨大なキャンプファイヤー。
井桁型のキャンプファイヤーがちょうど騎士甲冑を取り囲むように発現され、そしてその身に纏った炎が引火して燃え上がる。
……キャンプファイヤーって、丸太が組んであるだけじゃなくて着火剤とかもちゃんと塗布されているからな。燃えた液体燃料を被って暴れている騎士甲冑が中に入れば、一瞬で燃え上がるという寸法よ。
「おお! 凄いと思いますよ! あれなら流石の甲冑も……」
「手を動かす。あと、あの程度の熱じゃあ融解は無理だよ。それができるなら此処の
ナツカをその場に降ろして、俺は騎士甲冑がいた方へと向き直る。
やはりというべきか、騎士甲冑は剣を振るうまでもなく両腕を振り乱すことで、あっけなくキャンプファイヤーの牢獄を破壊し脱出した。お陰で騎士甲冑や剣の表面には液体燃料だけでなく着火剤も塗りたくられて継続的に火だるまになっているが、やはり意に介した様子も見せない。
まぁ、それは分かっていた。何も俺は騎士甲冑の中身を蒸し焼きにしたくて色々やっているわけではない。
「ど、どうしますよ? 爆弾ならもうできましたよ。これ使いますか!?」
「いや……まだ温存だ。多分この戦闘は他の騎士甲冑にも見られてる。手札はなるべく伏せておきたい」
そう言って、俺は慎重にタイミングを見計らう。
燃焼によるダメージははなから狙っていない。俺が狙っているのは、別のところにある。
「さて、応用編といくか。今回の探索じゃあ、俺はろうそくをメインに使っていたな」
じりじりと威圧するように接近してくる──あるいはそこまでスピードが出せない騎士甲冑を前にしながら、俺はナツカに言う。
最初はただの燭台つき。さっきは教会にあるような豪華な燭台を。状況に応じて使い分けていた。
「ふむ? そういえばそうですよ。ろうそくはガーデントーチとかと違って派手に燃えないですけど」
「まぁな。だが役割はガーデントーチと同じだ。火を灯すってところもそうだし、
俺がクロのときに好んで使うステンレス製のガーデントーチにおいて、トーチ部分は持ち手にあたる。つまり、ろうそくで言えば燭台だ。
『
「
──つまり。
「たとえば、こんな風にもできるわけだ」
『
発現するのは、真っ白な燭台。
日本は岐阜市。縁結びの行事としても知られる『三寺参り』で使われる
高さ二メートル、直径一メートルという巨大なそれが──先ほど後退しながら俺が撫でた地点を通過した騎士甲冑の背後から、突き刺さる様に地面から発現する。
後ろからの衝撃に、騎士甲冑は思い切り突き飛ばされて前に倒れ込み──その上に、衝突の衝撃で破壊された雪像ろうそくが雪崩れ込む。
一瞬にして、騎士甲冑の下半身が雪像に呑み込まれ──ジュウウウウ!!!! という蒸発音が響き渡った。
「おお!? これで押しつぶすんですよ!?」
「なわけないだろ。重量にしてもせいぜい一・五トン程度だ。ああやって突き飛ばすだけならともかく、それだけで破壊は無理だな」
そう。そもそも縛りをしている今の俺に、正攻法であの騎士甲冑を破壊することはできない。
「あ、分かりましたよ! 熱で膨張した金属を一気に冷やして、それで壊すんですよ! 物理学のプロであるナツカさんには分かりますよ……」
「鉄の性質は化学な。それに違うし……」
あの材質が鉄かどうかも分からんし、そもそも鉄は急激に熱して冷やした程度では壊れない。一〇〇〇度に熱した鉄球を氷の中にぶち込んでもヒビ割れたりしないのと同じように、ちょっと表面を火で炙ったあとに大量の雪で押しつぶしても、雪自体ではびくともしないだろう。
──そう、
「熱や衝撃ではどうにもできない。だが──大気圧なら話は別だ」
直後、倒れた騎士甲冑の上に、ダメ押しのように雪像ろうそくが複数本雪崩れ込んでいく。地面には、撫でるように触れているのだ。あのあたり一帯は前以て雪像ろうそくの筵にする予定でいた。
液体燃料や着火剤で継続的に内部を加熱しながら確認した通り、騎士甲冑の中身は空洞だ。だが、それは厳密には何もないということを意味しない。正確に言うと、
そして熱されている間、内部の空気は膨張して騎士甲冑の隙間から逃げて行ったはず。特に液体燃料は甲冑内部でも燃えていたから、甲冑内部の温度も相当なものになっていただろう。
しかし一方で──現在、騎士甲冑は全身が雪に埋もれている状態。半ば密閉された状態で冷却された甲冑内部は、急激な内圧の減少に襲われる。
小学校の頃の理科の授業とかで、熱したドラム缶の上に水をかける大気圧の実験映像を見たことがないだろうか。俺はある。ある意味衝撃的だったから、今でもよく覚えている。
何が衝撃的だったかって?
──凄い音を立てながらヘコむんだよ。かったいドラム缶が、一瞬で。
ベゴム!!!! と。
雪に埋もれたその先で、騎士甲冑が大気圧に負ける音が響いた。
雪像ろうそくを解除すると、そこには先程までの威容が見る影もなくベコベコにヘコんだ騎士甲冑の姿があった。
ようやく全部片付いたのを確認して、俺はろうそくを除くすべての『照明器具』を解除しておく。城の絨毯の延焼が広がったら厄介だしな。
「うお……あれだけベコベコにしてもまだ動くのか。本当に厄介だな」
騎士甲冑は、かなり派手に破壊してやってもまだ完全な行動不能ではないらしい。関節部分もヘコんだせいで最早身動きすら取れない状況だが、それでも芋虫みたいに蠢いていた。
…………これで大気圧にも負けない頑丈素材ですとか言われたらもうナツカの爆弾に頼るしかなかったが、なんとか俺の力だけで処理できた。いや、しんどいなこれ……。
「こりゃ、なるべく戦闘は避けながらやっていった方がいいな。いちいち戦ってたら身が持たないぞ」
「そうですね。君子危うきと戦わずといいますし」
「近寄らず、な」
もぞもぞしている騎士甲冑を避けつつ、城内を奥へと進んでいく。
縛りプレイとはいえ、ガーデントーチにキャンプファイヤーに雪像ろうそくまで使ってようやく行動不能にするだけである。分かっていたことだが、炎が通用しない相手だとこの縛りはマジでキツイなあ……。仕方ないので、格闘戦の方も頑張ってみるしかないか。あと分かりやすい弱点があれば楽になるから、それを探すのも並行して頑張ろう。
覚悟して、俺はナツカの方へと言っておく。
「ナツカ、警戒は怠るなよ。この先俺は、お前のフォローに気を回す余裕がなくなると思うから」
「心外ですよ! ナツカさんは攻城戦のプロです。むしろ、クロのことをフォローしてあげますよ。なんか大変そうですし」
いや攻城戦って城の中に入る前の戦いだし……。
大丈夫なのかね。……まぁ、信じるしかないのだが……。