最強ランクマ勢のTS娘、クラスのポンコツ美少女と一緒にチャンネルを始めたらバズりました。   作:家葉 テイク

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42:空から降り注ぐチェックメイト/お礼状とは果たし状

 『WF城塞』を出た俺達は、『大空洞』へと戻って来ていた。

 

 『WF城塞』へと続く『壁』があるのは、『大空洞』北西部。通称『荒野地帯』と呼ばれる、『壁』が疎らに点在するだけの過疎地域だ。

 

 

「やっぱり調査中だけあって人が少ないですよ」

 

「ああ、よかったな。騒ぎになったらヴィヴィアネさんに申し訳なかったし」

 

 

 『壁』の近くには、見える範囲に『大空洞線』の駅が存在している。

 『大空洞線』は交通を確保する関係上、高架の上に敷設されているのが基本のため、構造としては階段を上った先に駅本体がある感じだ。

 栄えている駅にはコンビニがあるし、もっと栄えていれば駅ビルがあったりするのだが、そうでない過疎迷宮近くの駅には何もないのもままある。この間行った『ハロルド森林』なんかはそのパターンだし、『WF城塞』もそうである。

 普通ならばそんな過疎駅には滅多に車両なんて来なさそうなものだが、そこは『大空洞線』、蜘蛛の巣(ターミナル)から『大空洞』のどこへでも三〇分で移動できるほどの速度を誇るこの移動手段ならば、『WF城塞』のような辺境でも数分に一本のペースで車両が到着する。

 

 

「まぁ、『蜘蛛の巣(ターミナル)』まで行けばどのみち騒ぎにはなるんだろうが……」

 

「それなんですけど、ナツクロイト鉱石で空を飛べばいいんじゃないですかね?」

 

「…………それはアリだな」

 

 

 階段を上り切ると、すぐそこに改札がある。端末ドローンを改札に当てると、ピッという音を立てて清算が完了した。

 改札の中に入ると、道が二手に分かれており、分岐路にあたるところにエキナカのコンビニがある。コンビニといっても完全自動精算になっており、店員さんはいないタイプだ。ちょっとお腹が減っているものの、常設拠点(ダンジョン=イン)に帰れば美味しいごはんが待っているため、今は我慢する。

 

 

「早速便利ですよ。ナツクロイト鉱石」

 

「ちなみに、その名前で確定なのか?」

 

 

 移動用ドローンもあるので、空中だからといってバレないとは限らないのだが、移動用ドローンの飛行高度とナツクロイト鉱石(仮)の飛行高度を比べれば、ナツクロイト鉱石(仮)の飛行高度の方が断然高い。何かしら移動用ドローンを借りてその上にナツクロイト鉱石(仮)を載せておけば、さらに高高度での飛行もできるだろう。

 ナツカには無理だと思うが、俺ならばできる。

 

 

「もちろんですよ! 権利関係は全部放棄してもいいですけど、ねーみんぐらいつだけはナツカさんのものです! 絶対に譲りませんよ!」

 

「いや別にいいんだけど、自分の名前が入ってるって恥ずかしいからさ……」

 

「恥ず……? ごめんなさい、ちょっと分かりませんよ」

 

「恥知らずがよ……」

 

 

 厚顔無恥って意味じゃなくて本当に恥ずかしいという感情を知らないヤツがあるかよ。

 と、そこで俺はあることを思い出す。

 

 

「あ、そうだ。今のうちにKaleidoさんに連絡しとかないと。心春さんとも繋いでもらわないといけないし」

 

「ですねぇ。コハ姉この時間ならまだ仕事してそうですし」

 

「本当にお疲れ様だな……」

 

 

 もうちょっとで八時だぞ。毎日どれくらい残業してるんだろう。迷宮省、ブラック……。

 高校生なので、実際に残業時間はどれくらいが適正なのかとか、そもそも残業ってあるのが普通なの? とか、その辺何も分からないのだが。

 さておき俺は、端末ドローンを操作してKaleidoさんに通話をかけていく。一コールしてすぐ、通話は繋がった。

 

 

『はーいもしもし。こちらKaleidoの端末です』

 

「あ、もしもし。Kaleidoさんですか? クロです」

 

『! クロさん、待ってましたよ! ンッフフ、相も変わらず台風の目ですねェ』

 

 

 Kaleidoさんは楽しそうに笑い、

 

 

『それで、どういったご用件でしょう? インタビューの件、調整つくようになりましたかねェ?』

 

「それなんですけど、この後すぐにお話したくて……。多分三〇分で『蜘蛛の巣(ターミナル)』に着くと思うんで、中心街の六角堂の前で集合できますか?」

 

『………………ふむ?』

 

 

 電話口のKaleidoさんのトーンが、一瞬にして変わったのが分かった。

 俺は気を引き締め直して、

 

 

「詳しいことは、会ってから話したいです。取材のことは問題ないです」

 

『……分かりました。そちらは今どちらにいらっしゃいますかねェ?』

 

「『WF城塞』の前です。今駅にいて……」

 

『あぁ、承知しました。であれば、そこに居てください。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 …………飛んだ方が早いと仰った?

 いや、いくら距離的な話があるとはいえ、『大空洞』を三〇分で半分移動できる速度だぞ? 音速出せますとかじゃないと話にならない気がするのだが……。

 ……出せるのかぁ、音速。出せそうだなぁ。この間ミカルダ生命街で見かけた時は、そのくらい速そうだったもんなぁ。

 

 

「了解っす。待ってます」

 

『では、失礼しますねェ』

 

 

 そのやりとりを最後に、Kaleidoさんとの通話は切れた。

 端末ドローンの通話モードを閉じた俺は、横で会話の成り行きを見守っていたナツカと目を見合わせる。

 

 

「ナツカって、音速出せるか?」

 

「ナメないでください。ナツカさんは音速飛行のプロでもあります。爆風で吹っ飛べば音速くらい一発ですよ」

 

「でもそれ乙るじゃん」

 

 

 どうやってんだろうね、マジで。

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 Kaleidoさんの到着は、そんな会話の五分後だった。

 車両の到着とほぼ同時である。マジで早かった。

 改札から出て待機していた俺達は、空中から降り立ったKaleidoさんを出迎える。

 

 

「Kaleidoさん! わざわざありがとうございます!」

 

「ご無沙汰ですよ」

 

「えェ、直接会うのはご無沙汰ですねェ。お久しぶりです」

 

 

 そんなことを言うKaleidoさんの出で立ちは、相変わらず、極限まで活動的にしたレディススーツを身に纏った黒髪のビジネスウーマン然とした出で立ちである。

 風で乱れた髪を軽く整え、Kaleidoさんは軽くお辞儀をする。

 

 

「今回はインタビューの承諾ありがとうございました。──して、お話というのは何なんですかねェ?」

 

 

 好奇心が隠しきれないとばかりのKaleidoさん。

 そこなんだけど、心春さんにも話を通しておかないといけないんだよな。

 

 

「今回の新物質の権利についてでして。ちょっと迷宮省の力を借りないといけないんで……嘱託で心春さんと連絡の取れるKaleidoさんにと」

 

「………………浜辺さんとの繋がりはさておき、私が迷宮省の特別嘱託探索者ということはご存知なんですねェ?」

 

 

 ……あっ! しまった。そうだった、この事実は(クロ)は聞いてないんだった……!

 ええい、こうなればシラを切り通すほかない。

 

 

「はい。ご存知かもですけど、ナツカは心春さんの妹なんですよ。その繋がりでデビューで雑誌に載る件で相談してて、知りました」

 

「あぁ、やはりそこで繋がりが。確信はなかったですが、そうじゃないかとは思っていたんですよねェ」

 

 

 分かるもんなのか。

 ナツカと心春さんって全然顏似てないけど……。

 

 

「ンフフ、()()()()()分かりやすいですからねェ。そうなのではないかと薄々思っていたんですよ」

 

「あー……」

 

 

 心春さん、腹芸とかはあまり得意じゃないタイプだもんね。仕事はできそうだけど。

 何となく納得しつつ、俺は慎重に言葉を選ぶ。既に一回口が滑っているので、本当におっかなびっくりだ。

 

 

「それで、ちょっとこれから話す内容には迷宮省の力を借りる必要があって……。なので心春さんを呼んでもらえると嬉しいなって」

 

 

 もちろん、俺も心春さんの連絡先は知っているので、俺から呼んでもいいんだが……。

 ただ、それよりは『Kaleidoさんからの情報』って形で伝達してもらった方が、Kaleidoさんの功績って感じになるのでよかろう。特別嘱託探索者制度がどういう感じで回っているのかは知らないが、貢献度みたいなものはあるだろうし。

 色々と振り回してしまうせめてものお詫びという感じだ。

 

 

「迷宮省、ですか……。……ふむ! 分かりました。ではちょっと呼びますねェ」

 

 

 そう言って、Kaleidoさんは端末ドローンを操作して通話状態に入り──

 

 

「もしもし。はい、Kaleidoです」

 

『────』

 

「えェ、はい。ナツカさんとクロさんがこちらに」

 

『────?』

 

「場所ですか。『WF城塞』の前、」

 

「夏花!? 大丈夫か!?」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 ──『救世の零(ゼロ)』だ。

 同じ迷宮内であれば問答無用で瞬間移動できるあの探索技能(スキル)を使ってやってきたのだろう。五分で到着したKaleidoさんをしのぐ速さ。移動速度がインフレしているなぁ……。

 

 目の前に現れた心春さんは、Kaleidoさんと同じくビジネススーツだが、タイトスカートを履いているKaleidoさんとは違い、パンツスーツで何の探索者的改造もない普通の格好をしている。──以前見たのと同じ出で立ちだ。

 心春さんは現れて早々にナツカの方に詰め寄り、

 

 

「こんな時間まで何をしていたんだ! 心配しただろう! 配信もしていないし、SNSも動いていないし、部屋の方にもいないし、連絡しても出ないし……。『WF城塞』にいたのか? 配信企画か何かか? あんなことがあったのに悠長な……」

 

「あうあうあ……コハ姉、落ち着くといいですよ。ナツカさんもクロも無事ですよ」

 

「あーすみません、それは俺の方から説明させてください」

 

 

 めっちゃお姉さんしている心春さんに少し気まずくなりつつ、俺は右手を挙げながら申し出た。これ、多分俺から説明しないと余計ナツカが怒られるヤツだし。というか、俺も一緒に怒られる覚悟を決めねばなるまい。

 

 

「『WF城塞』には『御三家』のヴィヴィアネさんに連れてもらってたんですよ。人でもみくちゃになる前に、緊急避難ってことで」

 

 

 そう言うと、心春さんの表情が分かりやすく強張った。Kaleidoさんはそっと顔を背けて笑いをこらえているらしい。

 まぁ、今回の依頼のターゲットだしな。それはさておき、話を続ける。

 

 

「ヴィヴィアネさんとは、午前中に知り合ったんです。偶然……ではなく、多分向こうの方から意図をもって接触してきたんでしょうね」

 

「……そうだろうね。そうなる可能性もあるとは思っていたが」

 

「その後、TAL空域での新発見があって、『大空洞』に戻った時に数人の探索者がやってきて、このままだと面倒なことになりそうだって時にヴィヴィアネさんが割って入ってくれたんです」

 

 

 そう言うと、心春さんは何か微妙そうな表情を浮かべた。……なんで?

 

 

「……いや、いい。続けてくれ」

 

「はい。それで、一旦緊急避難として『WF城塞』に案内してくれて。その上で、新物質の権利関係の調整を全部引き受けてもいいって提案してくれたんです。調整が終わるまでは、『WF城塞』に引きこもる感じで」

 

「………………なるほどな……」

 

「なんで、連絡しなかったわけじゃないというか……。そもそもKaleidoさん含め外部と連絡とるのもヴィヴィアネさんから釘刺されてましたし。怒らないでやってください」

 

「いや、別に怒っていたわけではないというか……。……ただちょっと心配でね……。びっくりさせて悪かったよ」

 

 

 俺が取りなそうとすると、心春さんは気まずそうに視線を逸らした。

 とりあえず、心春さんのお叱りは免れた感じらしい。ナツカ、俺に感謝しとけよ。

 そう思って視線をナツカに向けてみると、ナツカは俺のことを拝んでいた。それでよい。

 

 

「だが、そうなると、現在のきみ達はヴィー……ヴィヴィアネくんの思惑からは離れているらしい。Kaleidoくんとも連絡を取っているようだしな。……何があった?」

 

「ああ、はい。それについてなんですけど……」

 

 

 そこで、俺は考えていた『策』について話し始める。

 つまり、新物質に関する権利の放棄と、迷宮省主導のマイニングイベントの企画だ。

 

 しばらくは、つらつらと説明を続けていたが────

 

 

「…………それはまた」

 

 

 真っ先に声を上げたのは、Kaleidoさんだった。

 一応、ヴィヴィアネさんは納得させることができた作戦だったが……他の大人の視点から見たらどうなるかについては、正直自信がない。俺なんて所詮は子どもだしな。下手の考え休むに似たりと言うが、大人から見たら俺の作戦が穴だらけという可能性は全然ある。

 

 

「いや、面白いんじゃないか?」

 

 

 ただ、心春さんの反応は意外にもあっさりしたものだった。

 

 

「権利の放棄については、正直賛成だ。これは夏花の姉としてだけではなく、新人ダイバーをサポートする大人としてもな」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。新物質の権利については異界迷宮(ダンジョン)の風土上、()()()()()()()()()守られるだろう。そうやって独立性を守って来たという歴史があるからな。ただ、新物質の権利によって得た財産については異界迷宮(ダンジョン)自治の範疇外だ」

 

 

 心春さんは不服そうに腕を組みつつ、

 

 

「要は、悪い大人が集まる可能性が高いということだ。悲しいことにね」

 

「ああ、それは……」

 

「本来そうした発見をするようなダイバーは、事務所や会社に所属することでそういうリスクを減らしているのだが……きみ達の場合は完全個人運営で大発見だからね……。いや本当に、凄まじいよ。()()()()()()デメリットが発生するほどだ」

 

 

 それは本当に……。

 

 

「その点、権利を放棄すればそういう悪い虫がつく余地はなくなる。一銭も利益が入って来ないわけだしな。むしろ他の探索者に利益が発生するわけだから、カネ目当ての探索者はきみ達にはついてこないだろう。妙案だと褒めてあげたいよ」

 

迷宮記者(わたし)としても、こうした面白いイベントに昇華して頂けるのは大変ありがたいですねェ。しかもその情報を私が一番にキャッチしたというのが本当に有難い! 拡散には協力させてもらいますねェ」

 

 

 よかった。二人とも結構いい感触のようだ。

 とすると、問題はイベントを迷宮省に主催してもらうところについてだが……。

 

 

「イベントについても、問題ないよ。私は忙しいので現場には出られないが、私が信頼できるヤツを担当につけよう。上手くやってくれるはずだ」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 おぉ、良い感じにまとまってくれた。

 となると、後はいつ頃準備ができるかってところだが……。

 

 

「……ちなみに、準備にはどのくらいかかりそうですかね……」

 

「ん? そうだな……明日の夕方まで待ってもらえるかな」

 

「明日の夕方ぁ!?」

 

 

 そんな早くていいんですか!? 普通に二日か三日……いやそれでもかなり急ピッチかなって思ってたんだけど、まる二四時間かからないのは嘘じゃない!?

 

 

「ああ。きみ達も迷宮週間の企画がいつまでも止まるのは本意じゃないだろう。それにこのくらいの企画なら、フォーマットがあるから割合簡単に調整できるんだよ。この手のイベントはとにかく素早く企画するのが大事だからね」

 

「す、すご……」

 

 

 いや本当に。

 ありがとうございます。頭が上がらないッス。

 迷宮省がブラックとか言ったけど、実際にその仕事っぷりに救われると、何も言えなくなってしまう……。人間は、弱い……。

 

 

「ありがとうございます……。結局、依頼の方も振り出しに戻っちゃったのに」

 

 

 そう。ヴィヴィアネさんの捕獲(ハント)については、振り出しに戻ってしまったのだ。

 何せ、ヴィヴィアネさんに契約委託をする話が白紙になってしまったからな。

 今までは契約委託の話があったからヴィヴィアネさんと行動を共にしていたが、それがなくなったということは、ヴィヴィアネさんは俺達と行動を共にしなくてもよくなったということ。つまり『WF城塞』に留まらなくてもよくなったということなので、また一から居場所を突き止めたりする作業が始まるのだ。

 流石に、今日のような幸運がまた起きるとも思えない。かなり大変な作業になるが……と思っていると、心春さんは不思議そうな顔をして、

 

 

「何を言っているんだい? 依頼ならもうこなしてくれただろう」

 

 

 と、そんなことを言ったのだった。

 

 

「…………いや、まだこなしてないですけど? 依頼はヴィヴィアネさんの捕獲(ハント)ですよね? 全然終わってないというか……」

 

「ああ、確かに厳密には終わっていないが……ヴィヴィアネくんはまだあそこの『壁』からは出ていないんだろう?」

 

 

 …………あ。

 あぁ!! そうか、心春さんが何を言いたいのか分かった!!

 

 

「つまり、ヴィヴィアネくんはまだ『WF城塞』にいる。今から私が『WF城塞』の中に入れば、ほぼ確実に捕らえられる。つまり、居場所を突き止めて入口を塞いだうえで私を此処に連れてきた時点で、きみ達は依頼を完了したも同然なんだよ」

 

 

 そうかぁ~~……。

 

 

「そもそも、クロくんはヴィヴィアネくんが完全なる善意で契約委託を申し出てくれたと思っているようだが……それは違う」

 

 

 …………え?

 

 

「ヴィヴィアネくんは、きみ達が自分の動向を追っていることを認識していたのだろう。そのくらいは、クロくんも察しているはずだね?」

 

「はい、まぁ。お昼にメシを奢ってもらったとき、途中から明らかに感じが変わったんで……」

 

「え? そんなことありましたっけ?」

 

 

 お前にはそういうのの判断は期待してないよ。……何で陰キャコミュ障の俺がこういう腹の探り合いなんてやってんだろうね。

 

 

「そんな時に、()()()()()()きみ達が新物質を発見した。契約委託は、親切心もあったはあっただろうが……それと同時に、きみ達を外部から隔離する思惑もあったと思われる」

 

「…………あ」

 

 

 ……言われてみれば、ヴィヴィアネさんは俺達に外部との連絡を絶つように指示していた。あれってKaleidoさんほかのメディアとの連絡を牽制していたんだと思ってたけど、ストレートに考えれば、(クロ)からキララへの連絡を止めてたってことだろう。

 そして、俺達からの情報が遮断されて契約にかかりきりになれば、その間、ヴィヴィアネさん捜索の手は(俺達が刺客だと思っていないヴィヴィアネさん視点では)止まることになる。

 捕獲任務の阻止という点では、俺達を外界から隔離するという展開はヴィヴィアネさんにも十分利益のある流れだったんだ!

 

 

「全然気付かなかったっす……」

 

「その辺りは、経験だね。それに気付けたとしても、クロくんは対抗できたかな?」

 

「いやぁー……」

 

 

 多分、無理だと思う。だって捕獲任務のことを込みで考えても、俺達に利益がありすぎる話だし。

 

 

「そこが彼女の凄いというか偉いところでね。自分だけでなく相手にもメリットを提示することで、策がバレても逆らえないように流れを作るんだよ。……もっとも、きみ達が従来のメリットを粉砕してしまったことで彼女の策もご破算になってしまったようだが」

 

 

 …………あ、じゃあもしかして、あの時点でヴィヴィアネさんがめちゃくちゃ複雑そうな顔をしながら送り出したのもそういうことなのか?

 ナツカが心春さんの妹って話をした瞬間にああなったのは、心春さんの性格を考えたら、連絡したらすぐに飛んでくることが分かっていたから。つまり、『大空洞』に戻ってすぐ心春さんに連絡を入れれば、ヴィヴィアネさんは逃げる間もなく心春さんに待ち伏せされることになる。

 『四界断つ次元の刃(エクスカリバー)』による移動は確かに神出鬼没だが、それは出て来た先から見た印象。逃亡手段としては『救世の壱(ファースト)』の追跡能力に明らかに劣るだろうから、確かに逃げ切るのは難しいだろう。

 

 ……だが、そうなると。

 

 

「それならどうして、ヴィヴィアネさんは俺達が契約を放棄するのを……もっと言うと心春さんと合流するのを許したんですかね。いや、そうでなくとも、一緒に『WF城塞』を出て行って解散って感じにすれば無理なくここを離れることもできたのに」

 

「ン~、多分、ナツカさんが浜辺さんの妹さんだと分かったからじゃないですか?」

 

 

 そこで、Kaleidoさんが俺の疑問に答えを出してくれた。

 ナツカが心春さんの妹だと分かったから……?

 

 

「あの人、浜辺さん大好き妖怪ですからねェ。それも、()()()()()()()()。浜辺さんの妹さんに気付けなかった自己嫌悪とか、()()()()()()妹さんに華を持たせたいとか、その辺なんじゃないですかねェ? どうせ」

 

「全然良く分からないですけど……」

 

 

 『もっとも、私は言われる前に分かりましたがねェ!』と楽しそうに笑うKaleidoさん。妙なテンションだが……つまり、親戚の姪っ子にお手柄をあげたいみたいな感覚になったってことなのかな?

 俺も正月に甥っ子にわざとゲームで負けてやったりするので、気持ちは分からないでもない。

 

 …………つまり、身内特権の温情というわけか。

 

 

()()()()()?」

 

 

 心春さんは、俺の心情を読み取ったかのように、悪戯っぽい笑みを浮かべて問いかけて来る。

 俺に──いや、俺達に。

 

 

「……そりゃあもちろん、」

 

「そんなのナツカさん達の力ではないですよ! そんな決着は断固認めないです!」

 

「……って訳です」

 

 

 ナツカに台詞を取られつつ、俺はそうまとめた。

 

 確かに、依頼という意味では達成かもしれない。

 でも、だ。

 此処に至るまで、ヴィヴィアネさんと腹の探り合いをしたり、約束を取り付けたり、色々と頑張ったのだ。そして多分、ヴィヴィアネさんも本気で俺達に向き合って、策を張り巡らせてくれたと思う。

 それをこんな『不運』で決着させてしまうのは、なんとも不完全燃焼な結果だ。

 っつーか、こちとらヴィヴィアネさんを負かす為の作戦を絶賛考案中だったのである。それをやらずして終われるかという思いもある。

 

 

「……まぁでも、心春さんもお忙しいでしょうし、心春さんがいいならですけど……」

 

 

 一通り吐き出してからちょっと心配になって付け加えると、心春さんは笑いながら、

 

 

「あっはっは。心配しないでくれ。別に問題ないよ。現時点で私は確信している。──きみ達ならば、こんなアクシデントに頼らずとも正攻法でヴィヴィアネくんを捕獲(ハント)してくれるとね」

 

 

 そう言って、太鼓判を押してくれた。

 …………そこまで言われてしまっては、やってやるしかないだろう。

 

 

「ヴィヴィアネくんにはその旨連絡しておこう。──そうだ、おそらくこの先はきみ達からの連絡は通じなくなるだろう。今のうちに伝えておきたいことはあるかね?」

 

 

 心春さんに言われて、俺はナツカと互いに顔を見合わせる。

 伝えておきたいこと、か……。

 

 ………………。

 

 

「じゃあ、こう伝えておいてもらえますか?」

 

 

 俺の答えは、シンプルだった。

 

 

「『色々ありがとうございました。そのうちお礼に伺うので、待っていてください』」




 第四章完的な。いつも高評価・お気に入り・感想ありがとうございます!毎回励みになっています。

 ちなみに迷宮省の勤務事情ですが、心春さんがワーカホリック気味なだけで、意外にもホワイトです。
 月の残業も基本的には四五時間未満。週休二日制も基本的には守られます。……基本的には(作中時期はGWであり、つまり休日ど真ん中です)。
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