最強ランクマ勢のTS娘、クラスのポンコツ美少女と一緒にチャンネルを始めたらバズりました。 作:家葉 テイク
CNEが剣を構えると同時、俺は体の陰に隠した掌から小石程度のサイズのバイオコークスを六個発現する。形状は半球。二つ重ね合わせた時にちょうど球体になるような具合だ。
俺はそれをナツカに押し付けて、
「それ合成しといてくれ。爆風ゼロ、半径一メートルの火の玉が作れるくらいの威力で頼む。火種代わりだ」
「あいあいさーですよ」
下準備を進めつつ、俺は改めてCNEの動きを確認する。
通常のナイトレスより一回り以上も大きいCNEは、ナイトレス同様鈍重な動きをしている。実際、攻略情報としても動きはそこまで速くないと書かれていた。
ただし──問題なのはその手に持った武器の方である。
巨大な大剣は、CNEの意思によって自在に別の武器に変形させることができる。あくまでも『別の武器への変形』であり、『自在に変形しながらの攻撃』ではない(ここ重要)のだが、別の武器への変形は高速かつ強力に行われるので、
「そういえば、
身体をほぐすようにして二、三回ほどその場で跳ねる。
王座の間の入口には、風上ドローンを待機させて、風によって後続を遮っている。
そのお陰で、後ろからナイトレスの救援が来ることはない。攻略情報によると、WF城塞の一番面倒なところは
ただ、あんまり時間をかけすぎるとヴィヴィアネさんが来ちゃいそうだしな。
リズムを整えた俺は、そのままCNE目掛けて思い切り突撃した。これは、向こうがどれくらい俺の情報を持っているかの確認の意味も兼ねている。前回の探索では、向こうは俺の情報を得て行動していた節があるからな。今回はなるべく手の内を見せずに進んだが……。
果たしてCNEは、自らの懐に潜り込む勢いの俺を近づけたくはなさそうだった。大剣をさすまたに変形させると、突き刺すようにしてこちらの方を牽制してくる。
俺は飛び退いて斬り払いを回避し、右手で地面を掴むようにして停止する。
中距離維持か。武装メインタイプにありがちな動きだ。
「とはいえ受け身の姿勢じゃ、攻められる一方だが」
『
今回発現するのは──
「うわっでっかいですよ!?」
「『日本三大火祭り』って知ってるか? 須賀川の『松明あかし』じゃ、長さ一〇メートル、重さ三トンの『松明』を三〇本も燃やすんだとよ。流石に三〇本は無理だがな……」
高速で発現した『巨大松明』が、CNEに激突する。
当然、『巨大松明』との衝突によってCNEが致命的に破壊されるとか、そういうことはない。精々、あったとしても衝突部分がヘコむとかそのくらいだ。所詮は木材だしな。
だが──今言ったように、長さ一〇メートル、重さ三トンという超重量物が、高速で激突したという事実に変わりはない。
「おお、蘊蓄が直撃ですよ」
「直撃したのは松明な!」
ギギィ──と。
胸辺りに『巨大松明』の一撃を食らったCNEが、大きくのけぞる。一歩、二歩とたたらを踏むのを見届ける間もなく、俺はここぞとばかりにCNEへと突撃した。
とはいえ、この程度のノックバックでは倒れ込むには至らないだろう。武器を支えにして、転倒は回避する。そしてCNEは接近してくる俺への対処を最優先として、腕か足での振り払いで迎撃してくるはずだ。
ただし、それはつまり、自分の胸元に衝突している『巨大松明』を放置するということでもある。自分の胸元に半ば突き立っている(貫通とかはしていないが)ものを放置するのだ。当然、そこには死角が生まれる。
案の定、間一髪のところで武器を支えにしたCNEは、こちらの方を見るよりも先に、やたらめったらに腕を振り払った。
その間に、俺は『巨大松明』によって生まれた死角へと潜り込み──そして、武器に寄り掛かった形のCNEの身体の真下へ到達する。
さて、こうなれば──。
「『
俺は、屈み込んで地面に触れながら能力を発動する。
発現するのは──『聖火台』。
一九六四年の東京オリンピックで使用された聖火台である。二〇二〇年のやつの記憶も新しいところではあるが、こっちの『聖火台』は長さ二・一メートル、直径二・一メートルとそこそこ巨大である。体重を武器に預けているCNEを下から突き上げることができるくらいには。
ゴゴォン……! と、硬質な重低音と共に、CNEが突き上げられる。
剣に体重をかけていたところに、真下から伸びた『聖火台』でさらにバランスを崩されたCNEは、思わず回避しようとして身を翻し──そして当然の帰結として、そのまま転げ落ちて転倒した。
派手な音を立ててCNEが転がり──そして、
──CNEの攻略情報を確認していて、分かったことが一つある。
CNEの『あらゆる武器に武装を変形させられる能力』は、実際には大したことはない。火薬のような外部動力を要するものには変形することができないからだ。
変形させることができて、精々ナイトレス同様のボウガン程度。射出動作さえ目視できるならば、威力的にもそれ自体はそこまで脅威ではない。
では何が脅威かといえば──あらゆる武器に武装を変形させる、そのパワーとスピードである。
たとえば、盾から槍に変化させた場合。盾から槍に変わるのだから、必然的に猛烈なスピードで槍は前方に伸びていく。このとき変形地点に何かがあった場合、CNEの武装はそれを貫く形で変形を成立させる。
たとえばボウガンとして何回か矢を射出した後で、剣か何かに変形させた場合。射出したボウガンの矢は、変形するのと同等のパワーとスピードでCNEの手元に戻り、一つになってから別の武装へ変形する。
つまり、射出したあとは変形に伴う背後からの攻撃も警戒する必要があるということなのだ。攻略情報にはそこまで書いていなかったが、当然、そういう応用はあり得ると思った方がいい。
そして、ナツカの面倒も見つつそれを考慮するのは、けっこうめんどくさい。
そこで、俺は考えた。
なら、CNEの武装を手放させてしまえばいいんじゃないか、と。
攻略情報によると、CNEの腕を切断すると、武装の変形は止まるらしい。つまり、CNEは手で武装を掴んでいないと武器変形の能力を使うことができない。まぁ、その手の能力にはありがちな特徴だ。『鍛錬』系とかでも拳で触れることで発動するタイプの
流石に俺達の攻撃力では腕を切断するのは手間がかかるが、剣を手放させることくらいならば御覧の通り、である。あとは──
「当然、拾わせるような隙も…………与えん!!」
俺は地面に手を当てて、そこから『巨大松明』を生やして突き立てられたさすまたにぶつけてやる。
突き立っているとはいえ、そこまで深々と刺さっているわけじゃない。重さ三トンの重量物の高速衝突を食らったさすまたは、その勢いで数メートルも吹っ飛ばされ、ガランガランという重低音を響かせていた。
さて…………これで敵の武装は完全解除だ。ナツカを暴れさせる準備が整った。
「ナツカ! 五秒待ってから聖火台に『爆弾』を投げ入れろ! いいか! 五秒待てよ! 絶対だからな!!」
「流石にフリですよ?」
「フリじゃねぇ!!」
叫んでツッコミを入れつつ、俺は走ってナツカの近くまで合流する。
探索者の敏捷性のお陰で、ナツカが二秒をカウントする頃には俺は余裕を持って聖火台から距離を取ることに成功していた。
「余裕で合流してますよ。もっと早くてもよかったのでは?」
「……聖火台っつっても、魔法の力で炎が維持されるわけじゃない」
呆れたように声をかけるナツカを無視して、俺は呟くように言う。
五秒は俺が逃げる為のカウントじゃあない。
「開会期間中炎を維持し続ける必要がある聖火台には、実は燃料も備えられてるんだ。脱炭素社会が騒がれてた二〇二〇年のオリンピックじゃあ聖火台の燃料は『水素』だったが、昭和も昭和、ド昭和の一九六四年大会聖火台の燃料は──」
CNEの出す金属音のせいで、分かりづらいだろうか。
先程からずっと、聖火台からシューシューという
五秒のカウントは、
「──ご存知『プロパンガス』だ!! ナツカ、五秒!!」
CNEとの激突の衝撃で、ガス噴出口が破壊されて広がった『聖火台』。
これにナツカの『爆弾』を投げ入れて起爆すれば、漏れだしたプロパンガスは一気に引火し、CNEの周辺を巻き込んだガス爆発を引き起こすことができるというわけだ。
「ガス爆発! 何を隠そうナツカさんの好きな爆発ですよ!」
ナツカは変なことを言いながら、火種用の『爆弾』を聖火台の方へと投擲した。ふんわりとした軌道を描きつつ、『爆弾』は聖火台から数メートル外れた方へと飛んでいく。……流石に、ナツカのコントロール力で聖火台にヒットさせるのは高望みが過ぎたな。
あと、それは適当に言ってるんじゃないとしたら身近すぎてちょっと嫌だからやめようね。
「あっ……。ちょっと逸れましたよ」
「なぁに、問題ない。その為の爆発半径だし、その為の五秒だ」
もちろん、ナツカがノーコンかますのもある程度は想定済みである。『爆弾』がほどよい距離に到達したのを見計らい、俺は目の前の地面を撫でて、
「起爆!!」
「ボム! ですよ!」
──直後。
眼前に