最強ランクマ勢のTS娘、クラスのポンコツ美少女と一緒にチャンネルを始めたらバズりました。 作:家葉 テイク
俺達が吹き飛ばされたり焼かれたりせずに済んだのは、爆発の瞬間に目の前にバイオコークスの壁を生やしたからである。
俺の
この性質を利用して、爆発の瞬間にバイオコークスの壁を発現することで疑似的な盾にしたのである。
用を成したバイオコークスの壁を解除した俺は、改めて爆発の影響を確認する。
まずはほぼ爆心地近くにいたCNEだが──爆発の前にいた位置から数メートルほど離れたところで転がっているものの、意外とダメージは少なかった。所詮はプロパンガスの爆発だし、威力も高が知れてはいるが……それ以上に、防御がしっかりとしていたらしいな。四肢のひしゃげ具合と比べて胴体と頭部がほぼ無傷なのは、おそらく身体を丸めて身を守っていたからだろう。
だがこれは、ヤツが頭部と胴体を守る=そこに急所があるという判断材料になるので、悪いばかりではない。
次に周辺の破壊だが、やはりCNE同様にそこまで壊滅的な被害ではない。
王座の間は紆余曲折の末に
ただ、爆発範囲の照明──豪奢なシャンデリアについては、さすがにバラバラに吹き飛んでいた。『巨大松明』も黒焦げで燃えてるし、聖火台も分かりやすく火を噴いている。
「ふむ、良い感じに派手だな。プライベートだから動画投稿もできないのが残念だ」
頷きながら、俺は聖火台と巨大松明も解除する。
『
たとえば『燃料物質』の任意デザインにしても鋭い形状や複雑な機構は作れないよう『制限』をつけたし、『燃料物質』の最大発現数や解除条件もけっこう『制限』をつけた。
具体的には、『燃料物質』の発現数は最大で一五個。任意解除は通常はできず、一度でも『着火』しないと解除できないとしている。これは、起爆しないと『爆弾』を解除できない『
総じて結構厄介な『制限』だが、こういう風にして工夫すれば、爆炎を浴びさせることを以て『着火』判定させて解除条件を満たすことでうまく処理することはできる。
こういうテクい動きは配信映えするので意外と気に入っている仕様だ。
ただ、発現最大数についてはナツカの『爆弾』の用意をするとだいぶカツカツになるので、素材は自分で集めてほしい。三個『爆弾』作るだけで残り発現数が九個になっちゃうんだよ。マジでヤバイだろ。
「……頭だな。爆発から頭を庇ったってことは、あれを吹っ飛ばせば倒せるだろ」
CNEに武装が残った状態だったら、向こうからの攻撃を警戒しないといけないので危険だったが……今のヤツは丸腰だ。武装を取り戻そうとするか、無手のままこっちに突っ込むか、どちらもアリではあるが、どちらにせよこっちからすればつけ入る隙でしかない。ここまで持って行くのが大変だった……。流石は高難易度迷宮である。
「でも、どうやって頭を吹っ飛ばすんですよ? CNEもそうですけど、ここの迷宮の敵は一度やられたことは覚えるんですよね。今度は多分爆発も警戒されますよ」
「だから今回はナイトレスとの戦闘は極力避けたわけだしな」
プロパンガスの爆発は学習されただろう。おそらく、今後ヤツは俺が発現した大型の『燃料物質』には近づかないし、ナツカが投擲したものからは積極的に距離を取りに行くはず。
だが、逃げるだけでは勝ち筋がない。
此処まで
「おお!? 向かってきましたよ!」
「だろうな」
無手のまま戦闘することを選んだか。
いや……どうかな。無手というのはコイツの姿かたちを見た俺の先入観にすぎない。コイツらは騎士甲冑だけで中身は空っぽなんだし、自分の体の一部を取り外して射程をごまかすくらいの小技は警戒しとくか。
「ナツカ! 距離とるぞ! 着かず離れずの位置で『爆弾』を合成してばら撒くんだ! それだけでCNEの動きは大分制限できる!」
「おお! 流石クロ、まきびし戦法とは陰キャの極みですよ」
「誉め言葉と受け取っておこう!!」
周辺には、先ほどのガス爆発の影響で破壊された照明類の破片が散らばっている。これを拾ってナツカに押し付け、ナツカがそれを『爆弾』にして転がすというサイクルを経ると、CNEの動きは面白いくらいに鈍った。
このまきびし戦法には、二つの意味がある。
一つは誘導。
『爆弾』をまく配置によって、CNEの動きは誘導できる。それを使って、俺はCNEを『とある位置』へと誘いこもうとしていた。
一つは時間稼ぎ。
CNEの動きを鈍らせているうちに、俺達もまた『とある位置』へ移動しようとしているのだった。
CNEを誘導したのは、王座の間の中央。
俺達が辿り着いたのは、『王座の間』の奥──即ち王座。
そして王座は、『王座の間』の入口からちょうど一直線に進んだ先にある。
「さぁナツカ。この位置が何を意味するか分かるか?」
「王座の座り心地はなかなかですよ」
「座って一息ついてんじゃねぇ」
俺は飛び上がって巨大な王座に飛び乗り、簒奪王の頭をべしっと叩く。油断も隙もねぇなこいつ。
……ナツカに一発で正答を引き当てられるとも思っていないが、にしたって少しはまともに考えてくれてもよくない?
内心でぼやきつつ、俺は本日何度目か分からないバイオコークスの半球の発現を実施する。サイズはバレーボール程度で、数は二つ。これで決めるので予備は不要だ。
「ナツカ、これで『爆弾』を作ってくれ。威力は最大でオーケー。爆破半径は自分のコントロール力への自信プラス二メートルで」
「なら半径二メートルですよ」
「……一〇メートルくらいいっとくか?」
「心外ですよ!!」
ぎゃあぎゃあ喚くナツカを宥めつつ、俺はナツカにバイオコークスの半球×二を手渡す。
受け取ったナツカは、意外な重さに小さく声を上げて、
「わっ、思ってたより重いですよ」
「そりゃバイオコークスだからな」
バイオコークスは普通の石炭よりも重い。バレーボールサイズともなると……だいたい八キロくらいか。探索者の膂力なのでこの重量でも片手投げできるが、普通の人間なら持ち上げるのにも一苦労だろう。
ナツカに『爆弾』を作らせながら、俺はCNEの様子を伺う。
CNEも誘導されたことくらいは流石に把握しているだろう。そして明らかに切り札っぽい『爆弾』が用意されたことで、二の足を踏んだらしい。じりじりと距離をはかっている。…………いや違うな。あれ、多分腕を取り外して攻撃しようとしてるぞ。こっちの切り札は重いから咄嗟に投擲できないとみて、腕を振った勢いで篭手パーツを射出してこちらの隙を作ろうとしているのだろう。
まぁ、CNEが勝手にそう判断して迎え撃ってくれるようにわざわざ重い『爆弾』を用意したので、計算通りではあるんだが。
「ナツカ! とにかく思いっきり投げろ! そして投げたら一秒後に起爆!」
「ナツカさんにお任せあれですよ!」
ナツカが、バイオコークスの『爆弾』を片手で振りかぶるのに合わせて、CNEが右腕を振りかぶり────
その直後。ドヒュウ!! という風音と共に、その巨体が地面と平行に『浮かんだ』。
──王座の間の入口には、
だがこれは、風上ドローンの向きを反転させれば、王座の間に風上ドローンの風を吹かせることができるということでもある。当たった物質に対して問答無用で揚力を与える、異界の『風』を。
そして風上ドローンには、底質の光の具合を調整することで揚力を適宜変更する機能がある。これを使えば、真横から『風』を当てられたことで『真横への揚力』を与えられたCNEは、体勢を崩してこちらへのカウンターを放つことができず。
加えて、こちらの攻撃は完全に通る!!
「あまりにも初見殺しすぎるが…………ギミックを利用した初見殺しはそっちの十八番だ。悪く思うな」
かくして、CNEは最大威力の『爆弾』の起爆を至近距離で受けることとなり。
頭どころか、全身が無惨にも爆発四散したのであった。南無三。
──ちなみに、CNEを屠った音も光も吹き飛ばす大爆発だが、その爆破半径は四メートルとのことだった。
コントロール力への自信は、結局半径二メートルに落ち着いたらしい。それはそれで、まぁまぁな自信である。
「これで晴れて王座はナツカさんのものですよ」
「んで、お前のその野心はなんなの? 魔王なの?」
◆ ◆ ◆
「──さぁて」
それからしばらく後。
静寂を取り戻したWF城塞に、一人の女が足を運んでいた。
漆黒のナイトドレスに身を包んだ、ブロンドヘアーの淑女。
マグマの大海の中にぽつんと浮かぶ孤島全体が城塞となったかのような威容。星一つない夜空に支配された世界で、溶岩と篝火だけが照らす鈍色の石城は彼女のことを待ち受けるように聳え立っていた。
「…………クロちゃん達は、しっかり用意をしてきたみたいねぇ」
さっと視線を走らせる。
たったそれだけで、ヴィヴィアネは慣れ親しんだ迷宮の異常を察知した。
(微かだけど、機械の駆動音。ドローンでしょうねぇ。カメラ系? いや、クロちゃんなら撮影を交えたいなら事前に許可を取るわよねぇ……)
しっかりしすぎるほどにしっかりしている後輩の姿を思い浮かべ、ヴィヴィアネは苦笑する。
クロならば、事後承諾でもいいところをしっかり事前確認をとりそうなものだ。
(となれば、可能性としてはナツクロイト鉱石を利用した新兵器、ってところかしらぁ? ……数日前に
ドローンでナツクロイト鉱石を運用する。
安直な発想だが、どこでも好きな方向への揚力を付与できると考えれば、行動妨害としてかなり便利なアイテムである。何より、数を揃えれば『亀裂』を貫通して干渉してきそうなところが強い。
考えなしに『亀裂』を用いて移動しようとすれば、移動先から『風』を食らって吹っ飛ばされるリスクがある。
(つまり、此処を攻略し尽くしたわたしでさえ知らないギミックに溢れた城内を馬鹿正直に探索しないとダメ、って言いたいわけねぇ……。可愛らしいじゃなぁい)
歴戦の探索者は、機械の駆動音という一つの情報から、無数の考察を広げていく。
口元に軽い笑みを浮かべ、ヴィヴィアネは端末ドローンを操作して、この迷宮に到着したと連絡した後にナツカ達から届いたメッセージを改めて見直す。
そこには、巨大な王座の上にちょこんと(しかし精一杯ふんぞり返って)座るナツカと、その後ろに立つクロの写真が、短文の投稿と一緒に送られてきていた。
写真に添えられた投稿には、こんなことが書かれている。
曰く。
『魔王城へようこそ。王座の間にて待つ』
写真の中で不敵に微笑む魔王たちから視線を切り、ヴィヴィアネは──
「わたしは、あくまで勇者の仕事をお手伝いするのが性に合ってるんだけどねぇ。こんなにお膳立てされちゃ、しょうがないわぁ」
まるで、友達に会いに行くような気軽さで。
「それじゃ、
タイトル回収。
ざっくり能力解説:『
『照明』系。
掌もしくは触れた場所から『燃料物質』を発現する能力。
『燃料物質』とは、着火を想定し炎を数秒以上維持することが可能な物質あるいは器具をさす。(単なる爆薬や可燃ガスは対象外。花火やカセットコンロなど炎が持続するならば対象となる)
発現は高速かつ強力。掌大のものなら瞬時に、それ以上の大きさでも高速で伸びるように発現する。
自分を除く
『
即時発現は能力発動の瞬間に『燃料物質』を発現するが、時間差発現の場合、触れた場所から触れた瞬間から最大で一分まで時間差をつけて発現することが可能。
『燃料物質』のうち決まったデザインの存在しない素材を発現する場合、そのデザインは任意で設定が可能。ただし、鋭利な形状や複数部品を前提とした構造はデザイン不可。
不定形の『燃料物質』を発現する場合、掌に収まる量なら掌から発現することになるが、それ以上の場合は時間差発現にする必要がある。
発現した『燃料物質』は、ナツカの『
また、一度着火しない限り任意で解除することはできない。一度着火すれば、解除の際は部品単位で部分的に解除することもできる。
同時に発現可能な最大数は一五個。射程距離は一〇〇メートル。持続時間は五時間。発現上限を超えて『燃料物質』を発現しようとしても古いものは解除されず新規発現できないだけだが、射程距離及び持続時間を超えると『燃料物質』は解除される。
総評
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