最強ランクマ勢のTS娘、クラスのポンコツ美少女と一緒にチャンネルを始めたらバズりました。   作:家葉 テイク

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54:魔王城へようこそ ⑤/こっちの台詞

 拝啓、用意してた策を全部ぶっ飛ばされましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

 

 

「ヴィヴィアネさん、ひどいっすよ。せっかく頑張って仕込んだのに」

 

 

 ──『王座の間』。

 俺は何やら変な『ギミック』によっていきなりワープしてきたヴィヴィアネさんにぶーたれていた。

 ちなみに、ナツカは巨大な王座の上にちょこんと座って俺とヴィヴィアネさんを見下ろしている。良い御身分である。

 

 

「二〇〇機ですよ!? 二〇〇機! 師匠からもらったナツクロイト鉱石内蔵のドローン……あ、『風上ドローン』って言うんですけど。迷宮各所に配置して、しかもちゃんとそれを利用したギミックまで考えたのに、全部! 全部無視!!」

 

 

 ヴィヴィアネさんがなんか花を摘んだ時、正直俺は何やってんのこの人? って思ったんだよね。

 そしたら……、

 

 

『ん、これなんかやばいですよ。急にあのへんが全体的にやばく見えてきました』

 

『危険予知にしてももっと具体的にしてくれない? 花から極太ビームでも出んの?』

 

『そんなこと言われても……花がやばいのか、泉がやばいのか、花畑がやばいのか、ナツカさんにはもう良く分かりませんよ』

 

『発動条件が複雑なギミックなんかな? 花、泉、花畑……あ? 致命情報(クリティカル)?』

 

『あー…………、近道ですよ?』

 

『そ、…………それだァッッッ!!!!!!』

 

 

 その後は、もうてんやわんや。

 風上ドローンを総動員したのはいいが、色んな所に配置したせいで数を集めるのにも時間がかかり。

 仕方ないから近場に配置していた数機で時間稼ぎをしているうちに集めた風上ドローンで小屋を吹き飛ばしてヴィヴィアネさんを吹っ飛ばそうとしたのだが、それも失敗。あえなく突破されてしまったのだ。せっかく色々と準備してたのに……。

 いやまぁ、こんなことヴィヴィアネさんに文句言う筋合いないのは分かってるんだけどさ。しかし徒労に終わったやるせなさというのはあるのである。

 

 

「ごめんなさぁい。でもお礼の為に招いたのに邪魔ギミックを配置ってそれは主催側(ホスト)としてどうなのぉ?」

 

「ふふん。ベテランのヴィヴィアネさんにはもう未知の迷宮など殆どないでしょう。そこでナツカさん達が見知った迷宮をリノベーション。匠もびっくりの新たな楽しみ方をご提供(プレゼント)という算段ですよ。ワープで突破されましたけど」

 

「……………………それは本当にごめんねぇ?」

 

 

 実際のところ、別に憤慨したりはしてないんだがな。ある種の、プロレスというヤツである。

 そもそも、どっちが悪いというのなら、情報不足でそういうマジレス攻略を阻止できなかった出題側(おれたち)が悪いんだし。

 

 

「でも、迷宮デザインってほんと大変っすね。『迷図作題(メイズ)』系の人達の苦労が偲ばれる……」

 

「そりゃあ、それこそ迷宮の仕様を全部分かり切ってないと、こういうバグみたいな抜け穴で攻略されちゃうものねぇ。クロちゃんならちゃんと仕様を把握していればできそうだけどぉ」

 

 

 俺のボヤキに、ヴィヴィアネさんは苦笑しながら答えてくれる。

 ちなみに『迷図作題(メイズ)』というのは、既存の迷宮に手を加えて、違う遊び方ができるようにすることを目的として活動することやその人達の総称である。

 言葉の通り迷宮を『作題』するので、その技量はいかに『一見すると難攻不落だが、解き方が分かると一気に攻略できる』迷宮を作れるかで決まると言われている。

 まぁ、とにかく理不尽な仕掛けを後付けしたヤツとかもネタ的に好まれたりと、わりと色んな価値基準のあるスタイルでもあるが。

 

 

「……でも、ナツクロコンビなら『迷図作題(メイズ)』よりも『ステージョン』系の方が向いてるんじゃない?」

 

「…………否定できないっすね」

 

 

 まぁ、実際に魔王とか言ってたしね。

 ……魔王役として振舞うナツカ。ナツカはめっちゃ楽しみそうだが、めちゃくちゃシュールというか、アホっぽいというか……。

 

 

「すてーじょん? なんですかそれは?」

 

「知らんのか……いや、身近すぎて認識できないヤツか?」

 

 

 一瞬呆れたが、言われてみたら高校生で『ステージョン』というスタイルを認識している人間は少数派かもしれない。

 エンタメとしては身近すぎるが、空気みたいにあるのが当たり前すぎてあんまり意識することもないしな。

 

 

「『ステージョン』っていうのはねぇ、言うなれば、『劇場型探索』の提供よぉ。迷宮探索に設定とストーリーを与えて、役になりきって探索してもらおうってスタイルねぇ」

 

「迷宮内で撮影されるドラマとか映画とか、ああいうのは全部『ステージョン』の亜種だぞ。っていうか、異界迷宮(ダンジョン)ツアーでけっこう『ステージョンツアー』とか見ないか?」

 

「う~ん、迷ドラもツアーもあんまり興味を持ってこなかったですよ」

 

「モグリ・オブ・モグリ…………」

 

 

 流石はちょっと前までホームビデオ同然の動画を投稿してダイバーを名乗っていた女だ……。

 そういえば、コイツの部屋、迷宮関係のエンタメ用品全くなかったしなぁ。こういうのはいかんぞ。ダイバーとして身を立てる以上、エンタメのインプットは大事だ。相方として俺が色々と都合してやらねば。

 

 

異界迷宮(ダンジョン)は、あくまでも現象。分かりやすい黒幕や目に見える勢力の敵対は()()()()()()()()からねぇ。だからこそ、迷宮(ここ)は発展したんだけどぉ」

 

 

 確かに、もしも異界迷宮(ダンジョン)の奥の奥に本物の異世界があって、そこでは地球と異界迷宮(ダンジョン)を繋げた黒幕がいて……みたいな感じで、何かの作為や明確な敵が存在していたら、今みたいな状況はあり得なかっただろうなぁとは思う。

 『物語』がないからこそ、今日(こんにち)の発展がある。含蓄のある発言だ。流石はベテラン。

 

 

「でも、一方で、わたし達は知っている。異界迷宮(このせかい)が一つの『物語』…………『異界開闢(グランドローンチ)』から始まったことを。そして、その『物語』の中心で戦った『とある少年』を。…………だから、迷宮探索に『物語』を求める、いわば『勇者になりたい人』って結構多いのよぉ」

 

「そんなものなくてもナツカさんは常に勇者ですけど」

 

「お前のその異様な自己肯定感はどこから湧いてくるの?」

 

 

 お前はいいとこ道化師とか遊び人とかそういうのだよ。

 

 

「そうやって考えていくと、ほら、ナツカちゃん達『私達が魔王で~す』って感じでやってたでしょ? ああいうのをもっと推し進めると、『ステージョン』になるのよねぇ。二人とも意外と役に入り込みそうな感じだし、向いてると思うけどぉ」

 

「いや~、ナツカはもちろん俺も、あんまり演技は得意じゃないですけどね~……」

 

「ナツカさんはもちろんとはどういうことですよ? 怪演のプロをつかまえてふてぇ野郎ですよ」

 

 

 大根役者のプロが何か言っているが、それはさておき。

 

 

「それで……プレゼントは『迷図作題(メイズ)』だったのかしらぁ? だとしたらごめんなさいねぇ、ろくに潜らずにクリアしちゃってぇ……」

 

「ああいや。それはこう、俺達の成長を見せるみたいなサブ目的だったんで、本題のプレゼントはこっちです」

 

 

 そう言って、俺は黒色と空色が白金で金継ぎされたような不思議な色合いのペンダントを懐から取り出した。

 これは、『風上ドローン』の開発過程で作られたものだ。『ブラスミ』の人達から『余っちゃったからキララちゃんの友達とかに配ってあげてね』と言われて渡されたものだ。あと三個くらい余っている。

 なお、このペンダント、白金部分もまた異界物質だ。高い熱伝導率を持つ上に温度変化で透明に変色するので、ペンダントを強く指で擦ると白金部分が透明になり、底質から放たれた光を表面質が受けて『風』を発生させるという仕組みである。

 ……ナツクロイト鉱石、普通に石として綺麗なんだよな。なのでこういうペンダントとしても見栄えがいい。空色に輝く底質はもちろん、表面質も黒曜石みたいで磨くと綺麗だしな。素材の話題性も込みで、プレゼントとしては十分なんじゃないかと思う。

 

 

「わぁ……! すっごい綺麗ねぇ……! こんな凄いもの、いいのぉ?」

 

「もちろん! ヴィヴィアネさんには凄いお世話になりましたし」

 

「ぜひとも受け取ってほしいですよ。ナツカさん達の気持ちです」

 

「…………本当に嬉しい。ありがとうねぇ。大切にさせてもらうわぁ」

 

 

 そう言って、ヴィヴィアネさんは穏やかに微笑みながら、ペンダントを早速首につけてくれた。漆黒のナイトドレスに、黒と蒼のペンダントは良く映える。うん、よく似合ってるんじゃなかろうか。

 

 

「贈った側が言うのもなんですけど、めっちゃ似合ってますね」

 

「ふふ。そぉ? クロちゃんてば嬉しいこと言ってくれるわねぇ」

 

 

 ヴィヴィアネさんは上機嫌そうにくるりとその場で回り────、

 

 

「…………まぁ、だからといって手加減はしないけどねぇ」

 

 

 と、笑みを消え失せさせた。

 

 

「それでぇ? ()()()はどうするぅ? 特にないならわたしから提案するけどぉ」

 

「…………流石に話が早いですね」

 

 

 お礼の品を渡した以上、ヴィヴィアネさんとしては此処に留まる理由は何もない。

 速攻で撤退される可能性ももちろん考えていたわけだが、ヴィヴィアネさんはその作戦を選択しなかったようだ。強者としての余裕か、ベテランとしての矜持か。どちらかあるいは両方なのかは分からないが、こちらとしては都合がいい。

 

 

「正直、ルール無用でさっさと帰るのも考えてましたけど」

 

「冗談。クロちゃん達のことだものぉ。当然そのくらいの展開は想定済みでしょう?」

 

 

 …………流石にそこは読まれてるか。

 ナツカの『匠の愉快な名人芸(フルリフォーム)』に、『爆弾』の存在射程は存在しない。その性質を利用し、『壁』付近に最大爆風威力なしの爆弾を配置して、ヴィヴィアネさんが自乙したら追いかけ自乙したあとに起爆して爆風でそのまま『壁』に押し返してやろうと思ってたんだが。

 乙って『大空洞』に戻された場合、肉体を再構築する関係で一瞬動きが硬直するからな。その点、能力発動は意思のみで可能だからラグはない(自分で検証済み)。ヴィヴィアネさんが移動するよりも早く爆風で『壁』に叩きつけて、転移のどさくさで二人がかりでもみくちゃになりながらヴィヴィアネさんを拘束する算段だ。

 

 

「それに、せっかく後輩が趣向を凝らして『挑戦』してくれたんだものぉ。それも、こちらの圧倒的ホーム。無視してハイサヨナラっていうのは流石に、ねぇ?」

 

「でも、もう既に一回、無視してハイサヨナラされてますよ」

 

「…………それもあって、ねぇ?」

 

 

 ああ、しっかり罪悪感として効いていらっしゃる。

 ともあれ、問答無用でゴチャゴチャしながら決着という形にならないのは助かる。さっきの策も、実はけっこう苦肉だったしな。不確定要素が多すぎるので、綺麗に盤面を整えられるなら整えておきたい。

 ヴィヴィアネさんの方も、多分同じ思いなのだろう。

 

 

「そうねぇ…………。じゃあ、こういうのはどうかしらぁ? クロちゃんとナツカちゃんのうちどちらかがわたしに触れたら、二人の勝ち。逆に二人が諦めたり、どちらかが乙ったり、勝負開始から一二〇分経過したら、わたしの勝ち。勝負の間、わたしはこの迷宮から出ない。これならいい塩梅なんじゃないかしらぁ?」

 

「それは流石にナツカさん達をナメすぎですよ。ナツカさん達のコンビネーションを見て条件を変えたいと言ってももう遅いですよ?」

 

「いや…………待てナツカ、」

 

「はい、それじゃ決まりねぇスタートぉ!」

 

 

 言うが早いか、ヴィヴィアネさんは俺達の目の前に『亀裂』を発現する。

 警戒していた俺は咄嗟に飛び上がってナツカの首根っこを掴んで王座から引きずり下ろし、

 

 

「ぐえっ! ……あれ? これ、」

 

 

 

 そして次の瞬間、ナツカと共に城門の前に移動させられていた。

 

 

「………………は?」

 

 

 いや、いやいやいやおかしくないか!?

 背後に『亀裂』はなかった! 俺達が気付かない間に『亀裂』を発現していた? 城門前と繋がるようなものを? あの一瞬で? ……流石に『四界断つ次元の刃(エクスカリバー)』はそんなとんでもない探索技能(スキル)ではないだろう。

 そもそも、『亀裂』による移動なら俺達の目の前には『王座の間』と繋がった『亀裂』があるはずだが、そんなものはどこにもない。

 

 ……移動の前に聞こえたナツカの呟きを鑑みると、おそらくこの転移は『四界断つ次元の刃(エクスカリバー)』ではなく『WF城塞』の『ギミック』によるものだと思われる。

 だが、入口に戻される『ギミック』は『王座の間』の外にあるはず……。『王座の間』の中で移動していただけで、発動するのはおかしいが……。

 

 

「──はぁい? 元気に混乱しているかしらぁ?」

 

 

 と。

 元気に混乱していると、俺達の目の前に突如『亀裂』が発生した。

 ──『亀裂』の向こう側には、『王座の間』と、巨大な王座に腰かけるヴィヴィアネさんの姿。

 

 

「またまた初見殺しでごめんなさいねぇ。『WF城塞』の『ギミック』って、床を起点にして移動するか否かを判定する力場が発生しているのよぉ。だから、『亀裂』を使って力場を引っ張ってきてあげると、簡単に挙動をバグらせることができるのよねぇ」

 

「酷すぎる…………」

 

 

 時間制限を一二〇分とかいう妙に長い形に設定したのも、それが理由か……。

 俺達が一から『WF城塞』を攻略する前提で、『王座の間』に辿り着いた後に鬼ごっこをするのにちょうどいい時間を設定してたってわけだ。

 あの話運びといい、不意打ち同然の能力発動といい、この人ひょっとして最初からこの流れに持って行くつもりだったな? とんだ『迷図作題(メイズ)』じゃないか……。

 

 

「な、ナツカさんの王座が簒奪されましたよ…………」

 

「ショック受けるところはそこなのかよ」

 

 

 あー、っつか、こうなってくると本当に配信してないのがもったいないなぁ。

 めちゃくちゃ配信映えする展開なのに……。……いや、不意打ちしたってところでリスナーから叩かれちゃうかな? 俺的にはめちゃくちゃ面白い展開なんだけど。ダイバーとしての俺が、配信映えを感じてしまう。

 

 

「ええい! こうなれば魔王は廃業ですよ。クロ、これからの時代は勇者ですよ。勇者」

 

「どこの世界に魔王を廃業して勇者に転職するヤツがいるんだ」

 

 

 気炎を巻くナツカにツッコミを入れていると、『亀裂』の先では王座に腰かけたヴィヴィアネさんが、どこに繋がっているとも知れない『亀裂』を肘置きにしながらクスクスと楽しそうな笑みを浮かべていた。

 

 

「本当に、アナタ達は見ていて飽きないわねぇ。でも、そんなにゆっくりしていて大丈夫? もう、勝負は始まってるのよぉ?」

 

 

 その忠告を聞いて、俺達は改めて身を引き締める。

 

 制限時間は一二〇分。

 それまでに、今一度この迷宮を踏破し、『王座の間』にいるヴィヴィアネさんを捕らえる。

 勝負のルールは、そういう風に制定された。

 

 

「そうそう。いつもの呑気なアナタ達もいいけれど、そういう本気の顏もけっこう好きよぉ。それじゃあ────改めて」

 

 

 俺達の様子の変化を見て、ヴィヴィアネさんは満足そうに頷く。

 そして最後にこう告げて、『亀裂』を消し去ったのだった。

 

 

()()()()()()()()




 ここ数話のタイトル、これがやりたかっただけでした。
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