最強ランクマ勢のTS娘、クラスのポンコツ美少女と一緒にチャンネルを始めたらバズりました。   作:家葉 テイク

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55:エイトデイズ・ア・ウィーク ①/まるでパズルのような

「さて、じゃあ監視体制を固めるか……」

 

「流れるように怖いことを言い出しましたよ」

 

 

 ヴィヴィアネさんが『亀裂』を閉じた直後、『風上ドローン』と付属のカメラドローンを操作し始めると、ナツカが軽くヒいた感じで言ってきた。いや、人聞き悪いな。当然の流れだろ。

 

 

「お前ヴィヴィアネさんの話忘れたのか? ルール説明の時、ヴィヴィアネさんは『()()()()()()()』と言ったんだ。『「王座の間」から出ない』とは一言も言っていない。つまり、俺達がのこのこ『王座の間』に向かっている最中に移動して空を逃げ回って時間切れという可能性は全然ある流れだろ」

 

「えぇー………………」

 

 

 いや、分かるけども。この流れならヴィヴィアネさんは『王座の間』で待ち受ける方が『魔王』としては自然だろみたいなことだろ? 分かるよ。

 

 

「でも、ルールでそう設定されていないのに思い込み先行で動いて負け筋作るのはダメだろ。ちゃんと事前に想定できてる負け筋は潰さないと」

 

「対人ガチ勢のめんどくさいとこ出てると思いますよ……」

 

 

 ぶつくさ言うナツカだが、それ以上に異論があった訳でもないらしい。大人しくドローンを操作する俺のことを見守っていた。

 

 

「んで、せっかくヴィヴィアネさんがお手本を見せてくれたんだ。俺達も、わざわざ『WF城塞』を一から攻略する必要はない。まず中庭に行って花畑ワープを試すぞ」

 

「ええー!?」

 

 

 言いながら中庭に行こうとすると、ナツカが驚いて声を上げる。なんだよ。今日は妙にリアクションがでかいな。いやそれはいつもか。

 

 

「一から攻略しないんですよ? ヴィヴィアネさんが色々用意してくれてるかもしれないのに?」

 

「いや……だって二時間しかないんだぞ? 一から攻略してたら時間がもったいないだろ。花畑ワープも潰されてるかもしれないけど、残ってるんなら使わない手はないじゃん」

 

 

 そもそもヴィヴィアネさんも俺達の仕掛けを全部無視したのでその辺はおあいこじゃなかろうか。逆に俺達が裏技を試さずに真っ向から攻略し始めたら、全部無視したヴィヴィアネさんの立つ瀬もなくなるし。

 

 

「それに、こう……。向こうが最善手を取ってるのにこっちが最善手を取らないってのはな」

 

 

 そっぽ向きながら、俺は言う。

 色々と理由を並べ立てたが、ぶっちゃけ一番の理由は此処だ。

 

 ヴィヴィアネさんに用意された仕掛けを無視された後、確かに俺はヴィヴィアネさんに文句を言ったが、それはあくまでプロレスというか、一応のポーズだったわけで。

 正直なことを言うと、ちょっと嬉しかったりしたのだ。だって俺達が初見の要素を手札として切ったってことは、それくらいヴィヴィアネさんが俺達に対して『マジ』になってくれたってことだからな。その『本気度合い』が、俺としては嬉しかった。

 そのヴィヴィアネさんの『本気』に、俺達も応えたい。最適解を選ばずに『正攻法』でヴィヴィアネさんの仕掛けに立ち向かうのも、悪くはねぇよ。それだってヴィヴィアネさんに対して誠実に向き合ってると思う。でも、『対人ガチ勢』の俺の誠意の見せ方としては、そういう仕掛けを全部踏み倒して攻略してやろうとする方が適してると思うんだよな。

 ──で、ヴィヴィアネさんを悔しがらせる! ここが一番大事。

 

 

「そういうことなら、ナツカさんも賛成ですよ。思う存分悪さをしてやりましょう。こっちにはクロがついてるんですからね!」

 

「おう、任せとけ」

 

 

 というわけで、俺達はまず中庭で花畑ワープを試すことに。

 だが……。

 

 

「おっと」

 

 

 城門に入ってすぐ左に曲がって花畑の方に向かった俺達は、そこでヴィヴィアネさんの『本気』を見た。

 ヴィヴィアネさんが『泉の女神』で変質させた花を突き立てた花畑。

 ワープゾーンに変化していたはずのそこは『亀裂』に覆われ、すぐそばには根元から切り落とされた花たちが無造作に放置されていた。まるで『此処は使わせませんよ』と宣言するかのように。

 ……金とか銀になっている花はないな。そりゃそうか。俺がヴィヴィアネさんでも、まずは引っこ抜いて確実にワープゾーン化を解除してから妨害工作をする。

 

 

「案の定対策されてたな」

 

 

 実際、この事態は最初から想定していた。

 ガチるなら当然の選択だからな。ヴィヴィアネさん自身がやった裏技にヴィヴィアネさんが対策しないなんて、最早舐めプの領域である。

 

 

「一応見ただけだし。さっきも言ったろ? 『試す』って。俺もこの方法が通用するとは最初から思ってない。とっとと次の案試すかー」

 

「え? なんでですか」

 

 

 切り替えて『風上ドローン』によるショートカットを考えていると、ナツカがきょとんとしながら首をかしげて来た。

 いや……なんでって、花を『亀裂』で根元から切り離された上に、花畑は地面ギリギリのところで『亀裂』に覆われてるんだよ。仮に花を『泉の女神』で変質させたとしても、『亀裂』が邪魔で設置できないじゃん。

 

 

「此処の『ギミック』はまだ使えると思いますよ。なんか使い方があるのでは?」

 

「なんかって何だよ」

 

「それを調べるのはクロの仕事ですよ」

 

「こいつなぁ……!!」

 

 

 クソ! お前のその勘もうちょっとなんとかならんのか!?

 一〇〇%感覚でしかないから、『なんか使えそう』というニュアンスしか伝わってこねぇしよぉ……。使えることさえ分かっていればこっちも考え甲斐はあるといえばあるのだが……。

 

 ……んー……。

 

 

 ナツカに言われたので、俺はちょっと周りを調べてみる。

 『亀裂』に近づいて、その中の景色を見てみると……どこに繋がっているかは不明だが、『亀裂』の中には遠く溶岩の景色が見えた。おそらく、どこぞの空高くに、地面に対して並行に『亀裂』を展開しているのだろう。その『亀裂』の『下側の面』が、この花畑の『亀裂』に繋がっていると……。

 

 

 ん?

 

 

 そこでふと、素朴な疑問が発生した。

 

 疑問は二つ。

 

 一つは、『亀裂』の逆側の面はどこに繋がっているのか? だ。

 『空中に展開された「亀裂」の下側の面』と『花畑に展開された「亀裂」の上側の面』は繋がっている。それは目で見た通り。だが、『空中に展開された「亀裂」の()()の面』と『花畑に展開された「亀裂」の()()の面』はどうなんだ?

 ……それについての答えは、すぐに辿り着いた。さっきの花畑を巡る攻防で見ているからだ。

 答えは、『もう片方の面も繋がっている』。『四界断つ次元の刃(エクスカリバー)』によって発生した『亀裂』は、二本で一セット。両面がそれぞれ対応する『亀裂』とリンクしているのだろう。三つ以上の『亀裂』でリンクさせることも可能かもしれないが……それだと設定が煩雑になりすぎて、咄嗟の設定ができないと思う。ヴィヴィアネさんほどのプロならその一瞬のラグは嫌うはず。

 つまり、『空中に展開された「亀裂」の上側の面』に腕を突っ込めば、花畑に花を挿すことはできる。

 

 もう一つの疑問は──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? だ。

 だって、俺達には『風上ドローン』があるのだ。空中に『亀裂』を展開したとしても、そこまで行って花を挿すことは容易である。ヴィヴィアネさんがその対策をしていないとは考え難い。

 

 そんなことを考えて空を見上げて──すぐに見つけた。

 

 

「あった。アレが花畑に繋がっている『亀裂』か…………」

 

 

 ざっと上空一〇〇メートル。そこに、地面と平行になるように発現された『亀裂』が二つ、縦に並んで発現されていた。おそらく、下にあるのが花畑と繋がった『亀裂』だろう。上の『亀裂』は、花畑に繋がる面を封鎖する為に発現されているはず。

 

 

「え? どこですか?」

 

「ほら、あるだろ……。あそこだよ、あそこ」

 

「みんながクロと同じ観察力を持ってると思わない方がいいですよ」

 

 

 お前のような勘の持ち主が何を言っているんだ。

 

 

「鏡合わせって訳だ。おそらくあの中は城壁の中とかそういう両面が『移動不可』なところに繋げられてるんだろうが」

 

 

 言いながら、俺は根本で切断された花を一輪拾い上げる。ギミックの中核である花が一応利用可能な状態で放置されているのは、その必要がないとヴィヴィアネさんが判断するくらいには、『完璧に花畑の「ギミック」を潰した』と思っているからだろう。

 

 ……カメラドローンを使って上空の『亀裂』を確認したところ、蓋をしている『亀裂』はどうも城壁内部に繋がっているようだ。おそらく、適当な壁の中に『亀裂』を発現したのだろう。

 

 

 ここまでの情報を整理すると、こうだ。

 

 ①今、俺達が認識できる範囲で『亀裂』は四本展開されている。そして、『亀裂』の面は八面存在する。(『花畑亀裂上面』『花畑亀裂下面』『上空亀裂上面』『上空亀裂下面』『蓋亀裂上面』『蓋亀裂下面』『城内亀裂A面』『城内亀裂B面』)

 

 ②『花畑亀裂上面』と『上空亀裂下面』、『花畑亀裂下面』と『上空亀裂上面』は繋がっている。

 

 ③『上空亀裂上面』は『蓋亀裂』で塞がれている。よって、『上空亀裂上面』経由で『花畑亀裂下面』に出ることはできない。

 

 ④『蓋亀裂』は上下面両方が『城内亀裂』のAB面に繋がっており、通り抜けることはできない。(仮に上面とA面、下面とB面が繋がっているとする。ちなみにABと置くのは、『城内亀裂』の向きが現時点で特定できないからである)

 

 ⑤ただし、ナツカの勘は現状でも花畑が利用可能だと告げている。

 

 

 ⑤がある以上、現状も花畑を利用する方法があるのは前提に置いていい。では、どうやるか? ……『花畑亀裂』と地面の隙間は全くのゼロだ。隙間を通して花を挿すことはできない。

 ……じゃあ、地面を掘ってみたらどうだろうか。入口に戻される『ギミック』を利用したとき、ヴィヴィアネさんは『床を起点にして力場が出ている』と言っていた。同じ迷宮の同じ移動系『ギミック』である。原理が似通っている可能性は高いのではないだろうか。

 この仮定が真ならば、多少地面を掘り進めたとしても、その『堀ったところ』に花を挿すことでワープゾーンが成立する可能性はあるんじゃないか?

 

 

「なんか考えてますよ?」

 

「色々な。……ナツカ、地面を掘ってみてくれ。『亀裂』の縁には触るなよ。普通に切れるから」

 

「了解ですよ」

 

 

 ナツカはベアークローの刃を伸ばして(迷宮に入った時点でやっておけよ)花畑の外から土を掘り始める。

 その様子を見ながら、俺は腕を組みつつ思考する。

 ……ヴィヴィアネさんからのアクションは何もない。それは多分、ヴィヴィアネさん視点では『穴を掘られただけでは問題がない』ということなのだろう。

 ヴィヴィアネさんからの妨害がないうちに、『泉の女神』を利用しておくか? ……、いや、()()だな。その札は温存しておいた方がいいだろう。

 

 安直に穴を掘ってそこに花を挿すだけでワープゾーン化が成立しないとすると、次に考えられる方策は?

 ……『風上ドローン』で『爆弾』を上空まで運べばどうだ?

 『蓋亀裂』を逆用できないのは、『城内亀裂』と繋がっているからだ。ならば、『蓋亀裂』に『爆弾』をぶつけて城壁を内部から破壊してやれば、『城内亀裂』の周辺に空間的余裕ができる。そうすれば、『蓋亀裂』を無視して花を挿すことができるんじゃないか?

 ……多分やれる。『風上ドローン』を二機用意すればいける。一機目に『爆弾』を搭載して城壁を完全破壊して、すぐさま花を搭載した二機目を飛ばして『蓋亀裂上面』を通り、『城内亀裂A面』から出て『城内亀裂』を迂回し『城内亀裂B面』⇒『蓋亀裂下面』⇒『上空亀裂上面』⇒『花畑亀裂下面』と通って花畑に花を挿すことができる。

 

 問題は…………ここまでヴィヴィアネさんが想定して、対策を練っている可能性が高いということ。

 『亀裂』はヴィヴィアネさんの胸先三寸で自由に解除できるのだ。『蓋亀裂上面』を通った時点で『蓋─城内亀裂』を解除してしまえば、花を搭載した『風上ドローン』は移動先から戻れなくなり、俺達はワープゾーンを利用できなくなる。対策は簡単だ。

 

 

「またなんか考えてますよ。そろそろイタズラしてもバレないんじゃないですか?」

 

「それやった瞬間腹に蹴り入れっからな」

 

「そうねぇ。イタズラはよくないわぁ」

 

 

 と、そこまで思考を進めた辺りで、俺達の眼前に電車の車窓くらいの大きさの『亀裂』が現れる。

 『亀裂』の先には、『王座の間』にいるヴィヴィアネさんの姿があった。まだ移動してなかったのか。

 

 

「ヴィヴィアネさんのお陰でナツカさんは穴掘りですよ」

 

「とても微笑ましく見させてもらってるわぁ」

 

 

 ぶーすか言うナツカに対し、ヴィヴィアネさんは優し気な笑みを浮かべている。ヴィヴィアネさんからしたら友達の妹が一生懸命頑張ってるんだし微笑ましいだろうが、それ多分煽りにしかなってないっすよ。

 

 

「で、どうしたんですよ? 何かヒントでもくれるんです?」

 

「それはないでしょぉ。せっかくガチってくれてるのに、そんなことしたら舐めプもいいところじゃなぁい?」

 

 

 ナツカの問いかけに、ヴィヴィアネさんは軽く笑う。

 完全に同意である。此処でヒントを出そうもんなら、俺が遮ってたくらいだ。ただ、だとすると何の為に? というのはある。車窓くらいのサイズでもこっちから攻撃することはできるのだ。リスクを取るに足るリターンがヴィヴィアネさん視点でもありそうなもんだが。

 

 

「シンプルに、妨害よぉ。何か思いついたからそういうことやってるんでしょぉ? 何をするつもりかも、有効かどうかも分からないけどぉ…………それを座して見守るほど、ヴィヴィアネさんは自信家じゃないのよねぇ?」

 

 

 そう言って、ヴィヴィアネさんは『亀裂』を通ってこちら側に──ナツカへ向けて腕を伸ばした。

 瞬時、俺は、のんきにしゃがんで穴を掘っていたナツカの首根っこを掴み、その場から大きく跳躍する。

 

 ──その直後、俺達が先程までいたところを特大の『亀裂』が両断した。




 途中のクロの思考は、ナツカと同じように『なんか考えてるなあ』程度に聞き流してくださって構いません。
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