最強ランクマ勢のTS娘、クラスのポンコツ美少女と一緒にチャンネルを始めたらバズりました。 作:家葉 テイク
カクヨムコン投稿のため、更新が滞っておりました……。(ハーメルンでもマルチ投稿していますが)
「いや~、負けちゃったわねぇ」
──俺達とヴィヴィアネさんのバトルは、ナツカのタッチによって幕を下ろした。
最初から、俺達のどっちかがヴィヴィアネさんにタッチできたら勝利っていう条件だったしな。なんとか勝ててよかった。負けちゃったら、心春さんの依頼をこなせなくなっちゃうしな。
「ふふん、ナツカさんのお手柄ですよ。クロ、褒めたたえるといいですよ」
「おう、今回は色々助かったしなー」
途中の『爆弾』作成とか、俺が指示していないところでも自発的に行動してくれてたしな。まぁ『爆弾』のストック作っとけっていうのはずっとずっと言い続けていたことなので、やっとやってくれたかという感じでもあるが……。
ただ、お手柄なのは事実である。俺はナツカの背中をバシバシと叩いて健闘をたたえた。…………ちょっと甘すぎか?
「それじゃ約束通り、わたしは
「…………あの、差し支えなければなんですけど」
『風上ドローン』達を回収しながら、俺はヴィヴィアネさんに向き直った。
そもそも、今回の問題は──『
だが、此処までヴィヴィアネさんと接してきた俺にはどうしても疑問だった。
果たしてヴィヴィアネさんが、何の理由もなくそんなズボラな状況に陥るだろうか? と。
だって、そうだろう。
ヴィヴィアネさんは、迷宮での書類手続き全般について俺達にレクチャーしてくれる程度には慣れていた。つまり、小難しい書類仕事に対してアレルギーのあるタイプの人じゃない。
確かに人格的には多少癖があるけど、それを補って余りあるほどに面倒見がよく優しいし、責任感もある。そんな彼女が、何か自分起因の理由で手続き類を溜め込むという姿が想像できなかった。
そしてもし、何か事情があるのであれば。
その場合は、俺だってヴィヴィアネさんの力になってあげたい。……と言っても俺みたいなガキに何ができるかは分からないが、窓口を開けなければ手を差し伸べることすらできないだろう。
「なんで今回の依頼が出されたか、教えてもらうことってできますか?」
そんな想いを込めて、俺はヴィヴィアネさんに問いかける。
それに対し、ヴィヴィアネさんは気まずそうな苦笑を浮かべた。……やっぱり迷惑だったかな。
「ダメだわぁ。……気を遣わせちゃってごめんねぇ? ごく個人的な問題なのよ。……書類手続き云々は口実でねぇ。実際には、
「えっ!!!!」
あ……なるほど。ヴィヴィアネさんは、特別嘱託探索者として活動してもうかなりになるはずだ。現場の仕組みも理解していて、能力もあるベテラン──しかも
迷宮省からしたら、喉から手が出るほど欲しい人材だ。そりゃあ何度もスカウトされるだろう。俺が採用担当だったら、それこそスカウトの為に専用のプロジェクトを立ち上げることだって厭わないと思う。
「といっても、毎回断っているからこれも殆ど形式的なものだけれどねぇ。何か月かに一度、コハ……ナツカちゃんのお姉さんと
「なるほど……」
迷宮省、ヴィヴィアネさんにめちゃくちゃ向いてると思うんだが、まぁ色々とあるだろうしなぁ。特にヴィヴィアネさんは『調査』系としても精力的に活動している。迷宮省との二足の草鞋となると、流石に厳しくなってくるだろう。
「ありがとうございます。それとすいません、プライベートなこと聞いて。どうしても、ヴィヴィアネさんが現実に出るのを渋るのが何となく気になっちゃって。ヴィヴィアネさん、凄い責任感が強い人だから」
「………………わたし、そんなにできた人間じゃないわよぉ」
俺の言葉に、ヴィヴィアネさんは少しだけ視線を逸らして答えた。……何か陰のある返事だった。まるで、そこに壁を作ったような。
でも……ヴィヴィアネさんも大人だしなぁ。気になるけど、そこまで踏み込むのは行き過ぎ……だよな。
そう思って、俺はそれ以上何も言わなかった。
代わりに、ナツカが口を開く。
「そろそろ、祝勝会を開いてもいいですよ? 今回のMVPであるナツカさんが所望していますので」
「いつの間にMVPまで増長してんだテメーは」
どう考えてもMVPは俺だろうが! 戦闘ほぼ全部俺が組み立ててたんだぞ!!
「はいはい、喧嘩しないのぉ」
取っ組み合いの争いを始めようとした俺達を止めるように、ヴィヴィアネさんが割って入る。
すっかり柔らかな笑みに戻ったヴィヴィアネさんは、続けてこう言ったのだった。
「祝勝会ならわたしが開いてあげるわぁ。わたしに勝ったご褒美。二人とも、何食べたいかしらぁ?」
◆ ◆ ◆
──
植生もバラバラ、採れる鉱物も千差万別なので当然だ。だが──その中にいる人は、現実と変わらない。見た目や能力が変わろうと、その中身の人に違いはない。
だから、何だかんだ求めるものだって似通ってくるものだ。
何が言いたいか?
つまり、こうだ。
『「大空洞」にも、焼肉屋は存在する』。
「こ……これは! んまそうな肉ですよ!!」
「マジでこれいいんですか……? 全然食べちゃいますよ……?」
「じゃんじゃん食べちゃっていいのよぉ。仮に野球部員全員分奢ったってヴィヴィアネさんの懐は痛まないわぁ」
「ブルジョワジィ……」
「感動しすぎて感嘆符が意味分からんことになってるぞ」
そんなこんな言いつつ、俺達は一心不乱に肉を焼く。遠慮は不要だ。こういうときは思い切り奢られとけってじいちゃんが言ってた(気がする)。
探索者の身体に食事は不要とかいう話が嘘なんじゃないかと思うくらい、肉はうまい。こんな高級そうなお肉を惜しげもなく奢ってくれるヴィヴィアネさんはやはりすごい。そして
「しっかし、ホントにお疲れさまよねぇ」
テーブルに頬杖を突いて俺達が肉を貪っているのを眺めていたヴィヴィアネさんは、微笑みながらそんなことを言った。
ちなみに、焼肉はどう考えても普通の牛肉ではないはずなのだが、何故だか味わいはとても牛肉によく似ていた。ウシ型の
「デビューして一週間も経ってない
「……んぐ。何言ってるんすか。とんでもないハンデマッチだったっすよ」
肉を呑み込んで、俺はヴィヴィアネさんにツッコミを入れる。
謙遜じゃない。実際に、ヴィヴィアネさんは相当なハンデを背負って俺達との戦いに臨んでいた。
『亀裂』を使って逃げるという選択肢を自ら封じていたのもそうだ。だがその他にも、ヴィヴィアネさんは『風上ドローン』の破壊を最初から考えていなかった節がある。風圧で移動を制限されるのだ。絶対に壊した方がいいのに、ヴィヴィアネさんはそれを無視していた。多分、俺達の持ち物を壊すのが忍びなかったんだと思う。
ヴィヴィアネさんからしたら完全に無意識なんだろうし、一回事故で捕まりかけてるからトントンというつもりなんだろうけど、俺としては『これだけハンデをもらっても、しょーじき勝った感はないよねぇ』という感じだ。依頼は無事に達成できたから普通に達成感はあるけども(そこはそれである)。
「やれるなら、今度はランクマみたいな感じでちゃんとサシでやりたいっすね。お互い完全に手札が見えてる状況で戦ったらどうなるのか、気になりますし」
「意外とクロちゃんってば戦闘狂? お師匠さんに似たのかしらぁ」
……おっと、ついランクマ勢の血が騒いでしまった。
でも実際、ヴィヴィアネさんは
「……そうだ。お師匠さんと言えば、ちょっと会って話したいことがあるのよぉ。クロちゃん、ちょっとアポ取ってくれなぁい? キララちゃんとは連絡先は交換済みだけど、社交辞令の挨拶しかしてないからねぇ……」
「ん、別にいいですけど」
アポ取るも何も、俺本人だしな。
そしてヴィヴィアネさんの言う通り、
「わたし、人見知りなのよねぇ」
「人見知りが後輩を焼肉に誘いますか」
「ナツカさんも人見知りなので気持ちはよく分かりますよ」
「対義語の話でもしてる?」
お前が人見知りなら全人類は石だよ、石。
人見知りっていうのは俺みたいなののことを言うんだよ。俺が毎回どれだけ頑張って初対面の人とコミュニケーションを取っていると思ってるんだ……。
内心ぼやきつつ、俺は端末ドローンを操作して、キララと連絡を取るふりをする。んー、いつごろOKにしようかな。別に予定もないし、明日とかでもいいんだけども。
「師匠から返事来ました。いつでもいいそうですよ。明日とかでも。暇してますね」
「…………、……そう。助かるわぁ。それじゃあ、明日の一二時に予定を入れておいてもらえるぅ?」
「了解っす」
何の用事なのかね。
ヴィヴィアネさんは
うー、憂鬱だ。ヴィヴィアネさんには俺がキララでもあるってことを話しちゃってもいいと思うんだけど、こういうのあんまり自分からバラすのもな……。タイミングがどうにも掴めない。もしクリティカルな相談事とかだった場合、あとからめっちゃ気まずいので何とかしたいが……。
「連絡しときました。『おっけー☆』だそうです」
「よかったわぁ。間に入ってもらっちゃって悪いわねぇ。ささ、どんどん食べちゃってぇ。此処はねぇ、王道のウシ型
「いやー……流石にそういう冒険は……」
「ヘビ型一丁!」
「おいコラテメェ勝手にタブレットで注文すんな! しかも三人前頼むな!! こういうイロモノは一人前頼んで三人でシェアするのが常道だろ!?」
「クロ、陰キャのくせにお食事処世術に詳しいですよ?」
「よーし決めたテメーがヘビ食えなくても俺はぜってぇ処理しねぇからな!!!!」
キララムーブのために陽キャ的挙動は知識としては頭に入ってるんだよ……って何言わせんだこのエクストリーム非礼野郎は……!
──結局この後出て来たヘビ型
ただまぁ、全体的には、めちゃくちゃ楽しい祝勝会になった。ヴィヴィアネさんとも、仲良くなれた気がするしな。