ありふれない傭兵は火を点ける   作:白2野1威

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前回の投稿から1ヶ月経つの早くない?

時の流れが早すぎて怖いんじゃけど・・・。

なんとか頑張ってやったので今話もお楽しみいただけたらと思います。


Chapter1−7 オルクス大迷宮実戦訓練

 

 

 

「封鎖機構の強制捜査に独立傭兵から依頼・・・妙に入り組んだ話だがお前はいつもどおり仕事を頼む」

 

「・・・621、これからも仕事をするうえでの、一つの助言を送ろう」

 

「不測の事態を予測しろ」

 

 

 


 

またあの人の夢を見た・・・。久しぶりとはいえ、やはり心にくるものがある。

 

「『不測の事態を予測しろ』か。 わかっているわ、ウォルター・・・」

 

『おはようございます、レイヴン』

 

(おはようエア)

 

『今日の訓練は大丈夫ですか?』

 

(大丈夫、問題無い、どんな事態でも対処してみせるわ。さてと、この寝坊助を起こすか・・・)

 

「起きなさいハジメ、訓練に行くわよ」

 

ハジメを起こし、レイ達は訓練に向かう。

 

 

 

 

 

メルド団長の待つ場所まで向かう道中レイ達は香織達と出くわす。

 

「白崎さん、八重樫さん、おはよう」

 

「白崎に八重樫、おはよう」

 

「おはようございます、ハジメ君!レイさん!」

 

「おはようございます・・・南雲君、・・・レイさん」

 

お互い挨拶を交わす。香織は元気良く挨拶をしたが、雫はどこかぎこちなく挨拶をした。

ハジメは雫が元気が無いのを心配する。

 

「八重樫さん、大丈夫? 何か元気が無さそうだけど」

 

「えっ? 大丈夫よ南雲君。ちょっと緊張して寝付けなかっただけだから・・・」

 

「雫ちゃん、もし具合とか悪いならメルド団長に頼んで、今回の訓練は・・・」

 

「休んでも」と香織が言いかけたが、そこに天之河達も合流した。

 

「香織、雫、おはよ・・・南雲レイに南雲ハジメ・・・!」

 

「おはよう、天之河、坂上に、たしかアンタ達は・・・谷口と中村だっけ?」

 

「おはよう、天之河君、坂上君、谷口さん、中村さん」

 

レイ達は各々に挨拶をする。どんな世界であろうと挨拶はとても大事、古事記にもそう書かれている。

 

「おはようございます!レイさん!南雲!」

 

「おはよう〜♪レイレ・・・「あ?」レイ・・・さん、とハジメさん・・・(汗)」

 

「おはよう・・・ございます、レイさん・・・、ハジメ君・・・」

 

龍太郎は元気良く挨拶をし、鈴はレイにフレンドリーに挨拶・・・しようとしたのだが、レイが自身の呼び方に気に入らなかったのか鈴を睨み、睨まれた鈴は怯えながら挨拶をして、最後の恵里は少し怖がりながらも挨拶をした。

 

「南雲レイ! 香織と雫に何をしていた!」

 

「何をしていたって挨拶をしていただけよ。何か問題でも?」

 

「檜山達をあれだけ怪我を負わせたのに全く反省していない人が香織達に近づこうとしないでください! それと鈴や恵里を怖がらせる様な事もやめるんだ!」

 

「はいはい、わかりました・・・。とっととメルド団長の所に行ってあげるわ。行くわよハジメ・・・」

 

「うん、わかった。えっと、また後でね・・・」

 

光輝の相手にするのが面倒だと思いハジメと共に足早にメルド団長の所に行こうとしたがレイがふと思い出したかのように足を止め、光輝の方に向いて言う。

 

「そうだ天之河、アンタに一言、言っておきたい事が」

 

「何だ!」

 

レイが手を差し伸べて一言。

 

「今日の訓練、お互い頑張りましょうね」

 

握手を促したが光輝は。

 

「・・・・・」

 

光輝は無言でレイを警戒をして握手をしなかった。

 

「・・・まあいっか、それじゃあまた後で・・・」

 

そう言ってレイ達は歩き始めた。

その歩くレイ達の背中を光輝は睨み続けていた。彼の中ではレイは平気で人を傷つけ反省もしない奴で、ハジメは低ステータスを理由に途中から戦闘訓練に来なくなった努力を怠る奴と思っている。

 

そんな彼を香織達は一応宥めようとする。

 

「光輝君、落ち着いて、レイさん達はただ挨拶をしていただけだから」

 

「そうよ光輝、挨拶するだけで、あそこまで警戒する必要なんてないんだから。 それにさっきの握手ぐらいしても良かったじゃない」

 

「香織、雫、南雲レイは危険な人なんだ! 檜山達をあんな目に合わせて反省の一つもしていない人なんだぞ!」

 

香織達の言葉を聞いても光輝は聞く耳を持とうとしない。

そこに彼の親友である龍太郎が声をかける。

 

「なあ光輝、確かにレイさんは怖い人だけど、俺達があの人や南雲にちょっかいかけなければあの人から何もして来ないって。 檜山達の件だってレイさんの弟を大怪我負わされてキレてボコボコにしたって言ってたじゃねえか」

 

「そうだよ光輝君、怖いけど何もしなければレイさんは何もしないし、私達の中で一番心強い味方だから、もう少しレイさんの事を仲間として接しようよ〜」

 

「私も龍太郎や鈴の言うことに賛成・・・。あの人を敵に回すような事はやめておいた方が良いと思う」

 

龍太郎だけではなく鈴と恵里も光輝に南雲姉弟の接し方に気をつけようと言ってきた。しかし光輝は尚も反論する。

 

「龍太郎達まで何を言い出すんだ。それに今はあの人が一番強くても勇者の俺が超えてみせる! あんな危険な人に頼る必要は無いんだ!」

 

そう光輝は力強く宣言する。

 

それを見ていた雫は朝から頭が痛くなりそうな光景に頭を抱える。

 

「もう光輝、ここで話をしていてもしょうが無いから、そろそろメルドさんのところまで行って合流しましょう。皆を待たせるわけにはいかないわ」

 

雫はそう言って香織と共に歩き出す。光輝はまだレイ達の件は納得していないがメルドさんやクラスの皆を待たせるわけにもいかないので龍太郎達と一緒に歩き出す。

 

 

 

レイとクラスの皆はメルド団長率いる騎士団と共に宿屋からオルクス大迷宮に向かう道中、ホルアドはお祭りめいた状態になっていた。異世界から召喚され人族を救うと言われている救世主一行を一目見ようと様々な人々が集まっていた。

レイとハジメはクラスメイト達の一番後ろの方で歩いて回りの人達を見ていた。

 

「全く騒がしいわね、まるで私達は見世物みたいに・・・」

 

「まあ救世主一行を一目見てみたい気持ちも少しわかるような気がしなくもないけどね・・・」

 

「良い気分はしないわ、好きでこんな事をしているわけじゃないってのに・・・」

 

不満を言っていたレイがふと黙ってある方向を見ていた。

 

「どうしたの姉さん?」

 

「何か品定めしているような目でこっちを見ていたからガン飛ばしてやった・・・」

 

「何しているの姉さん・・・」

 

「・・・品定めするような目で見る奴が悪い」

 

そう言ってレイ達は歩いていく。

 


 

お祭り状態のホルアドに多くの見物人の中に一組の冒険者達が居た。

男と女が噂の異世界から召喚された救世主一行を見ていた。

 

「あれが噂の救世主一行か? 噂どおり、ほとんどガキばっかりじゃ」

 

「そうねえ。あんな子供に頼らないといけないなんてハイリヒ王国の兵も質が落ちたものねぇ」

 

男と女は救世主一行を見てそんな感想を言う。

 

「わしは金ピカの奴以外、特に気になるような奴はいないがお前はどうじゃ、何か気になる奴はいたか?」

 

「気になる奴はあの金ピカ坊やの後ろに居る女の子二人が気になるわ」

 

女は金ピカこと光輝の後ろに居る香織と雫を見て気になると言う。

 

「うん、どうしてじゃ?」

 

「あの女の子達、風穴を開けたら、どんな声で鳴くか気になる。それを想像するだけで楽しいわ・・・。うふふ、聴けるなら是非聴いてみたい・・・」

 

女は香織達を笑顔で加虐心を剥き出しにして物騒な事を言っていた。それを聞いた男は完全にドン引きしていた

 

「うわぁ・・・お前さんこの前、帝都の娼館で、亜人族の女で楽しんでいたじゃろう。全く女同士で何が楽しいんだ・・・うん?」

 

「どうしたのよ?急に黙って・・・」

 

「救世主一行の一番後ろの方に居る女とかはどうじゃお前さんの好みに合うんじゃなかろうか?」

 

男は救世主一行の一番後ろに居る女、レイを指差しながら言う。

 

「何よ子供だけかと思っていたけど中々悪くは・・・」

 

「なさそう」と女は言いかけたその時。

 

「「・・・!?」」

 

男と女の表情が凍りつく。一番後ろにいたレイが深紅の瞳を向けながらこちらを見ていた。

ただ見ていたのでは無い、さながらこちらを獲物と認識した鋭い目で見てきたのである。

 

思わぬ目で見られた男と女は思わず後退る。

それを見たレイが興味を無くしたのか、クラスメイトの方に向き直して歩き出す。

 

男と女は体中から冷や汗をかいていた。

 

「な、何じゃあ、あの女の目は・・・あんな獣の様な目、今まで見たことが無いぞ・・・」

 

「何なのアイツ・・・、私達を・・・殺そうとしていたあの目は・・・」

 

完全に震え上がっていた。捕食者に睨まれた小動物の様な体験をしたからである。

 

「い、一旦ここから離れようシャミア。長居はしとうない・・・」

 

「そうねド・ス。今はこの場から離れた方が良いわね・・・」

 

言葉にできない不気味さを覚えながら、ド・スとシャミアは一旦通りから離れていった。

 


 

長い手続きを終えてオルクス大迷宮に入ったクラスメイト一行は進んで行く。縦横五メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、緑光石という特殊な鉱物のおかげで松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ていった道らしい。

 

一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。

 

その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

その言葉通り、ラットマンと呼ばれた魔物が結構な速度で飛びかかってきた

 

光輝や雫といった前衛組が若干頬が引き攣っている。やはり、気持ち悪いらしい。まああの見た目がすばっしこく近づいて来るのだから無理も無い。

 

だが光輝達、所謂勇者パーティーは2週間と数日間の訓練もあってラットマンの群れは全滅していた一層の敵は弱すぎたらしい。

 

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド団長。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな」とメルド団長は肩を竦めた。

 

「それとな・・・今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにやり過ぎだからな?」

 

メルド団長の言葉に香織達魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。

 

(魔石か・・・。この世界、魔石は物によって日用品として重宝しているらしいし、なるべく集めて今後の軍資金にしておきたいわね・・・)

 

レイは内心、魔石を集めて今後の為の軍資金にしようと画策していた。

そんな事を考えてるうちにとうとうレイ達、南雲姉弟の番が来た。

 

「レイとハジメ、次はお前達の番だ。 レイがいるから大丈夫だろうが油断するなよ!」

 

「了解したメルド団長。 ハジメ、手筈通りお願いね」

 

「任せて姉さん、役に立てるようにサポートするよ」

 

レイは両手に片手ずつメイスを持って3体のラットマンを待ち構える。一体のラットマンが素早く近づいて襲いかかるが、レイは難なく躱してその直後、両手に持ったメイスでラットマンの頭を叩き潰す。

 

レイの高いステータスで繰り出されるメイスの一撃にラットマンもひとたまりもない。

 

残りのラットマンもレイに向かって襲おうとしたその時。

 

「今だ!錬成!」

 

ハジメが使える唯一の魔法、錬成によって2体のラットマンの進行方向に小さな穴ができ、ラットマンの勢いづいた動きを止めることができず、足を躓き転倒する。

 

それを見逃さず躓いたラットマンを両手のメイスで頭を叩き潰す。こうして南雲姉弟はラットマンを全滅させた。

 

「ハジメ。初めてにしては良くやったわ」

 

「うん、狙った通りできて良かったよ」

 

「でもあまり調子つかない事よ、敵が弱すぎたからね・・・」

 

「うぐっ、厳しい・・・」

 

南雲姉弟が会話しているとメルド団長が来る。

 

「いやあやはりレイは強いな! それとハジメの坊主もやるじゃないか!錬成をあんな風に使うとはな!」

 

ホクホク顔でメルドは南雲姉弟を褒め称えていた。

 

「国お抱えの錬成師達の所で訓練できたおかげですよ」

 

ハジメはハイリヒ王国お抱えの錬成師達の訓練によって離れた位置から錬成ができる遠隔錬成を覚えていたのである。

ある程度遠くの位置に錬成できるというやつなのだが今回は小さな穴にして躓かせるという風にやったのである。

 

「褒めてくれるのはありがたいですが、そろそろ解体してもよろしいですか?」

 

レイが魔物の解体に乗り気でやろうとする。

 

「解体は騎士団でやっても良いが、レイ自身がやるのか?」

 

「はい、今後の為に今の内に慣れておきたいので」

 

「お、おうわかった・・・何かわからない事があったら質問しても良いからな・・・」

 

「わかりました、どうもありがとうございます」

 

そう言ってレイはラットマンの解体作業を始めた。

メルドはレイを見て、頼もしいと思うと同時に他の使徒達と比べて、何処か異質に見えていた。

 

(このお嬢さん、頼もしいんだが、何処か恐ろしい物を感じるんだよなあ・・・、何と言うか荒事に手慣れている(・・・・・・)と言うべきか・・・)

 

(それに彼女の瞳もだ・・・、一度どころじゃない、幾つもの修羅場を潜り抜けた様な、そんな瞳をしているのも気になる・・・)

 

ハジメも若干吐き気を覚えながらもレイの解体作業を手伝っている所を見ながらメルドは思っていた。

 

そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調に階層を下げて行った。

 

そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。

 

ハジメ以外、戦闘職持ちが多いので割とあっさりと階層を降りていったのである。

 

しかし油断してはいけない。迷宮で一番恐ろしいのはトラップである。トラップの中には致死性の物も数多くあるのである。

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

皆に聞こえるようにメルド団長の掛け声が良く響く。

 

そしてクラスメイト達と共に南雲姉弟も魔物を倒して経験を得ていく。

 

その途中、小休止に入り、休止中のレイとハジメがふと前方を見ると香織と目が合った。彼女はハジメの方を見て微笑んでいる。

 

昨夜の告白を思い出して気恥ずかしくなり目を逸らすハジメ。若干、香織が拗ねたような表情になる。それを横目で見ていた雫が苦笑いし、小声で話しかけた。

 

(香織、なに南雲君と見つめ合っているのよ? 迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?)

 

(もう、雫ちゃん! 変なこと言わないで! 私はただ、レイさん達は大丈夫かなって、それだけだよ!)

 

(それがラブコメしてるって事でしょ?)と、雫は思ったが、これ以上言うと本格的に拗ねそうなので口を閉じる。だが、目が笑っていることは隠せず、それを見た香織が「もうっ」と呟いてやはり拗ねてしまった。

 

そんな様子を横目に見ていたレイとハジメだが、ハジメはふと視線を感じて思わず背筋を伸ばす。ねばつくような、負の感情がたっぷりと乗った不快な視線だ。今までも教室などで感じていた類の視線だが、それとは比べ物にならないくらい深く重い。

 

しかしねばついた視線はすぐに無くなる。何故ならレイが回りを見ながら、「見世物じゃねえぞ・・・」と言いたげに睨んでいたからである。

 

レイは昨夜、香織の言っていた嫌な予感というものを警戒していたので若干、気が立っていた。

 

『レイヴン、少し落ち着いてください。あまり回りを睨んで萎縮させていると、天之河 光輝に何か言われるかも知れません』

 

(落ち着きたいけど、下らない嫉妬をしていた目が気に入らない。ハジメのクラスでの態度が気に入らない理由はあっても、イジメまでされる謂れはないわ・・・)

 

レイとハジメは嫌な予感を感じつつ、小休止を終え一行は二十階層を探索する。

 

その道中、レイがメルド団長にある質問をする。

 

「メルド団長、今後の訓練についての質問をいい?」

 

「おう聞いてかまわんぞ、何だ?」

 

「今回は対魔物訓練ですが、今後、対人訓練はするのですか?」

 

「対人訓練? 勿論するがそれがどうかしたのか?」

 

「できる事なら早いうちに対人訓練はしておいた方が良いと思いまして・・・」

 

「何故早い方が良いんだ?」

 

メルドは疑問に思ったがレイはある懸念を言う。

 

「私達はそう遠くないうちに戦争をする身です。その時が来た時、人殺しは避けられません。いざ人の命を奪うという時に怖気づいたり躊躇いを見せたら死に直結する。その可能性をできる限り無くして起きたい・・・」

 

「・・・なあレイ、お前さん、自分が何を言っているのか、わかって言っているのか・・・」

 

「勿論わかったうえで言っている。魔物だけでなく魔人族(・・・)を相手にしなくちゃいけないから・・・」

 

レイの言葉にメルドは言いようのない恐怖を覚える。

光輝達の話だと平和な世界で生きてきたと聞いたが、レイは何処か彼らとは大きくかけ離れた考え方をしているように思えた。

 

「ま、まだするには早いと俺は思う・・・。お前さんの考えもわかるが、焦ってやっても仕方ないだろう・・・」

 

「それもそうですね・・・、ただもし慣れさせる時が来た時は真っ先に天之河にするべきです」

 

「何故、光輝何だ・・・?」

 

「天之河が真っ先に戦争に参加したのと、彼が一番戦争を、戦場を軽く見ていると思ったから。人殺しをする瞬間になって怖気づく可能性が一番あるのは彼だと断言します・・・」

 

レイの天之河に対する評価にメルドは考えるが、一旦は今の訓練に集中しようと思い直す。

 

「お前さんの考えはわかった。対人訓練の話は訓練を終えた後、ゆっくり相談しよう」

 

「わかりました、話を聞いていただきありがとうございます」

 

こうして一旦、訓練に集中しようとクラスメイトと共に歩き出す。

 

二十階層の一番奥の部屋まで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。

 

すると、先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。どうやら魔物のようだ。

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

メルド団長の忠告が飛ぶ。

 

すると前方にせり出していた岩が変色したかと思えば魔物が現れた。どうやらカメレオンの様に擬態していたのである。

 

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

メルド団長の声が響く。しかしその直後。

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

「ぐっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。

 

まんまと食らってしまった光輝達前衛組を他所にロックマウントは横にある岩を香織達後衛組に向けて投げつけた。それは見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組を超え岩が香織達に迫る。

 

香織達がその岩を魔法で迎撃しようと杖を構えるが衝撃的光景に思わず硬直する。それは何故か?

 

ナムサン! 投げつけた岩は実はロックマウントで、しかもそのロックマウントが器用に空中で一回転からのル◯ンダイブをかましてきたのである。

 

ロックマウントの気色の悪い動きに硬直してしまった香織と恵里と鈴に迫る、アブナイ!

 

しかし。

 

「後衛組! 頭を下げなさい!!」

 

レイが後衛組に頭を下げるように大声で叫び、聞いた香織達はすぐに頭を下げる。その後。

 

「フンッ!!」

 

レイが後衛組の後ろから持っていたメイスをロックマウントの顔面に投げつける。そして空中にいるロックマウントは避けることが出来ず見事命中! タツジン!

 

迎撃され落ちたロックマウントは顔面の痛みに悶えていたがその隙を見逃さないレイは残ったメイスでもう一度顔面に向かって叩き、頭を潰して黙らせる。

 

「気色の悪い動きを見て思わず止まる気持ちはわからんでもないけど、一瞬の隙はアンタ達自身の命に関わるわよ・・・」

 

「はい、助けてもらってありがとうございます、レイさん」

 

香織が後衛組の代表してレイにお礼を言う。

 

そんなレイ達のやり取りを他所に香織達を怖がらせたロックマウントに怒りを見せる天之河。

 

「貴様・・・よくも香織達を・・・許さない!」

 

「うん? 天之河の奴何を・・・?」

 

「万象羽ばたき、天へと至れーーー天翔閃!!」

 

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

「ちょっと冗談でしょ! 皆頭上注意して!!」

 

光輝は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。

 

その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更には奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まる。

 

いつものイケメンスマイルで香織達へ振り返った光輝。香織達を怯えさせた魔物は自分が倒した。もう安全だ!と声を掛けようとして、笑顔で迫っていたメルド団長の拳骨を食らう。

 

「へぶぅ!?」

 

「この馬鹿者が! 気持ちはわかるが、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」

 

メルド団長のお叱りに「うっ」と声を詰まらせ、バツが悪そうに謝罪する光輝。香織達が寄ってきて苦笑いしながら慰める間にハジメがレイに近づく。

 

「姉さん大丈夫!?」

 

「大丈夫よ。それにしても天之河の奴、怒りに任せて、こんな狭い場所であんな技出すか普通・・・」

 

レイは天之河のとった行動に呆れ果てていた。

 

『何と言いますか、彼は色々と視野が狭いですね・・・』

 

(何かそのうち、大技で仲間を巻き添えにしそうで怖くなるわね。 訓練終えたらメルドに視野を広く見れるような訓練も追加するように相談するか・・・)

 

エアも呆れて、レイがもう一つ訓練内容に一つ追加してもらおうか、考えていた時、香織が崩れた壁の方を見る。

 

「・・・何だろうアレ? キラキラした何かが・・・」

 

香織が指差した方向に皆が向けた。

 

そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達はロマンスに浸るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効果があるわけではないのだが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。

 

「素敵・・・」

 

「確かに綺麗ね」

 

香織の一言に続きレイも素直な感想を言う。それを聞いたハジメは思わず驚いた。

 

「姉さんがあれを見て綺麗って言う感性があったんだ・・・!?」

 

「何で驚くのよ!?」

 

「だって姉さん、宝石とか全く興味を示すような事が無いから。いつも貯めたバイト代で買うのは大抵エアガンとかだし」

 

「私だってああいうのを見て綺麗だと思う感性はあるわ!!」

 

南雲姉弟のやり取りを見てクラスメイト達は呆れている中動き出す者が。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。香織の点数稼ぎの為にグランツ鉱石を取ろうとしているのだろう。それに慌てたのはメルド団長だ。

 

「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

しかし、檜山は聞こえないふりをして、グランツ鉱石の場所に行く。それを見たレイは。

 

「任せてメルド団長。奴に石をぶつけて壁から落とすわ」

 

そう言ってレイは石を持って檜山に向けて投げようとするが。

 

「仲間に向けて石をぶつけるなんてやめろ!」

 

天之河がレイを止めようと動き、邪魔をされる。

 

「ちょっと邪魔すんな天之河!?」

 

レイと天之河が揉めているうちに檜山はとうとう鉱石までたどり着いてしまった。

 

騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

「団長! トラップです!」

 

「何ッ!!」

 

檜山がグランツ鉱石に触れたその瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の煌めきに魅せられて不用意に触れた愚か者へのトラップだ。美味しい花には棘がある。よくある話である。

 

魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現かのように。

 

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが・・・間に合わなかった・・・。

 

「クソッたれめ!!」

 

レイが悪態をつきながらクラスメイトと騎士団は20層から姿を消した。

 




今話は如何でしたか?

アーマードコアシリーズからあのキャラを出して見ましたが、あの一組の冒険者達は当分出番はありません。

追記 因みに彼等は、レイヴンのように転生者と言うわけではなくトータス世界の住人として出してます。

自分がやったアーマードコアはネクサス、ラストレイヴン、for Answer、V、VD、6だからこれらの作品の中から、
for Answerから6までのキャラを出すかも知れません。

何が出てくるかはお楽しみで。

次回もよろしくお願いいたします。
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