エレンの妻です   作:ホワイト3

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28:ウトガルド城

 車輪が砂を噛む乾いた音が、夜の闇に単調に響き続ける。月明かりだけが頼りの漆黒の中、荷馬車はエルミハ区を目指してひた走っていた。先ほどまでのストヘス区の喧騒はとうに遠ざかり、今は馬の蹄と荷台の軋む音だけが世界の全てであった。

 

 アルミンは揺れる荷台の上で、掌の中にある小さな欠片――女型の巨人から採取された硬質化した皮膚片――を静かに転がしていた。

 ガラスのように滑らかでありながら、鋼鉄をも凌ぐ強度を秘めた未知の物質。その冷たい感触だけが、思考の海に沈みそうなアルミンの意識をかろうじて現実につなぎとめていた。

 

 頭を占めているのは、ハンジが語った途方もない仮説――エレンの巨人の力でウォール・マリアの穴を塞ぐという壮大な計画――ではなかった。希望に満ちているはずのその響きすら、今のアルミンの心を覆う深い霧の前ではどこか色褪せて聞こえた。

 

 彼の胸を重く締め付けているのは、敬愛する医者のことだった。

 

 ジル先生は巨人だった。

 

 その事実への衝撃がなかったと言えば嘘になる。

 しかし、アルミンの心を苛む本当の痛みはそこではない。王政の目が光るこの世界で、あんな途方もない秘密を隠し通すのは当然だ。彼女の選択は生き抜くために仕方のないことだったのだろう。

 

 アルミンが本当に恐れ、そして深い悲しみを覚えたのは――あの優しかったジル先生には、もう二度と会えないかもしれないという残酷な事実だった。

 

 ストヘス区の地下牢で対面した彼女はアルミンの知る「ジルケ・シュタイナー」とはまるで別人だった。

 同じ顔、同じ声。それなのにその青い瞳に宿る光は氷のように冷たく、纏う空気は近寄れば斬られそうなほど鋭利だった。

 

 まるで別の魂が、彼女の身体を借りてそこにいるかのようだった。

 

 不意に、重苦しい沈黙を破ってエレンが声を上げた。そこには隠しきれない困惑と疑念が滲んでいた。

 

「あの、ハンジさん。巨人の力を使って壁の穴を塞ぐって話は理解しましたけど……なぜウォール教の司祭と、ジル先生まで一緒に乗ってるんですか?俺達がこれから向かうのは巨人共がうじゃうじゃいる場所なんですよ?」

 

 エレンの視線の先には、荷台の隅で顔面蒼白のまま俯くニック司祭と、その隣で腕を組み、ただ揺れる夜闇を見つめるジルケの姿があった。

 ジルケは見慣れた白衣ではなく、調査兵団の兵服を身に纏っていた。不思議とよく似合ってはいるが、アルミンは複雑な感情で彼女を見つめた。

 

 よく言えば協力者、悪く言えば捕虜。それが今の彼女の立場なのだから。

 

「あー!言ってなかったっけ!実は二人とは友達なんだよ!ねー?」

 

 ハンジの場違いに明るい声が響くが、ジルケは眉一つ動かさない。一方、エレンは目を輝かせた。

 

「えっ、そうなんですか!?ハンジさんと知り合いだったなんて!それに調査兵団の服着てるってことは……もしかしてこっちに異動してきたんですか、先生!」

 

 滝のような汗を流すハンジと、無邪気に喜ぶエレン。その対照的な姿を尻目に、ニック司祭は依然として虚無の表情を崩さず、ジルケは唇の端にかすかな嘲笑を浮かべていた。

 

「この子がエレン・イェーガーか……兵団も不用心だな。こんな得体の知れない人間と超重要人物をこうもあっさり会わせるなんて」

 

 リヴァイは荷台の揺れに身じろぎもせず、正面に座るジルケを睨みつけた。

 

「……奴の指示だ。今は壁内の巨人共をどうにかしなきゃなんねぇ。テメェの力、人類の為に使ってもらおう」

 

 それに、とリヴァイは付け加える。

 

「お前は危険すぎる。俺の目の届かねえところに置いておくわけにはいかねぇだろ」

 

「ふふ、よくもまあ団長殿はお前みたいな狂犬をコントロールできるものだ」

 

「え……?ジル先生、どうしました?なんか雰囲気変わりました?」

 

 呑気なことを言うエレンに、リヴァイは隠そうともせず鋭く舌打ちした。

 

「おい、ハンジ。こいつらに説明してやれ」

 

「その必要はないよ、兵長殿。私から伝えよう」

 

「駄目だ。どこまで情報を開示するかは奴とハンジだけが決める。今のテメェに勝手に口を開く権利はねえ。それと『殿』はやめろ。白々しい敬意ほどムカつくものもねぇからな」

 

「……なるほど、出発前にコソコソ話し合っていたのはそういうことか」

 

「異存はあるか?」

 

「いや、特にないさ。私も兵団の庇護がなければこの壁の中で生きていけない身。これからは一蓮托生だ。皆で力を合わせようじゃないか、兵長」

 

「え、だから……さっきから何の話をして――」

 

「エレンは黙ってろ」

 

 リヴァイはエレンを一喝すると、再びジルケに向き直った。

 

「……気に食わねぇ。お前だって出発前にエルヴィンとハンジになにやらコソコソ入れ知恵していたようだが、あれも『協力』の一環か?」

 

「というわけだが、発言の許可を求めても良いかな?分隊長殿」

 

 リヴァイの問いにジルケは答えず、意地悪そうな笑みをハンジに向けた。

 

「わかって言ってるでしょ、ジルケ……もちろん許可できないよ。ごめんね、リヴァイ。彼女の申し出はこの場で言うにはちょっと……というか、かなり憚られる内容なんだ」

 

「だそうだ、兵長。すまないな、教えてあげられなくて」

 

「……構わない。俺はテメェを見張りさえできれば、それで十分だ」

 

「無視しないでくださいよ!あの後、一体何があったんです!?先生はどうしちゃったんですか!?答えてください!」

 

 リヴァイとジルケの間で目に見えない火花が散る中、とうとう痺れを切らしたエレンが荷台を揺らすほどの勢いで吠えた。

 

 ハンジは諦めたような溜息をつくと、観念したように重々しく語り始めた。

 

「詳細は後で教えるけどね……彼女の本当の名前はジルケ・クルーガー。壁外からやってきた人間で、女型を討ち取った(アギト)の巨人の本体だ。そして……今の彼女は壁内でジルケ・シュタイナーとして暮らした五年間の記憶を全て失っている」

 

「はぁ!?壁外!?それに先生があの小っせぇ巨人の本体!?」

 

 エレンは思わず叫び、前のめりになった。その身体がぐらりと揺れる。まだ巨人化の後遺症が残っているのだろう、ミカサが音もなく背後からその身体を支えた。

 しかし、さしものミカサも衝撃を隠しきれないのか、その黒い瞳は吸い寄せられるようにジルケへと向けられていた。

 

「声大きいってば!……まあ、そういう反応をしたくなる気持ちも痛いほど分かるけどね。あ、司祭の方は成り行きでそれを知っちゃったから、念のため同行してもらってるだけ。後でトロスト区の兵舎に身柄を移すから心配しないで」

 

「す、すみません。でも……にわかには信じられないです」

 

 そう言って、エレンは恐る恐るといった様子でジルケを見つめた。

 

 無理もない。彼女の言葉を一言一句書き留めたアルミンですら、そのメモを後から読み返しても、まるで現実の出来事とは思えなかったのだから。

 

「ともかく!これは超ド級の機密事項だ!君達だから特別に教えたんだからね、他の人間にはぜっっっっったいに知られないように!いいね、モブリットも!」

 

 ハンジの鬼気迫る形相に気圧され、エレンもこくこくと頷くしかない。荷馬車の手綱を引くモブリットも、首がもげるのではないかというほど激しく上下させた。

 

(不安だ……)

 

 アルミンは、エレン・イェーガーという幼馴染の人となりを誰よりも理解している。この感情の起伏が激しく、直情的な幼馴染は腹芸などできるタイプではない。この途方もない秘密を果たして彼は抱えきれるのだろうか。アルミンの胸に新たな不安の影が落ちた。

 

 騒々しいエレンに目もくれず、やがてジルケはその深く青い瞳をゆっくりと隣の男へと移した。その僅かな動きにさえ怖気つき、ニック司祭の肩がびくりと震えるのが薄闇の中でも見て取れた。

 

「ところで司祭殿。そろそろお話しいただく気にはなりましたかな?」

 

 冷たい声が車輪の軋む音にかき消されることなく、静かに響いた。ニック司祭は顔を上げることもできず、ただ細く絞り出すように答える。

 

「……今更、何を話せというのだ?貴様が皆まで語ったではないか。私の持つ情報などもはや何の役にも立つまい」

 

「そうご謙遜なさらずとも。そんなに大層なことをお聞きしたいわけではありません。ただ――クリスタ・レンズという少女について、少しばかり教えていただければ」

 

 その名が出た瞬間、司祭の身体が硬直した。怯えきった目が初めてジルケを真っ直ぐに捉える。その過剰な反応だけで、ジルケの推察が確信へと変わったことをアルミンは息を呑んで見守った。

 

「地下牢でアルミンが『クリスタ』という名を口にした時のあなたの反応……あれはまさしく異様でした。加えて、私と初めて対面した時に口走った言葉……『あの子に近付いたのも計算の上』。つまり、その少女には何か(よこしま)な考えを持つ輩が近付くことが想定される。そういうことですね?」

 

「き、貴様は……一体何なんだ!?何が目的で……そんなことを聞く!?」

 

「気になることは徹底的に調べないと気が済まないタチでしてね。それに……記憶を失っているとはいえ、この私がわざわざ訓練兵団に移り、まるで付きまとうようにその少女の傍にいたというのです。この私が無意味な行動をするはずがない」

 

 慇懃無礼とはまさにこのことだろう。揺るぎない自信に満ちた、どこか相手を見下すような堂々たる言い方だった。

 

 常に気を張り詰めていたスパイとしての役割から解き放たれたことも影響しているのかしれないが……いつも他者を思いやり、穏やかな雰囲気を纏っていた「ジル先生」が、決してしないであろう高圧的な言葉遣いと、傲慢とも取れる響き。

 それを「ジル先生」の口から聞かされるのは、名状しがたい不快感をアルミンにもたらした。

 

 隣で話を聞いていたエレンも「……すっげー自信。なあアルミン、先生の記憶が無くなったのってマジなんだな……」と、そのあまりの変貌ぶりに茫然と呟いた。

 彼もまた、自らの知る「ジル先生」はもうどこにもいないのだと、残酷な現実を突きつけられているようだった。

 

「……駄目だ。話せない」

 

 司祭は力なく首を振り、再び顔を伏せてしまった。

 

「お(かみ)が怖いんですか?ですが、もう手遅れだと思いますよ?その……人類憲章でしたっけ。私の話を聞いてしまった時点で既に抵触しているようなもの。今更、粛清を恐れたところで何になるというのです?」

 

「わかっている! 死の覚悟など、とうの昔にできている! あの子のことも後ほど調査兵団には話すつもりだ。貴様も連中から聞けばよかろう!」

 

「この場で言えば良いではないですか。何故わざわざそんな手間を挟むんです?」

 

「……嫌なんだ」

 

 司祭の声が苦渋に満ちて震えた。

 

「あれほど……あれほど愛情を注いでいた貴女が、あの子をまるで物のように扱っているように思えて……これ以上、あの人の姿で私に話しかけないでくれ……」

 

 司祭は心の底から絞り出すように言った。その悲痛な響きに、アルミンは彼の混乱と恐怖、そして目の前のジルケに対する不信感を痛いほど共有できた。自分だって同じ気持ちなのだから。

 

(クリスタは一体何者なんだろう? それにジル先生はどうして彼女の傍に……?)

 

 アルミンの知る限り、クリスタは孤児のはずだった。何か重要な秘密を抱えているというのか。そして、以前のジル先生はクリスタの何を知っていたのだろうか。わからないことばかりが頭の中を巡る。

 

 だがアルミンは分からないことを考え過ぎても仕方がないと、己を鼓舞するように思考を切り替えた。

 今自分にできることをしよう。先ほどからずっと胸の内で引っかかっていた疑問をジルケにぶつけることにした。

 

「話が戻って恐縮ですが……ハンジさんがおっしゃった『破壊された穴を巨人の硬質化能力で塞ぐ』という話、ジルケさんの目から見て実現の可能性はどれほどあると思われますか?」

 

 ジルケはちらりとハンジの方へ視線を送る。ハンジが「私もちょうど聞きたかったことだ」と頷いて許可の意を示すと、彼女は淀みなく語り始めた。

 

「可能だろうな。だが、そのためには『鎧』か『戦鎚』の脊髄液が一定量必要になる」

 

「『戦鎚』……確かタイバー家が管理しているという巨人ですね? 『鎧』はともかく、『戦鎚』もわざわざ壁内までやってくるのでしょうか?」

 

「ない。それだけは絶対にあり得ない」

 

 ジルケは即座に否定する。

 

「となると、エレンが硬質化能力を獲得する為にはあの『鎧』を拘束したうえで、本体の脊髄液を摂取する必要がある、ということですね?」

 

「あの裏切り者の末裔が己の広大な領地から出てくることがない以上はな。だが本体を捕えずとも、鎧の背中を掻っ捌いて脊髄液を頂戴するのも手だ。もっとも、巨人の体液はすぐに蒸発してしまうし、壁内の技術じゃ長期保存など夢のまた夢だろうがな」

 

「どちらにせよ気が重くなる話ですね……ちなみに、ジルケさんの(アギト)で穴を塞ぐことは不可能なんですか?」

 

「なにぶん巨人化した時の記憶がないから何とも言えないが……(アギト)の特徴として、常時顎と爪が高度に硬質化している点が挙げられる。だが、それ以外の部分の硬質化、それも直径八メートルを超えるような大穴を塞ぐとなると鎧の脊髄液が必要だろう」

 

 ふと横を見ると、エレンとミカサは何が何だか分からないといった顔で、ただ呆然と話を聞いていた。彼らにとってはあまりにも現実離れした会話だろう。

 

「先ほどからおっしゃっている脊髄液ですが……それを摂取することで巨人の性質そのものを継承することが可能、ということでしょうか?」

 

「性質自体は継承されるが、それが発現するかは個人差が大きい。もしエレンが『始祖』を継承しているのであれば発現しやすいはずだ。『進撃』だったら……まあお祈りだな」

 

 ジルケの発言にどこか違和感を覚える。地下牢で聞いた話とどこか矛盾するような……アルミンはその矛盾にすぐ思い至った。

 

「……ジルケさん、やはりあなたは巨人の力の継承方法を知っていますね?」

 

「まあな。無垢の巨人が巨人化能力者を捕食すれば……正確には巨人化能力者の背骨を噛み砕き、脊髄液を体内に入れればいい。それで巨人の力は継承され、無垢の巨人も人間に戻ることができる」

 

 核心を突く問いにジルケは隠すでもなく、あっさりと頷いてみせた。

 

「どうして急に認めるんです?それも兵団への恭順の表れですか……?」

 

「それもあるが……事実を伝えれば兵団に都合の良い人間に(アギト)が継承されかねないからな、さっきは隠させてもらった。だが、状況が変わった。敵は正体が露見するリスクも恐れず、推定『始祖』であるエレンを壁内から連れ出そうとしている。連中は必死だ。情報の出し惜しみをしているうちにこの壁の中……いや、我々エルディア人は滅ぼされる」

 

 物騒な単語にエレンは「滅ぼ……っ!」と息を呑んだ。

 

「エレン、後でちゃんと説明するよ……それでジルケさん。もう隠していることはありませんね?」

 

「いいや、逆にまだまだ伝え足りないくらいだ。おたくらは敵の強大さと始祖の力を全く理解できていない。だからエレンを最前線に連れて行こうとするし、たかが一巨人の硬質化能力で壁を防ごう等と考える。そんな行為、敵の前では焼け石に水だ」

 

「クソ隈女……壁の穴は放っておけとでも言いてえのか?」

 

 リヴァイの刺々しい声が荷台の狭い空間に響く。

 

「そこまでは言ってない……が、ニュアンス的にはそうかな。いくら壁の穴を塞いだところで敵は何度も壁を破壊しに来る。始祖を手に入れる、その瞬間まで。私ならエレンをウォール・シーナの内奥にでも匿っておく……まあ、あんたら兵士の役割を考えれば、そのような判断はできないだろうな」

 

「当たり前だ。穴を塞がねぇと壁の中が巨人で満たされる。そうなりゃ巨人の臭ぇ口の中で人生最悪の気分を味わって、その生涯を終えることになるだろ。人類の半分がな」

 

「正しくは『壁内人類』の半分だよ、兵長」

 

 平然と言い返すジルケ。リヴァイの双眸が一層鋭い光を放つが、彼女は怯む様子すら見せない。それどころかさらに衝撃的な言葉を続けた。

 

「そもそも、穴は開いていない可能性だってあるんだぞ?」

 

 その一言に荷馬車内は水を打ったような静寂、そしてそれを破る衝撃に包まれた。

 

「どういうことです!?巨人が壁を飛び越えてきたってことですか!?」

 

 エレンの叫びに、ジルケは「あくまで可能性の一つとして聞いてくれ」と前置きして淡々と語り始めた。

 

「巨人の発生地点はウォール・ローゼ南区。地図を見せてもらったが、トロスト区やクロルバ区から随分程遠い。加えてそれら城壁都市からは特段報告はない。つまり、もし壁に巨人が通れるほどの大穴が空けられたとするなら、各都市の門ではなく、壁そのものが破壊されたということになる——超大型巨人で満杯になった壁が、だ」

 

 ジルケはハンジから借りた地図片手に説明を続ける。

 

「地下牢で分隊長殿に申し上げた通り、壁の内側は超大型巨人で一杯だ。その事実は敵さんが一番理解している。いかに浅慮甚だしい敵とて、うっかり『地鳴らし』を発動させかねない真似は避けるはずだ」

 

「し、しかし……現に巨人は出現していますよ!」

 

「……私が『向こう』にいた頃、軍内部である兵器が構想されていた。巨人の脊髄液を含んだ特殊なガスを散布し、敵国内のエルディア人を半強制的に巨人化させる兵器だ。当時は技術的課題にぶち当たって頓挫したが、20年近い歳月が経った今ならばそれも解消されているかもしれない」

 

「つまり、その兵器が使われて壁内に巨人が現れた――!」

 

「可能性としては考えられる」

 

 もしその推察が正しければ、壁内にいる巨人は限られているはずだ。それら全て討伐すれば、この事態はひとまず収束できるかもしれない。アルミンが一瞬だけ希望の光を見た、その時。ジルケは冷たく水を差した。

 

「逆だ、アルミン。むしろ外れて欲しいぐらいさ、こんな予想」

 

「何故ですか?穴が空いてないなら、これ以上巨人は増えないんじゃ……っ!」

 

 アルミンは言いかけて、自らの言葉の孕む恐ろしい意味に気付いた。

 

「気付いたようだな……察しの通り、壁を破壊できる超大型や鎧を仕留めたところで、ガス兵器が存在する限り壁内はいくらでも地獄絵図に変えることができるってわけだ……もはや壁など、何の意味もなさなくなる。ま、制御不能な無垢の巨人を占領地で量産してしまうのは諸刃の剣でもあるから、敵もそう安易に使用してくることはないだろうが」

 

 再び、荷馬車内を重く暗い絶望が支配した。アルミンは改めて壁外との技術格差に愕然とする。彼女はこの壁の中を「100年遅れている」と語っていたが、その評価は決して大げさなものではないのかもしれない。

 

「……いくらここで話したところで、机上の空論を出ない。とりあえず現場に急ごう。敵さんがトチ狂って壁を壊しただけかもしれん」

 

「その点に関しては同意だ。だがな、テメェに何と言われようとエレンは連れて行く。情けねぇ話だが、現状壁の穴をどうこうするには巨人の力が必要だ。テメェの硬質化能力もその為に使ってもらうぞ」

 

「……私の(アギト)だけでは駄目か?」

 

「駄目だ。体躯の小さい(アギト)じゃあ、穴を覆えるほど硬質化ができるか分からない。もしできない場合、手頃な岩を動かす必要があるが、(アギト)じゃ動かせるサイズもたかがしれてるだろ」

 

「だからエレンも連れて行く、か……はっきり言って無駄な行為だと思うがな」

 

「俺たち兵士はお前や壁の王と違って、民を見捨てるわけにはいかねぇんだよ」

 

 ジルケの表情が初めて明確な怒りに歪んだ。彼女にとって「戦いを放棄した壁の王」と同類と見なされることが、何よりも耐え難い屈辱であるようだった。

 

「まあまあまあ!落ち着いてって、二人とも!力を合わせてやっていこうじゃないか!ね?」

 

 ハンジの必死な取り成しの言葉だけが、重い空気の中に虚しく響いた。

 

 捕虜の身でありながらリヴァイやハンジを相手に一歩も引かず、これほど強気に渡り合うジルケの胆力には感服するほかない。

 だがそれ以上にアルミンは、彼女の底知れない思惑に内心身震いするのを止められなかった。

 

(……ジルケさんは自分が兵団にとってどれほど重要で、代え難い存在であるかを完全に確信しているんだ)

 

 そしてその推察は恐らく正しい、とアルミンは思う。自分達は壁の外のことを何一つ知らないのだから、生き残る為には彼女の情報と知恵が必要だった。

 

(僕達は既に一蓮托生なんだ。彼女の言葉が真実であれ嘘であれ、僕らはもう彼女と同じ船に乗るしかない……)

 

 アルミンは、自分達を待ち受ける未来がこの夜道のようにどこまでも真っ暗であるように思えてならなかった。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 古城の石壁が夜の冷気を吸ってじっとりと湿っていた。ウトガルド城――かつては南方の守りの要であったろう古城は今や不気味なほど静寂に包まれている。

 

 吹きさらしの見張り台では、調査兵団の古参兵達が交代で油断なく夜の闇を睨みつけ、新兵達は疲労困憊の身体を壁に預け、浅い眠りを貪っていた。

 

 その中でコニー・スプリンガーは恐怖に顔を青ざめさせ、隣に座るライナーの肩を強く掴んだ。

 

「な、なぁ……ライナー。昼間に見たあの巨人のことなんだけどよ。やっぱり今思い返しても……あの巨人、俺の母ちゃんにそっくりだったような気がして……」

 

「まだ言ってんのかよ、コニー」

 

 ライナーは努めて平静を装い、内心の動揺を押し殺して呆れたように吐き捨てた。

 ラカゴ村で遭遇した、コニーの家の中に倒れ込んでいた巨人の話だ。もう何度聞かされたか分からない。

 

「けどよ!あの巨人、俺の方を見て『おかえり』って言ったんだ!」

 

「何度も言っただろ。俺には何も聞こえなかった。お前の聞き間違いだ」

 

「俺には確かに聞こえたんだ!あの顔と声……どう見ても俺の母ちゃんにしか思えねぇんだよ!」

 

(まずい……このまま喋らせるわけにはいかない)

 

 クリスタはともかく、調査兵団に巨人の正体を明かしたくはない。できれば兵団には何も知らないままでいてほしかった。

 

「コニー……お前なぁ、疲れてんだよ」

 

 ライナーはコニーの肩を掴み、軽く揺さぶる。正気に戻れと言わんばかりに。その裏、冷や汗が背筋を伝っていた。

 

「そりゃあ故郷が巨人に蹂躙されたとなっちゃ、幻聴が聴こえてもおかしくねぇくらい辛い気持ちなのは分かる。だがな、俺達は明日壁の穴を特定しなきゃならないんだぞ?俺達の働きが、何十万もの命に直接影響してるんだ。ありえねぇ妄想で無駄に体力を消耗してる場合じゃねぇだろ。とっとと寝ろ」

 

 普段より強い語気で言い放つと、コニーはびくりと肩を震わせ力なく俯いた。

 

「……わりぃ。そうだよな。俺、何言ってんだか……。すまねぇなライナー。こんな緊急事態だってのに取り乱しちまった」

 

「いや、分かればいいんだ……この危機を乗り切った後ならいくらでも聞いてやるからな」

 

 素直に謝るコニーの頭を、ライナーは少し乱暴に撫でた。内心では張り詰めていた糸がわずかに緩むのを感じる。ひとまずコニーを黙らせることはできた。

 

 その一方で、目の前の友人が抱える途方もない悲劇の一端を知りながら、偽りの言葉で慰めるしかない己の状況に、ライナーは鈍い痛みを感じていた。何も知らないコニーがただ哀れで仕方なかった。

 

(壁内に突如湧いた巨人……見つからなかった壁の穴。それにラカゴ村の異常な壊滅状況……通常の巨人襲来ではありえない。おそらくジーク戦士長の仕業だ)

 

 彼の上官にしてマーレ最強の戦士ジーク・イェーガー。その脊髄液を含んだガスを浴びたエルディア人は、彼の「叫び」一つで恐るべき無垢の巨人へと変貌する。

 壁が破られていないにも関わらず、これほどの巨人が現れたのだとすればその悍ましい所業がなされたことは想像に難くない。

 

 問題はなぜこのタイミングで、だ。

 

 故郷を発ってから五年。その間マーレ本国との連絡は完全に途絶えている。将来のパラディ島大攻勢を見据えての威力偵察か、それとも……痺れを切らしたマーレが自分たち戦士隊を迎えに来たのか。

 

(今ここで手ぶらで帰るわけにはいかない……!もし帰れば『鎧』は剥奪され、次の候補生に継承される……!)

 

 それだけは絶対に避けなければならなかった。故郷で待つ母と、名誉マーレ人として暮らすと約束したのだ。英雄になって必ず帰ると。その誓いを違えるわけにはいかない。

 

 ライナーは離れた場所で同じように壁に寄りかかるベルトルトへ、意味ありげな視線を送った。ベルトルトもまた彼の意図を察したように静かに頷いた。

 

 見張り役のリーネとヘニングを除く他の面々が寝静まった頃を見計らって、二人は息を潜めて塔の物陰で落ち合った。

 ライナーはマーレ軍が残していったのであろう缶詰を手元で弄びながら、ベルトルトに問いかける。声は極限まで低く抑えられていた。

 

「お前はどう思う?ベルトルト」

 

 マルコを死なせてしまった時の失態を二度と繰り返すまいと、ベルトルトは神経を研ぎ澄ませて周囲に鋭くアンテナを張っていた。

 

「君と同意見だ、ライナー。ジーク戦士長が来た可能性が高い。戦士長がこの島に来ている間は、本国の軍事力が大きく低下するはずだ。それにも関わらずやって来たということは、軍もそれだけ今回の作戦に本腰を入れていることになる」

 

「ああ。当然このまま手ぶらで帰ればタダじゃ済まない……だが手土産を持って帰れば話は別だ」

 

「……エレンとクリスタだね?」

 

 ベルトルトは一層声を潜め、確認するように言った。

 

「そうだ……特にエレンは絶対に連れて帰る。『進撃』であれ『始祖』であれ、マーレの保有していない巨人を持って帰れば、俺達の心象も多少はマシになるはずだ」

 

「クリスタはどのタイミングで?」

 

「……エレンと同時に攫うのが理想だ。アニの調査では、あいつは壁の秘密を知る一族の血を引いている……つまり、真の王家の可能性がある。『始祖』の力を万全に振るうには王家の血が必要だとマガト隊長も言っていたように、『始祖』だけを持って帰っても結局は宝の持ち腐れになる」

 

 ライナーは声をさらにくぐもらせる。計画を口にするだけで罪悪感が喉元までせり上がってくるようだった。

 

「アニへの連絡はどうする?」

 

「……ひとまず状況を見るしかないと思う。兵団だってまだアニの正体に気付いていないだろうし、僕らが下手に動いてアニの立場を危うくするような真似だけは絶対に避けたい」

 

「まあ、そうするしかねぇか……愛しのアニに迷惑をかけるわけにはいかないもんな」

 

「は!?」

 

 ベルトルトが顔を赤らめ、素っ頓狂な声を上げる。

 

「な、なにを!?」

 

「見すぎだ。俺じゃなくたって分かるくらいな」

 

 ライナーは暗闇の中でわずかに口の端を上げた。少しはこの重苦しい雰囲気が和らげば、という意図もあった。

 

「ちなみに、いつから好きだったんだ?俺が気付いたのは開拓地にいた頃だったが……多分もっと前からなんだろ?」

 

「や、やめてくれよ!僕は別にそんなんじゃ……!」

 

「いいじゃねぇか。お互い、先の短い殺人鬼同士だろ?こんなの俺達以外に誰が理解し合えるっていうんだ」

 

 ライナーはわざと揶揄うような口調で言う。

 

「しかし、こちらとしてはライバルが減って幸いって感じだ」

 

「ラ、ライバルなんて……まだ認めたわけじゃないのに」

 

「言ってろ。ま、これでフェリスに脈があるのは俺くらいなわけだ。粗暴なポッコなんてどうせ嫌われているだろうし……いや案外あいつはピーク派かもしれんか。ただ、マルセルだけが読めんな。あいつとは仁義なき争いを繰り広げることになりそうだ」

 

 ライナーとしてはベルトルトを少しからかって、励ますつもりだった。しかしベルトルトは思いの外その言葉に反応を示さない。むしろ、何か言いたげに口を開きかけた。

 

「……ライナー、君は――」

 

 ベルトルトが二の次の言葉を紡ごうとした瞬間。突如、塔の上階から鋭い声が響いた。

 

「全員起きろ!!屋上に来てくれ!」

 

 リーネの声だ。何事かと眠っていた者達が次々と目を覚ます。嫌な予感を覚えながら、ライナーとベルトルトは顔を見合わせた。

 

 屋上へ駆け上がった彼らを待っていたのは、絶望的な光景だった。月明かりだけが頼りの暗闇の中で、多数の巨人がまるで亡霊のようにウトガルド城を取り囲んでいた。

 

「何でまだ動いてんだ!?日没からかなり時間が経ってるのに!?」

 

 ゲルガーが信じられないものを見たかのように叫ぶ。その隣でコニーが壁の方を指差し、声を張り上げた。

 

「オイ!あれを……!ありゃあ巨人か?なんか……獣みてぇな奴が壁の方に向かってやがる……!」

 

 皆の注目が異様な姿の巨人へと向かう中、ライナーとベルトルトだけは互いに目配せをした。

 

(戦士長だ!)

 

 マーレ軍は壁内への本格的な侵攻に踏み切ったというのか。巨人の数を見る限り、そこまで大規模な兵力とは思えないが、ジークまで出向いているのは只事ではない。

 

 その思考を遮るように地を揺るがす轟音が響いた。一体の10m級巨人が塔へ体当たりし、その衝撃で石壁が軋んだのだ。比較的小柄な巨人達は塔の扉をこじ開けようと群がっていた。

 

「ふざけんじゃねぇぞ!!酒も飲めねぇじゃねぇか俺は!」

 

「新兵は下がっているんだよ。ここからは立体機動装置の出番だ」

 

 ゲルガーが怒りを露わにし、ナナバが装備のないライナー達を庇うように前に出る。

 

 同時に彼女は硬質ブレードを抜き放った。その合図を皮切りにリーネとヘニングも抜刀する。

 四人の歴戦の調査兵達は塔から身を躍らせ、眼下の巨人共へと向かっていった。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「なるほど、集団だとああやって戦うのか」

 

 獣の巨人の毛むくじゃらの指が、無精髭のように生えた顎をゆっくりと掻く。ジーク・イェーガーは巨大な獣の姿のまま、眼下に広がる古城での戦闘を壁の上から遠巻きに眺めていた。月明かりに照らされた石造りの城壁が、舞台装置のように不気味に浮かび上がっている。

 

 視線の先では、先ほど放った無垢の巨人が奇妙な機械を身につけた兵士達によって次々と屠られている。

 ワイヤーが空を切り裂き、白い噴射ガスが尾を引く。まるで予測不能な軌道を描く虫のように飛び回り、的確に巨人のうなじへと肉薄していった。

 

「思ったよりやるじゃないか」

 

 つい先ほど、兵士達が繋ぎ止めていた馬を狙って手頃な岩塊を投げつけてやった。あれで彼らの足は完全に奪えたはずだ。あとはこの高みからじっくりと「島の悪魔」とやらの戦いぶりを鑑賞させてもらうつもりだった。

 

 だが、蓋を開けてみれば予想以上に壁の兵士は手強く、ジークの用意した巨人達は面白いようにその数を減らしていく。

 

 あれが「島の悪魔」か。マーレで教えられてきたニュアンスとは少し違うが、人間の姿のまま巨人と真正面から斬り結ぼうとする様は確かに常軌を逸している。

 

(もっと効率の良いやり方があるだろうに)

 

 ジークは壁の民の無知ゆえの愚直さに、少々の憐みを覚えた。彼らは何も知らないのだ。自分達が何者で、なぜこんな戦いを強いられているのかさえも。

 

「しかし何回見てもすげぇな、あの動き。こうなりゃ予備の奴らも放っておいた方がいいか?」

 

 ジークはぶつぶつと独りごちながら耳の後ろを掻き、壁の下へと視線を落とした。暗がりの中、何十体もの無垢の巨人が命令を待つ忠実な猟犬のように古城の方を向いて蠢いている。

 

 ともあれ、今回の侵攻の主目的である威力偵察は十二分に果たせただろう。壁内世界の兵器レベルと戦術がこの程度ならば、マーレが本格的な大攻勢をかければひとたまりもない。

 

 問題は依然として島内を無数に彷徨っている無垢の巨人と、『地鳴らし』の脅威か。

 

 しかし、マーレが誇る航空戦力の前では無垢の巨人など物の数ではない。それに『地鳴らし』にしたって王家が『不戦の契り』に囚われている以上発動される心配もあるまい。

 

「先生が『不戦の契り』の破り方を教えるわけないから問題ないとして……あとはどうやって先生を連れ戻すか、だな」

 

 この壁の中にいるかもしれない彼女の行方を探し出すのは、途方もない労力を要するだろう。しかしジークは必ず見つけ出す気でいた。命の恩人である彼女のためにこそ、自分はこの力を手に入れたのだから。

 

 彼女を悪魔の島から救い出す。それが今のジークにとって最も重要な使命だった。

 

 そこまで考えたところで、ふと背後から微かな気配を感じた。壁を登ってくる独特の足音。振り返ると月光を浴びて、四つ足で駆ける影が壁の中腹まで迫っていた。

 

 車力の巨人だ。その背には無骨な装備が取り付けられている。

 

「ジーク戦士長」

 

 車力の巨人――ピーク・フィンガーが壁の上に到達し、落ち着いた声で報告する。

 

「本国から連絡が入りました。反マーレを掲げるエルディア人地下組織を新たに摘発したと。巨人兵器の頭数が足りなければ、補充する用意があるとのことです」

 

「また?最近多くない?」

 

「今回の件も裏でマーレ敵対国が資金援助をしていたようです。これまでの苛烈な植民地政策のツケが回ってきたのかもしれません」

 

「やっぱ戦争って良くないよなぁ……で、いつまでに返信が必要だって?」

 

「近日中に、とのことです。合わせて、今回の作戦の経過報告も行うようにとも付け加えられました」

 

 ピークはそう答えながらも、その視線は油断なく周囲……特に後方の暗い平原へと向けられていた。背後のパンツァー隊の気配を常に探っているようだった。彼女の冷静さの裏にある仲間への深い気遣いが窺えた。

 

「ピークちゃんって相変わらず優しいね」

 

「……どうも。話を戻しますが……一度撤収しませんか?これ以上の威力偵察は不要のように思いますし、一緒に来た兵士達の士気も落ちつつあります。それとも、まだ何か確認したいことが?」

 

 ジークは再び背後の古城へと視線を向けた。明滅する松明の灯りが見える。

 

 当初の予定では馬を潰した上で、あの兵士達を殲滅するつもりだった。だが、今は本国からの連絡の方が気にかかる。

 

(……まあ別にいいか。こいつらだけ仕向けておこ)

 

 ジークは「いや、特にないよ」とピークに短く告げると、獣の巨体を翻し壁の下へと軽々と飛び降りた。

 その直後、まるで堰を切ったかのように壁下で待機していた無数の巨人が飢えた獣の群れとなって古城へ向けてゆっくりと歩み出した。夜の闇に新たな絶望の足音が響き渡った。




疲れてるのはライナーの方という突っ込みはNG
なお本作のライナーは諸事情により原作より遥かに疲れているので、彼の独白やセリフなどは話半分程度に留めておいてください。

以下余談
「ジルケ(クルーガー人格)はこんな調子でよくマーレでスパイ活動なんて務まったな」と思われるかもしれませんが、流石に潜入先の病院ではこれほど明け透けに接することはなく、「腕は経つが、気が強く自己開示しない女医」として周囲と距離を置いていました。

壁の中で見せる強気な態度についても、アルミンの推察した通りですが、ようやく自分を偽らず気兼ねなくエルディア復権を志せるという解放感の表れであり、また兵団は自分を始末する状況にないという思惑も影響しています。

さらに補足ですが、転生した主人公(シュタイナー人格)は元のジルケの記憶を引き継いでいます(2話参照)
そのため急に別人のようにならないよう、当初は元のジルケの性格に合わせて振る舞っていたため周囲からはさほど疑問に思われなかったという経緯があります。

設定の説明が後付けのようになり恐縮ですが、今後とも楽しんでいただければ幸いです。
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