おっさんの大冒険   作:F-Shinji

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ケツデカ(決め付け)アルシェのお尻揉みてぇな~俺もな~って思って妄想してたら、何時の間にかできていた作品です。


プロローグ
001:おっさんと骨


 

 

————DMMO-RPG【ユグドラシル】のサービス終了前。

 

 

『お疲れ様でした。また、何処かで御会いしましょう』

 

 

ギルド【アインズ・ウール・ゴウン】のナザリック地下大墳墓の第九階層・円卓の間にて。

 

"ヘロヘロ"と言うギルドメンバーがログアウトをしたのを見届けたギルド長こと"モモンガ"は、すぐさまアバターの骸骨顔の視線をカクりと落とした。

 

 

「結局、最期まで残ってくれる人は居なかったか~」

 

 

モモンガの呟いた通り、これでログインしている《ギルドのプレイヤー》は残り彼一人となった。

 

しかし、その声色は特に沈んではおらず、同時にポリポリと頬を掻く仕草から、サービス終了を受容している印象を受ける。

 

そんなモモンガの《あっちゃ~ッ》と言ったリアクションを傍で見ている者がおり、今は彼の右隣に腰掛けている。

 

全身に銀白の鎧を纏う騎士の姿をしており、よく見ずとも所々に傷が有る事が分かる。

 

ゲームの仕様を考えると、本当に損傷している訳で無く《そう言う見た目の装備》なのだろう。

 

また、左前腕に盾が装着されており、背中には《龍殺しの剣(ドラゴンスレイヤー)》と言う、片手剣にしてはやや大きめなサイズの武器が納められている。

 

それにより、座っている銀白の騎士の背の武器は椅子を貫通して表現されており、これがゲームだと言う事をつくづく実感する。

 

 

「仕方ないよ、モモンガ君。誰にでも生活が有るからね。むしろ、この時期でアレ程の人数が顔を出してくれた事を喜ぶべきさ。君は十二分、このギルドの長として努め終えたと言えるよ」

 

「……そうですかね? 社長……」

 

「"元"社長だけどね。まァ、二人で遊んでいる時は、今更か」

 

「ハハッ、そう言う事です。社長こそ、すみません。ギルドメンバーでも無いのに、こんな時間にまで付き合って頂いて」

 

「とんでもないよ。私こそ"悟君"の御蔭でとても楽しませて貰った。むしろ、共にこの時間を過ごせる事を感謝したいくらいだ」

 

「俺こそ社長に、最初の誘いに応じて頂けてなかったら、此処まで清々しい気分で終わりを待ててなかったと思います」

 

 

モモンガこと"鈴木悟"に社長と言われた銀白の騎士のプレイヤー・ネームは"カツラギ"と言い、恥ずかしながら悟の勤める会社の元社長であった。

 

カツラギは率直に言うと悟の尊敬する恩師であり、人生の大先輩。

 

自分からは口が裂けても言わないが、仮に父の様な存在なのかと聞かれても、悟は否定しないだろう。

 

そんなカツラギは今や絶滅危惧種と言える、自分の会社の従業員の健康を第一に考えるホワイト思考を持っており、悟も同僚も社長の存在が有ったからこそ、リアルも楽しく過ごせていた。

 

だが反面、自分の健康は顧みないタイプで有り、少しでも業績を上げ、社員達の給料を上げたいが為に齢50を過ぎて倒れてからは、社長の座を退いて部下にその座を譲り、仕事に復帰してからは出勤日数を大幅に減らし、非常勤として社員のサポートに専念する事とした。

 

一方、社長の思考をしっかりと受け継いだ新社長や悟ら平社員の士気は十二分であり、カツラギが退きながらも会社は全く問題無く回っていた。

 

しかし、カツラギは仕事以外の生き方を知らなかった。

 

既婚者では有るが、妻は20年以上前に他界している。

 

彼が若くして倒産の危機に直面していた会社を受け継いだ際、妻に無理をさせてしまった事が原因だった。

 

それを死ぬほど悔いた為、今の会社の経営方針が在るのはさて置き。

 

前述の理由により、子供にも恵まれなかった為、彼は従業員を子供の様に可愛がってくれ、年齢的に悟は特にその恩恵を受けていた。

 

よって、やや距離感が近かった悟に飲み会の際《私が居なくても、会社が此処まで安定していれば、もう思い残す事は無いかもね》と退役老人の様な事を呟いたカツラギに対し、悟が咄嗟に提案したのがコレだった。

 

 

「————俺と一緒に、ユグドラシルを遊びませんか?」

 

 

言った直後、もっとマシな事は無かったのかと後悔した。

 

幾らなんでも、年齢が離れた恩師であるヒトに《ゲームで遊ぼう》は無いだろうと。

 

悟としてはユグドラシルは(運営がやらかす事は有るとは言え)神ゲーだが、自分が面白いと思っているモノが別の人にウケるとは限らない。

 

……とは言え、この時の悟は、心の底からカツラギに新しい楽しみを見つけて欲しいと願っており、そんな彼の想いが叶ったのか、カツラギは勧誘を了承した。

 

 

「私も感無量と言った所だよ。まさか、ゲーム未経験の新参がワールドアイテムである【聖なる狂戦士の鎧】を纏える日が来るとはね」

 

「いやあ、流石は後期に実装されたヤツですよ。お試しの模擬戦でその固有スキルを使われた直後、一瞬でやられちゃいましたもんね、俺」

 

 

結果的に、悟はカツラギとユグドラシルを大いに楽しめるに至った。

 

肌に合わなかったらどうしようと内心ドキドキしていた悟であったが、DMMOを知らなかったカツラギには衝撃的な娯楽であり、まるで少年の様にのめり込んでくれた。

 

悟はそれが非常に嬉しく、初めて恩返しらしい事ができると意気揚々とカツラギにユグドラシルのノウハウを教えた。

 

それで最初に重要となるのはプレイヤーとしてのロールだが、難しく無さそうな職業……と言うカツラギの希望に合わせつつ《前衛で回復もできるのが初心者向け》と上手く誘導して【テンプラー】所謂"宗教騎士"から始まり、【テンプルナイト】【テンプルコマンド】【デステンプラー】と職業レベルを上げて貰い、レベル100の神殿騎士を目指して貰う事とした。

 

その過程で、互いに相談してゲームの最終目標を【聖なる狂戦士の鎧】を手に入れる事とし、サービス終了が告げられた後も諦めずに金策を行い、遂に目標を達成したと言う訳だ。

 

そのお試しでデメリット無しのPvPを行ってみたが、結果はカツラギの圧勝。

 

だが、それもその筈。

 

悟は初めから、魔王ロールをする自分を、カツラギに倒して貰う事を目的としており、神殿騎士のビルドをして貰ったのも、全面的に自分を不利にする為だった。

 

薄々それに気付いていたカツラギだったが、彼はあえてそれを指摘せず、素直に助言を受け入れ、悟は悟で、魔王ロールを褒めて貰った上に《私はまるで勇者の気分だった》と満足そうに言って貰えて、まさに天にも昇る気分であった。

 

勿論、その過程で【アインズ・ウール・ゴウン】のギルド長としての活動も、しっかりと行っていたのは言うまでもない。

 

時にはギルドメンバー達と一緒に、カツラギともPTを組んでワールドエネミーの討伐にも赴いたりもしていた。

 

 

「だけど、ほぼ対人経験が無かった私が、いくら有利なビルドとは言え、熟練者の悟君に勝ててしまうのはやり過ぎだよねェ」

 

「それでも【聖なる狂戦士の鎧】は、敵の属性によっては真価を発揮できませんから、可愛いモンですよ。何せ【永劫の蛇の指輪(ウロボロス)】や【五行相克】なんかは、システムの変更すらできちゃうんですから。【聖者殺しの槍(ロンギヌス)】とかも説明するダケで頭痛がしそうですし、MMOでそんなの実装すんなよッ! ……てのが、率直な感想ですね」

 

「流石に12年も経つと、バランスが滅茶苦茶になるのも必然と言う事だね……」

 

「アレらが実装された辺りから、ウチのギルド含めて引退者が増えましたし……売り上げは一時的に上昇した様ですが……バランスどころか、ゲームがブッ壊れてサーバーが駄目になる前に、サービスを終了する事にしたって感じでしょう」

 

「素人意見だけど、ゲームシステムの変更なんて並大抵な手間じゃ無いと思うから、人手不足で首が回らなくなった可能性も有るかもね」

 

「えぇ。実装してから後悔したパターンかもしれません。次に遊ぶDMMOでは、バランスを滅茶苦茶にするアイテムの実装は控えて欲しい所ですね」

 

「何にせよ……そろそろ時間になるね。最期の場所は……決まってるんだよね?」

 

「はい。玉座の間に行きましょう。カツラギさん」

 

「うん。モモンガ君」

 

 

モモンガが立ち上がると、カツラギもそれに続く。

 

円卓の間を出ると、(このモモンガは名前を知っている)NPCのセバスとプレアデスの面々が待機していたが、ギルドのメンバーでは無いカツラギは、PTでも組んでいるのか襲われない様になっていた……のはさて置き。

 

モモンガは彼らに《付き従え》と指示し、追従させつつ玉座の間までやって来ると、ワールドアイテムでもある【諸王の玉座】に近付いてゆき、段差を上がり切ると振り返ってセバス達を再び待機させた。

 

一方、キョロキョロと周囲の装飾を見渡しながら歩いていたカツラギは、配置に着いたセバス達の横を素通りし、同様に段差を上がってモモンガの横までやってくる。

 

そんな二人の視線は、一瞬【諸王の玉座】の右隣で立っていたNPC"アルベド"に合わさったが、すぐに互いに向き直った。

 

 

「どうぞカツラギさん。お掛け下さい」

 

「ハハッ、そう言うと思った。けど、気持ちだけ受け取っておくよ。そもそも、リアルの私は座っている」

 

「ですよね~ッ。それじゃ、お言葉に甘えて……どっこいしょ」

 

「(後五分か……意外と話題が出て来ないモンだな)……って、モモンガ君。何をしているんだい?」

 

「それなんですけど、カツラギさん。コレを見て下さいよ。このNPC……アルベドの設定なんですけど」

 

「ず、随分と長いね……」

 

「全部読む必要は有りません。最後の一文ダケ見て下さい」

 

 

唐突にコンソールを開いたモモンガの言葉に、カツラギが後ろから回り込んでから見ると、アルベドの設定文の最後にこう記載されていた。

 

 

《ちなみにビッチである》

 

 

「……これを私に見せて、どうすると言うんだい?」

 

「実は、気持ち良くユグドラシルを終える為に、ギルドメンバーが作ったNPCの設定を含めたナザリック大墳墓の資料を、卒業アルバムみたいな感じで残したくて、全部メモしていたんですよ。カツラギさんには勿論、今でも連絡が取れるギルドメンバーにも送りたかったですからね。でも、この一文だけはアルバムに入れるか判断に迷っていまして……知恵をお借りできればと」

 

「フム。率直に言うと、入れるべきだと思うね。それを踏まえての【卒業アルバム】なのだろうし」

 

「そ、そうですよねッ。カットする事も考えてたんですが、やっぱ入れて置く事にします。だけど……」

 

「————ゲーム内の情報を変える事自体は自由……かな?」

 

「!?!?」

 

「モモンガ君の事だ。この短時間の話題すらも、予め用意してくれていたんだろう?」

 

「全く……カツラギさんには敵いませんね。そうです。スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使えば容易に改変できるんで……何か有ります?」

 

「そうだなァ……流石にビッチはアレだから、特定の人を愛しているとか?」

 

「だったら、カツラギさんがピッタリなんじゃないですか? 勇者に負けて改心したって感じで」

 

「いやいやいやッ。どう考えても、ギルドを長らく支えてきた君が愛されるべきだろう?」

 

「それこそ有り得ませんって! カツラギさんは人間種ですけど、俺なんて骨ですよ?」

 

「だとすれば、シンプルに聖母である、とか……美人だし」

 

「女神の方がしっくりくるかもしれませんね……美人ですし」

 

 

サービス終了まで後数分だと言うのに、モモンガが用意していた話題で盛り上がる二人。

 

このタイミングでNPCのアルベドにどんな設定を付け加えようと、時間に成れば全てが消える事から、互いの提案の内容は割とぶっ飛んでいた。

 

結果として、特定の誰かを好きだったり殺したかったりする系のモノはNGとし、ひとつずつ設定を付け加えると言う形で落ち着いた。

 

先ず、カツラギは《誰に対しても敬意を持って接する》とし、狡猾にも、そのピラミッドの頂点にはモモンガが単独トップに居るだろうとして満足した。

 

続いてモモンガだが、カツラギが告げた設定の入力を終えると《モモンガと精神を入れ替える事が出来る》と付け加えた。

 

 

「!? 成る程……コレは一本取られたな」

 

「前々から思っていたんですけど、神殿騎士とオーバーロードが一緒に戦ってると、絵的に不自然でしたからね。このアルベドと"神殿騎士カツラギ"なら、良い画に成りそうですし、ダブラさんじゃ無いですが色々と設定もでっちあげる事が出来て面白いかな~と思いまして」

 

「こう言うゲームだと、別の性別のアバターを使って遊ぶ事は、割と普通なんだっけ?」

 

「はい。ウチは異形種ギルドですから、性別はそのままドコロか無かった人も居ましたけど、人間種なら女性アバターの中の人の殆どは男性だったと思います」

 

「女性用で大して性能が良くない装備が、何であんなに高額なんだと思った事が有るけど、それも一種のビジネスとして成り立っていたと言う事かァ」

 

「えェ。誰かとは言いませんけど、ウチにもNPCに着せ替えさせる事が目的で、無駄に衣装を買い漁っている人も居ましたからね」

 

「あッ……(察し)それはそうと、私もモモンガ君……悪の魔王の側近。暗黒騎士として、アルベドみたいなポジションも良いな~と考えた事も有ったから、その名前を私と入れ替えても良いんだよ? ロールとしても、其方の方がバランスが取れているじゃないか」

 

「丁重にお断りします」

 

「だろうね。それで……精神を入れ替える事はできそうかい?」

 

「ハハハッ。まさか! アルベドのカルマ値も……変動無しです」

 

「逆に、フレーバーテキストで変動してたら怖いって……ともかく、そろそろ時間だね」

 

「そうですね。カツラギさん。改めて、楽しんで頂けましたか?」

 

「あァ。勿論さ。言葉では表現できないくらいだ。差し詰め今までの苦労が報われて、御褒美を頂いていると言った感じだね」

 

「俺こそ、カツラギさんと一緒に、ユグドラシルで無くなり掛けていた"楽しい"と言う感情を共有出来て、最高の形でこの瞬間を迎えられました。感謝してもし切れません。リアルにおいても、直近の健康診断でオールB以上だった事なんて人生で初めてでしたしッ」

 

「それは、社長の座を降りてから皆に推奨した、家庭栽培のキノコが効いて来たのかもしれないね。何にせよ、モモンガ君の努力の賜物に尽きるよ。君は《我々の居場所(かいしゃ)》の誇りだ……」

 

「……クッ……カツラギさん、次はどんなビルドで往くつもりですか?」

 

「私は同じ感じで良いかなァ……マジックキャスターにも憧れてるけど……」

 

「何にせよ、俺に任せて下さいッ! それじゃ、また……!」

 

「うん。また今度……!」

 

 

ユグドラシル内では、仕事の話は極力しない。

 

それが互いの暗黙のルールであった。

 

カツラギが会社を《我々の居場所》と置き換えていたのは、その為である。

 

よって、後日、会社で会おうとは言えず、やや遠回りな別れの挨拶となってしまったが、二人の間に蟠りなど存在しない。

 

 

《00:00:00》

 

 

12年間続いたユグドラシル……ギネス世界記録を次々と樹立したが、売り上げの為に空前絶後のバランス崩壊アイテムを次々と実装し、多くの賛否を残した伝説のDMMO-RPG……

 

そんなゲームを楽しみ続けた二人の最期は、ナザリック大墳墓にて王座のモモンガの左手の拳が、左隣に立つカツラギの右手の拳にコツンと合わされた直後に迎えられ、互いの視界は暗転した。

 

その瞬間のカツラギは、次に互いに遊ぶ予定のDMMOでは、できれば悟の婚約者が見つかれば良いな~とか思いつつも、新たな旅立ちへの期待に満ち溢れていたが……

 

 

《00:00:04》

 

 

「……うん?」

 

 

サーバーダウンが発生しない。

 

更には、カツラギは見知らぬ場所で一人で立っていた。

 

【聖なる狂戦士の鎧】を纏ったユグドラシルでの姿で。

 

今の彼では知る由もないが、その場所は【カッツェ平野】と言った。

 

この瞬間が、後世に名を残す、伝説の神殿騎士が誕生した瞬間であった。




■主人公のユグドラシルでの設定■

名前:カツラギ 
種族:人間
年齢:30歳
身長:185cm
体重:85kg
職業:神殿騎士 (信仰系の多くがLv10)
Lv:100

PNの由来は死ぬほど単純で、おっさんゆえに手頃な名前が全く浮かばず、無難に苗字を使っています。
捏造ワールドアイテムの【聖なる狂戦士の鎧】はベルセルクの狂戦士の甲冑の色を銀白に変えた感じの(あくまで)イメージです。
また、カツラギのドラゴンスレイヤーはロマサガ2で言うバスタードソードの様に片手でも両手でも使えます。
ベルセルクのドラゴン殺しよりは遥かに小さいです。
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