おっさんの大冒険   作:F-Shinji

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サトベドのルプスレギナに対する口調はタメ口なのですが、今後変わるかもしれません。
(ナザリック以外の人達には、アルシェ含めて普通の敬語のままです)


011:おっさんの鎧 【挿絵+】

 

 

神殿騎士カツラギ・彼の従者アルシェ・アルベドの姿をしたモモンガ・NPCルプスレギナ。

 

これより冒険者として登録する事となる4人だが、その前に、各々の姿を確認して置こう。

 

 

先ずはカツラギ。

 

彼は常にワールドアイテムである《聖なる狂戦士の鎧》を纏っているが、意外にも"目立ち過ぎる"装備では無い。

 

傷ついた銀白の全身鎧とは言ったが、所々黒い内着が見えてしまっており、現代の西洋で言う全く隅間の無いプレートアーマーでは無く、正面の胴から腰に掛けては白く染色された布で鎧が隠れていたりと、あくまでゲーム向けのビジュアルを重視したデザインと言えた。

 

よって、今の段階ではカツラギが背負っている《龍殺しの剣》や素顔の傷の方が目立つレベルであり、フルトを説得する際に使用した、ロバーデイクを肖った青い十字架のサーコートなんかは、むしろ外してしまった方が注目されにくくなる程であった。

 

ヘッケランやエルヤーの様に、実力がある者が近付いて良く見ると、とんでもない防具だと分かる様だが……《聖なる狂戦士の鎧》には、何と三段階のデザインが存在しており、カツラギが素顔を出している今の状態が一段階目。

 

所謂、非戦闘モードであり、見た目も相応に"ユグドラシル視点"では地味になっていて、こっちの街中で過ごすには最も適している状態と言う訳だ。

 

二段階目は、戦闘モード。

 

カツラギの意思のみで、レアリティよろしく顔が自動的に兜で覆われ、全身の"隙間"もなくなり、胴を隠していた布も鎧の魔力で装甲へと変化し、一段階目の面影が殆どなくなっている。

 

尚、あくまで見た目が変わるダケなので、ゲーム内だと(重さ含めて)ステータスアップ等の効果は無かったが、現実では隙間を隠した事による物理的な恩恵は有るだろう。

 

ユグドラシルのサービス終了直前から、フォーサイトと出会う直前までの彼の姿は、この"二段階目"であり、骨のモモンガ(悟)とゲーム内で話している時にも"このモード"だったのだが、逆にロールプレイ以外では、あえて一段階目に戻す必要が無かったと言えた。

 

尚、一段階目に下げる場合は、隙間が開くのは勿論、変化していた胴の装甲も何事も無かったかの様に白い布に戻る。

 

三段階目は、狂戦士モード。

 

二段階目の全身鎧の姿だと、まさに"神殿騎士"と言った見た目なのだが、このモードで初めて《聖なる狂戦士の鎧》と言う名に相応しい見た目となる。

 

しかし、ワールドアイテム特有の効果を発動させる事によって変化できる、時間制限有りのモードなので、常に維持できる姿では無く、臨戦態勢のモモンガを(特攻なので)圧倒できる程の爆発的なステータス・アップができる反面、相応のデメリットも存在するので、こちらではどうなるか分からないゆえに、カツラギとしては余程の事が無い限りは晒したくない"奥の手"である。

 

無論、本体は前述の"効果"そのものなので、段階的に姿が変化するのはオマケでしか無いが、狂戦士モードがデフォルトだったと思うとゾッとする話だ。

 

 

次に、アルシェ。

 

フォーサイト時代と比べると、杖が小型になったダケであり、四人の中では最も目立たないが、第三位階までの魔力系魔法を使いこなす、ミスリル級(上から三番目)の実力を持つ魔法詠唱者である為、見慣れないカッパー級の少女だからと言って、迂闊に絡むと痛い目を見るだろう。

 

実際、他のワーカーに絡まれた際に《睡眠》で昏睡させ、後にヘッケランが落とし前を付けさせた事も有ったらしい。

 

 

続いて、ルプスレギナ。

 

彼女はメイド服と修道服を足して割った様な姿をしていたが、街中でも大差は無く、悟の【出来るだけ目立たない様に】と言う要望に、セバスの提案でスカート部分のスリットが閉じられ、かつ左腕の腕章(?)が取り除かれたダケとなっている。

 

【挿絵表示】

 

また、転移前より持っていた聖印を(かたど)った様な巨大な聖杖は、流石に目立ち過ぎると言う事から、今は戦闘時にのみ肥大化して光を放つタイプのメイスに変更されており、非戦闘時は地味で小型ゆえに、アルシェの杖と同様に腰に差されている。

 

ちなみに、彼女が諸事情により銀製品が苦手だと言う事は、既にカツラギ&アルシェには伝わっている模様。

 

 

最後に、モモンガことアルベドの姿をした悟。

 

彼女(?)はアルベドの純白のドレスを黒くして足元を見せ、胸元の露出を無くした感じの服を着ている……と説明するダケなら単純だが、その容姿はタダでさえ美人であるルプスレギナをも上回り、翼を隠す為には仕方ないとは言え、それによる腰回りの肌の露出は犯罪とも言える魅力を(かも)し出している。

 

よって、必然的に黒いフード付きのマントを纏う事にしているが、モモンガの持つ、彼女の身長よりも長い聖遺物級の武器である《黒竜の杖》も強い存在感を表していた。

 

悟がその杖を選んだのは【服とデザインが似ているから】と言った割と単純な理由なのだが、ユグドラシル視点では容易に作成できる微妙な存在ながら、名前からしても"こちら"では破格の性能を持つ伝説級の杖と言え、デカ過ぎて邪魔と思った際には、(この杖に限った話では無いが)その場で浮遊させて両手をフリーにしたり、追従させる事すらできる便利な杖である。

 

その為、違う意味では目立ってしまうだろうが、容姿で目立つよりはマシであるし、カツラギのみへの注目を逸らすと言う役割としては悪く無いかもしれない。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

「ひっろ……」

 

「凄いですねェ……コレ……」

 

 

エ・ランテルの冒険者組合。

 

建物の外見から何となく分かってはいたが、その内部もカツラギ&悟が知る、RPGで言う冒険者ギルドとは桁違いの広さであり、扉を開いた直後は、思わず感嘆の息を漏らしたものだ。

 

一方、冒険者と言う連中は敏感らしく、見慣れない4人組が現れたと言う事で、近くに居た者達の視線が必然的に集まってしまった。

 

そんな野次馬達が注目・反応するのは、各々の首元・カツラギの剣と鎧・悟の杖・ルプスレギナの容姿・アルシェへの(あざけ)など、多岐に渡っている。

 

対して、カツラギ達にとっては(アルシェからの事前情報も有って)【誰もが通る道】だと想定されていたので、周囲に臆さずカウンターの方へを歩みを進める。

 

そして、一行が受付嬢の前までやって来ると、あんぐりとする彼女を前に先頭のカツラギが、何時もの優しい笑みをつくって口を開いた。

 

 

「すみません。新しく冒険者組合に登録したいのですが、手続きは此方で宜しいのでしょうか?」

 

「…………」

 

「あのッ?」

 

「!? は、ははは初めまして! ようこそ、エ・ランテル冒険者組合へッ! 勿論、此方で承らせて頂きます!!」

 

 

カツラギとしては仕事で取引相手と接する時と同じ言動をしているに過ぎないが、彼の営業スマイルを見て、明らかに受付嬢が顔を赤くしていたのは、何時もの事として……

 

 

「ね、ねえッ。誰よ? あの大きな剣の騎士様……!」

 

「あんなに長くて立派そうな杖も、見た事ねェぞッ?」

 

「聖職者っぽい女の人……悔しいけど、凄く綺麗ね……」

 

「そんな中に居るチビの実力も、気になるトコだな……」

 

 

一行は周囲の視線を他所に、淡々と冒険者となる為の手続きを行った。

 

登録の際は、モモンガが素顔を見せる必要が有ったが、カツラギとルプスレギナが壁を作る様に立つ事で"この段階"では騒ぎにならなかった。

 

しかし、昨日、冒険者組合の前で起きた事が起きた事だったので、近いウチに"あの騒動"が【噂の魔法詠唱者】に繋がるのは必然と言えよう。

 

また、カツラギがオスク商会の剣術指南役と言う身分を明かす事で、各々の装備も非常に優れていると感じた受付嬢から、原則的にはダメだと分かっていながら【組合長に掛け合えばアイアンからのスタートも可能かもしれない】と提案されたが、丁重にお断りして更に印象を良くしている。

 

更には、悟達はカルネ村に数週間滞在していた為、後にガゼフ・ストロノーフから感謝状や報奨金が届いており、前者も見せれば冗談抜きで、特例でカッパー級をスキップできたのだが、注目度が爆増するリスクが有りそうなので、その選択には至っていなかった。

 

 

「そ、それでは最後に、チーム名はどうなされますか?」

 

 

————受付嬢の言葉に、カツラギは他の3人に視線を移して、互いに頷き合うと、向きを戻して告げる。

 

 

「では【サブデュード】でお願いします」

 

「畏まりました……サブデュードで登録いたしますッ」

 

 

時より、唯一、字が書けるアルシェの手が必要となったが、3人とも自分の名前に限っては事前に書けるようにしていたので、滞りなく登録が終了する。

 

そんな彼らのチーム名はサブデュード。

 

リーダーは消去法により、自然な形でカツラギとなる。

 

サブデュードとは控えめな、落ち着いた……と言った意味合いを持ち、彩度が低い色や控えめな態度を表す際に使われる単語である。

 

その意味は、フォーサイト=洞察力として名付けたのであれば、サブデュードも分かる人には意味が理解できると考えられる。

 

さて置き、こんな感じで、あくまで普通に手続きを終え、一行が銅のプレートを受け取ると、先ず、ルプスレギナが悟と一言交わしてから冒険者組合を早足で去る。

 

続いて、アルシェがカツラギ&悟の傍を離れ、掲示板の方へと歩いてゆき、貼り出されている依頼の一つ一つを、軽く読み流す感じでの確認を始める。

 

同時に、カツラギと悟も動いており、2人はアルシェとは違い、モノクルを取り出して、それぞれ別の依頼書を一枚一枚、じっくりと言った様子で眺めていた。

 

 

「う~ん……我々で受けれる依頼は、採取や見張り・巡回ばかりな様だね……あッ、清掃やゴミ拾いなんてのも有る……」

 

「こっちでも確認しました。RPGの序盤の定番である、配達や護衛とかは、カッパー級じゃダメみたいですねェ」

 

「護衛は頭数が必要な依頼になら便乗できるみたいだけど、配達は、現実的に考えると下っ端に頼んで良い様な仕事じゃなかったね」

 

「意外と報酬が高いですし、先ずは社会的な信用が必要ってトコですか……」

 

「だけど、ユグドラシルでの依頼は経験値とゲーム内通貨を得れるダケで、それ以外は何も変わらなかったと言うのに、こちらではどんな些細な依頼でも、達成すれば社会の歯車として回ってゆくのだから、どうにも感慨深いね……」

 

「(ユグドラシルだと何万回も依頼が回されてるんだしなァ)……そうですね……何だか、ワクワクしちゃいますッ」

 

 

————そんな会話をしながら暫しの間、2人が熱心に依頼書を確認していると、流し読みを終えたと思われるアルシェが声を掛けて来た。

 

 

「カツラギ様、モモンガさんッ」

 

「どうだった? アルシェ君。見つかったかい?」

 

「はい。此方の掲示板では無く、あちらの方に貼り出されていました。付いて来て下さい」

 

「ありがとう。アルシェちゃん」

 

 

アルシェに案内された先の壁には、例の冒険者を狙った【通り魔】を討伐せよと言う依頼……では無く、その注意喚起を促す様な内容が書かれた張り紙がされていた。

 

勿論、犯人を捕まえた暁には報酬が支払われるとは記しているが、コレ以上は冒険者を失いたくないのか、金額は載っておらず、冒険者の認識票=プレートが奪われている以外は手掛かりが無いとの事なので、従来の依頼の様に掲示板から剥がしてから受付に持ってゆくタイプでは無い様だ。

 

カツラギと悟は、その張り紙もモノクルを使ってジックリと確認し、それを終えると3人で軽く視線を交わしてから、颯爽と冒険者組合を立ち去ってしまった。

 

一方、依頼を確認する熱心な様子から、サブデュードが何らかの依頼を持ち込むと思っていた受付嬢は、ドキドキしながら(主にカツラギを)待ち構えていたが、意外にも出て行ってしまった事で、目を丸くして唖然とした後にガックリと項垂れる事となり、冒険者の中にも、彼らが用事を終えたら声を掛けて御近付きになろうと考えていた者まで存在した。

 

そして、組合長の【プルトン・アインザック】も他の従業員からの報告を受けて、適当なタイミングで言葉を交わそうと、実は接触する機会を伺っていたのだが、前述の通りの結果となりはしたモノの、観察によって装備的にも"只者では無い"と分かったので、次の機会は逃さない様にと心に誓うのであった。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

……ロフーレの屋敷の応接間。

 

片側のソファーにはカツラギとアルシェが座っており、もう片方にはモモンガが一人分の間隔を空けて座している。

 

そんな早くもお馴染みとなっている、この"集合場所"で3人が待っていると、数分の間を置いて、ルプスレギナが入室して来た。

 

 

「只今、戻ったっす!」

 

「お帰りなさい。どうだった? 首尾は」

 

「バッチリ"借りて来た"っすよ~?」

 

 

ルプスレギナはモモンガの手に促される形で、彼女(?)の隣に無造作に腰を落とすと、ニシシと悪戯っぽい笑みを浮かべながら3つの金属を取り出し、それぞれをテーブルに並べた。

 

それは冒険者のプレートであり、金属はアイアン・ゴールド・プラチナ。

 

鉄と金の間の"シルバー"が含まれていないのは"お約束"として、ルプスレギナが早々と冒険者組合を去ったのは、外で《完全不可知化》の魔法を使用してから、(オートロックのマンションで良く有る)共連れで建物に再侵入し、従業員の人間達から気付かれずに、組合側が配布予定として用意しているプレートを拝借すると言う命令を、悟から受けていたからである。

 

実は、悟は【通り魔】を探るに当たり、バルド経由でカツラギより語られた【通り魔は冒険者の認識票を奪っているらしい】と言う話に目を付け、冒険者への登録後に"拝借"したプレートを利用して、犯人の居場所を特定しようと言う案を考えていたのだ。

 

しかし、カッパー級の新人に【犯人を第六位階魔法で特定したいので、プレートを貸してください】と言われても認められる筈が無いドコロか、第六位階魔法を使える事を知られる時点で大騒ぎになるので、色々な意味でカツラギ達が注目を集めている隙に、ルプスレギナに動いて貰っていたと言う訳だ。

 

尚、カッパー級は被害は受けれどプレートはそのままだった事が有ったらしく、自分達のプレートを活かす気は無かった様であり、カツラギは何となく【あんな魔法が有ったな】と察していた一方、アルシェは予想外の展開に目を丸くさせている。

 

 

「成る程……(そう言う事か……)」

 

「か、借り……た……?」

 

「大丈夫ですよ? アルシェちゃん。ちゃんと直ぐに返しますから。それでは早速《魔法三重化》《物体発見(ロケート・オブジェクト)》……フム……」

 

「……!?(し、師匠が使える最高位階の魔法を、こうも簡単に……)」

 

「どうだい? モモンガ君」

 

「……"同じもの"が二ヵ所に集中しているのを感知しました。アルシェちゃん。地図を良いですか?」

 

「は、はいッ」

 

「恐らく、住宅街の此処……かな? 《探知対策》も無いみたいですし、コレが吉と出るか凶と出るか。(目印を付けたし)ルプスレギナ。悪いけどコレ、返しに行ってくれる?」

 

「御安い御用っす!」

 

 

————通り魔の潜伏先の特定はアッサリと終了し、ルプスレギナはプレートを返却する指示を受けて再び応接間を去った。

 

 

「後はルプスレギナが戻って来るのを待ってから、この場所に突入して犯人を捕まえるダケですね」

 

「それが最も難しいと思うんだけど……モモンガ君は、相手の実力を、どう見ているんだい?」

 

「少なくとも、ユグドラシル出身では無いのは間違い無いと思います。未知の場所で連続殺人だなんて、リスクが余りにも大きいですし、(PKしまくってた)ウチらでも遣らないと断言します。下手すると別のチーム(ギルド)の(NPC含めた)仲間全員に追われる可能性も出て来るワケですからね」

 

「だとしたら、現地の強者が犯行に及んでいると言う事か。アルシェ君。帝国で、似たような事件が起こった事は?」

 

「私が物心ついた頃から、今に至る迄は、無かったですね……」

 

「そうか。では、この国で犯行を行いそうな者に心当たりは?」

 

「……リ・エスティーゼ王国には【八本指】と言う犯罪組織が存在し、その警備部門に【六腕】と言うアダマンタイト級の実力を持つ六人が居ると言う噂を聞いた事が有りますが、彼らの場合はもっと巧くやると思いますし、他国の者による可能性も考えられるかと……」

 

「要は、見当がつかないって事か……」

 

「ですから、私達と同格という事は無くても、こちらでの常識を凌駕する実力を持っていると考えるべきですね。プレートの回収とか【見つけて下さい】と言わんばかりの証拠を残して、かつ未対策なのも、容易に返り討ちに出来ると言う、自信の表れなんでしょう」

 

「……《物体発見》そのものを知らないと言う可能性は?」

 

「その程度の知識で"そんな犯行"をするなら、只のバカですよ。確保は容易に成るでしょうが、私は考えられる最高の強さを持っていると想定するべきかと」

 

「だとしたら、相手のレベルは100に迫ると?」

 

「(レベル100……そもそも、レベルって何の事だろう……?)」

 

 

さっきから聞いているアルシェにとっては、ツッコミ所が多い話ばかりである。

 

だが、事前に2人から【今後、君が良く分からない"ユグドラシル特有の話"をする事が多いかもしれない】と伝えられているので、彼女は疑問に思いつつも、余程の事が無い限りは口を挟まないようにしている。

 

そんなアルシェは、2人が第十位階魔法まで使える時点で、通り魔との勝負は見えていると思っているが、モモンガは真剣に(自分を含めた)仲間達の安全を考えて発言している事が分かるので、憶測で物は言わない様にしていた。

 

 

「まさか。王国最強のガゼフさんや、アルシェちゃんから聞いた"主席宮廷魔術師"の存在から100は無いでしょうが、高く見積もったら60前後は有るでしょうし、考え無しだと初手で容易にとはゆかないと思います」

 

「フム。ルプスレギナ君以上も有り得る訳か……街中で騒ぎは起こしたくないし、一気に制圧してしまわないと厄介な事になりそうだ」

 

「はい。ですから、私とカツラギさんが同時に掛かるとして————」

 

 

この後、念には念を入れてか、ルプスレギナが戻るのを待ってから、悟より3人は初動の展開を指示された。

 

上手くゆけば、ほぼカツラギと悟で済んでしまいそうだが、犯人の実力や伏兵によってはアルシェの《飛行》でルプスレギナと共に退避させたり、カツラギの狂戦士モードを切ったり、モモンガの魔法で撤退する事をも視野に入れていたりと、ゲームの頃と同様に彼女(?)の用心深さが伺える。

 

尚、プレイヤーが相手だとは思っていないので《山河社稷図》は使わないし、もしバレたら逃げられるので《遠隔視の鏡》の使用も控えていて、隠密スキルに秀でた配下のモンスターは、万が一第三者に【ナザリックの魔物】と感付かれて敵対されたら困るので呼んではいない反面、カツラギの鎧に加え、悟もワールドアイテムを所持しているので、そっちの方の対策はバッチリである。

 

一方で、カルネ村に居るセバスにもワールドアイテムを持たせており、レベル100の者を外に出す場合は、必ずそうするようにしている。

 

しかし、余程"見た目"が人間に近くない限りは、悟がNPCに外に出る許可を与える事は無く、レベル100なら尚更だが、セバスはカルマ値的にもアッサリと認められている。(ちなみにWIは何となく戦闘スタイル的に強欲と無欲が選ばれている)

 

さて置き、まだまだ"こちら"のパワーバランスに疎い事から、悟としては幾らでも警戒するべき事が浮かんでしまって頭の痛い話だが、それだけナザリックとカルネ村での生活を守りたいと言う意志が表れているとも言えた。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

……住宅街の外れの一軒家。

 

通り魔が潜伏していると予想される現場に近付くと、アルシェが周囲に《魔法持続時間延長化》が使われた《静寂(サイレンス)》が掛かっている事を察したが、たった"それだけ"なら、むしろ好都合なので、一行は歩みを止める事無く玄関の方へと近づいてゆく。

 

そんな四人は相手の油断を誘う為に、銅のプレートを首に掛け、悟は(相手の性別は分からないが)アルベドの容姿すら利用しようと素顔を晒している一方、カツラギも《聖なる狂戦士の鎧》の状態を、普段の第一段階目から戦闘モードに切り替えており、またもやアルシェを驚かせている。

 

また、応接間でカツラギの《沙羅双樹の慈悲》を筆頭に《魔法持続時間延長化》や《魔法位階上昇化》を使用した補助魔法も、悟とルプスレギナで(MPに余裕の有る範疇で)手当たり次第に掛けまくっており、それを見たアルシェは勿論、カツラギまでもが【此処まで徹底するのか】と口をあんぐりさせていた。

 

話を戻し、先頭のカツラギが(悟の希望で)勢い良く玄関を蹴り開けると、家具の殆ど無い、広々としたリビングの奥の椅子に、ひとつの人影が腰掛けていた。

 

モモンガの物ほど丈夫ではなさそうだが、黒いフード付きのマントを羽織っており、その人物はゆっくりと立ち上がると、無造作に近付きながら口を開く。

 

 

「へぇ……此処を嗅ぎ付けたかァ。なかなか勘の良い人達じゃ~ん」

 

「(女性か……)貴女が冒険者を次々と襲っていると言う、通り魔ですか?」

 

「そうだよォ? 別嬪さん。今からアンタ達も、その"憐れな被害者"の一人になるんだけどねェ? こう言う風にさァッ♪」

 

「!? ……ハンディング・トロフィー……」

 

「罰当たりな奴めッ」

 

「良い趣味してるっすねェ」

 

 

通り魔の正体は金髪のボブカットの若い(と思われる)女性であり、自分が行ったとアッサリと自供した。

 

それだけカツラギ達を逃がさない自信が有る様であり、冒険者達から奪ったと思われるプレートを軽装の鎧に打ち込んでいる辺り、過剰な自意識が十二分に伝わって来る。

 

対して、アルシェがドン引きし、カツラギが背中の剣の柄に手を添えて威嚇し、ルプスレギナが暢気な事を言うが、悟は冷静に会話を試みる。

 

 

「……何処の国の人ですか?」

 

「冥途の土産に教えてあげよっか? スレイン法国だよォ? 今は"向こう"になんて未練は無くて、こっちで新しい"お遊び"に夢中ってトコだけどねェ?」

 

「フム。スレイン法国か……」

 

「(装備は見た感じ大した事が無いし)生かして捕らえれて尋問すれば、あの件について、何か吐くかもしれませんね」

 

「あ"ァ!? カッパー如きの三下が、誰を生け捕りにするってんだァ!?」 

 

「……情緒不安定……」

 

「私達がホントに銅級に見えてるんすか? 節穴っすか? その目ッ」

 

「さっきから粋がってんじゃねェぞッ、雑魚どもが!! じわじわと甚振り尽くしてから、ブチ殺してやるッ!」

 

「!?(今、何か"赤いもの"が散った? ……いや……今は"タンク"として戦闘に集中するべきだな……)」

 

 

始めはニヤニヤとしていた通り魔だったが、狂人ゆえに沸点が低いのか、唐突に激昂すると両手のスティレットを構える。

 

対して、悟としては、ユグドラシル視点だと犯人の装備の性能は下の下なので、少々拍子抜けしたが、この自信と悪趣味からすると、相当な手慣れであると警戒せざるを得ず、初手の変更は無い様で、彼女(?)は《黒竜の杖》左手に、右手を真正面に突き出した。

 

一方、通り魔の女は、いざ戦闘状態に入ってからは意外と冷静であり、4対1をどう捌くのかを、一瞬のウチに考えついていた。

 

 

「(先ずは黒髪の女から狙う。あんな大層な鎧を着てるヤツの大剣なんかは、私に当たる訳が無いし、順番にドスドスッとやってから、最後は"でくのぼう"の顔面の隙間にコイツをぶち込んで終了~ってねッ)」

 

 

通り魔の女は、自分が【英雄の領域】に足を踏み込んだ実力者であると自負している。

 

よって、長い黒髪の魔法詠唱者の右手から、例え《火球》が飛んで来ようと《雷撃》が放たれようと、それを突進しながら掻い潜れる絶対的な自信が有った。

 

だが、魔法を避けると家屋が確実に損傷し、後に同僚から苦情を言われる様子が目に浮かぶが、綺麗な女どもを甚振れるとあらば甘んじて受けようとも思える。

 

……とは言え、悟が今まさに唱えようとしている"挨拶代わり"の魔法は、彼女(?)に視認されている限りは絶対に避ける事の出来ない規格外の性能であった。

 

 

「————《心臓掌握(グラスプ・ハート)》」




物体発見の利便性は捏造設定です。

クレマン戦は、原作だとモモンガが戦闘経験を積む為に舐めプしてましたが、既に頼れる前衛が居てかつ、警戒している相手なら初手は……(オラサーダルク感)

ですが、アッサリとクレマンが死ぬ訳では無く、(一応)斜め上の展開になる予定です。
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