六色聖典がひとつ、陽光聖典。
これまで幾度となく亜人達の侵攻から人類を守って来た、(実際に救われた者からすると)誉れあるエリート中のエリート部隊だが、例の襲撃と言う"上辺"しか知らない悟達がどう捉えているかは説明不要であろう。
しかし、彼らは(同情の余地は皆無だが)何人か死んでしまった偽装兵の一方、超格上が4人も滞在していた村に喧嘩を売っておきながら、幸い(?)にも【謎の第三勢力の介入】で誰一人死ぬ事無く撤退させて"貰えた"辺り、一応、各々の日頃の行いの御蔭で辛うじて命を繋ぎ止められたとも言える。
最も……重傷者は決して少なくないので、再び部隊としての体裁を整えるのには、暫くの時を要しそうだが。
「……なんちゃら聖典と言う事は、例の六色かい?」
「はい。亜人の集落の殲滅を基本的な任務とした、集団戦闘に秀でた部隊です」
「アイツ等が襲ってたのは亜人じゃ無いんだよなァ……!」
(ヒェッ……)
「モモンガ君。気持ちは分かるがリラックスだ……で、その話も真実なら、陽光聖典が村を襲ったのは、類いまれなるケースなのかな?」
「えッ? 人間の村を襲ったのですか? 陽光聖典が……?」
「おっと、先ずは其処からだったか」
————数分掛けて、カルネ村での騒動の説明後。
「……そんな事が……少なくとも、私は初めて耳にしました(実際、手を汚したのは使い捨てのロクデナシどもで、陽光は王国戦士長を殺す為"だけ"に送られたんだろうけど、された側にとってはどっちも同じだろうし……)」
「フム。一応、事情が有ってでの襲撃だったと言う事か……」
「結果が手段を正当化する事は無いと思いますけどねッ」
「御尤も」
「……えっと……彼らを、退けられたのですか?」
「えェ。ですが、私は何もしていませんよ。不可視化した部下達に【謎の勢力】として奇襲させ、30秒足らずで追い払わせはしましたが」
「あッ、ハイ……(何それ怖い……)」
————今度はクレマンティーヌが押し黙ってしまうが、ルプスレギナが続いて思い浮かんだ事をそのまま口にする。
「ところでクレちゃんは、六色の何処かに所属していたんすか?」
「はい。"漆黒聖典"に籍を置いておりました」
「し、しっこく……さっきから、ネーミングセンスが凄くないですか……?」
「私が口にするとムズ痒くなるね。ゴホンッ。ならば、漆黒聖典と言うのは————」
「あのッ。ひとつ、宜しいでしょうか?」
「うん? 何だい?(……アルシェ君)」
「差し出がましいかもしれませんが、漆黒聖典と言う部隊の話が終わっても、残りの三色に加えて、未だにスレイン法国の内情すら聞けていませんし、そろそろ、この"隠れ家"にズーラーノーンの誰かが戻って来る可能性を考慮するべきだと思うのですが……?」
「!? ……確かに、敵地の真っ只中だと言うのに、喋り過ぎていたかもしれませんね(バフが切れても面倒な事になっちゃうし……)」
「そうだったね……全て聞き出していたら日が暮れてしまいそうだし、いくら極悪人とは言え、何時までも女性を"その姿"で居させるのにも気が引けていた所だ」
「あ、アハハ……お構いなく……」
「じゃあ、ひとまず冒険者組合に突き出すのは"無し"にしますが、流石にバルドさんの屋敷に連れて行く訳にはいきませんよね……」
「う~ん……エ・ランテルで遣り過ごさせるには、どうすれば……この後はズーラーノーンを止めないといけないのに……」
————多くの魔法やアイテムを引き継いでいる彼らには"遣り過ごさせる"手段など幾らでも有るが、やはり"向こう"の常識に引っ張られているゆえに引き出しが極端に少ない様だ。
(わ、私……どうなっちゃうんだろ……? 絶対に大人しくしてるって言っても、説得力なんて微塵にも無いだろうし……)
「良しッ。だったら、逆転の発想って事で、カルネ村の部下達に見張らせるとしましょう! 改めて詳しい話を聞くのは、エ・ランテルでの活動を終えた後日って事でッ」
「!? だとすれば《転移門》を使うのかッ。(ゲームでは)何度も利用した事が有るのに、今の今まで浮かんでこなかったよ」
(あ、あの伝説の……でも、もう、何を見ても驚かない……つもり……)
「改めて考えると【スレイン法国の情報】に関しては、チーム(ギルド)の誰かも同席させて、拠点(ナザリック)の部下達にも共有させた方が手間が省けますからね。此処で聞くのは悪手だと言わざるを得ませんでした」
「では、全員でカルネ村に?」
「悪くは無いですが、それだと(何故か人気者に成っちゃって絶対に直ぐに戻らせてくれそうも無いから)部屋を貸してくれているバルドさん達に筋が通りませんし、《転移門》が誰にも見られてはいけないとなると、戻ってくる際に都合の良い場所が有りません。ですから、セバスを"こっち"に呼んで、彼女の身柄を預けたら直ぐに戻って貰おうと思います」
「……素人考えに過ぎないけど、無難で良いんじゃないかな?」
「わ、私も同じ意見ですッ」
「じゃあ、少しダケ待って下さい。事情を《伝言》で伝え次第、直ぐに繋げますので!」
通り魔の女、クレマンティーヌ。
"こちら"では指折りの強者で間違い無いのだろうが、カツラギと悟のチートと表しても良い能力の前では、空しくも初の依頼の雑魚に相応しい格下と言えた。
だが、何故か彼女は【トブの大森林】が騒がしい事以外の、ほぼ全ての件の情報源となっており、駄作のRPGですらこんなNPCを用意したりはしないだろう。
……とは言え、近隣の安全を最初の目標としている二人にとっては嬉しい誤算で有り、まだまだ情報を引き出せそうなので、一時的にカルネ村で匿う事となった。
本来、連続殺人犯の極悪人を"たかが村"が飼い慣らそうなど自殺行為でしかないが、女神(悟)降臨後のカルネ村の場合は、カツラギ&モモンガ級の執事が常に監視の為に控えており、仮に彼の目を盗んで村を抜け出そうとしたり、村人に敵対行動をとったりしても、瞬時に《八肢刀の暗殺蟲》に四肢を斬り飛ばされ、後日"達磨"状態で尋問される末路となるダケなので、実は全て演技で微塵にも懲りていなかったとしても、この程度の者への保険としては過剰ともいえる戦力を持っている。
そんな訳で、悟は携帯電話よろしく、リビングの隅で【至急、預かって欲しい者が居る】と素早く《伝言》を済ませてからパタパタと戻って来ると、宣言通りに《転移門》を開き、それを食い入るように見ていたアルシェは、余りの感動で【目をしいたけ】にさせていたが、すぐさまNPCのセバスが姿を現した事でゲートが消され、それと同時に彼は深く頭を下げた。
「お待たせ致しました。セバス・チャン、御身の前に参りました」
「!?(な、何よこのオジサマッ! もっと"悍ましい何か"が出て来ると思ってたのに……!)」
「ご苦労様、セバス。久々(?)の顔合わせなのに、今回は手短になってしまうけど、此方は(既に伝えていた)アルシェさんで、其方が……」
「本当に"あの"セバス・チャンか……(ルプスレギナ君も覚えていたから、野暮な質問かもしれないが……)私の事を覚えているのかな?」
————そう言って鎧を"一段階目"に戻して素顔を晒すカツラギに、セバスは今度は胸に片手を添えてお辞儀をしながら言う。
「忘れる筈が御座いません。こうして再び御会いできた事を、大変、光栄に思っております」
「ハハッ。私もさ……(ナザリックに招待されていた時は、一番目に入ったNPCでも有ったしな……)色々とモモンガ君を助けてくれているみたいで、感謝するよ」
「勿体ない御言葉です」
「(見慣れない2人が居るモンだから、最低限の発言に留めてくれてるってトコか……)そして、こっちが預かって欲しい人なのだけど……」
「ど、どうもッ」
「……余程の事情がおありのようですね」
クレマンティーヌの姿を見て僅かに瞳を見開いたセバスであったが、彼はモモンガのNPC時代の自分達への気遣いや、カルネ村の者達への対応を見て、彼女(?)が"極めて慈悲深い御方"だと確信している。
よってセバスは、彼女が"こうされる"相応の事をしでかしたのだと瞬時に判断し、やや冷めた表情でクレマンティーヌを見下ろしつつモモンガの言葉を待つのだが、彼女(?)も彼女でセバスが優しい紳士の鑑の様な人物だと言う事を理解しているので、今の彼の雰囲気を見て、事前に【ローブぐらいは羽織らせるべきだったかな】と若干焦っていた。
一方、アルシェにとっては、チーム(ギルド)の仲間の一人が【執事を絵に描いた様な人物】であったとは予想の範疇を通り越しており、(彼には丁寧な敬語を使っていない事から)実はモモンガは異国の貴族だったりしたのかと、コレで本日何回目の驚愕&絶句なのかとお労しい限りだが、先日リバースしていたからこそ、こうして強い"耐性"が付いているのかもしれない。
「か、彼女は犯罪者のクレマンティーヌ。今の私達にとっては"生きる情報源"と言っても過言では無いけれど、エ・ランテルでジックリと話を聞く余裕は無さそうだから、私達の用事が終わるまで、ひとまず村の(新築した俺達の)屋敷で匿う事とします。勿論、屋敷の外には出さずに監視を徹底する事」
「畏まりました。ですが、目に余る狼藉を働いた場合は、如何致しましょう?」
「(此処は心を鬼にして……)扱いを含めて貴方に任せるけど、殺してしまっても後に蘇生させるし、多少は目を離しても外には配下も控えているので、あまり気を張らずに務めなさい」
「ははッ。お気遣い感謝致します(やはりお優しい……逆に大人しくしてさえ居れば、それなりの施しを与えて良いと……)」
「クレマンティーヌさん?」
「は、はい~ッ」
「貴女は"向こう側"に着いたら、セバスに先程、私達に話した事を全て教えて下さい。そうしたら、後は死にたくない限りは静かに過ごしている事をお勧めします」
「……分かりました」
「セバスは、全てを聞き終えてから何か気になる点が有っても、私達が戻る迄は心にしまっている様に。皆が揃った時に、纏めて聞いた方が効率的ですから」
「承知致しました。ですが、恐縮ながら一つだけ宜しいでしょうか?」
「……何ですか?」
「彼女をナーベラルと接触させてしまっても?」
「話は聞かせず、世話もさせず、客人とダケ伝えて置きなさい」
「ははッ(分かってはいましたが、出発後の様子はお聞きになりませんか……最近ようやく、失言しない事を徹底しようと意識する様にはなりましたが、後の祭り。モモンガ様の【念入り】の警告を早急に破ったと言うのに、気付くのが遅過ぎますし、お優しいゆえに苦言は告げられずとも、信頼を取り戻すには長い時間が掛かりそうですね……)」
「……どうやら、話は纏まった様だね」
「はい。では、セバス。彼女の事を、宜しく頼みましたよ?」
「畏まりました。それではモモンガ様・カツラギ様・アルシェ様。後日、カルネ村で再びお迎え出来る機会を心待ちにしております。ルプスレギナは……粗相はしておりませんでしたか?『————(あまり)してないかな?』それなら宜しいのですが、引き続き皆様のお役に立てる誉れを忘れず、チームの一員として恥じぬ様に努めるのですよ?」
「了解っす! わおんわおん!」
セバスはルプスレギナの元気な返事(+自重しない姿勢)に軽い溜息を吐くと、再び深いお辞儀をしてから、既にモモンガが作り出している《転移門》を潜っていった。
そんな彼の背中に、クレマンティーヌも怖気づきながらもゆっくりと続き、それを見届けた悟がゲートを閉じると、"隠れ家"のリビングにはサブデュードの4名が残された。
一方、屋敷の(受け皿用の)一室に転移したクレマンティーヌは、(無理もないが)完全に戦意を喪失しており、用意された部屋で暫く大人しく過ごす羽目となる訳だが、食事は美味しいし、働かなくて良いし、(客室なので)ベッドはフカフカだし、(悟が滞在中に適当に用意した)娯楽までもが用意されているしで、スレイン法国を去ってから……いや、人生でも上位に入るレベルの落ち着いた日々を送れる事となり、(三日で慣れたが)当初は幻覚を疑う程の待遇と感じていたのは余談である。
(おかしいなァ……私って、狂人に捕まった三下じゃなかったっけ……?)
……
…………
……数分後。
一軒家を後にした一行は、そのままの流れで共同墓地に向かっている訳だが……
其処までの道中でカツラギと悟は並んで歩きつつ、こんな会話を交わしている。
「モモンガ君は、どう感じたんだい? 通り魔の一件。私は未だに頭がこんがらがってるよ……」
「それは私も同じですけど、得られた・かつ得られる情報を考えると、ポジティブに考えざるを得ませんね。予想は強さ・生死・情報が3-2-1だったのに反して、結果は1-2-3と完全に的外れでしたけど……ちなみに、生死の1は殺害で、3は"逃がす"です」
「な、成る程……まァ、単独で冒険者を狙う通り魔とくれば、無駄に強い割には有益な情報を持っていないと考えるのが定石かもだしね……」
「でも、危うく初手で殺してしまう所でしたが、あれらの情報を聞きそびれてたと思うとゾッとしますねェ」
「そうだね。スレイン法国は割と抗える勢力だったと知れたけど、そうで無ければ無駄に警戒を強め続ける所だった」
「そうれはそうと、巷を騒がせていた【連続通り魔事件】が、犯人が姿を眩ました事で未解決となった訳ですが、冒険者組合には何て説明しましょうか? いっその事、ほとぼりは勝手に冷めるでしょうし、放って置くのもアリかなと思うんですが……」
「う~ん……奪われたプレートは回収できた訳だし、匿ったのを"逃げられた"に変えちゃう以外は、正直に話した方がお得なんじゃないかな? 段階が上がるかは微妙だけど、名を挙げる事には繋がるだろうし、何より未解決のままだと、街の人達が安心できないからね」
「!? でしたら、また受付さんとの話はお任せしますッ。私には向いていませんし、何より"この姿"だと自分の言葉を気持ち悪く感じる時も有るんで……」
「……心中お察しするよ。反面、私は何時もの(仕事の)様に話すダケだから、何とかやってみるさ」
「私は墓地に着くまでに、ズーラーノーンの連中にどう対応するか考えて置きます」
カツラギと悟……いや、冒険者チーム【サブデュード】は最終的にはアダマンタイト級冒険者を目指し、その地位を利用して、いずれはナザリック周辺の土地を得ようと考えているが、今現在は第二の拠点のカルネ村の周辺の平穏・安全が最優先事項であり、連続通り魔事件・共同墓地での大規模テロ計画・死を撒く剣団の略奪行為の件を解決した後は即座にカルネ村に戻って【トブの大森林】の探索に繋げたい事から、今はカッパー級のままで問題ない事も有り、冒険者組合での清算(手続き)で時間を掛ける気は無い様である。
よってカツラギは、上手い事プレートを押し付けつつ、さっさと退出できそうな言動を考える一方、悟は悟でナザリックの事も有るので、現在の性別を理由に、頼れる元上司にリーダーとしての役割を丸投げするのであった。
さて置き、晴れてカルネ村の安全が十二分に確保できたとして、冒険者としての本格的な活動を"近いから"と言ってエ・ランテルで行う必要は無い。
スレイン法国も大概だが、王国も王国で知れば知る程【終わってる国】と言う現実を突きつけられるので、カツラギとしてはむしろ、冗談抜きで亜人に侵略されそうな【ローブル聖王国】や、(一応)オスク商会に所属しているゆえに皇帝を含めた他の権力者達から絡まれ難い帝国で活動して、段階をアダマンタイトまで上げてゆき、後に王国に対して【そっちで活動して欲しければ土地を下さい】と嘆願するのも悪く無いとすら考えている。
普通のチームなら、拠点(カルネ村)と近いと言うのは大きなアドバンテージとなるのだが、悟が《転移門》を容易に使えてしまう事から、サブデュードの冒険者としての活動に置いて、距離など何の障害にもならないのである。
「おや? どうやら着いた様だけど……モモンガ君?」
「はいッ。私に"良い考え"が有ります!」
「!?(私には到底、言えそうで言えないコトバ……流石はモモンガさん……)」
例の一軒家が内周部に在ったゆえに、外周部の共同墓地の外壁が見えるまで、それなりの距離を歩く羽目となったが、その間に簡単な流れを考えていた悟は、先ずは全員に《完全不可視化》を掛けさせてから、(門には衛兵が居るので)外壁を乗り越えて内側に侵入。
続いて探知魔法を駆使してアッサリとズーラーノーンの潜伏先を特定すると、すぐさま現場に向かって先制攻撃し、その戦いとも言えない十数秒で、何一つ悟られずに全員を容易に無力化させてしまい、後に全員が(彼らからパクッた縄で)縛られて意識を失った状態で、何時ものルートを巡回していた小遣い稼ぎの冒険者達に発見されると、すぐさま報告を受けたズーラーノーンの悪名を良く知るアインザックを始めとした冒険者組合側は、とっくに日が沈んでいながらも、深夜まで大騒ぎとなるのであった。
ちなみに、十二高弟のカジットが所持していた"死の宝珠"(レベル40相当)についてだが、アルシェが【危険な代物なので処分した方が良いのでは】と進言し、カツラギが同意すると、未だに"現代"の価値観を保っている悟が勿体なく思う筈が無く、彼女(?)の《上位道具破壊》によって消滅させられている。
そんな訳で、本日の(街中だが)冒険を終えた一行は(夕食などで)寄り道をしつつロフーレの屋敷に戻り、何時もの応接間で情報の整理を行ったりした後に、ようやく解散となったのだが……
「どうだった? アルシェ君。君も色々と気が滅入ったんじゃないかい?」
「……いえ……何だか、一周回って楽しくなってきました……」
「フフッ。やりますねェ~(やっぱり、俺が見込んだ娘だッ)」
(それに、モモンガ様"も"楽しまれている様で何よりっす♪)
————色々と"有り過ぎた"にも拘わらず、アルシェの感想は思いのほか前向きであった。
…………
……………………
……翌日、カルネ村の昼時にて。
モモンガの屋敷の庭の様なスペースに設置されている長椅子に【エンリ・エモット】と言う村娘と、彼女の幼馴染である【ンフィーレア・バレアレ】と言う少年が並んで座っていた。
うち、エンリは身分不相応の立派なメイド服を着用しており、ンフィーレアはその苗字から、クレマンティーヌが拉致しようとしていた、エ・ランテルの"バレアレ薬品店"の【あらゆるマジックアイテムを使える】タレントを持つ薬師"本人"である。
「それにしても、ンフィー……本当に戻らなくて良いの? "漆黒の剣"も帰らせちゃって……」
「大丈夫だよ、エンリ。彼らは【カルネ村と近隣の村が襲われた】って聞いて、心配になって確かめに行こうと思った際、万が一の事を考えて雇った護衛だったからね。流石に【モモンガ様】が戻って来られるまでの間、雇い続けるお金は持って来て無かったし、むしろ"伝言"を頼める冒険者を連れて来て良かったと考えるべきさッ」
「そ、ソウダネ……」
「何にせよ、皆が無事で良かったよ……他の村は残念だったけど……こっちはこんなにも"立派"になっちゃって、凄く安心して過ごせてるし、此処まで良くしてくれたチーム? ……の責任者のモモンガ様には、是非とも御会いして、僕からもお礼を言いたい……そして、どうにかして……」
「ンフィーがお屋敷の中を見学させて貰っていた時に"偶然"目に入った、赤いポーションを譲って貰う……だっけ? まだ、誰も使って無いみたいだから、本当に効果が有るかは知らないけど……モモンガ様の所持品と言う事は……」
「うんッ! 伝説によれば、真なる癒しのポーションは神の血を示すと言われていて————」
「その話は、さっきから何度も聞いてるから、もう良いや……」
「ご、ごめんッ」
「さて……とッ。そろそろ休憩時間が終わるから、モモンガ様のお屋敷に戻るね?」
「そう言えばエンリは、何故かモモンガ様に気に入られて、お屋敷に雇われる形になっているんだったね。ネムが凄く羨ましがってたよ」
「うん。年頃の娘が私しか居なかったダケだと思うけど、セバス様は凄く丁寧に仕事を教えて下さるし、この程度の事で恩が返せるのなら願っても無いかな?(お給金も貰えるみたいだし)」
「め、メイド服も似合ってるしねッ」
「フフッ。ありがと。それじゃあ、ンフィーも(力仕事の)村の手伝い、頑張って!」
「ぜ……善処します……」
(コレでモモンガ様ですら"憧れ"に留まっていたって言う伝説の【騎士様】みたいな方の給仕が出来たらメイド冥利に尽きるんだろうけど、流石に欲張り過ぎよね……)
————しかし、後日。
当時、直ぐに巡り合える可能性などほぼ無いと思い込んでいたモモンガが、色々と誇張しまくって伝えていた彼女(?)の憧れの騎士様(カツラギ)が、本当に現れてしまったので、なんちゃってメイドだったエンリは緊張し過ぎて給仕ドコロではなくなる羽目となるのでした。
尚、エンリ(16)を雇おうと思ったのは、それなりの規模となった屋敷を、カルネ村の守護をも担うセバスとナーベラルの2人だけで管理させるのはブラック過ぎると考えた為なのだが、悟の例の"親戚のおばさん"ムーブとしての側面もあり、更にはカツラギと再会する前での選別だったので、何とも言えない思考回路である。
サトベド「罪の無い人達を虐殺するだなんて、許せねえ……!」←かわいい
原作ジル「おい」
ガービー「結果が手段を正当化する事は無い。ところで将軍……」
おっさん「いや……どちら様?」
何時の間にかサトベドおばさんが、おっさんを接待する話になってきました。
(でもアルシェが居てアレなので、エンリを嗾けても1ダメも受けない模様)