おっさんの大冒険   作:F-Shinji

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つまらないつまらない説明回……(その2)
盛り上がる話まで、もう少々お付き合い下さい。

骨「わァ……あ……」(社長が傍に居ない)
おっさん「泣いちゃった!?」

補足:Wikiを見るとヘッケランは20歳くらいだそうですが、拙作では25歳くらいの感覚で書いております。


004:おっさんの依頼

 

 

カッツェ平野駐屯基地から帝都アーウィンタールへの距離は、馬車で四日ほど掛かるとの事。

 

本来、モンスターの警戒や馬の疲労を考慮すると一週間が妥当らしいが、【フォーサイト】の場合はロバーデイクが持ち馬に適度に補助魔法を掛け、広い視野を持つイミーナがいかなる弊害でも早期発見し、移動中は常に臨戦態勢を維持しているヘッケランとアルシェが(滅多に出ないが)街道に出現する程度の魔物なら前者の二人に追加の負担を掛ける事無く即座に倒してしまえるので、帝国の領内なら極めて移動が俊敏に行えるらしく、それも彼らをたった2年でミスリル級のワーカーチームへと押し上げた要因の一つと言えた。

 

ロバーデイクから【ナントカ級】の説明も受けた際、大方、戦力と品行方正を足して割った平均に比例して段階が上がってゆくと言う認識をしたが、こう言う【第三者からは察せられない努力】も大きく絡んでいそうであり、道中、カツラギはその模範的な例を最前列で見てとる事が出来ていた。

 

冒険者のドロップアウト組が誉れある(?)ミスリル級を安易に自称すると苦情が来そうな反面、このフォーサイトならばその評価に値するのが頷けた。

 

一方、確実に需要が有りながらも、リ・エスティーゼ王国側は未だに街道に手を加えようとしないので、敏速な移動はインフラが整備されている帝国ならではの【強み】らしい。

 

 

「(馬に補助魔法か……その発想は無かったな……マウントのアバターなんて、ただ商品の金額と移動速度が比例していたに過ぎなかったし……)」

 

 

ヘッケランには【クライアントの手を煩わせる訳にはいかない】と言われているので、外の景色を楽しみながら思考させて頂いているカツラギ。

 

まだまだ頭の中で情報整理が出来ていないが、帝都に辿り着くまでの時間が縮まったのは有り難い。

 

遅かったら遅いで別の利点も有りそうだが、カツラギの一番の目標は、悟を探す事……それダケなのである。

 

当然【だったら一人で走って探しに行きゃ良いやんけ!】と言うツッコミが浮かぶだろうが、やはりレベル100のエネミーや敵対プレイヤーの存在は捨て置けず、己が遭遇していないダケで別の地域で索敵や現地人との接触を行っている可能性も考慮し、彼は【急いで探す事を意識するが、現地人の常識に寄った範疇で】と言うルールを自分自身で作っていた。

 

尚、目立ちたくないのに【聖なる狂戦士の鎧】を装着するのは、身を守る手段として必要だとしても、それが矛盾していると言われるとその通りだが、最大の理由はやはり【悟】の為である。

 

転移した場合の彼が(恐らく)【アンデッド】だったとしても町を攻撃したりしない【人間】なのは確信しているが、潜入する場合は必ず変装する筈なので、向こうから見つけて欲しいと言う考えが大きいのだ。

 

先日、酒場で似た様な事を返されたヘッケランは、身を守る手段としての装着が最も優先度が高いと感じていたが、カツラギは悟と早く再会できる効果的な手段として鎧を脱ぐ必要が有らば、躊躇なくそれを徹底できる男だとは言って置こう。

 

しかし、自分の妥協しない姿勢に反して、悟の捜索の為に他の人間を直接動かす事は今のところ考えておらず、カツラギは思考を続ける。

 

 

「(彼らは本当に良いチームだけど、売却が一通り終わったら、ひとまず距離を置く方が良いな……)」

 

 

帝都への道中、フォーサイトとはキャンプ=野宿を共にする機会があり、必然的に5人で鍋を囲んだりもしたので、割と距離も近くなっていた。

 

うちヘッケランとイミーナは、コミュニケーションにより互いに付き合っている事が知れ、かつ(何故かは予想がつくが)貯金が趣味で何時の間にかワーカーになっていたとの事。

 

ロバーデイクについては、より多くの人を治療する為に神殿を離脱し、寄付をも兼ねる為にワーカーとなった、ホワイト思考のカツラギですら眩しく感じる程の善人。

 

現実世界の価値観から考えると、老後はどうするんだと心配になるが、第三位階信仰系魔法を使える時点で問題無いっぽく、魔法の使い勝手の良さを痛感する。

 

だが、唯一アルシェだけは【多額の借金を返済する為】と、止むを得ずワーカーになったと言うニュアンスであったが、彼女はその理由を話そうとしなかったので、カツラギも無理に聞く事はしなかった。

 

仮に自分が踏み込んだとすれば、話してくれる可能性も有るが、もし帝国に自分が目を付けられた場合、それを【弱み】としてフォーサイト側に迷惑が掛かっても困るのだ。

 

少し調べれば、唯一カツラギと繋がりが有ったのがフォーサイトと言う事がバレるのだから。

 

また、フォーサイト側も相変わらず【怪しさ満点】の自分の多々有りそうな疑問点について何も追及して来ない事から、カツラギとしてもアルシェの境遇を聞くには、相応の責任が生まれるとも思っていた。

 

勿論、それらが考え過ぎだと言うのは百も承知だが、ヘッケラン達の気遣いで考え事の機会に再三恵まれたのが、彼が無駄に用心深くなっている原因だった。

 

その横顔はまさに【真剣】であり、普段はフォーサイトの面々に見せない表情。

 

やや間を置いて隣に座るアルシェは、恐らく……私達には到底理解できない苦境に立たされていて、その対応を真面目に考えているのだと予想する。

 

一方、割と当たっており、実際に集中して帝都での様々なイベントを予想していて、アルシェは勿論、気さくな性格のヘッケランですら迂闊に声を掛けるのを躊躇う程であった。

 

 

「(落ち着いて、この美しい景色を堪能できるのは、何時になるやら……)」

 

 

————この時点では帝都も、カツラギにとっては魔都と疑うべき、未知の領域であった。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

帝都アーウィンタール。

 

其処で危険が伴うかもしれないと警戒していても、環境汚染が進んでいる世界に住んでいたカツラギにとっては、遠目から見ても形容できない感動を覚えた都市だった。

 

一応、ユグドラシルでも造りダケなら上位互換の都市は幾らでも有ったが、ゲームではショップや精錬を始めとした施設を集束させて利便性を向上させる必要が有る事から【広くする必要が無い】為、規模で言えば帝都の方が桁違いに大きく、そもそも此方は現実なのである。

 

反面、フォーサイト一行には見慣れたモノであり、イミーナ含め外観の様子を見ても特に何も感じなかった事から、カツラギは一瞬だけ安心するも、即座に気を引き締め直して馬車が帝都に到達するのを今か今かと待った。

 

それから自然な流れで検問に差し掛かり、帝国衛兵に下(馬)車を求められると、ヘッケラン達に便乗する感じでカツラギも続くのだが、帝国衛兵はフォーサイトの事は十二分に知っているが、見慣れない(顔は出している)全身鎧の戦士の姿には首を傾げるが、それにカツラギが(苦し紛れに)礼で応えると、何とロバーデイクが【彼の身元を保証する】と説明した。

 

 

「(!? み、身元を保証? ……私の……?)」

 

 

————聞いてない。

 

どう言う事なの……?(レ)

 

茫然とするカツラギだったが、そう言われた帝国衛兵は【同業者か!】と瞬時に納得し、それダケでフォーサイトと言うブランドの信頼性が伺えるも、彼にとっては気が気では無い一方。

 

それからトントン拍子に話が進んでゆき、先ず、キャンプや消耗品等の物資の点検はしっかりと行われ、カツラギとて(ダミーも用意しつつ)荷物の検査をされたが【問題無し】と判定される。

 

続いて、フォーサイトがカッツェ平野へアンデットの討伐に赴いていた事を知っている帝国衛兵が現場に居り、戦利品と思われる革袋の量は従来より多いが【何時ものパターン】なので、特に中身を改めてまで検査する必要性は無く。

 

カツラギが其処で知り合った協力者だと在らば【この段階】では難癖付けて引き留める重要性も感じられず……早い話、王国には流したくないので、各々は問題無く検問を通過できたのであった。

 

 

「衛兵の皆様。お騒がせして申し訳ありません。それでは、失礼致します」

 

 

天井のシミを数える感覚で、成すがままに検査を受け続けながらも、全てが終わると丁寧に礼を告げて馬車に乗り込んだカツラギ。

 

その直後、ヘッケランに事情を丁寧(意味深)に聞いてみると、実はサプライズで意図的に隠していた様であり、更にはフォーサイトの総意だったらしい。

 

 

「(彼が腹を括ると言っていたのは、コレが理由か……私も、まだまだ考えが浅いな……)」

 

 

つまりロバーデイクまでもが最初から共犯……帝都に入る為には検問を通る必要が有り、初見の者が訪れた場合は割と面倒な検査を受ける事を黙っていたのだ。

 

だが、それを話すとカツラギは帝都を目指すのを遠慮、もしくは一人で入る事を選ぶと予想され、特に後者の場合は一悶着起こってしまい、帝国の【上】の人間に通される可能性も高いと考えられた。

 

仮に、カツラギが強大な力を活かす思考ならば、瞬く間に皇帝に召し抱えられて英雄と称えられる存在となり、適材適所と言う事で済むが、それに興味が無ければ【目立たぬ人探し】どころではなくなるので、フォーサイトの選択は決して間違っていた訳では無いが……

 

 

「(彼らが保証人に【なってくれた】事で、もう只の知人では無くなってしまった……)」

 

 

長い思考時間で、アレだけフォーサイトを巻き込まんと考え抜いていた自分は、一体なんだったんだろう。

 

ちなみに、検査中にアルシェと目が合った際、苦笑しつつウィンクしていたのは不覚にも可愛いと感じた。

 

反面、イミーナはともかく、ドヤ顔していたヘッケランとロバーデイクには少しムッとしたが……

 

悪く言うと有難迷惑ながら、それを【なってくれた】と捉えた辺り、彼の人の好さが伺え、何にせよ無事(?)に帝都に入れたカツラギだったが、ほぼ全ての道路・歩道がレンガや石で覆われている事に感心する間も無く……

 

 

「(し、しかし……まだだ。此処まで栄えている都市なら、私【程度】をお偉い様方が注目する可能性は低い筈……)」

 

 

フォーサイトが巻き込まれない可能性。

 

所謂【いくら自分でも帝都では目立たない】と言う、僅かな希望に賭けるのだが……

 

種明かしをした後、馬を操るイミーナを外に(革袋の事も含め)色々な意味で【うまくいった】と軽くハイタッチするヘッケランとロバーデイクの姿を見させられた事で、流石に溜息が出てしまった。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

アレから、ワーカー御用達の酒場兼宿屋の【歌う林檎亭】で宿を取ったカツラギは、フォーサイトと手分けして、三日掛けて【特別部位】を売り歩いた。

 

フォーサイト側はアルシェ含め、各々が交渉が必要そうな店に赴いた一方、カツラギは(あくまでクライアントに対しての姿勢を崩さない)ヘッケランから受け取った【売却する店が何ヵ所か記された帝都の地図】を参考に、観光・探索を兼ねたソフトな売却を推奨されたのだ。

 

対して、それに首を傾げつつカツラギが該当する場所に向かってみると、現代で言う【パチンコ屋の近隣に構える例の店】みたいなモンが有り、彼がブツの入った袋を渡すと、中を確認した店員は直ぐに清算して金を差し出して来て、それを受け取ると何事も無かったかように別の作業を再開していた。

 

 

「(成る程。あっちの【ドラゴンが如く】って映画でも、商品を納品したら直ぐに現金が出て来たシーンが有ったなァ……)」

 

 

それに関しては偽札だったのは、どうでも良いとして。

 

高額の特定部位以外の売却が終わり、再び5人でグラスを合わせた翌日の正午辺り。

 

カツラギは何時もの【頭だけを晒した全身鎧姿】で、(宿を取った為)フォーサイトが利用する事になっているテーブルに一人腰掛けていた。

 

 

「(売却がてら、割と注意深く見渡したつもりだったけど、結局は空振りだったな……)」

 

 

今現在、アルシェは(何故か重い足取りだったが)実家に帰っており、ロバーデイクは神殿に祈りを捧げに向かっていて不在。

 

そしてヘッケランとイミーナは、ワーカーたるもの自分で仕事を探さないといけないので、報酬の良い依頼を求めて走り回っているのは、さて置き。

 

カツラギはこの三日間で悟の事は勿論、自分と似た様な境遇の者や、それに関する噂なども探ってみたが、完全な【無風】と言う結果だった。

 

つまり、帝都には【アンタも転移食らったの?】と言う者も、闘技場に唐突に現れた場違いの強さのホープも、皇帝に急遽仕える事となった英雄も、人間に友好的な骸骨の目撃情報も、何一つ有りもしなかったと言う訳だ。

 

そうなると、自分が徐々に浮いてしまってゆくのが懸念され、その謎ゲージが最大となったら、何かしら面倒な事が起きてしまうだろう。

 

自意識過剰になったつもりも、己惚れる気も毛頭無いが、ロバーデイクから教わった常識を客観的に考えると、第十位階魔法を使える自分は、悪く言えば擁護できないレベルの【化け物】なのだから。

 

だとしても……それはそれで仕方ないとして、次に自分が打てる手とは何だろう?

 

カツラギが更に考えを続けようとした時、アルシェを除くフォーサイトの3名が【歌う林檎亭】に戻って来た。

 

 

「奇遇ですね。三人同時ですか。それで……どうでした? 二人とも」

 

「いや、ダメだった。そう早くは見つからねェな」

 

「こっちも成果無し。普通の依頼ならともかく、それなりの報酬となると……ね」

 

 

溜息を吐きつつ、テーブル前の椅子に腰掛けるヘッケランとイミーナ。

 

それを気遣ってかロバーデイクは四人分の飲み物を注文すると、同様に座して口を開いた。

 

 

「そう言えば、カツラギ殿も……ッと……失礼……」

 

「ロバー……お前、そう言う話題は……(折角、昨日は有耶無耶にしたってのに!)」

 

「ご、ごめんなさいッ。良く言って聞かせますから……!」

 

「!? あッ。いえ。別に、意気消沈していた訳では有りません。(骨かもだし)私にとっては、仲間が居なかったと分かったダケでも満足でした。ただ、今後の事を考えていたんです」

 

「今後の事……ですか……? それは————」

 

「止せ、ロバー。容易に踏み込んで良い話じゃ無いだろッ。俺達との契約は済んだんだし、明日にでも帝都を離れるのも、カツラギさんの自由だ。お前がこの人を買ってるのは分かるが、フォーサイトは帝都ならではのチームってのを忘れるな。少なくとも、アルシェが居る限りは、此処を離れる訳にはいかねえ」

 

「私とヘッケランだって何か力に成れればッて話してたけど、身の程を弁えるのも重要だしね……」

 

 

ヘッケランとイミーナの言葉に、巨体を丸めてしょんぼりするロバーデイク。

 

思えば、帝都に辿り着く前に色々な事を考えていたモノの、こうも早く(プレイヤー的な視点で)何も無いと感じるとは想像していなかった為、その後の事は何も考えていなかった。

 

しかし先程、思考を中断する羽目になったので、今現在は何となく、ドリンクを口に含みながら雑談をし始める三人を眺めていたが……カツラギは唐突に一つの予定が浮かんだ。

 

 

「ところで、皆さん。一つ、質問を宜しいでしょうか?」

 

「えッ? あァ……俺達に答えられる事だったら良いんだが……」

 

 

今後、自分の保証人と【なってくれた】フォーサイトに迷惑が及ばない様にする為……

 

先ずは、その準備段階として、今は姿の無い【彼女】の事情を聞くと言う事を。

 

 

「アルシェ殿の【借金】についての詳細を、詳しくお聞かせ願えませんか?」

 

『……!?』

 

 

カツラギの予想外の質問に対して、三人は同時に顔を見合わせたが、直ぐさま頷くと、ヘッケランが説明してくれた。

 

アルシェ・イーブ・リイル・フルト……フルト家は所謂、鮮血帝から【無能は要らない】と貴族位を剥奪された没落貴族だが、両親(特に父)はソレを受け入れられないまま【人気が低迷した作家】の様に浪費を抑えようとせず、果てにはタチの悪い所から借金をしながら美術品を買い漁ると言う愚行を重ねていた。

 

それにより、アルシェは帝国魔法学院を自主退学してまで働かざるを得なくなり、賽の河原が如く、いつ終わるか分からない借金の完済の為に、ワーカー家業を続けていると言う。

 

まさに、両親は前述の鮮血帝の言葉をそのまま行動で示していると言え、アルシェの前では控えるだろうが、ヘッケランは【全くその通りだ】と断言した。

 

よって、今現在、フルト家の借金はアルシェが働く事を決意した時の金貨300枚から始まって、モタモタしているウチに金貨350枚と増えてしまったが、ワーカーとして活躍する様に成った彼女は、何とか金貨350枚以上には増えない様に相殺しつつ、手元に残った僅かな金額を貯金してゆき、バカ両親が高額の商品を買った場合は、それを切って350枚の数値を維持する事にしていた。

 

その辺りで踏み止まっているのは、使用人が何とか必死で調節してくれている恩恵でも有り、金貸し側も金貸し側で、加減を誤ると破産して水の泡になるので、適当に口八丁で誤魔化しつつ、単純なバカから搾れるだけ搾り取り、最後はアルシェと妹の双子の身元を抑えるつもりだろうと、ヘッケランは鋭い視線で語った。

 

一方、それを聞いていたイミーナは腕を組んで右手の人差し指でトントンと左上腕を叩いて苛立っており、ロバーデイクは静かに俯いている。

 

カツラギにとっても、其処までアルシェが過酷な状況下に置かれているとは思わず、ヘッケランが一通り話し終えると、気持ちの整理が追い付かないまま口を開いた。

 

 

「ただ、興味本位で聞いた私に対し……そこまで話してしまっても良かったのですか?」

 

「あァ。だが、手を貸して欲しいって意図は無ェから、そこは勘違いしないでくれッ」

 

「もし、カツラギ殿に聞かれた場合、詳細をお話しするのは、三人の総意でしたからね……」

 

「カツラギ様なら、私達が【喋った】って事を、アルシェに悟らせないって信用も有りますしッ」

 

 

イミーナのカツラギに対する呼称は、まさかの【様】付けだが、ラブでは無くライク的な敬意だと言って置こう。

 

 

「それは評価し過ぎな気がしますが……フォーサイト側は、それに対する【プラン】は有るのですか?」

 

「!? 逆に尋ねる様で悪いんだが、話しちまっても良いのか?」

 

「はい。もう、他人事では有りませんから」

 

「!? カツラギ殿~ッ!」(感涙)

 

「むしろ、ロバーの違和感で、アルシェにバレるんじゃない……?」

 

 

何時まで経っても現実を見ないアルシェの両親に対し、フォーサイトの対応はこうだ。

 

メンバー全員で集めた、手切れ金を含む白金貨50枚を叩き付け、妹の双子・クーデリカとウレイリカを連れて出てゆく。

 

双子はロバーデイクの贔屓する(言葉は悪いが、だからこそ任せられる)他国の教会に預け、両親の目が覚めない限りは、もう二度と会わない。

 

一方、アルシェは妹のもとを再び離れて働かなくてはならないが、彼女達が生きている限り、ロバーデイクが定期的に無料の治療を行いに来てくれるので、生活は問題無くさせて貰えるだろうし、仮に【もしも】の事が有っても、今まで与えた恩が有り、其処の者達も信頼できる為、教会の手伝いをする事を条件に、決して放り出されたりはしない模様。

 

借金自体はフォーサイトと言うチーム側に移ったダケに過ぎないが、アルシェに対しては二年間で培った信用が有るし、二度と借金が増えず利息も無い事を考えると、最善の解決手段と言える。

 

子供にとっても、両親にとっても家族とは大切にすべきモノだが、それにも限度が有り、現実世界でも当たり前の様に起こっている現象だ。

 

対して、カツラギとしては、同意書等の書類のやり取りの話が一切無いのが気になったが、【こっち】では国が変われば紙切れになる気がするし、何より両親が拒否するだろうしで無理矢理だが納得した。

 

 

「……成る程……それで、白金貨50枚の方は……?」

 

「いや……残念だが、まだなんだ……」

 

「ですが、今回の遠征で、かなりの収入となりましたし、あともう少しと言った所なのです。カツラギ殿には、感謝してもし切れませんね……」

 

「実はあの時、それなりの消耗を覚悟で、カッツェ平野に赴いていたんです。それをカツラギ様が全部片付けちゃいましたけど……」

 

「巡り合わせが悪けりゃあ、俺達が轢き殺されてた可能性も有ったし、幸運に恵まれてたぜ……まァ、後は地道に稼ぐしか無いと思ってる。今の所は、帝都にも美味しい話は無さそうだったしな……そもそも、出発前も必死こいて探した末に、仕方なくカッツェ平野の討伐状況の情報を買って、アンデッドを狩りに行ってた訳だが……」

 

「(自分で引き寄せたとは言えないけど)……フム、あと少しと言った所……ですか」

 

「カツラギ殿?」

 

「でしたら、私の依頼を引き受ける……と言うのはどうでしょうか?」

 

「!? カツラギさんがかッ? ちょっと意外だが、それなら金は要らねェよ。何でも、一つや二つくらいなら————」

 

「いえ、恩に甘えようと言う訳では有りません。フォーサイトの皆様……貴方がた【四人】にしか、出来ない依頼です」

 

「……是非とも、聞かせてくれ」

 

 

フォーサイト一行は、冷静かつ柔軟に任務を遂行できる様に見えて、アルシェに対する仲間意識が強いあまり、最後の最後に詰めを誤る未来も有ったかもしれない。

 

しかし、今は【神殿騎士カツラギ】と言う存在が、フォーサイトとトコトン付き合うと言う苦渋の決断を下した事で、早くも目標金額に辿り着く未来が見えて来た。

 

そんな彼の依頼とは、帝国領の各都市の調査であり、カツラギの様な【特別】な空気を感じる者が居ないかを【軽く】調べて来て欲しいと言う内容だ。

 

帝都の東西南北には、合計10*1の都市が存在するが、流石に一人で全てを回ると時間が掛かり過ぎるので、コレを機にフォーサイトに任せる事としたのである。(フォーサイトと別れる予定だった当初は、何時かは一人で回るつもりだった)

 

勿論、彼らの安全を考慮して【特別】だと思われる存在を確認したら絶対に接触しない・近付かない事を前提に、それに関連していそうな噂でも何でも良いので、帝都に戻ったら纏めて報告して欲しいとし、それにヘッケランが【その程度ならお安い御用だ】と返答すると、カツラギは《無限の背負袋》の奥底に眠っていた【睡眠を必要としなくなる指輪】等をも数点貸し出すと言いながら実物をテーブルの上に並べ、調査に役立てて欲しいと続けた。

 

報酬も(フォーサイト側としては)破格となっており、カツラギはカツラギで、残った報酬6割の一部を削るダケなので、何の問題も無かった。

 

また、粋な事に、今回の報酬を足す事で、遂にフォーサイトの資産はアルシェ達を開放できる白金貨50枚に届く予定である。

 

別に狙っていた訳では無いが、予想外の依頼にロバーデイクは興奮し、イミーナは唐突なマジックアイテムに絶句し、ヘッケランは驚愕を通り越して冷静になっており、頭の中でそれを踏まえたルートをシミュレートしようとしていた。

 

 

「尚、南東と南西のそれぞれひとつずつの都市には、後に私が赴く予定ですので、今回は向かう必要は有りません」

 

「か、カツラギ殿……貴方と言う方は……」

 

「疲労無効化は王国の五宝物で聞いた事が有ったけど、睡眠不要と食事不要……じ、実在してたのね……」

 

「(3つ同時に効果が有るのは渡していないけど)……それで、どうでしょう? どれ程、掛かりそうですか?」

 

「二ヵ所は行かなくて良くって、これ程のアイテムを貸し出してくれるのなら、二週間もありゃ戻って来れると思うが……出来るだけ急いだ方が良いか?」

 

「いえ、十二分です。私も帝都での予定を済ませるのに加え、この広さゆえにもう少し調査を行おうと思っており、更に二週間は滞在しようと考えておりましたから」

 

「そうかッ。じゃあ、決まりだな! 恩に着るぜ、カツラギさんよ!」

 

「それは此方の台詞ですよ。ですが、あくまで旅行感覚で、調査の素振りも見せないのを徹底して下さい。しつこい様で恐縮ですが、宜しくお願いします。私にとって今回の依頼は、貴方がたが【情報を得ずに無事に戻って来る】のが最も理想的な結果ですので」

 

「お気遣い痛み入ります……カツラギ殿……」

 

「(迷路をあっという間に抜け出せる抜け道が【現れる】だなんて、神様って本当に居るモノなのね……コレを口にしたら、カツラギ様にとっては良い迷惑だろうけど……)」

 

 

こうしてカツラギとフォーサイトは再び契約を交わした。

 

アルシェには【両親】の件を話した事は伏せつつ、カツラギの調査依頼の恩恵で【念願】の白金貨50枚に届きそうな事が分かると、気を利かせてくれたと(無理もないが)思い込んで、彼に何度も頭を下げていた。

 

何せ毒親から妹の双子を連れ出す事が、ワーカーとしてのアルシェの人生の【全て】であり、今迄ずっと出口の無い迷路を彷徨い続けていた感覚だったのだから。

 

 

「(此処三日間の観光で、帝国全体から【私達】への影響を抑制できそうな手段の目処が、一つ立っている……それを二週間以内に確実に行い……)」

 

 

一方、帝都に残るカツラギにも、大切な目的が有る。

 

一応、悟かプレイヤーが訪れるのを待つ事と、プレイヤーが潜んでいるのを探す事も併用するつもりだが、そちらは程々の姿勢で良いとして……

 

先ずは悟を探す旅に移る際、帝国に蟠りが残らない様にする為……そして、恩の有るフォーサイトの為にも、後顧の憂いを(平和的に)絶ち……

 

 

「(アルシェ君の両親と接触し……微かな"可能性"に賭けてみるとしよう……その為に、わざわざ彼らを【不在】にしたとも言えるんだ)」

 

 

続いて後日、異国の【神殿騎士】を称した演技を行い、ふと思い浮かんだ【疑問】をも払拭するべく、フルト家を訪れる事を決意していた。

 

アルシェは今回の依頼の完遂によって、目標を達成するのは知っての通りだが、本当は家族を見捨てたくはないからこそ、ギリギリまで耐えていた筈……

 

主席宮廷魔術師の弟子であった事を活かして帝国魔法学院を頼るなり、早い段階で両親を見捨てれば、ワーカーをする事も無かっただろうに、あえてそうしなかった理由が、カツラギには痛いほど良く分かった。

 

 

「(何も起こらなかったら、それはそれで何事も無くアルシェ君は実家を去れば良い。ひょっとしたら、成功した方が迷惑を掛けてしまうかもしれないが……その時は、全力で謝ろう。私の偽善だしな……)」

*1
捏造




「き……切れた。私の体の中で、何かが切れた……決定的な何かが……」

カツラギ、フォーサイトが自分から保証人になってくれやがりましたので、消極的思考を放棄してガッツリ働いて貰う事とする。(ちょっと根に持った)

それに踏まえて、死亡フラグを立てまくってるフォーサイトと、それを煽りまくってるカツラギですが、帝国を出発するまでの展開はTDNオープニングなので、アルシェのイベントを消化したらサクッと終わる予定です。
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