家の歌姫様はだらしない。   作:せみふぁいなる

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正直ボカロ・ボイロ界隈って小説書くの上手い人多くて、俺も書いていいものかと恐怖を感じている。


我が家の歌姫サマ

 突然だが、皆さんは”電子の歌姫”という通り名を聞いた事があるだろうか?

 今となっては、ネットを使用するにおいて必ずと言っていいレベルで一度は見かける『初音ミク』という名前。

 

 2007年8月31日に誕生して以降、最初は電子の海の中でその歌声を披露していた彼女。しかし、段々とネットの中だけでは収まらなくなって行き、そしてとうとう世間の耳にすらその透き通る声を届かせ、今では知っていない人は殆ど居ないのでは無いか、と思ってしまう程の人気を獲得した、正に”歌姫”。

 

 彼女からVOCALOIDが広まって行ったと言っても、きっと過言では無いだろう。

 

 そんな彼女の通称となるのが、"電子の歌姫"なのだ。

 

 

 そして、そんな歌姫様が───

 

「マスタ〜、エアコンのリモコン取ってくださ〜い」

 

 ───我が家でゴロゴロとポテチを貪っていると言ったら、信じてくれるだろうか。

 

「マスター? 聞いてますー?」

 

 事の始まりは一月ほど前に遡る。

 

 

 いつも通り、何事もない日常を繰り返していた時の事だ。

 部屋のベッドでスマホを見ながらゴロゴロと、休みなのをいい事に怠惰の限りを尽くしていた俺。

 "そろそろ飯でも食べるか"とお湯を沸かしに行く為に足を奮い立たせた時に、今の状況の発端となる出来事が起こった。

 

 スリープにしていたという訳でもないのに、PCが勝手に起動したのだ。

 

 過去の俺はそれはもう大慌て。PCは俺にとっての仕事道具だ、仮に壊れてしまったら、俺の心も生活もタダでは済まないからだ。

 

 お湯なんて沸かそうとしてる場合じゃねぇ!と、某笹食ってる場合じゃないパンダのように急いでPCへと駆け寄り、心の安寧の為にウイルス等が入っていないかの点検をしようとモニターを覗き込んだ…のだが。

 ……この覗き込みがいけなかった。

 

 貞子もビックリの勢いで、モニターの中から青緑色の頭が飛んできた。例えるなら、某相撲取りのロケットな頭突きか。

 運動不足の俺に避けられるはずもなく、丁度モニターを覗き込んでいた俺の鼻に見事クリーンヒットし、そのまま飛来した青緑色の頭と共に壁に激突した。

 

 意識がトビかけたが、そこは気合でなんとか耐える。

 何がどうなっているのかを確認する為に、患部(主に鼻)をさすりつつも目を開けた。

 

 そしたらなんとビックリ、目を開けるとガチ恋距離にあの見慣れた彼女が。そう、『初音ミク』が居たんだ。

 これが彼女とのファーストコンタクトのお話。

 

 まさか俺の壁ドン童貞があの初音ミクに奪われるとは、俺も思ってなかったよ。

 

 それからは、目を覚ましたミクさんにPCから出て来れた理由とか、何故あんな勢いで飛んできたのかとかを質問して、全部気分だったと言う事が判明して無事にブチギレたり。

 『許してください、マスター♡』と顔の力でゴリ押され、無事に押し負けてしまったりと、まぁ色々あった。

 

 ……そんでもって、一緒に生活する事にもなった。

 そりゃ最初は心臓が壊れるんじゃないかって位ドキドキしたし、PCの中に戻りなさいとも言ったのだが…。

 

 結論から言うと、また顔に押し負けた。

 ……違うじゃん。『PCの中は窮屈なんです。いつも通りやる事はやりますから、ね…?』とあの初音ミクから上目遣いを貰えばさ、誰だって堕ちるじゃん。あれは予測可能回避不可能だった。

 

 その後に言われた『マスターがしたいなら、その、少し恥ずかしいですけど……そ、そういう事だっていいですよ?』という言葉に負けた訳では決して無い。……無いったら無い。

 むしろキッパリと断ったし。うん。

 

 

 とまぁ、そういう事があって、現在あのミクさんと一緒に暮らしているという訳だ。

 いやぁ、初日と二日目は本当にドキドキした。ドキドキし過ぎて血液の勢いが強くなりすぎてそのまま口から逆流するんじゃないかって思った位。

 

 ……え?今はどうかって?

 

 ……………あ〜………。

 

 ……初日ほどはしなくなった。それは間違いない。

 いや、する時はするんだ。彼女いない歴イコールの男だぞ俺は、完全にしない訳が無いだろう。しかも相手はミクさんだぞ、しなかったらソレはもう男じゃないと断言する。

 …やっぱ怖いから断言はしないでおく。俺は小心者なのだ。

 

 ただ、する事が初日に比べると遥かに少なくなったと言うのは事実だ。

 その原因はとても簡単で……

 

「マスター!! 聞いてますかー?!」

「モ゚ッ」

 

 み、耳がァァァァ?!?!

 

「あっ、やっと反応を返しましたね! さっきから反応が無いから、とうとう嫌われたのかと……」

「………嫌いにはなってないよ、うん。なるわけが無いんだけど……。でも、耳元で全力で叫ぶのはやめて欲しいなって……」

「マスターがミクの言葉を無視するのが悪いんです! マスターのばーかばーか!」

「あっはい、それはごめんなさい」

 

 ブンブンとその自慢のツインテールを振り回し、怒っていますアピールをしている。

 痛い痛い、質量があって当たると地味に痛い。重みを感じる。

 

「全くもう……。マスターが反応を返してくれなかったせいで、ミクが自分でエアコンを操作する事になっちゃったじゃないですかー」

「それは自分でやろう??」

「嫌ですよめんどくさい」

「……俺の中のミクさん像が……。もう結構前から壊れてるけど……」

 

 そう、耳をやられて言えなかったが、少なくなった原因。

 それは、このミクさんがあまりにもだらしない事だ。

 

 元々の俺のイメージでは、歌っている彼女はスター!キラキラ!トイレは行かない!的なあれで、まぁ神格化されていたのは認める。

 彼女は元々、俺のPCの中に居た娘だ。

 自分が歌わせていた彼女のイメージは、もうそれはそれは高かった。

 

 ……あとはまぁ、二次創作等の影響もあり、歌っていない彼女のイメージはネギだったり断崖絶壁だったり洗濯板だったりツンデレだったり猫耳だったりとあるが……。

 

「今、何か邪悪な波動を感じました」

「気のせいだよ」

「……そうですか? ならいいんですけど。あっ、このチップスの味美味しいですね! ……ネギ塩味。ほう、どーりで……」

 

 だらしないのに勘は鋭いらしい。

 俺はそういう二次創作のミクさんを見て、”そういうのも良いよね…”とどこかの悪魔男のように腕を組んで分かると言っていた人だったのだが。

 

 実際に出会って一緒に生活してみると、だらしなさ極振りの彼女を近くで見続ける事になり。その結果、段々とお世話が必要な妹辺りに思えてきたのだ。

 "アイス買ってきてー"とか"ご飯まだー?"とか、”リモコン取ってー”とか、まぁその辺か。

 しかも片付けもせず人任せである。空き部屋を彼女に貸しているのだが、まぁ散らかる散らかる。

 俺が最初の方に彼女と一緒に買いに行った物は大事にしまってあるようだが、普段の生活で出るゴミの類が多い事この上ない。

 生活ゴミとか言ったか?

 

 初めてその惨状を目の当たりにした時、思わず内なる母親が出てきてしまったレベルだ。

 

 しかも、それでいて歌っている時はちゃんとカッコイイ・可愛いのだから、そろそろ普段との温度差で風邪をひきそうだ。

 

「マスター、次からはちゃんと返事してくださいね?」

「善処はします」

「善処じゃダメです! ちゃんと確約してください!」

「……じゃあミクさんも、片付けをちゃんと自分でしてくれると約束してくれるなら……」

「ハッ! ミクは唐突に眠くなってしまったので急いで部屋に帰らなければ! じゃあマスター、おやすみなさい!」

 

 まるで陸上選手のように良い姿勢で、部屋に走って帰って行った。

 逃げやがった…。

 何気に良い香りを振り撒いて逃げていくのがタチが悪い。言っただろう、ドキドキしない訳では無いと。

 こういう所でちょくちょく女性らしさを感じて、心臓が鳴りやがるのだ。

 

 ……今ふと思ったが、PCの世界から来た彼女は、アンドロイドとして分類されるのか?

 人間らしくお風呂にも入るし食事も摂る彼女だが、体の構造はちゃんと人類なのか?それとも機械?

 

 …………凄く気になる。が、流石にセクハラである。聞けはしない。

 で、聞けないせいで好奇心が生まれて、また気になってしまうの無限ループ。誰か俺をここから出してくれ!

 

「私達なら、体は機械じゃなくてちゃんと人間だよ? マスター」

「分かりやすく言うと、もう一つの世界から来た、って感じかな?」

 

 えっ?そうだったのか。

 機械では無いらしい。簡単に言ってくれたおかげで、スッと頭に入ってきた。助かるなぁ。

 

 ……誰?

 




自給自足の面が強いのでぶっちゃけ自己満寄り。
だが、それでいい……!(良くない)
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