家の歌姫様はだらしない。   作:せみふぁいなる

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歌姫サマはこわい。

 

 とある日の昼。

 俺はレン君に"とある事"をお願いしようと、彼に頭を下げていた。

 

「……いきなりなんだけどさ、レン君。少しお願いがあるんだけどいいかな?」

「ホントにいきなりだね、マスター……。そんなかしこまってどうしたのさ?」

 

 頬をかいて眉を下げるレン君。

 俺からこうしてお願いをする事は余り無いので、突然頭を下げられて困惑しているようだ。

 

 

 こうして俺が誠心誠意、大真面目に頼み事をしようとしているのには理由がある。

 ……彼が来てからそこそこ仲良くなったと自負しているが、親しき仲にも礼儀ありという言葉がある。

 仲良くなっても、失礼すぎたり無茶すぎるお願いというのは、総じて良くないのだ。

 

 ……でもッ、それでもッ!

 俺は俺自身で、俺の頭に降って湧いてきたこの"インスピレーション"を止めることが出来ないッ!

 

 だからせめてもの誠意として、こうして深々と頭を下げるのだ。

 

 そうして頭を下げた状態で、本題である"ソレ"を彼に伝える。

 

 

 

──猫耳ミニスカメイド服を着用した状態で頬を赤らめ恥じらいを持ちつつもニャンニャン言って欲しい

 

バカなの??? 俺の聞き間違いであってほしい。時々マスターってバカリンよりバカだよねこのバカマスターコッチに来る前から割とそういう歌作っては俺に歌わせてたよね何考えてんの顔引っ掻くよ???

 

 

 許して欲しい。

 憧れは、止められねぇんだ……。

 

 

──────────

 

 

「あっははははははは!!!! レン可愛い〜!!! すっごい似合ってる、本当に女の子みたい! …ぷッ、あははははは!!! ダメ、抑えられない! お腹痛い! もうそのまま女の子になっちゃおうよレン!」

「……いっその事、俺をマスターのパソコンから削除して欲しい」

「レン君、ニャン」

「…………して欲しいです、ニャン」

「まぁ当然しないんだけど。仮にリアルに来てなくてもしないよ、大事な人だし」

「あぁあぁああぁぁぁぁぁ!!! 大事なら考え直してくれよぉぉぉぉぉ!!!」

「あははははは!!」

 

 目の前でスカートを抑え、羞恥のあまり大声を出す猫耳レン君。

 そして、そんなレン君のあられも無い姿を見て、お腹を抑え大笑いしているリンちゃん。

 無情にもレン君に語尾の指示を出す俺。

 

 無事に場は混沌と化していた。

 

「っていうか、本当になんでこんな突然俺はこんな羞恥プレイを受けているんだ?! 俺だけ対象なのはおかしいでしょマスター! リンにもこの格好をさせる事を要求する!」

 

 バンバンとテーブルを叩きながら抗議するレン君。

 やめてやめて、ごめんって。テーブル壊れちゃうから!

 ……あと、自分の相棒を直ぐに道連れにしようとするのはどうなんだ……。

 

「う〜ん、それも勿論考えたんだけどもね」

「な、なら!」

 

 

「────でも俺は、レン君がリンちゃんに笑われながらこの格好をして、ニャンニャンしてる姿でしか取れない栄養素があると思ったから……」

 

 

「ダメだ、うちのマスター。早く何とかしないと……」

「……なんかちょっとレンが哀れに思えてきた。面白いのは変わらないけど」

「俺を……僕を……殺してくれぇ……」

 

 俺もちょっと申し訳なさが凄い。

 でも恥ずかしがってるレン君も可愛いよ!

 

 そう考えていると、四つん這いになり肘を着いて落ち込んでいたレン君がバッ!と顔を上げる。

 

「可愛いじゃダメなんだよマスター! 俺はカッコイイ衣装が着たい!!」

「俺のインスピレーション次第かな」

「パソコンの中にいた時からこの世界は理不尽だ!」

 

 さり気なく俺の思考を読んだなレン君。凄い。

 

「さて、じゃあ歌詞と曲は出来上がってるから、その衣装で歌おう!」

「待ってマスター! パソコンの中の時は歌えたけど、こっちの世界でこういう衣装のまま歌うのは初めてなんだ! せめて心の準備を!」

 

 ふむ、確かに。

 こっちに来る前までは、俺が調声とかして“歌わせてた”から、なんとかそういう歌詞でも歌えてたのだろう。

 しかし此方の世界でとなると、特に俺が何かするような事は無く、あくまでもレン君達張本人が歌う事になる。

 ──うん、それはそれは恥ずかしいだろう。

 

 そこまで考え、俺はレン君の腕を掴む。

 聖人君子のような、酷く明るい笑顔を浮かべて。

 

「……ま、マスター? 分かってくれt──」

 

 

「──じゃあ、収録……行こっか」

 

 

「マスターの鬼! 悪魔! マスター! 人の心を何処に置いてきちゃったんだよ!」

「本当に申し訳ないとは思っているけど! この妄想が頭の中にある今しか無いんだ! 後でお詫びはするから!!」

「あっちょ、ままま待ってマスター! そっそうだ! リン! 哀れに思ったなら、僕を助けて──く……れ……? リ、リン? どうしてマスターのような笑顔のまま手を振るんだ? おーい?」

 

 リンちゃんに助けを求めるレン君。

 しかし現実は残酷かな、リンちゃんはその手を差し伸べず、むしろ送り届けるサインとして使った。

 

「…………もう、好きにして…………」

 

 

 ────こうして、とある住宅街に猫耳を生やした男の子の亡骸が生まれた。

 

 

 

──────────

 

 

 

「──僕は猫だにゃん……にゃにゃにゃにゃ……ふふ。……あっ、猫は僕なんて言葉喋らないか……僕はまだまだだな……」

 

「ミク姉〜! レンが壊れちゃった〜! どうしよ〜?!」

「あらら……ポテチ食べたら治りますかね? マスター」

「そこでポテチに行き着くミクさんは逆に凄いと思う」

 

 

 やり過ぎてしまったらしい。

 リビングに一緒に戻って来るなり、レン君は部屋の隅っこで猫耳を付けたまま体育座りでブツブツと何かを呟く機械になってしまった。

 

「ミク姉、なんとか出来ない? レンがあのままだと、なんか調子が出なくて……」

「……リンちゃん、レンくんにはちゃんと謝った? マスターも」

 

 いつものミクさんに比べると、珍しく真剣な顔で問うてくる。

 

「うん。でも、そしたら『猫に謝るなんて、動物想いなんだな』ってー!」

「……アチャー……ポテチの食べカスくらい負の感情が零れちゃってるな〜……」

 

 あのレン君の蔑んだ目はとても怖かった……。

 あとミクさん、その例えはどうかと思う。

 

「……まぁ、皮肉を返せるくらいメンタルが回復してるなら、やりようはありそうかなー。……マスター、制作活動の事になると我を忘れちゃう癖、少しは自重しましょうね。今回はミクがなんとかしますから」

「はい、ありがとうございます……」

 

 ミクさんがジト目で俺を見てくる。

 一部界隈ではご褒美なのかもしれないが、如何せん自分が原因の事でご褒美と思える心は持ち合わせていない。

 

「リンちゃんも、親しき仲にも礼儀あり、だよ? ……あ、あと、ミクが解決したら監視の目を少し和らげてくれると……」

「するよー! あと、ちゃんともう一回謝る!」

「リンちゃん偉い! じゃあ少し待っててね〜」

 

 凄い。あの普段のミクさんでは考えられない。

 ちゃんと姉をしている……?!

 想像してた通りのミクさんが見れて、少し感動。

 

「マスター、反省してます?」

「はい、本当の本当に心の底からしてますごめんなさい」

「ならいいんですけど。……レンく〜ん? 聞こえる〜?」

 

 ミクさんはレン君の元へ行き、目線を合わせる為にしゃがみ優しく声を掛けた。

 

「にゃんにゃんにゃんにゃーにゃにゃんにゃ……」

 

 ……しかし、少しも反応は帰ってこない。

 こうなった元凶が自分だからか、さっきから冷や汗が止まらない。

 

「……ん〜、聞こえてないか〜……。残念だな〜、マスター達がお詫びとして猫耳猫しっぽを付けて、ミクがゴロゴ……んんっ、いつか使うかなってマスターの為に真面目に考えた口にするのも恥ずかしいセリフを音読するらしいんだけどな〜……」

「んっ?」

「へっ?」

 

「……! ……にゃにゃんにゃんにゃーにゃーん」

 

 ミクさんの言葉にレン君がやっと少し反応を見せる──が、その前にちょっと気になる事が出来た。

 

「ミ、ミクさん? 俺はそんな事聞いてない……」

「わ、私も聞いてないなーって……」

 

 

「────反省、してるんですよね?」

 

 

「「は、はい」」

 

 いつものミクさんからは考えられない謎の“圧”を感じ、体が勝手に強張る。

 久しぶりにこんなに背筋が伸びている気がする。普段は猫背が癖づいてしまっていると言うのに。

 

「ならいいんですよ? ……あー、しかも感情もちゃんと込めるし、やり直しも何回でも覚悟してるらしいんですけどねー……? 残念だなぁ〜……」

 

 

 

「………と………ん?」

 

「ん〜? どうかした、レンくん?」

 

 

 レン君が遂に猫語以外の事を喋り始めた。

 しかし声がまだ小さく、ミクさんもハッキリと聞き取れない様子だ。

 

 

 

「……ほ……とに………ん?」

 

「ん〜? 聞こえないな〜……」

 

 

 いや、何を言っているのかは分かっていそうだ。明らかに聞き取れないフリをしている。

 尚、此方は離れていて本当に分からない。

 

 

 

「……ほんとに、やるんだよにゃん?」

 

 

 此方へも聞き取れる声量でレン君が口を開く。

 そして、その言葉にミクさんがニヤリと表情を作った。

 

 

「それは勿論! リンちゃんとマスターの口から聞いたもん! ……ですよね? マスター。あと、リンちゃん?」

 

 アッ、また背筋が勝手に伸びる!

 

「「誠心誠意やらせて頂きます!」」

「……ね?」

 

 言ってしまった以上、もう引けない。

 ……まぁ、うん。心から申し訳なく思っている事は本当だし……。腹を括ろうかなぁ……。

 

「……それなら、マスター達の謝罪を受けない事も無い……にゃん」

 

 渋々と言った感じで顔だけ振り向くレン君。

 久しぶりにレン君の顔を見た気がする。……ちなみに戻って来て着替えていなかったので、レン君は今まで猫耳ミニスカメイド服のままだったりする。

 

「ミッションコンプリートですね、マスター! 報酬としてこのコンソメ味のチップスは貰いますね。……あ、でも恥ずかしい言葉を録音する為にミクもいるので、安心してくださいね」

 

 先程までの謎の圧はすっかり影を潜め、いい笑顔でチップスを取っていくミクさん。どうやら、言っていた“口にするのも恥ずかしいセリフ”とやらを纏めた紙を取りに、一旦部屋に戻るらしい。

 

「……リンちゃん……レン君にも申し訳なく思ってるけど、リンちゃんにも巻き込んで申し訳ないとは思ってるよ……」

「……私、マスターに可愛い服を見てもらうのは自分のタイミングが良かったなー」

 

 リンちゃん、俺が思ってる所と不満を感じてる箇所が違う?気の所為?

 

 

「──ふふ、僕が受けた辱めの分、二人には沢山やり直しもしてもらうからにゃん……」

 

 

 ……まぁ気の所為だとして、取り敢えず今日の俺達の日常(贖罪)は凄く大変な事になった、ということだけは伝えておこう。

 詳細を語るには、俺という存在の恥ずかしいシーンが邪魔すぎる。

 

 強いて言うのであれば、リンちゃんが偶にチラチラこっちを見ながらやってて可愛かった。あとミクさんは食べカスを自分で掃除して欲しい。

 

 

 

 

 ────あっ、それとこの後も最後までにゃんをしっかり付けてくれていたレン君可愛いとも伝えておこうと思う。

 

 




気合い入れて書いてる方がベリー難産なので頭を休めようと思ったらこうなりました。
でも、レン君が猫耳ミニスカメイド服でスカートを恥ずかしそうに抑えるのを見た時にしか得られない栄養は本当にあると思うんですよね……
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