羽音は誰にも届かず   作:パピヨン

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第13話「狙われた心」

 

 

昼下がりの聖華学園。

白崎透花は、廊下の窓際に立ち、ぼんやりと外を眺めていた。

グラウンドでは体育の授業。柔らかな秋の光の中で、制服姿の生徒たちが笑い声をあげている。

その中心に、天道樹花の姿があった。

(平穏な日常……)

その光景に微笑みかけたのも束の間、ふとした違和感が透花の胸を打つ。

視線を感じた。

(また……)

ここ最近、視線を感じる頻度が増していた。

それはZECTによるものだけではない。

もっと鋭く、冷たい“監視”のような感覚。

(彼らは、次の行動を起こす……)

その予感は、決して外れることなく的中することになる。

 

同日夕方。

学園から少し離れた旧校舎の空き地。

人目につきにくいこの場所が、ZECTの作戦行動区域に設定されていた。

 

「……ターゲット地点、封鎖完了。生徒数名、誘導済み」

 

影山瞬が冷静に端末へ指示を送り、ZECTの小隊が各所に配置される。

今回の作戦の名目は「ワーム掃討」だったが、その裏にはもう一つの目的があった。

——仮面ライダーリュミエールの誘き出し。

 

数名の生徒が、演劇部の野外練習として呼び出されていた。

だが、顧問は来ない。ZECTが手を回した偽情報だった。

 

「影山、やめろ。こんなやり方は間違ってる」

 

現場に現れた加賀美新が、影山に詰め寄る。

 

「生徒を囮にするなんて……正気か!?」

 

影山はライダーブレスを手にしながらも、動じず返す。

 

「加賀美、お前にはわからない。俺たちは“選ばれなかった”側の人間だ。だからこそ、結果がすべてだ」

 

「だとしても、子どもたちを巻き込んでいい理由にはならない!」

 

「お前こそ偽善だ。お前だって一度はザビーの資格を手に入れたくせに、捨てただろう」

 

加賀美は拳を握りしめた。

 

「違う。俺は、お前たちのやり方が間違っていると思ったから部隊を離れたんだ」

 

「いずれにせよ、あの学校の生徒はワームの影響を受けている可能性が高い。状況次第では始末するのも視野に入れる必要がある」

 

「そんな、普通の人間だっているんだぞ⁉上は一体何を考えて…!」

 

「そろそろ予定の時刻だ。お前たち、配置につけ。加賀美、ここに残るつもりなら、お前も任務を果たせ」

 

そのころ、透花は別れ際のクラスメイトたちの言葉を思い出していた。

 

数分前

「ねえ、今日の練習なんで体育館使って平気なの?今日って演劇部の日じゃなかった?」

「旧校舎の方にいい練習場所を見つけたらしいよ?にしても急に変わったからか戸惑ってたけど。 顧問の先生、何も言ってなかったみたいだし」

 

(演劇部の……練習場所の変更? そんな連絡、なんで今……)

 

透花の胸に鋭い違和感が走る。

嫌な予感がとまらない。

 

「……ごめん、寄るところがあるの。先に帰ってて」

「ふーん? じゃあまた明日ねー」

 

透花はその場を離れ、旧校舎へと走り出した。

(まさか、間に合って……!)

 

到着した瞬間、ZECT隊員がワームの反応を確認し、戦闘態勢に入る。

影山が表情を引き締め、加賀美は止められなかったと悔やむ。

 

「来たか……全隊っ!」

 

しかし——

 

「誰か、誰か助けて!」

 

ワームが先に動いた。

 

「危ないっ‼」

 

加賀美が飛び込み、今にも襲われそうだった生徒を一人抱えるようにして転がり窮地を脱する。

 

しかし、ワームの鋭い爪が、別の生徒の一人を容赦なく貫いた。

 

爆発的な悲鳴。吹き飛ぶ血飛沫。

その光景に、透花の目が見開かれ、瞬時に何かが弾けた。

それを見越したように、バタフライゼクターが飛来する。

 

[Stand by]

「変身ッ!」

[Henshin]

 

口にする前には、既に走り始めていた。

リュミエールが舞い上がり、瞬時にワームの一体を両断する。

 

——だが、遅かった。

 

「ちっ……!」

[Henshin]

 

影山が遅れて飛んできたザビーゼクターを手に変身し、戦闘に加わる。

仮面ライダーザビーが戦場に出現する。

 

加賀美がすぐさま、ZECTの部隊に叫ぶ。

 

「子どもたちを守れ! 全員、退避ルートを確保しろ!」

「加賀美、お前っ!」

「…ッ、了解!」

 

勝手な命令に影山が突っかかるも、隊員たちは迅速に動き、生徒たちの退避を誘導する。

彼らも、これ以上の子供の犠牲は容認出来なかったのだ。

加賀美は一時的に隊を率いていた人間だ。例えザビーの資格を手放したとしても、一度築かれた信頼関係はそうは崩れない。

 

その瞬間、黒いジャケットの男が現れる。

天道総司。

 

「……遅かったか」

 

影山が彼に気づき、眉をひそめる。

 

「天道……お前、また出しゃばるのか」

 

「お前たちは花のために蜂となると言うが——その花を枯らしていては、意味がない」

 

影山は舌打ちをしながらも、隊員たちに命令を飛ばす。

 

「全隊、後方の安全を確保し次第、ワームを殲滅する!一匹たりとも残すな!」

 

天道はその命令に一瞥をくれただけで、飛んできた己のゼクターを掴み取った。

 

 

 

 




文章の改行をどうするか毎度迷う。改行した方が読みやすいが、全てがそうだと少しくどい気もする。
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