羽音は誰にも届かず   作:パピヨン

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第4話「風を切る足音」

朝の聖華学園。

校門の前には登校する生徒たちの波があった。制服の襟を正しながら通過する誰もが、昨日と同じ日常を信じていた。

 

白崎透花もそのひとりだった。

 

けれど、彼女の瞳は人の波ではなく、植え込みの陰、空の反射、通り過ぎる靴音の微妙なズレにこそ注意を払っている。

 

——違和感は、そこに宿る。

 

「透花ー!」

 

校門の脇で声がした。

手を振るのはクラスメイトの天道樹花。

明るく人懐っこい少女で、透花とは中一からの仲であり、時に姉のようでもある存在だ。

 

「おはよ。今日、小テストだよね? 古典のやつ」

 

「……うん、忘れてないよ」

 

言葉を交わす。

透花にとって“日常”は、こうして守らねばならないものだった。

けれどその一方で、彼女は知っていた。

この世界には、“仮面”をかぶった存在が紛れ込んでいることを。

 

——ワーム。

 

放課後。

教室の窓から差し込む光が傾き始めた頃。

部活動の喧騒が廊下に響く中、透花は静かに教室を出た。

 

向かうのは、校舎裏のごみ集積所。

何気ない日常の中に、ほんの少しの異変が混ざっていた。

 

——ペットボトルの袋に、混ざっている金属片。

 

人の目にはただのゴミ。

だが彼女にはわかる。

それはワームが脱ぎ捨てた擬態の“皮膚”の破片。

 

(この中に、いる)

 

目を閉じ、周囲の音に神経を研ぎ澄ます。

遠くの校庭、鳴り響くホイッスル。

昇降口に響く靴音。

 

そして、背後から——風を裂くような、鋭い気配。

 

「——きた」

 

振り返ると同時、ワームが飛びかかってくる。

廃材の陰から現れたそれは、学生服をまとったまま、その形を崩しながら迫ってきた。

 

(やっぱり、生徒に擬態してた……!)

 

すでに亡くなっているその生徒を思い、覚悟を決める。

 

[henshin]

 

髪飾りに触れる。白銀の蝶が弾け飛び、ゼクターが舞う。

透花の身体を駆け抜け、戦闘体が展開されていく。

 

[Cast Off]

 

外装が弾け飛び、仮面ライダーリュミエールが姿を現す。

赤紫の複眼が、敵を捉えた。

 

(ここは校舎裏……他の人は来ない、けど)

 

グラウンドの方に行けば部活をしている生徒たちがいる。

 

(手早く終わらせる)

 

[Clock Up]

 

時間が伸びる。

風が止み、世界が静止する中——

 

リュミエールは駆ける。

足元に舞う埃、空気の揺らぎ、そのすべてを読み取る。

 

ワームもまた、動く。

やはり、ただの怪物ではない。

ワームもクロックアップしていた。

 

その中での一騎打ち。

拳を交え、蹴りが交錯し、ナイフのような脚部の一撃がスーツをかすめる。

 

(この動き……ただの量産型じゃない)

 

反射神経、行動パターン、読み合い。

まるで透花の戦い方を見透かしているかのような——

 

(まさか……私の情報が漏れてる?)

 

クロックアップ解除。

時間が戻る。

 

空気が一気に流れ出す中、ワームが態勢を崩した。

その隙を、透花は見逃さない。

 

「ライダーウィング」

 

[Rider Wing]

 

ゼクターが羽ばたき、リュミエールの背中に銀の羽根が展開する。

 

風を切るように踏み込み、空を裂く一撃がワームを貫いた。

 

ドンッ!!

 

爆発とともに、灰が舞う。

 

——静寂。

 

透花はゆっくりと変身を解除し、髪飾りを手に戻す。

 

(……この情報、どこから漏れた?)

 

自身に近づいてくる何かの気配を感じながら、すっかり日の沈んだ校舎を抜け出した。

 

誰にも知られず、ひとりきりで——

風を切る足音だけを残して。

 




モチベーションが途切れたときが更新の途切れるとき…完結を祈っていてください。
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