少女が笑う日まで(1)   作:漆黒のロボ

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第1話

初めてではありますが至らぬ所はご了承ください。

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いつの時代も、恵まれない子供というのは数え切れないほどいるものだ

それが良いのか悪いのかは関係なく、こう言った心苦しい問題は恐らくなくなることはないだろう

それでも、そう言った子供たちを少しでも減らして行けたらと動こうとする人間も中にはいる

 

「⋯その話は本当ですか?」

「だから頼むよ、この通り」

上からの依頼なのか申し出なのか困り果てた顔をしているこの男は諸事情によりこの施設で育ち、成り行きなのかはたまた運命のいたずらなのかここで作業をしている物腰の柔らかい人だ

 

「私はここでただ育っただけであってそう言った経験はないんですよ」

「それは重々承知している、でもそこを含めた上でお前が適任だと思ったんだ」

「はぁ...話は聞きます」

この男が受け持とうとしている仕事は、親のいない子供要するに"孤児の少女カウンセラー"を行うことだった

聞いた話によると、その子の担当になった人たちには心を開いたことがないらしい

そればかりか、同年代のお友達と過ごしている時でさえ表情ひとつ変えたいのだとか

 

「⋯あ、あの、情報をあらかた聞きましたけど私が受ける仕事ではないと思うんですけど」

「いや、これはお前がやるべきだ、俺を疑っているのか」

「そういう訳では...」

「冗談だ。カウンセリングって言ってもその子とただ話すだけだ、まあ上手くやってくれ」

「いやいや、少なくともひとりの少女の人生が掛かってるんですよ」

「そうだよな、悪かった」

「はぁ...やれる所まではやってみますよ。」

 

カウンセリングとは言ってもただ話をするだけ、そこまで難しいことを要求されてる事でもない

簡単って言うほどでもはないが...

この男も孤児なためその経験から、その子が抱えている心情を理解してやることができるかもしれない

男は少女のために心が回復するようその子に全力を尽くすことを心に刻んだ

 

 

カウンセリングは、後一週間に行う

 

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「全力を尽くすとは言っても、不安でしかない」

 

私はカウンセリングどころか、少女の話を聞いてやるという経験すらない私は、自分自身の経験をもって一人の子を救えるかもなんて安請け合いをしたことを後悔した

もうすぐで私が受け持つ子が来るはず、こんないかにも廃れた思い悩んでいる姿を見せるわけにはいかない

そうやって自分に言い聞かせていると、扉を叩くトントンとした音が聞こえ扉を開ける

 

「お待ちしておりました、こちらへどうぞ」

「ありがとうございます」

「...」

「しばらくの間この子をお願いします、では、先生お願いします、私は一度帰らないと行けませんので、あまり先生を困らせないようにね、わかった?」

「...うん」

見た資料によるとこの子は犀川 優里

わかってはいたが物静かな子だ

と言うよりも⋯ものすごく暗い。

そのどこを見ているのか分からない虚ろな目でどこか遠くを見ているような、そんな印象を受けた

こういった子は少なくない、施設でも暗めな子は多いだろうがここまでの子は少ない

なぜこの担当を私にしたんだろうか

 

「こんにちは、君の名前はなんて言うのかな?」

「⋯さいかわ」

「教えてくれてありがとね、なんて呼んで欲しいとかはある?」

「...ない」

「そっか、じゃあさいかわちゃんって呼ぶね」

「⋯うん」

 

いくつか感じるところはあったがこの状況だとやはり心を閉ざしてしまっている

そうなれば、少し距離を離してお話をしてみよう

変に心にふれてしまうとこの子に負担がかかってしまう

 

「何かお話をしたいことはあるかな?」

「...ない」

「そっか、じゃあ私から質問させてもらってもいいかな?」

「...うん」

 

とは言っても、何を質問したらいいか

友達とか施設、学校のこと?

どれも踏み込みすぎてる気がする

施設のことであればまだ良いかもしれない、⋯やっぱり聞かれていい気分はしないよね

⋯考えれば考えるほど、人とのコミュニケーションは難しいな

 

「じゃあ、好きなものとか。

物以外でも大丈夫だよ、こういったことをするのが好きとかでもいいから教えてくれたら嬉しいな」

「...わかんない」

「そっか、見つかるといいね」

「うん」

「じゃあ、やってみたいことはある?」

「…きれいに光って熱いやつ」

「花火?」

「うん」

「花火なんだね、今度施設の人に掛け合ってみるね」

「うん」

「えっと、それじゃあ───────」

 

その後も質問をし続けてみたものの、これといった進展はなかった

まぁ、分かりきってはいたことだけど

一度閉じた心を開くのはとても難しい

 

「そろそろ時間だね、今日は私とお話して色々教えてくれてありがとう」

「うん...あの。」

「ん?どうしたの?」

「...つぎにお話できるのは、いつ?」

「一週間後ぐらいだね、もし嫌だったり、行きたくないって時はお話の日を減らしてもらうように施設の人にお願いしてね」

「...うん」

「それじゃあ、またね」

「...」

 

この部屋をでる時、さいかわちゃんはほんの少しだけこちらを向きどこか言いたげな視線を私に向けていた

何か気に触ることでも言ってしまっかな

 

「カウンセリングって...難しいな...」

 

私があの子の担当になったからには必ずやり遂げる

まぁ彼女から少なくとも拒絶されるまでは...ね

 

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──────────

 

「...こんにちは、久しぶりだね」

「また来てくれ嬉しいよありがとう、じゃあ、今日もお話しよっか」

「...うん」

 

あの日を境に三週間が過ぎた

少なくとも彼女から拒まれていないことに安堵したものの

子どもというのは繊細なんだ

何気ない言葉や行動でも、子どもの心を傷つけてしまうかもしれない

その結果でこの子の人生が左右されると考えると、こう言った子どもに安易に声をかけることを躊躇する、いや、そもそも出来ない

 

「...あの」

「あぁ、ごめんねどうしたの?」

「せんせいも花火好きなの?」

「ん?どうしてそう思うの?」

「せんせい、屋上で花火してたから」

「え」

 

その言葉を聞いて私は、全身の血の気がひいた

屋上で休憩中にタバコを吸っていたのを見られていた

中にはそれがトラウマな子も少なくない、その中でよりにも寄ってさいかわちゃんに見られた、もう帰ったと思って油断していた

 

「そ、そう、私も花火が好きなんだ」

「...ほんとは花火じゃない」

「!?...ごめんね、嫌なとこ見せてしまって、あれだった担当は変えてもらえるからその時は施設の人に相談してね」

「...うん」

 

もう、この子の担当は無理だろう、カウンセラーは子どもの心に触れる...つまり、悪い姿は決して見せてはいけないからだ

でも、返ってきた言葉に私は面を食らった

 

「...臭い花火...でも温かい」

「...え」

「もしかしてさいかわちゃん...」

「...?それが何かは知らないよ」

「ふぅ、良かった」

 

この出来事を施設の人や上に報告がいったら終わりだろうな

まぁ自業自得なんだけど、流石に今日を限りにして担当を変えてもらった方がこの子のためだろう

 

「そうだ、もし答えたくなかったら答えなくていいんだけど、聞いておきたいことがあるんだ」

「なに?」

「その...学校とか施設で、何か嫌だなって思ったことはあるかな

例えば...施設の人に嫌なことされたとか」

「...どうして?」

「え、えっと...それは」

「...」

「さいかわちゃんが心配だから...?」

「せんせいは、なんでしんぱいしてくれるの?」

「えっと...その...」

 

どうしよう、その返しは予想してなかった

まぁ、言ってはいけないことではないから素直に答えよう

 

「...難しいけど、さいかわちゃんが大切だから...?どうして大切なのと聞かれたら...言葉にするのはできないけど」

「...そっか」

「ごめんね、なんか曖昧な答えになっちゃって」

「...ううん。」

「それで...何か困ったことはある?」

「...ない。」

「そっか、なら良かった」

 

 

「...今日はもう時間だから、また来週ね」

「...うん」

「じゃあ、またね」

 

そう言って、私はさいかわちゃんを見送った

もう会うこともないだろうけど、やれることはやった私の行動が至らなかっただけ

少ない期間だったけど少しは力になれただろうか

 

 

 

 

 

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