少女が笑う日まで(1)   作:漆黒のロボ

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書いてはいたのですが投稿するのを忘れていました。
暑い季節になりましたね、引き続きお楽しみください


少女が笑う日まで(最終話)

 再び担当になってから、半年ほどが過ぎた。

 最初の頃は相変わらず短い返事ばかりだったさいかわちゃんも、今では少しずつ自分から話をするようになっていた。

 学校であったこと。

 好きな本のこと。

 たまに夜眠れなくなること。

 どれも些細な話だったけれど、私にとっては大きな変化だった。

「せんせい」

「ん?」

「この前ね、テストで褒められた」

「すごいじゃない」

「……ちょっとだけね」

 そう言いながら少しだけ得意そうにする姿を見るたび、初めて会った頃が遠い昔のように感じられた。

 そんなある日。

 面談の帰り際だった。

「そういえば、夏祭りあるんだって」

 私が何気なく言うと、さいかわちゃんが顔を上げた。

「……花火?」

「うん。結構大きいらしいよ」

 すると、さいかわちゃんは少し考えるような顔をした。

「わたし、花火ってよくわからない」

「どういうこと?」

「きれいなのはわかるけど」

「うん」

「すぐ消えちゃうから」

 らしい答えだった。

 私は少し笑う。

「でも、その一瞬だからいいんじゃないかな」

「……そういうもの?」

 その時の私は知らなかった。

 その会話が、ずっと前のある違和感に繋がることを。

 ◇

 夏祭り当日。

 施設の子どもたちの引率を手伝うことになった私は、会場の見回りをしていた。

 屋台の灯り。

 賑やかな声。

 遠くから聞こえる祭囃子。

 そして人混みの中に、さいかわちゃんの姿を見つける。

「楽しんでる?」

「……まあまあ」

 相変わらず素直ではない。

 けれど浴衣姿はどこか年相応だった。

「花火までまだ時間あるね」

「うん」

 その時だった。

 風が吹いた。

 その瞬間、私は微かに眉をひそめる。

 懐かしい匂い。

 煙草の臭いだった。

 近くの喫煙所の方から流れてきたのだろう。

 ――あ。

 その瞬間、ずっと昔の記憶が繋がった。

 初めて担当していた頃。

 さいかわちゃんの服や持ち物から、時々微かに漂っていた匂い。

 何度か気になったことがあった。

 けれど確信は持てなかった。

 今になってようやく分かる。

 あれは煙草の臭いだった。

 そして同時に、以前さいかわちゃんが言った言葉も思い出した。

『臭い花火みたいなにおいがする』

 あの時は意味が分からなかった。

 子どもらしい表現だと思って聞き流していた。

 でも違ったのだ。

 煙草を知らない子どもにとって。

 煙が出て、鼻に残る臭い。

 それは確かに、臭い花火だった。

「……せんせい?」

 さいかわちゃんが不思議そうにこちらを見る。

「いや、なんでもないよ」

「?」

「もしかして、まだ気にしてたりする?」

「!?」

思い出させてしまった…こんな時に

「ごめんね、こんな時に」

 一瞬。

 さいかわちゃんの目が少しだけ大きくなる。

「ああ……」

 珍しく照れたような顔をした。

「おぼえてたんだ」

「今になって意味が分かった」

「……そっか」

 少しの沈黙。

 そして。

「でも」

 さいかわちゃんは夜空を見上げた。

「ほんものの花火のほうが、ずっといいね」

 その言葉と同時に。

 ドン――。

 大きな音が夜空に響いた。

 観客から歓声が上がる。

 色鮮やかな光が空いっぱいに咲いた。

 赤。

 青。

 金色。

 一瞬で広がり、そして消えていく。

 だけど、その一瞬は確かに美しかった。

 私は隣を見る。

 さいかわちゃんは空を見上げていた。

 最初に会った頃のような無表情ではない。

 どこか穏やかで。

 どこか楽しそうで。

 そして。

 夜空を彩る花火の光を映しながら。

 さいかわちゃんは静かに笑った。

「……きれい」

 その笑顔は、もう誰かを警戒していた頃のものではなかった。

 空には大輪の花火。

 風に乗って流れていく火薬の匂い。

 昔の"臭い花火"とは違う。

 今度の花火は、ちゃんと空を見上げられる花火だった。

 私は隣でその横顔を見ながら、小さく微笑む。

 そして夜空に咲く最後の花火が消えるまで、二人で黙って見上げ続けた。

 

────数年後

誰かが名前呼ぶ声がする

「早く起きなさい学校遅れるよ!」

「は~い」

先生、今は何をしていますか?また、私みたいな子の心配をしているのかな。ありがとう、先生…先生のおかげで毎日笑えているよ、あの時先生が教えてくれた夏祭りの時の笑顔が…

「行ってきます」

そう言って笑顔で歩いていきました。




この話は本当の出来事は本当のこととフィクションを混ぜて書いています。仕事の関係で話せないこともあるので少しでも感動しましたか?この話はここで終わりです
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