第百五話 文化祭(Trailer and meeting)
ー明星桜花sideー
「見て見てー!見ててー!」
ある日の朝の教室、教室の後ろ側で芦戸が俺たちに声を掛けた、何事だろうと集まると、体を伸ばし始める芦戸
次の瞬間、軽快なステップから飛び上がり反転、地面に頭から落ちるかと思われたが、片手で着地しフリーズ、そして...
「Breaking Breaking」
ブレイクダンスの技の一つである、「ウィンドミル」を披露し始めた、凄いな、回転も綺麗だし、何よりキレが段違いだ
俺はダンスはあまりできないんだよな
楽器ならいくつかできるんだが*1
そんなことを考えていると
緑谷が
「芦戸さんは体の使い方がダンス由来なんだよね、なんというか...全ての挙動に全身を使う感じだ」
と言ったので
俺はそれに
「それぞれに合った身体の動かし方がある
俺で言えばそのほとんどがいくつかの格闘技が元になっている
尾白も何らかの武術、武道の動き
空手に近いかなとは思うがそれが元になっている
自分に合った身体の動かし方を知っていると言うのは大きなアドバンテージになるからな
今のうちに探しておくと良いと思うぞ」
と言った
すると切島が
「芦戸も明星もだけどさ、ヒーロー活動にそのまま活きる趣味は良いよな!強い!」
まぁ確かにな、楽しんで鍛練をした結果早く上達できるからそれはそれでアドバンテージにはなるよな
と思う
そんな切島の言葉に上鳴が
「趣味といえば耳郎のもすげえよな」
響香にそう話しかける
それに響香は
「ちょっ...やめてよ」
と返す
それに上鳴は
「あの部屋楽器屋みてーだったもんなァ、ありゃ趣味の域超えてる」
と続ける
それに響香は
「やめてってば!部屋王忘れてくんない!?」
と言う
しかし上鳴は
「いや、ありゃプロの部屋だね!!マジでス━━━━」
と続ける
そして「スゲー」
そう言いかけた瞬間、上鳴の目の前までイヤホンジャックが突き付けられる、思わず止まってしまう上鳴
「マジで!」
上鳴の発言を止め
そのまま自分の席に戻ろうとする響香を俺は抱き止め
「もっと自信持ちな?響香
響香は多分自分の趣味はヒーロー活動に根差す
ヒーローは力で人々の笑顔を守る
音楽ってのは音の力で人々を笑顔にする
この2つは案外似てる
響香の趣味だって十分ヒーロー活動に根差してるさ」
と言う
そんなこんなで予鈴が鳴ったので自分の席に座った、さてさて、今日は何があるかな...
まぁこの時期ならそろそろあれかなと考えつつホームルーム
「文化祭があります」
「ガッポォォォォイ!!!」
唐突過ぎるが教室に入ってきたイレイザーが寝袋に入りながら告げた言葉に教室中が一気に騒がしくなる
にしても騒ぎすぎだが……煩いな
「文化祭!!」
「ガッポいの来ました!!」
「何するか決めよー!!」
皆が皆はしゃぎまくり、出し物を決めようとする葉隠の言葉に同意する中...
「いいんですか!?この時世にお気楽じゃ!?」
切島が待ったをかけた、確かにな、切島の意見も理解できる
近年の敵と犯罪率の増加、そして敵の組織化や、未だ動きを見せていない敵連合...懸念すべき点が多々ある現状で、そんな娯楽の塊のような催しをしても良いのか...切島はそう言いたいのだろう
だが、この雄英高校もヒーロー科だけで回っている訳じゃない
体育祭がヒーロー科主体の催しだとするのならば、今回催される文化祭は他科...ヒーロー科以外の生徒が主役の催しだ
体育祭との注目度を比に出すとアレだが...それでも他の科の生徒にとっては楽しみな行事である事は確かだ、加えてこの雄英の現状、寮制を含め、ヒーロー科主体の動きになっているのが現状だ、その動きにストレスを感じている生徒も居る...とイレイザーが言った
そう考えると申し訳が立たない、と切島が言葉を発して席に座った、ストレスねぇ...体育祭の時も感じだが...他の科の奴らは少なからずヒーロー科俺たちに対して負の感情...不満や怒り、嫉妬を感じている...
そんな状態でこの文化祭が中止になってしまえば、俺達に対する不満がさらに大きくなってしまう事も予想ができる
「だからそう簡単に自粛とするわけにもいかないんだ、今年は例年と異なり、ごく一部の関係者を除き、学内だけでの文化祭になる...」
ヴィランの侵入を防ぐ為だろうな、妥当な措置だ
俺も文化祭当日は可能な限り警戒してくれと頼まれた
「主役じゃないとは言ったが、決まりとして一クラス一つ出し物をせにゃならん、今日はそれを決めてもらう」
そう言い残し、イレイザーは教室の隅っこで眠りについた、我が養父殿は相変わらずか...
「ここからはA組委員長、飯田天哉が進行をつとめさせて頂きます!スムーズにまとめられるよう頑張ります!!」
さて、という事で司会進行が飯田に変わり、いよいよ出し物決めの時間だ、教壇に立つ飯田と百が皆に声をかける
「まず候補を挙げていこう!希望のある者は挙手を!」
その言葉が聞こえた瞬間、ハイハイ!!と凄まじい変わり身を見せるクラス、勢いが凄い、みんなやる気だ、無論俺も楽しみにしている、出し物か...何をしようかな、なんて考えているうちにも話は進んでいく
メイド喫茶、おもち屋さん、腕相撲大会、ビックリハウス、ダンス、ふれあい動物園、ヒーロークイズ、たこ焼き屋、アジアンカフェetc...
各々がやりたいことを話していく、よくわからない物やふざけた物なんかは除外するが、どれも魅力的な物だ、だが...
「...コントとか?」
「.....」
そう発言したのは響香だ、まだ整理できてないんだろうな..ふむ...じゃあ俺は...
「ライブかな」
「....!!」
俺が案を出すと、少し驚いた様子で俺の方を見る響香、チラッと響香に視線を送り、俺は視線を前に戻した
てな感じで一通り案が出たので何をするか決める事に、まずは...
「不適切、実現不可、よくわからない物は消去させていただきますわ」
百のその言葉に3人はそれぞれ声をあげる
「無慈悲」
「は?」
「ハナから聞くんじゃねーや」
消えたのは常闇、峰田、爆豪の案、まぁ妥当、続いて勉強会と郷土史研究発表も地味、いつもやっている、という理由で消去となった、となれば、残るのは食べ物系か奉仕、後はビックリハウスみたいな店?みたいな物になるが...
「食いもん系は一つにまとめられるくね?」
「そばとクレープはガチャガチャしねェか?」
それを皮切りにあーでもないこーでもないと議論を始める一同、そうなると周りの声が聞こえなくなるわけで...
「静かに!!静かにィ!!」
「まとまりませんでしたわね...」
委員長の静止の声は届かず、結局最後まで出し物が決まらないまま、授業の終了を知らせるチャイムが鳴ってしまった
「実に非合理的な会だったな」
授業終了のチャイムと共に起きたイレイザーが、そう呟きながら教室を出て行こうとする、まぁいきなりだったからなぁ...まずは大まかにどんな出し物がいいか、何をしたいかが決まらないと、どの出し物にするか決まらないのは当たり前ではあると思うがね
「明日朝までに決めておけ...決まらなかった場合...公開座学とする」
公開座学.....それだけは嫌だ...今の今までまとまらなかったクラスの意見が一致した瞬間である
それはさておき、タイムリミットは明日の朝まで...
まぁ何とか決めるとしよう
一先ず、その場での話し合いは終わり、いつも通りの授業が開始される、文化祭もそうだけど、勉強はちゃんとしなきゃな
そんなこんなで放課後、俺以外の補修組、そして爆豪を除いた全員で共同スペースに集まり、出し物について話し合いをしている
現在は何かヒントを得ようとパソコンで動画を見ている、が、あまり良い収穫は無かった
「.....ふむ、どうしたものか」
飯田が呟く、どれもこれもピンと来ていない様子だ、どの案も魅力的な物なのは間違いない、それらを一つに絞り、尚且つ、他科がストレスを感じないような物を出さなきゃならない
となると....意外と候補は絞れそうだ
「...午前中色々考えたんだが、先生が言ってた他科のストレス、多分俺達はそれを発散出来るようなモノを出すのが良いと思うんだよ」
「そうですわね...ヒーローを志す者がご迷惑をおかけしたままではいけませんもの」
「...そう考えると、ランチラッシュが居る以上食事で満足出来るものを提供できるとは思えないんだ」
「あ、飯系ダメって事?」
「ダメって訳じゃないけど、ストレス発散って事を考えると余り好ましくはないとは思う」
轟の言葉に納得する皆、今まで出た案、決して悪い物ではないが...やはりどうしても自分達が楽しみたいという願望が強い出し物が多かった、それ自体は悪いことじゃないけど...さっきも言った通り、それだけじゃ他科のストレスが溜まる一方だ
ふれあい動物園、びっくりハウス、メイド喫茶…
でも...動物園は衛生上厳しいし、何より動物を集める必要がある、費用や口田の負担など、諸々を考えると難しい
そんでメイド喫茶は断固反対させてもらうとして
びっくりハウスも企画の段階で難しいものがあるし
それに特筆して役立つ“個性”を持つものもほとんどいない
「コントとかはだめかな?」
「素人芸程ストレス与えるモンはねーよ!」
コント...確かに悪くはないが...俺たちA組でユーモラスなことができるやつが居るかと聞かれれば否と答えるだろう、面白い奴は居るけど...コントや漫才となると、正直なところ期待は出来ない
教えられるやつも居ないし、恐らくストレスの発散にはならない
誰かが教えることが出来て尚且つストレスの発散になるようなものがあればいいんだが...
「みんなで踊ると楽しいよ...」
「ダンスいいんじゃねえか?」
「超意外な援軍が!!」
芦戸の発言に賛同したのはまさかの轟、こういう事には無頓着だと思ってたが....意外だな
「ちょっといいか」
俺と百の間を通り、パソコンをいじり始める、一体何をする気だ?
「なんかあったろ、なんて言うのか知らねェけど...馬鹿騒ぎするやつ...あぁ、こういうやつだ」
轟が出した動画はいわゆるライブ、それも普通のではなく、バンドや演出などが盛り盛りのパリピ空間的なサムシングの動画だ
轟から出る発想じゃねえな...
「パーティーピーポーになったのか轟...!?」
「違え、相澤先生の言う他科のストレスの解消、その為には皆で楽しめる場を提供するのが適してんじゃねえか?仮免からの連想なんだが...」
「どんな補講だったんだよ」
まぁ仮免の事は置いといて...確かに轟の案良いかもな、割とベストアンサーなんじゃないか?
「なるほど...」
「今一度言うが素人芸程ストレスなもんはねえぞ!?」
「いや、それは多分大丈夫、ダンスは芦戸が教えられるし、楽器なら俺と響香でなんとかなる
キーボードは百ができるはずで
ベースとボーカルは響香で問題ない
ギターも俺とあと2人いれば良い
後はドラムだな」
と言う
それに響香は
「いや…あの、....芦戸とかさ...皆はさ...ちゃんとヒーロー活動に根差した趣味じゃんね?
私のは本当ただの趣味だし...正直表立って自慢できるモンじゃないっつーか....」
などと言っている
それに俺は
「朝も言ったがもう一度言うぞ
音楽は人を笑顔にする、それだけでも十分ヒーロー活動に根差してると俺は思うがな」
「....!!」
俺の言葉で響香の顔が晴れる
そして続けて
「それに、俺は響香が楽しそうに音楽やってる所見るの好きだよ?」
「なっ////」
俺がそう言うと響香の顔が一気に真っ赤になる
後ろで芦戸と葉隠がキャーキャー言ってるが今は気にしない
「だからさ....音楽、一緒にやろう、響香
大丈夫、俺は必ずお前の隣にいる」
俺の言葉に嘘も偽りもない、紛れもない本心からの言葉...
まぁ、俺が何を言っても、決めるのは結局本人だからな、無理強いはしたくない、本人の意思を尊重してやりたいが...出来ることなら、一緒にやりたいのが本音だ、さて...どうなるか...
「.....まぁ...ここまで言われてやらないのも...ロックじゃないよね...」
「...!じゃあ...!」
「....うん...やるよ」
響香の決断に、クラスメイト達が湧き上がる、これで出し物は決まったな、どんな物になるのか楽しみだ
「じゃあA組の出し物は━━━━生演奏とダンスでパリピ空間の提供だ!!」
満場一致での決定
さぁ、やるからには最高のものを作り上げよう
ちなみに後日の話し合いで
ギターは俺と常闇、上鳴の3人、ドラムは爆豪に決まった
━━━俺たちが出し物を決定したその時、パソコンに映っていた動画が終了し、次の動画を再生した、画面に映るのは不敵に笑う紳士のような風貌の男、俺たちは気づかなかった、その男が、後にどんな事をしでかすのかを....