ーthird personー
翌朝、ホークスはナインが現れた現場付近の調査をしていた。
ホークスは、現場を見て顎に手を当てて考え込む。
(被害者の中にまた“個性”喪失者が…ただ、今回の被害者はヒーローではなく一般人。しかも身元のわかるものが全て奪われている。犯人は…奪った“個性”が何なのかを知られたくない…? 何故隠す必要が…)
その様子を、瓦礫の上から死柄木が眺めていた。
その頃、いおぎ荘の雄英ヒーロー事務所では。
障子からの連絡を受けた八百万が報告する。
「障子さんから、ビーチに応援が欲しいとの事ですわ!」
「なら俺が行くよ!」
「俺も定時パトロールに…」
八百万が報告すると、尾白が立候補し常闇もパトロールに向かった。
すると緑谷が立ち上がって言った。
「僕も! 新島さん家の畑の手伝いに行ってくるね!」
一方、活真はいおぎ荘の近くまで訪れていた。
勇気を出していおぎ荘を訪ねようとしたその時、緑谷が出発する。
「行ってきまーす!!」
緑谷が飛び出してくると、活真は引っ込んでしまう。
緑谷は、引っ込んでしまった活真に声をかけた。
「活真…くん? どうかしたの?」
緑谷が声をかけると、活真はオドオドした様子で謝る。
「あ、あの…昨日はごめんなさい…」
活真が昨晩の虚偽の通報について謝ると、緑谷は一瞬キョトンとするもののすぐに笑顔を浮かべた。
「偉いね! ちゃんと謝りに来てくれたんだ! 大丈夫だよ、怒ってないから!」
「もう一人のヒーローにもごめんなさいって言ってくれる?」
「うん! 言っておく! でも活真くん、どうして昨日あんな事を?」
緑谷が尋ねると、活真は俯きながら話し始める。
「…お姉ちゃんヒーロー嫌いなんだ」
「え?」
「昨日も、
活真が小さな声で自信なさそうに言うと、緑谷は笑顔を浮かべる。
「信じてくれたんだ」
「え?」
「僕らが助けに行くって信じてくれたんだよね? だから呼びに来てくれた!」
緑谷が笑顔を浮かべながら言うと、活真も微笑みながら頷く。
「…うん」
すると緑谷は、活真のバッグの紐に付いているエッジショットのバッジに気がつく。
「そのバッジ、忍者ヒーロー『エッジショット』のでしょ!?」
「うん!」
「活真くんもヒーロー目指してるの!?」
緑谷が尋ねると、活真は自信なさげに俯く。
「………僕の“個性”、ヒーロー向きじゃないし…それに、お姉ちゃんも危険だって」
活真が言うと、緑谷は母親が泣いて自分を心配してきた時の事を思い出した。
緑谷は、活真を心配する真幌を自分の母親と重ねていた。
すると緑谷は、活真の横にしゃがみ込んで尋ねる。
「ねえ、活真くん。活真くんはどんなヒーローになりたいの?」
緑谷が尋ねると、活真は少し笑みを浮かべながら答える。
「悪い敵をやっつける、強いヒーロー…!」
「そうなんだ…僕は、困ってる人を助けるヒーローになりたいんだ」
活真が言うと、緑谷も自分の夢を語った。
すると活真が緑谷の方を見て尋ねる。
「困ってる人を助ける…?」
「うん。活真くんの、敵に勝って人を助けるヒーロー。僕の、人を助ける為に敵に勝つヒーロー。順序は違うけど、目指してるものは同じ。『最高のヒーロー』なんだと思う。だから、お互いに頑張ろう!」
「…うん!」
緑谷が手を差し伸べながら言うと、活真は笑顔でその手を取った。
「あ、でもなるべく家族には心配かけない感じで」
「うん!」
緑谷と活真は、お互い家族に心配かけないような最高のヒーローになる約束をした。
そんな会話をしていると常闇と同様パトロールに出ようとした桜花がゆっくりと出てくる
ちょうど先程の会話を聞いていた桜花は活真に
「ヒーローに向いた“個性”と言うのは無い
ヒーローに必要なのは努力と志だ
たゆまぬ努力と高き志があれば
いつか必ず素晴らしいヒーローになれるだろう」
と言って飛び去った
そして夕方、滑り台の前では。
姉の真幌が、活真の帰りを待っていた。
すると活真が真幌を呼ぶ。
「お姉ちゃーん!!」
「どこ行ってたの活真!」
「デク兄ちゃんのとこ!」
「え」
「昨日の事謝ってきた!」
「どうして?」
活真が言うと、真幌が尋ねる。
すると活真は、自分の思いを真幌に伝えようとする。
「僕、お父さん好きだよ。お父さんのようなカッコいい人になりたい。でも、でも…!!」
活真が何かを言いかけたその時、突然港の方から大きな音が響き渡る。
「な、何…!?」
真幌が活真を守りながら後ろを振り向くと、港にはフェリーが直進しており、防波堤を破壊していた。
そのままフェリーが直進すると港の漁師達は一斉に逃げていき、フェリーは港に乗り上げる。
真幌と活真は、驚いた様子で崖の柵から身を乗り出して港の様子を確認する。
「なに…?」
「どういう事!?」
港に乗り上げたフェリーには、ナイン達が乗っていた。
ナインは、キメラとマミーに命令する。
「キメラ、マミー。邪魔をされたくない。陽動を頼む」
「やり方は?」
「好きにしていい」
「承知」
キメラがナインの命令に対して尋ねるとナインは新たに指示を出し、マミーが頷く。
ナインは、さらにスライスに命令しようとする。
「スライス」
「わかってるわ」
スライスが言った直後、ナイン、キメラ、マミーの三人はフェリーから飛び降りる。
するとスライスは、“個性”で髪を飛ばして漁船を破壊していく。
その様子を見ていた真幌と活真は、物陰に隠れていた。
「ヴィ、敵だ…! アレきっと敵だ…!」
「お姉ちゃん、ヒーローに連絡して!?」
「でも、あいつらまだ学生…「デク兄ちゃんなら助けてくれるよ! 絶対に!」
その頃、A組が借りていたいおぎ荘では。
畑仕事を終えた緑谷が、走りながら戻ってくる。
「畑仕事終わりました!!」
「おかえり、緑谷くん!」
「お仕事お疲れ様!」
緑谷が施設の中へと走っていくと、飯田と麗日が出迎えた。
一方、事務所で留守番をしていた爆豪はというと。
事務所の電話が鳴っていたので、爆豪は若干面倒臭そうに電話を取る。
「何だァ? チンケな依頼だったら受けな…『敵ヴィランが漁港に出たの!!』
爆豪が電話に出ると、いきなり真幌が叫ぶ。
すると爆豪は、声の主が真幌である事に気がつく。
「…その声、昨日のクソガキだな?」
そのやり取りを、ちょうど戻ってきた緑谷が聞いていた。
爆豪は、昨日真幌に騙されたので呆れ返った様子で真幌に説教をする。
「お前なァ、そう何度も騙さ『嘘じゃないって!! 本当なんだってばバクゴー!!』
真幌が切羽詰まった様子で言うと、緑谷は血相を変えて爆豪から受話器をひったくって受話器に向かって叫ぶ。
「もしもし!? デクだけど!!」
「てめェ…」
『漁港にヴィ…』
真幌が何かを言おうとしたその時、電話が切れた。
真幌の言葉を聞き逃した緑谷は、爆豪に尋ねる。
「真幌ちゃん何て?」
そして同時刻、キメラが送電塔を破壊していた。
「通信の遮断、完了。次は…」
その頃、旅行バッグを見つけた葉隠、峰田はというと。
「「本当にありがとうございます」」
「良かったね、まー君♡」
「そうだね、みーたん♡」
旅行バッグが無事見つかったカップルは、二人の前でイチャイチャしていた。
葉隠はバッグが見つかった事を素直に喜んで拍手を送っていたが、峰田は血眼で唇を噛んで悔しがっていた。
(何だよカップルじゃねーか芦戸めェ〜!!)
するとその時、外から何かの破壊音が聞こえる。
「何だ!?」
二人が外に出ると、住民達が一斉に走って何かから逃げていた。
「うわああ!?」
「ヴィ、
住民達が逃げていく方向とは逆の方向に走っていくと、その先には赤い包帯で巻かれたミイラが暴れ回っていた。
「マジで
「な、何とかしなくちゃ!!」
「とは言ってもオイラ達の“個性”じゃせいぜい足止め程度にしかならねぇ
葉隠、事務所に応援を要請しろォ」
「電話繋がらない! 旗が立ってないよ!!」
葉隠は、自分の携帯を指差しながら言った。
携帯は圏外になっており、電波マークの棒が一本も立っていなかった。
「嘘だろ!?」
すると、“個性”でミイラを操っていると思われるマミーが現れる。
「ほほう、こんな辺境にヒーローが二人も!」
そう言ってマミーは、包帯を飛ばす。
すると包帯は車や自動販売機に巻きつき、巻き付けたものをミイラに変えていく。
「「!?」」
そして一方、海岸では。
「フロッピー! テンタコル! 皆の避難を最優先に!!」
尾白は、海岸にいた蛙吹と障子に声をかける。
「わかってる!!」
「早くここから離れて!」
二人は、“個性”を使って海岸にいた客の避難誘導をしていた。
「『尾空旋舞』!!」
尾白は、尾を使って海岸で暴れていたキメラに攻撃を仕掛ける。
だがキメラは、あっさり尾白の攻撃を受け止めた。
尾白は、そのまま空中で身体を一回転させて尾でキメラの顔面目掛けて突きを放った。
「『尾突』!!」
尾白が尾でキメラの顔面を突くと、キメラが尾白を睨みつける。
「ちっ…痛えな」
キメラが尾白の尾を振り払うと、尾白は距離を取ってキメラに尋ねる。
「何が目的だ!? 何故こんな事を!?」
「ヒーローにしては若ェなァ」
そう言ってキメラは、両手で岩を持ち上げて尾白目掛けて投げつける。
尾白は、何とか降ってくる岩を避け続ける。
だが避け切れずに岩が目の前に迫ってくる。
尾白は、降ってきた岩を咄嗟に尾で砕いた。
だが次に飛んできた岩までは砕き切れず、岩が尾白に迫ってくる。
するとその時、常闇が『黒の堕天使』で飛んで尾白を救出する。
「常闇!!」
「遅くなった! 『
「アイヨ!!」
「『宵闇よりし穿つ爪』!!」
常闇は、
常闇は、
だがキメラは、常闇の攻撃を避けるどころか受け止めると、軽々と薙ぎを放った。
「ふん!!」
「ぐぁ…!」
キメラは、常闇の攻撃を薙ぎ払うと、すかさず右ストレートを放った。
常闇は、黒影の腕を盾にして攻撃を防いだものの、踏ん張りがきかずに吹き飛ばされる。
尾白は、キメラの方に走りながら常闇に指示を出す。
「スマホが使えない!! 事務所に戻って応援を!!」
「しかし!」
「ここは俺が持ち堪えてみせる!!」
そう言って尾白は、キメラの前に立ちはだかった。
その頃、いおぎ荘では
常闇が敵の襲撃を報告していた
「報告!! 海岸に敵が出現!!」
「んだと!?」
「尾白達が防戦中! 応援を乞う!!」
「報告する!商店街、漁港、浜辺に敵出現!
浜辺については常闇が報告したと思うが
敵人数4名!電波塔、浜辺、商店街に1名ずつ!
残り1名の居場所は不明だが島民の安全の確保が優先すべきこと
今は置いておく
緑谷が1人で駆けるのを確認した
この状況、彼奴なら己を省みずに動く
誰か彼奴を追え
敵か島民の居場所を知っているだろう
また、電波塔の敵はすでに移動していたため
対処不要だ」
桜花が言うと、八百万が飯田に指示を仰ぐ。
「飯田さん!」
すると飯田は、すぐに判断を下してクラスメイトに指示を出した。
「躊躇している時間は無い! ここにいる者は三班に分け、敵に対応する! 爆豪くんは緑谷くんを追跡!
明星くん、切島くん、上鳴くんは商店街の敵を迎撃!
八百万くんは耳郎くん芦戸くんと、商店街にいる島民の救助と避難を! 轟くん、砂藤くん、常闇くんは、俺と一緒に浜辺に! 瀬呂くん、麗日くんは浜辺にいる人々の救助と避難だ!
明星くん、常闇くんについては迎撃完了後は偵察を!
事態は一刻を争う!」
「この島にいるヒーローは私達だけ。島の皆さんを救えるのも、私達だけですわ!」
「雄英高校ヒーロー科1年A組、出動!!」
飯田と八百万が言うと、A組は一斉に島民の救助に向かった。