【完結】信頼度MAXオペレータ短編詰め   作:むとう

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ねれない理由/ドゥリン

 うつらうつら船を漕いでいたドゥリンは、ふと眠気が遠ざかったのを感じた。まだ重たい瞼を押し上げて周囲を見る。と、横で仕事をしていたはずのドクターが目を閉じていた。

 耳を澄ますと寝息が聞こえる。

「ありゃー」

 ドゥリンはくしくしと目元をこすって寝袋から出た。立ち上がって、ぐっと伸びをする。小さな体ゆえか、あるいは種族の特徴なのか、硬い床の上で(寝袋があるとはいえ)寝てもそれほど体は凝らない。いついかなる場所でも眠ることができる。以前そのことをドクターに話して、ずいぶんと羨ましがられたことを思い出して、小さく笑いをこぼした。

 眠るのは好きだ。深遠に意識を溶かすのも、あるいはとろとろと夢うつつの淡いにたゆうように泳ぐのも。眠気にあくびが漏れる。

 しかし護衛対象が寝てしまっていては、こちらも気持ちよく寝ているわけにはいかない。

 一瞬起こそうかと思ったが、逡巡の後、伸ばした手を引っ込める。ドクターはドゥリンが見た限りずっと頑張っていた。頑張っていたから、寝る権利はある。もしも業務が滞ったせいで他の者に叱られたら、面倒だけれど一緒に怒られてあげよう、と思う。

 まだぼんやりとする頭を振る。眠ってしまわないために、動くことにした。

 ドクターを見上げる。どうせならばふかふかのベッドで寝たほうが気持ちいいだろうが、ドゥリンの小さな体では眠っている人間を仮眠室までは運べない。大半の他のオペレーターならば難なくこなせそうなそれが自分ではできない。こういう時は己の体の小ささが、ちょっとばかり不満になる。小さな隙間に潜り込んで眠りやすいだとか、道行く人々から甘いものを献上されることが多いとか、この背が役立つことは結構たくさんあるのだが。

 ドゥリンは勝手知ったる足取りでブランケットを探し出すと、眠るその人に掛けるべく腕を伸ばした。

「おっとっと」

 バランスを崩しそうになったが、なんとか踏みとどまった。

 すうすうと青白い顔で眠るその人を見る。目の下に隈があって、ずいぶんと疲れているようだった。隣で一緒に寝られたら幸せだろうけれど、それは次の機会にしよう。

 ドゥリンはしばらくその横顔を見つめていたが、視線で起こす可能性を思いつくと顔をそらした。いや、ドクターがそういうものに敏感かと言われると首を傾けざるをえないのだが。

「よっと」

 机の上によじ登る。ドゥリンはぶらぶらと足を揺らしながら窓の外を見た。

 視線の先で、空の色は変わっていく。青から朱へ、そして藍へと。

 どうやら今日は無事に終わりそうだ。

 ドゥリンはくわ、と大きく口を開いてあくびをした。

 ──ドクターは、まだ起きない。

 

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