神国創造アグドメドロイヤ   作:夢見いるか

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第一話 自殺未遂

「いやだ……!いやだ……!」

 今日、長年やってきたオンラインゲームが終わる。

 それはクリック制の見下ろし型MMORPG「ファンタジーオメガ」で、僕はそのゲームでずっとソロプレイをしていた。

 拠点を作り、侵略してくる他のプレイヤーを迎撃し、そしていつのまにか有名ギルドとなっていた。

 昔は多少の他のプレイヤーも入れたこともあるが、そりがあわなくキック(BAN)をして、一人だけで楽しんでいた。

 拠点ごとに作られる限界までNPCを作り、防衛や侵略などの仕事に振っていた。

「アリア……」

 その中でも特にお気に入りだったのはアリアというNPCで、僕の理想の女性像をこれでもかと組み込んだキャラクターだった。

 黒髪ショートカット、オッドアイ、美しい白装束、巨乳、スタイルのいいくびれ、大きな尻、透き通る声、ボーイッシュな性格、主人に絶対に仕える従順性、そして何より良き相談役だった。

 ある程度AIで性格は組み込めたため、何度も試して理想的な性格にしていた。

 

 そして拠点名の名前は不落城メドロイヤ、多くのプレイヤーが侵略に来て、結局最後まで攻略されなかった城だ。

 その拠点も今日まで、そして僕は今日、

 

 自殺する。

 

 できればどうか、異世界転生であのファンタジーオメガの世界に、行けますように……。

 

 

「げほっげほっ」

 ドアノブにベルトを引っ掛けて、睡眠薬をたくさん飲んで死のうとしたが、結局死ねなかった。

 よろよろとしながら、ゲームのアイコンをクリックすると、サービスを終了しましたと出る。

「おお……」

 僕は大号泣し、よろめきながら倒れる。

 そしてそのまま何時間もぼーっとしていた。

 

 僕は孤児だ。幼い時に両親が死んで、施設で育った。

 でもその施設でも馴染めず、いじめられることが多かった。施設ガチャでは外れたのだろう。高圧的な施設の人たちは、僕をおどおどとした性格に成長させるのにうってつけだった。

 そして無理言って生活保護で一人暮らしするようになった。

 それで僕は偶然見つけたオンラインゲーム、ファンタジーオメガにハマるようになった。

 現実の辛さ、醜さから逃れるにはゲームはうってつけだった。

 そして食費を削り課金をして、有名ギルドとなったのだった。

 

 三日、水だけ飲んで過ごした。

 四日目からは食パンを少し齧った。

 無性にお腹が空いて、七日目には普通の食事を取れるようになった。

 学校を無断で休んだからか、電話がひっきりなしに鳴ったが無視していた。僕が学校に行かなくても誰も気にしない。行く必要なんてなかった。

 なんとはなしにテレビを見ると、おかしなニュースが放送されていた。

「太平洋に謎の島出現!?ぼんやりと見える城のようなものは一体!?」

「島……?」

 その島をよく見てみると、確かに城のようなものが見えた。

 どうやら島に乗り込もうとアメリカや日本、ロシアなどの軍隊が躍起しているようだが、なぜか船やヘリコプターが何者かに迎撃されて、乗り込めないらしい。

「というかこの城、不落城メドロイヤじゃないか……!?」

 

 僕はこの島と城についてネットで調べまくった。けどゲームと連想して考えてる人はいなさそうだった。

 というかゲーム、ファンタジーオメガに対するサイトが閉鎖していた。まるで最初から何もなかったかのように、アクセスができなくなっていた。

 そして公式ホームページもアクセスができない。何が起きている?

 

 どうやら衛星写真では、人のようなものが出入りしているのが見えたようだったが、外見まではわからないようだった。

 

 行ってみたい……けれど行く術がない。

 仕方はなしに僕は久しぶりに学校に行くことにした。自分ではどうすることもできないと諦めたからだった。

 

「おい……あいつ来てるぜ」

「神坂くん?」

「自殺したと思ったわw」

「やめとけ、いじめがバレたら内申点下がるぞ」

「関わんなきゃいいだろ」

 僕は耳を塞ぎたかったし、羞恥で肌が焼けそうだった。

 無言で自分の席につき、イヤホンをつけ本を読む。

 そうすればいくらか外界から閉ざして、安全にいられる。

 僕は一人ぼっちで、いつもそうだった。

 

 ーあの子が来るまではー

 

「転校生を紹介するぞー」

「ええ!?マジ!?」

「どんな人だろう」

 そしてドアから入ってきた人を見て、僕の時間が止まった。

 

「みなさん初めまして、海外から来ました、私の名前はアリア・メドロイヤ。アリアと呼んでください」

「え……」

 みんな呼吸を忘れていた。ショートカットの黒髪に、少し外国人じみた顔立ち、緑と青のオッドアイに、大きな胸と尻、ぷりっとした唇、艶かしい目立ち。

 あまりにも美少女で、僕たちは声を出すこともできなかった。

 そしてその少女はもちろん、僕が作り出したキャラクターそのものだった。

 その少女が僕を見て笑う。

 アリアが、求めていたアリアが、そこにいた。

 

「隣だね、よろしく」

「う、うん」

 僕は恥ずかしくて目を合わせることもできなかった。

 最初に話しかけられたのが僕だったからなのか、クラスメイトが僕に嫉妬の視線を向ける。

「君の名前は?」

「え、えと、神坂はじめって言います……」

「へえ、いい名前だね」

「あ、ありがとう」

 

「おい、そんなやつじゃなくて俺の名前も聞いてくれよ!」

「わたしも!」

「こいつ陰キャだから関わらない方がいいよ、犯罪犯すでしょ、こんなやつ」

「そいつキモいって」

 

「は?ボクは今神坂くんと話してるんだけど?」

 ぞっとした。首の後ろに氷がつけられたかのように、ひやりとした。

 周囲の温度が10度も下がったかのように、震えが止まらない。

 みんなも冷や汗を垂らして、喋ることができなくなっている。

 

「ああ、ごめんね、みんなあとで話そう。今は神坂くんと話したいから、それでいいかな?」

「え、う?は、はい」

「すみませんでした……」

 アリアは僕に軽くウインクした。そしてみんなはそれぞれの席に戻って行った。

「なんであんな奴が……」

「くそ、殺してえ」

「チッ」

 ただ、みんなは納得してないみたいで、恐ろしい嫉妬の視線をみんなから感じていた。

 アリアは僕に耳打ちする。

「ご主人様、一週間ぶりだね、後でご主人様の家に行っていいかな?」

「ひゅっ」

 蕩けるような甘い美声が吐息と共に耳を通る。

「う、うん」

「じゃあ放課後、一緒に帰ろうね、ご主人」

 僕は股間に熱がともるのを感じていた。

 しばらく惚けて、何も考えることができなかった。

 

 アリアが、僕に会いに来てくれた。

 

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