ようこそ開拓者がいる教室へ 作:アイボウ
入学式は淡々と進んでいき、偉い人の有難い言葉を聞いて無事終わった。
それから敷地内の説明を受けて解散となった。大方は寮へと向かって行く。残りはグループを作って施設へと行くみたいだ。
そんな中、私は探検することにした。
学校の中を探索する。学校の中には監視カメラが多くあった。いじめに敏感なのは本当っぽい。監視カメラと教室を交互に見ながら歩いて行く。
2年生の教室がある階も3年生の教室がある階も監視カメラがあった。それにしても監視カメラ多くない? いじめに敏感じゃ片付けられないんだけど。私達の行動を監視してるんじゃないの?
そんなことを考えていると――
「そこの1年、何をしている」
後ろから声が掛けられた。振り返ると眼鏡を掛けた男子生徒と傍にお団子を作った女子生徒がいた。
「あんた達は?」
「堀北学。生徒会長だ」
「橘茜です。生徒会で書記をしています」
生徒会……いきなり大物が出てくるなんて思ってもみなかった。相手も名乗ったし私も名乗ろう。
「1年Dクラス、開道星奈。開くに道で開道」
「それで開道、ここで何をしている」
まるで嘘は許さないぞって感じで睨んできた。圧も感じるし、本当に許されなさそう。
「何って、探検ですけど?」
「それで何を得た」
「えっ? 監視カメラが多いのと、後2年生の席が少なったからですね。3年生も少なくなっている気がしますけど、2年生程じゃないですね」
私は見てきた光景を思い出す。そういえば2年生、3年生の席が少なかった。その変化を口にした途端気付く。なんで席が少なくなっているのか。恐ろしい事実に気付いてしまった。
「……なるほど、今頃気付いたのか」
堀北生徒会長は私を見て変化に気付いた。本当に只者じゃないらしい。
「この学校って退学があるんですね。しかも多くないですか?」
「その問いには答えられない」
答えられない問いだったんだ。じゃあ他の質問なら答えてくれるのかな? 今疑問に思っていることを出してみよう。
「じゃあ質問を変えます。学校には関係あることなんですけど、毎月ポイントは振り込まれるんですか?」
「嗚呼、ポイントは振り込まれる」
「その値段は……10万ポイントですか?」
「それは俺にも分からんが、ポイントは振り込まれるぞ」
ポイントは振り込まれることは確定と見て良い。それにしても何故値段の方は答えられないんだろう。
本当に答えられないなら、本当に知らないか変わるのかな値段。何を基準に……ってだからあれだけの量があるんだ。
「質問じゃないんですけど、ここの監視カメラ多いですよね。……何を見ているんだろうなって思ってました」
「……ほう」
「文字通り私達を見ているなら、きっと意味がある筈。たとえば、授業態度とか」
「俺の口から答えられるものは無い」
堀北生徒会長はポーカーフェイスが上手のようだ。橘先輩は一瞬だけ驚いたような気がするけど、きっと気の所為だと誤魔化せられる。
「もう質問は無いか?」
「そうですね、もうありません」
「端末を出して貰おう」
「? 分かりました」
連絡先でも交換するのかな? いやまだ初対面の相手……そういえば櫛田さんと別れる際交換したっけ。でもそれだけで出すかな。
すると堀北生徒会長から20万ポイントが振り込まれた。
「これは……」
「餞別みたいなものだ。受け取って損は無い」
きっとこのポイントにも意味があるのかもしれない。本当に浪費はしないようにしよう。
「質問に答えて下さりありがとうございました。ここら辺で失礼します」
私は堀北生徒会長と橘先輩から離れる。1人になると呟いた。
「とんでもない学校に来ちゃったかも」
私は一旦寮へと帰った。その後は再び外に出て買い物をして必要な物を揃えていく。それを繰り返していった。取り合えず、初日で揃えられる物は揃えたかな。後はコンビニでも行って食材を買おう。そんな感じでコンビニへとやってきた。
コンビニだけあって色々な商品があった。気になった物をかごの中へと入れていった。そんな時、ふととある少女が目に入ってきた。手に取ろうとしているのは、お酒である。えっ? どういうこと?
あっ、万引きかぁ! 気付けば鞄へと向かっていく。私は少女に近付いた。
「駄目だよ」
「っ!?」
耳元で囁くように呟いた。大声を出す訳無いでしょ。少女はお酒を元の場所へと戻していた。よし、これでOK。
「ねぇ、一緒に買い物しない?」
「……良いけど」
こんな感じで少女と一緒に買い物した。いや正直どう声を掛けたら良いのか分からず、最初に出てきた言葉が買い物へと誘う言葉だった。ほんとだよ?
それとやっぱりあった。
「無料商品……」
無料商品があった。恐らくポイントが減っている時の救済処置みたいなもの。無料商品があるってことはポイントに困ることがあるということだ。使える物は使っておこうの精神で無料商品をかごの中へと入れた。
「無料商品を使った疑似0円生活でも始めようかな……」
「……」
うーん警戒しているのか突っ込んで貰えなかった。私達はそのまま会計をしてコンビニを出た。
「こうして出会えたのも何かの縁だし、自己紹介するね。私は開道星奈。よろしく」
「……神室真澄。で、私をどうする気なの」
「どうする、って? そんなの決まってるじゃん」
神室さんは身構える。なんか脅しみたいになっちゃってるけどこのままいこう。
「神室さん、一緒にご飯食べよう!」
「……は?」
私は神室さんをご飯に誘うのであった。
私の部屋には2人の姿があった。私と神室さんである。なんと神室さんとは部屋が隣同士だった。これには私も驚きを隠せなかった。神室さんは嫌そうな表情してたけど。
で、今は私が料理を作り終えたところである。
「ふふっ、お待たせ。ハンバーグ定食だよぉ~」
神室さんと私の分のハンバーグ、ご飯、コーンスープを机を上に置いた。
「「いただきます」」
私と神室さんは夕食を食べ始める。そういえばお昼ご飯を簡単に済ませちゃったからお腹空いてたんだよね。そして味はいつも以上に美味しいと感じた。
神室さんはどうかな?
「……」
あれ、反応が無い。作る前に食べられるものとアレルギーの有無は確認したんだけど、駄目だったかな。と、考えていたが神室さんは黙々と食べ始めた。そして気付く。神室さんの瞳がキラキラと輝いている、気がした。こんなに美味しそうに食べてくれるなんて思ってもみなかった。嬉しいな!
そのまま食べ続けて食器にあったご飯が無くなった。
「「ごちそうさま」」
いやぁ、食べた食べた。神室さんも満足気になっている気がする。
「一緒に食べる料理がこんなに美味しかったの、久しぶり……」
「それは良かった」
それにしても久しぶりか。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「ねぇ、また食べに来ても良い?」
勿論、良いと言いたい所だけど条件を付けたい。
「条件がある」
ぴくっと神室さんの体が震えた気がした。大した条件じゃないからそのまま続ける。
「材料費があるから、その半分を食べた後に支払って欲しいことと、食べる日は事前に連絡して欲しい」
「……それだけ?」
「うん。これだけ」
「……私、万引きしようとしたのよ。もっと――」
「確かに万引きは悪いことだよ。それは否定しない。だけど、これからのことは誰にも分からない。だから私は信じる。神室さんはもう万引きしないって」
確かに万引きしようとしたけど、私が声を掛けて未遂に終わってる。証拠なんて無い。でも万引きをすること自体は悪いことだ。だから私に出来ることは神室さんが二度と万引きをしないって信じること。
「……信じる、か。どうして、信じてくれるの?」
「私は神室さんのことまだ全然知らない。でも友達だと思っているから」
神室さんの表情が驚きに変わる。その後、微笑んで答えてくれた。
「私も開道のこと、友達として接したい。私に出来るか不安だけど……」
「未来のことは誰にも分からないけど、神室さんの未来は神室さん自身が切り開くものだよ。私は神室さんが良い未来に行けるよう手伝う。だから未来をどうか諦めず、歩んでいこう」
「……私の未来、か。悪くないかも」
最初に会った時より良い表情になっているよ、神室さん。
「私、未来に向かって頑張ってみる」
「頑張れ、神室さん」
その後、神室さんは自室へと戻っていった。私は食器を洗った後、お風呂に入って、歯磨きして、そのまま寝るのであった。