ようこそ開拓者がいる教室へ   作:アイボウ

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学食と部活動の説明会

 翌日、私は朝早くに起きてジャージ姿になって外に出た。いつもの生活習慣で外を走り始める。やっぱり外で体を動かすのは楽しいなぁ。

 その後は自室に戻ってシャワーを浴びる。ご飯を軽く作って朝食を食べたら、制服に着替えて扉を開けた。

 

「「あっ、おはよう」」

 

 ちょうど神室さんも出てきて一緒に学校へと向かうのだった。

 

 

 

 学校生活が2日目を迎える。今日は授業というより受ける為の説明が多かった。みんな真面目に受けているのかと思ったが、赤髪の青年は寝ていた。疲れているのは分かるけど、授業中なんだから起きていて欲しい。でも先生方は注意しなかった。やっぱり、授業態度も評価されるんだろう。監視カメラと先生の目で確認している。

 個人を評価するならまだしも、これが連帯責任とかなら嫌だ。嫌って思う方が当たりやすいし想定しといて損は無い。考えておこう。

 

 それはそれとして赤髪を起こしに行ったのだが――

 

「うっせ、お前には関係ねえよ」

 

 赤髪の青年は私を拒絶した。流石に2日目で機嫌を損ねたくはないのでそのまま退散する。

 

 

 

 昼休みになる。私は少し出遅れて学食へと向かうことになった。

 

「人がいっぱいいるね」

 

 それが率直な感想であった。やっぱりお昼時は混むんだね。そんなことを考えていると知っている顔を見つけた。私は学食を覗いている彼に近付いた。

 

「やっ、覗いてどうしたのかな綾小路君」

 

「っ!? 開道か、驚かさないでくれ」

 

「ごめん。それで何やってるの?」

 

「いや、学食を覗いていただけだ」

 

 1人で覗いているだけ?

 

「私には今にも入りたいって見えるけど、1人じゃ入りづらいもんね」

 

「うっ!」

 

 図星みたいだ。……私も1人だし誘ってみようかな。

 

「私も一人だったの。良かったら一緒に食べる?」

 

「っ! 良いのか?」

 

「うん。一緒に食べよう」

 

「ありがとう」

 

 こうして私は綾小路君を誘って学食を食べることにした。食券は色々とあったが目を引いたのが山菜定食だった。それは無料だ。やっぱり10万ポイントは貰えないと考えた方が良さそう。

 私としては疑似0円生活をするのも有りかと思ったが、まだ2日目なので唐揚げ定食にした。綾小路君はなんと山菜定食だった。

 

「すみません、小皿を付けて貰うことは可能でしょうか?」

 

「良いよぉ!」

 

「ありがとうございます」

 

 唐揚げ定食+小皿を持って机に置いた後席に座る。綾小路君も山菜定食を置いて席に座った。

 

「「いただきます」」

 

 とは言ったものの私は唐揚げを2つ小皿の方へと移した。これで保険が出来た。さてと綾小路君の方を向けば、山菜をちょうど食べていた。

 

「不味くは無いが、美味くも無いな。これが山菜の味か」

 

 綾小路君はこれでご飯が進むのか不安なようだ。実際ご飯は進んでいない。

 

「山菜も立派なおかずだよ」

 

「だが、これだけでは……」

 

「条件付きだけど、唐揚げ分けて上げる」

 

 私は小皿に移した唐揚げを綾小路君に見せる。

 

「どんな条件だ?」

 

 真剣な眼差しでこちらを見てくる。私は条件を提示する。それは――

 

「山菜もちゃんと食べること。それが約束出来るなら上げる」

 

「分かった。必ず山菜も食べることを約束する」

 

「はい、どうぞ」

 

 私は綾小路君に小皿に乗せた唐揚げを2つ上げる。綾小路君は早速唐揚げの1つを食べた。その表情は美味いと言っていた。

 私も唐揚げ定食を食べ始めるのであった。

 

「これが青春か」

 

 綾小路君がそう呟いていた。青春、味わって欲しいな。そんな食べている最中の出来事であった。

 

『本日、午後5時より、第一体育館の方にて部活動の説明会を開催いたします――』

 

 部活動かぁ。私も部活動しようかな?

 

「開道は、部活動やるのか?」

 

「うーん、今のところ考えていないんだよね。綾小路君は?」

 

「オレは分からない。ただ、多分入らないと思う」

 

「じゃあ行かない?」

 

「……いや行く。オレに残されたチャンスはそこしか無いんだ」

 

 残されたチャンス? そういえば綾小路君ってみんなと仲良くなりたいんだっけ。もしかして――

 

「綾小路君って友達を作りたいの?」

 

「嗚呼、良く分かったな。オレは友達を作りたいんだ」

 

 綾小路君の表情に嘘は無かった。本当に友達を作りたいみたいだ。普通なら理由なんて無いのかもしれないけど、綾小路君の場合は何かありそう。

 

「へえ、そうなんだ。友達を作りたい理由ってある?」

 

「そうだな。話せば長くなるが、オレは事なかれ主義なんだ」

 

「事なかれ主義?」

 

 綾小路君は事なかれ主義について説明してくれた。特に趣味は無いけど興味は沢山あるし、友達は沢山はいらないけどある程度は居て欲しいとのことだった。中々変わった思考の持ち主だし、高校生活をここまで考えているとは思ってもみなかった。

 

「その事なかれ主義で上手くいっているの?」

 

「いや、中々上手くいかない。なんでだろうな……」

 

 まだ2日目だが、綾小路君は深刻な表情をしている。私は自分の考えを話すことにした。

 

「私は、友達って自分の行動によって作られるものだと思ってるんだ。数とか質とか、そんな難しいことは分からない。ただ分かるのは、たとえ同じ道じゃなくても共に歩んでくれる人だって思ってる」

 

「……開道は凄いな。そこまで考えてるとは思ってもみなかった」

 

「私の考えだって、影響されて自分なりに考えたものだよ。きっと綾小路君にも自分なりの答えが見つかる筈」

 

「……じゃあ、1つ良いか?」

 

 綾小路君は真っ直ぐにこちらを見ている。

 

「オレにはまだ友達がどういう意味を持って、どんな姿が相応しいのか、分からない。だから開道のように答えを探してみる。その一歩として、開道……オレと友達になってくれないか?」

 

 私は一度瞳を閉じる。そのまま開けて私は答えた。

 

「良いよ、綾小路君。これからよろしく」

 

「っ! 嗚呼、こちらこそよろしく頼む!」

 

 私と綾小路君は友達になった。

 

 それで時間が経っていたので急いで定食を食べ終える。

 

「「ごちそうさま」」

 

 綾小路君は約束通り山菜定食を完食したみたいだ。食器を片付けて教室へと戻った。

 

「あっ、そうだ。連絡先交換しよっか」

 

「そうだな」

 

 私と綾小路君は教室で連絡先を交換した。その様子を黒髪の少女が見ていることにも気付きながら。

 

 

 

 時間が経って放課後。私と綾小路君、そして綾小路君の隣にいる黒髪の少女と一緒に部活動の説明会へとやってきた。

 私と綾小路君が部活の説明会に行こうとして、気付けば黒髪の少女も一緒にいた感じである。そういえば自己紹介がまだだった。

 

「私は開道星奈。開道は開くに道。よろしく」

 

「生憎とこちらはよろしくするつもりはないわ」

 

 ?

 

「いや、名前知らないと一生あんたのことあんたって呼び続けることになるよ」

 

「……堀北鈴音」

 

 堀北? 偶然なのかな?

 

「鈴音さんね」

 

「気安く名で呼ばないで」

 

「……はい、堀北さん」

 

 うーんコミュニケーションが上手く取れない。中々ガードが固いようだ。そんなことを考えながらパンフレッドを読んでいる。すると綾小路君がこちらに少しだけ近付いて来た。

 

「堀北がすまない。あれが通常運転なんだ」

 

「ううん。そこまで気にしてないよ、名前聞けたから」

 

「……本当にすまない」

 

 開始するまで他愛ない会話を続ける。意外だったのは堀北さんがこちらを時々見ていたことだろうか。会話に混ざりたいのかと率直に聞いてみれば、棘のある言葉が返ってきた。どうにもコミュニケーションを取りたがらない印象が出来つつある。

 

 時間が経過して部活動の紹介が始まった。あ、橘先輩だ。部活動の説明を聞きながら舞台を見ていた。

 

「どうした?」

 

 すると綾小路君が堀北さんに声を掛けた。しかし堀北さんはまるで反応しない。どうしたんだろう?

 最後の一人になった時、堀北さんの反応が無くなった理由が分かった気がした。舞台に現れたのは、私も知っている堀北生徒会長だった。

 

「頑張ってくださ~い!」

「カンペ持ってないんですか~!」

「あはははは!」

 

 1年が騒ぎ出す。しかし、堀北生徒会長は気にせずただじっと黙っている。やがて張り詰めた空気になり、静寂が訪れた。

 

「私は生徒会長を務めている堀北学と言います」

 

 それから生徒会は1年生から募ること、部活との掛け合いは原則的に受け付けないことが分かった。

 

「それから――私達生徒会は甘い考えによる立候補を望まない。そのような人間は当選することはおろか、学校に汚点を残すことになるだろう。規律を変えるだけの権利と使命が、学校側に認められ、期待されている。そのことを理解出来る者のみ歓迎しよう」

 

 そういって堀北生徒会長は壇上を後にした。静けさだけが残った体育館。やがて橘先輩の言葉によって張り詰めた空気がゆっくりと消えていった。

 

「おい、どうしたんだ」

 

「堀北さん、大丈夫?」

 

 私と綾小路君は堀北さんに声を掛けるが、反応は無かった。どうにかしたいが方法が頭に浮かばない。そんな時に綾小路君に声が掛かった。

 

「行って来て上げて」

 

「堀北を頼む」

 

 そう言葉を残して綾小路君はこの場から離れていった。私は堀北さんに声を掛け続けて、やっと反応してくれた。

 

「大丈夫?」

 

「え、ええ。気にしないで」

 

 そう言って堀北さんはこの場から去った。私は綾小路君に連絡を入れてから戻っていくのであった。

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