ようこそ開拓者がいる教室へ   作:アイボウ

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運動大好きな私の水泳

 入学式から1週間が経過した。最初は静かだった教室も時間が経つと騒音、話し声が多くなってきた。授業中にも関わらず、だ。私はポイントの増減もあるが、真面目に授業を受けてる身としては堪ったものではないと考え休み時間中に注意した。しかし聞く耳を持ってくれるは僅か数人程度。残りは適当に返しているか、無視しているかの二択だった。

 

 そんな感じの日常が続いている中、現在私は席に座っていた。今日はやたらと男子生徒はソワソワ、落ち着きがない感じだけどどうしたんだろう?

 と、考えていたが、池君と山内君の会話を聞くに私達女子のスク水姿がお目当てらしい。一部の女子はドン引きだ。思春期なんだと思うしかない。

 

 だが私の考えを裏切るようにヒートアップしていく。池君が綾小路君を手招きしている。綾小路君は立ち上がって行こうとした。私は手を伸ばそうとして、やめた。手を元の場所へと戻す。綾小路君は恐らく友達を作りたくて行こうとしている。それを邪魔するのはいけない気がした。綾小路君は一瞬だけ私を見て、再度池君に呼ばれて向かうのであった。私はその様子を見ているだけにした。

 

 

 

 水泳の時間がやってきた。女子の一部は見学することにしたらしい。まぁあんな話をされたら無理もない。女子は私含めて10人がスクール水着に着替えた。

 そのままプールへと向かう。男子達は一足先に来ていたようで、数の少なさに驚いているようだった。

 

 私と堀北さんは綾小路君の元へと向かった。綾小路君の体を見て鍛えているのかなと考える。

 

「何を黄昏ているの?」

 

「己との戦いに没頭していたんだ」

 

 綾小路君も男の子なんだね。

 

「何か運動をやっていたの?」

 

「いや、特に何もしていない」

 

「えっ?」

 

 私の目に狂いはない筈。でも綾小路君は運動をしていないと言った。どういうこと?

 

「それにしては……前腕の発達とか、背中の筋肉とか、普通じゃないけど」

 

「両親から恵まれた身体貰っただけじゃないか?」

 

「とてもそれだけとは思えない」

 

 これに関しては私も同意見である。これ本当は鍛えているんじゃないだろうか。しかし綾小路君は結局認めなかった。

 

 先生から集合が掛かる。見学者は16人だったが、特に何か言われるようなことはなかった。すると一人の生徒が申し訳なさそうに手を上げて泳げないことを告げる。その時、先生は言った。

 

「俺が担当するからには必ず泳げるようにしてやる。安心しろ」

「泳げるようになっておけば必ず役に立つ。必ず、な」

 

 強調するような言い方だった。泳ぎを覚えておいて損は無い、本当に役立つ時が来ると言いたいの?

 それからプールの授業が始まった。最初は泳いでおけば良いのかなと考えていたが、競争が始まった。

 

「1位になった奴には、特別に5000ポイントを支給しよう。逆に1番遅かった奴には補習を受けて貰うから覚悟しろ」

 

 こんな感じで始まった競争。女子は少ないからか5人を2組に分けた。私は第2レースである。

 第1レースが終わり、第2レースが始まる。久しぶりのプールだけど感覚が残っているのは確認済み。後は泳ぎ切るだけ。

 

 第2レースが始まった。私はただ泳ぎ続けた。50m泳ぎ切ると顔を上げる。先生は信じられないものを見ているようだった。

 

「24秒51!」

 

 私は幼い頃に水泳を習っていたが、正直詳しいとは言えない。ただ表情を見る限り相当凄い記録なのかな。

 私達第2レース組はプールから上がる。先生から順位を聞くと1位が私だと告げられた。タイムも話されて周りは驚いていた。特に驚いていたのは小野寺かや乃さんだった。

 

 すると先生と小野寺さんが目の前に現れた。そして行ったのは水泳部への勧誘だった。素直に嬉しいが――

 

「ごめんなさい。水泳部には入るつもりはないです」

 

 手を合わせて謝った。2人共残念そうにしていた。私は綾小路君と堀北さんがいる場所へと向かった。

 

「凄かったな」

 

「そうでしょ、1位だよ」

 

「……」

 

 綾小路君は凄いと言ってくれた。堀北さんは無言で私を見ている。

 

「次は綾小路君の番だね、頑張れ」

 

「……嗚呼、勿論だ」

 

 綾小路君は目線を逸らしながら答えた。あれ? どうしたのかな? そんな疑問を抱えながら綾小路君を見送った。

 

 綾小路君は須藤君(後で聞いた)に次いで2位になり、タイムも上々で決勝戦へ進出。決勝戦では残念ながら5位だった。

 いやぁ、凄かった。高円寺君は私よりタイムが良くて、決勝戦でも揺ぎ無かった。戦えただけ凄いよ、綾小路君。

 

「お疲れ様」

 

「嗚呼、ありがとう」

 

「残念だったね。でも戦えてたと思うよ」

 

「流石に周りが速かったな。オレじゃ相手にならなかったか」

 

「そんなこと無いと思うよ。頑張ってたじゃん」

 

「……」

 

 私の言葉に反応するように黙ってしまった綾小路君。本当にどうしちゃったんだろう。

 

「綾小路君?」

 

「あっ、そう、だな。少し離れるけど、嫌いになった訳じゃないからな」

 

 そんな言葉を残して綾小路君は離れていった。なんていうんだろう、まるで負い目を感じているみたいだった。

 その後、私は補習組と一緒にプールで泳いだ。先生に補習組の世話、まぁ女子だけだけど見させて欲しいと言い、先生は許可を取った。小野寺さんも手伝ってくれて、補習組に教えて回った。

 

 プールが終わると先生は約束通り5000ポイント支給してくれた。私は小野寺さんに感謝した。小野寺さんが残ってくれた理由は私が残ると言い出したかららしい。少し照れくさいような気がした。

 ……それでも綾小路君のことが頭から離れることはなかった。

 

 

 

 私は食材を買う為にスーパーに向かおうとする。その時携帯から通知音が鳴った。誰だろうと見てみたら、綾小路君からだった。

 

『放課後、時間が空いてるか? 話がしたい。屋上へ来て欲しい』

 

 私は即座に連絡した。

 

『分かった。今から向かうから少し待ってて』

 

 私は屋上へと向かい始めるのだった。

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