ようこそ開拓者がいる教室へ 作:アイボウ
5月1日。支給されたポイントは0だった。茶柱先生が何か質問が無いかと聞いた時、真っ先にポイントが支給されていないことが上がった。しかし茶柱先生はポイントは支給されたと言った。この発言によって私が考えていた問題が現実になったと思った。
生徒達は何を言っているのか理解出来ない。そして、茶柱先生は失望を言葉として放った。正直、先生が言っていい言葉ではない。
茶柱先生はポイントは支給されたことを説明する。理解出来ない生徒達は困惑するだけ。
「ははは、なるほど、そういうことだねティーチャー。理解出来たよ、この謎解きがね」
理解と言葉にしたのは高円寺君であった。偉そうな態度で本堂君を指さした。
「つまり私達は1ポイントも支給されなかった、ということさ」
「はぁ? だって先生は毎月10万ポイント振り込まれるって――」
「私はそう聞いた覚えはない、そうだろう?」
高円寺君の言葉に反応したように茶柱先生は口を開いた。0ポイント支給されたという言い方も正しい筈。
「態度には問題ありだが、その通りだ。全く、これだけヒントをやって自分で気付けたのは、数人とは。嘆かわしいことだ」
「……先生、質問して良いですか? 腑に落ちないことがあります」
平田君が手を挙げて質問した。
「振り込まれなかった理由を教えて下さい。でなければ納得出来ません」
理由か。そんなものは大体理解しているつもりだ。
「そうだな。では……開道、言ってみろ」
突然指名してくるのやめて欲しい。悪目立ちじゃん。私は立ってみんなに向けて話した。
「遅刻、欠席が多いこと。私語や携帯を触っている回数は更に多いこと。あと居眠りも対象かもしれない。流石に数までは……」
「いや、よく言った。正解だ。遅刻欠席合わせて98回。授業中の私語や携帯を触った回数391回。居眠りも評価の対象に入る。よくもここまでやらかしたものだ。この学校では、クラスの成績がポイントに反映される。その結果、振り込まれる10万ポイントを全て吐き出した。それだけのことだ。入学式に言った筈だ。この学校は実力で生徒を測ると。お前達は0という評価を受けたに過ぎない」
言い終わった時点で私は席に座ってる。
「茶柱先生、僕らそんな説明を受けた覚えはありません」
「お前らは説明されなければ理解出来ないのか」
「当たり前です。振り込まれるポイントが減るなんて話は聞かされていませんでした。説明さえ貰えてたら、皆遅刻や私語なんか――」
「それは違うんじゃない?」
思わず口を挟んでしまった。……綾小路には悪いと思ってるけど、自分が思っている以上にクラスメイトに不満が溜まっているのかもしれない。
「授業中に私語をしない、遅刻や欠席はなるべくしない方が良い。それは義務教育を通して言われてきたことだと思うけど、違う?」
「それは……」
「開道の言う通りだ。そんな当たり前のことをしてこなかった、だからポイントは0だった。全部お前らの自己責任だ」
ついでに心の中で呟くなら、この1ヶ月、注意を繰り返してきた。何度も言ったのに改善しなかった。……ほんと、不満は溜まっているらしい。
茶柱先生の説明は続く。平田君のポイントの増減については、人事考課で教えられないと軽く躱された。今月に授業態度を改めたとしてもマイナスにはならないがプラスにもならない。遅刻や欠席を何回しても0だから関係ないとのことだった。
これだけで終わるなら、まだ良い方かもしれない。しかし終わらなかった。白い厚手の紙を取り出して黒板に貼りつけ、磁石で止めた。
Aクラス 940
Bクラス 650
Cクラス 490
Dクラス 0
これは、クラスの成績表?
茶柱先生は話を続ける。生徒達の言葉を反論し続けた。しかし本当に0になるとは、ポイントあまり使わなくて良かった。
「段々、理解してきたか? お前達が何故Dクラスに選ばれたのか」
生徒達は困惑する。普通ならランダムで選ばれるような……普通じゃないということ?
「この学校では優秀な生徒達の順にクラス分けされている。優秀な者をAクラスへ、ダメな生徒はDクラスへ、と。つまりDクラスは落ちこぼれが集まる最後の砦という訳だ。お前達は最悪の不良品だな」
茶柱先生は0ポイントにしたのは私達が初めてで、わざとらしく拍手した。須藤は馬鹿にされると苛立ちを込めて机を蹴った。説明は続いて、クラスポイントの数値がそのままランクへと反映されるということだった。
茶柱先生の話は続く。
「先日の小テストの結果だ。揃いも揃って粒ぞろいで、先生は嬉しいぞ。中学で一体何を勉強してきたんだ? お前らは」
嗚呼、50点くらいかぁ。私も復習しないとな。
「良かったな。これが本番だったら7人は永久退場だったぞ」
「え、永久退場?」
「説明していなかったか? この学校では中間テスト、期末テストで1科目でも赤点を取ったら退学になることが決まっている。今回のテストで言えば32点未満の生徒は全員対象と言うことになる」
「「は、はああああああ!?」」
……ちょっと言い方に違和感を感じるが、正体が掴めない。
池君は高円寺君の言葉に反応するが、高円寺君は上位の同率首位の1人だった。
「それからもう1つ付け加えておこう。国の管轄下にあるこの学校は高い進学率と就職率を誇っている。それは周知の事実だが……世の中そんな上手い話は無い。お前らのような低レベルな人間が何処にでも進学、就職が出来る程世の中は甘く出来ている訳がないだろう」
「恩恵を受ける為には、Cクラス以上に上がる必要がある……と言うことですね?」
「それも違うな平田。この学校に将来の望みを叶えて貰いたければ、Aクラスに上がるしか方法は無い。それ以外の生徒には、この学校は何一つ保証することはないだろう」
そうなんだ。私からしてみれば、教育に力を注いでいるなら別に関係ない。Aクラスに上がれても、誇れるような自分じゃなきゃ、って気持ちがある。
私がそう考えている中、幸村君と高円寺君が話していたみたいだ。
「浮かれていた気分は払拭されたようだな。お前らの置かれた状況の過酷さを理解出来たのなら、この長ったるいHRにも意味があったかもな。中間テストまで残り3週間。じっくりと熟考し、退学を回避してくれ。お前らが赤点を乗り切れる方法はあると確信している」
確信、か。確実な方法があるのかな?
茶柱先生は教室を後にするのだった。さて、この状況どうしよう。