紅丸達が仲間になってから、しばらくが経った。
俺たちは、白老やシズさんの指導の元、着実に強くなっていた。
「ハァァァァァ!」
「まだまだですぞ!」
「はっ!」
俺は木刀を持って、白老に向かっていくが、白老にはあっさりといなされてしまった。
だが、それでも俺は白老に向かっていく。
しばらくすると。
「はぁ〜……………」
「お疲れ様ですじゃ。タオリン様も腕が上達しておりますな」
「いや…………白老と比べたらまだまだだよ」
「ほほほ。何を言いますか。最初の頃と比べたら、腕は上がっておりますぞ」
俺がそうため息を吐くと、白老はそんな風に言う。
やっぱり、戦闘経験の差が大きく出たな。
実際、この世界に来てからの戦闘は、イフリートと名付け前の紅丸達くらいしかない。
牙狼族との戦いでは、エージェントに任せていたにすぎないので。
すると。
「よっ。お疲れさん」
「絆翔…………!」
そこに、絆翔がやってくる。
俺は絆翔から水を受け取ると、それを飲む。
「それにしても…………白老のじっちゃんにシズさんに戦闘を教わってるなんて…………頑張ってるな」
「うん。やっぱり…………豚頭族が迫ってるって聞いて…………いてもたってもいられなくて。皆を守りたいって思ってるから」
「……………そっか」
俺と絆翔はそんなふうに話す。
やっぱり、大鬼族の里が豚頭族に滅ぼされたのを聞いて、他人事では無いと思った。
だからこそ、後悔しないようにしたい。
そう考えて、白老やシズさんの特訓を真面目に受けているのだ。
その後、俺と絆翔は、朱菜の様子を見に行く事に。
途中、リムルと紫苑と合流する。
俺たちは、中へと入る。
中には、朱菜、ガルム、ドルド、ミルドが居た。
「すごいな」
「「「「ん?」」」」
「もう絹織物が出来たんだ」
「リムル様!タオリン様!」
「ども」
「こんにちは」
「うん」
「やっぱ、喋らねぇ!」
「喋らないんだ」
「みたいだな」
俺たちがそう言いながら入ると、朱菜とガルム達はそう反応する。
すると、朱菜がリムルの方へと寄っていき、リムルを抱きしめる。
「いらして下さったんですね!リムル様!タオリン様も!」
「うん」
「それで、どんな具合だ?」
「はい。カイジン様が作ってくださった織り機は、とても使いやすいです」
「そうか、良かった」
「この調子で、皆の衣類の製作を頼んだぞ」
「はい!お任せ下さい!」
朱菜がそう言い、俺とリムルがそう聞くと、朱菜は機織り機を見ながらそんな風に言う。
衣服の作成は、朱菜に任せたのだ。
すると、紫苑が口を開く。
「では、リムル様、タオリン様。参りましょう。お昼が冷めてしまいます」
「あっ、紫苑。秘書のお仕事は、ちゃんと出来ているのですか?」
「勿論です、朱菜様」
紫苑がそんな風に言うと、朱菜はそう聞き、紫苑はそう答える。
紫苑はリムルの秘書を名乗り出て、現在は、リムルの秘書兼護衛役だ。
ちなみに、俺の場合は、秘書と護衛はエージェントに任せている。
すると、朱菜はリムルを掴む。
「フフフ………。私が、リムル様のお世話をしても良いのですよ?」
「いいえ、姫。それには及びません。私がきちんとお世話いたします」
「2人とも………?」
「修羅場ってんな…………俺たちは外で待ってようぜ」
「そうだね」
すると、朱菜と紫苑はリムルを掴むと、そんな風に言って引っ張りあう。
それを見て、俺と絆翔は先に外に出ておく。
それにしても、朱菜と紫苑って、リムル関連になると、張り合うんだよな。
朱菜はどちらかというと、リムル寄りだからな。
まあ、気にする事はないか。
その後、リムルと紫苑と共に戻ると、紅丸、蒼影、白老の三人がいた。
「ああ、これはリムル様、タオリン様」
「お食事ですかな?」
「うん」
「紫苑が手料理を作ってくれたって言うんでな」
「「「うっ………!?」」」
俺たちに気づいた紅丸と白老がそう言い、蒼影が頭を下げる中、俺とリムルはそう言う。
すると、紅丸達は気になる反応をした。
あれ?なんか嫌な予感がする。
リムルは紅丸達に話しかける。
「お前達も一緒にどうだ?」
「いや………俺は今、腹が減ってなくて………」
「ええ。お茶だけで」
「私は………」
リムルがそう聞くと、紅丸と白老はそんな風に答えて、蒼影が立ち上がる。
蒼影がそう言うと、分身する。
どうやら、分身のスキルを使えるみたいだな。
「村の周囲を、偵察に行って参ります!」
そう言って、蒼影はまるで何かから逃げるように消えた。
紅丸は冷や汗を流しまくり、白老は気配を消し始めた。
『なんか…………凄い嫌な予感がする』
それを見て、俺はそんなふうに思う。
すると、紫苑がやってくる。
紫苑「お待たせしました。さっ、召し上がれ。」
『やっぱりかぁ………』
「………………」
紫苑はそう言うと、俺たちの前に料理を置く。
紫苑の料理は、料理と言っていいのか、分からない代物だった。
何か禍々しい
それを見た絆翔は、口を抑えていた。
「さあさあ、リムル様、タオリン様!」
すると、紫苑は笑顔で俺たちにスプーンを差し出す。
ていうか、紫苑の料理から、食材の怨念みたいなのが聞こえてくる!
そんな中、シズさんとゴブタとゴブゾウが入ってくる。
「ああ〜腹減ったっす〜」
「そうだね」
そんな風に話していた。
俺たちは紫苑からスプーンを受け取り、その料理をとる。
すると。
「っ⁉︎」
俺は気づいてしまった。
その食材が怨みが籠ったような表情を浮かべていたことを。
怖い……………食ったら死ぬ気がする…………!
でも、食べなかったら食べなかったで、紫苑がどう反応するか……………!
俺がそんな風に考えている中、何を思ったのか、リムルは目を閉じて、スプーンを右斜め後方に突き出す。
そこには、先程入ってきたゴブタの姿が。
ゴブタは、スプーンを咥えると、顔を青ざめる。
「むぐっ………⁉︎」
「むぐっ………?」
「うっ、うぐっ………!ぐわぁぁ‼︎」
すると、ゴブタは震えて、首を抑えながら床に倒れる。
しかも、緑色の肌が、紫色になっていく。
「ああっ………」
「うわぁ………」
「うぐぐ………!」
『………………』
それを見ていた俺たちは唖然となり、絆翔、紅丸、白老は顔を青ざめ、口を抑えていた。
紅丸達はまるで、新たな犠牲者が出てしまった事に恐れた表情だった。
しばらくすると、ゴブタの天に伸ばした手が、床に力無く倒れる。
この場は、静寂が包まれる。
紫苑がつぶやく。
「…………あれっ?」
「マジかよ……………」
「紫苑」
「は………はい!」
「今後、人に出す飲食物を作る時は、紅丸の許可を得てからするように!」
紫苑がそう言うと、絆翔は唖然となっていた。
しれっと、紅丸が巻き込まれた。
本当に、あれは酷い。
食材の怨念が聞こえた気がするぞ。
それを見ていたシズさんは。
「なんでだろう……………命の危険を感じた気がする……………」
そんな風に呟いていた。
すると。
「…………しょうがない。俺がなんか作るよ」
「えっ?タオリン、料理出来るのか?」
「そりゃ出来るよ。じゃあ、厨房行ってくる。まあ、簡単に作るから、そんなに期待しないでくれよ」
俺はそう言うと、厨房の方に向かう。
リムルがそう聞くと、俺はそう答える。
これでも、料理は出来る方だと思う。
軽く料理を作って、テーブルに持っていく。
「お待たせ!軽くだから、作ったのは鶏肉の肉団子と野菜がたっぷり入ったすまし汁だ」
「お〜!美味そうだな!」
「確かにな」
俺が作ったのは、鶏肉の肉団子と野菜がたっぷり入ったすまし汁だ。
軽くなので、上手くいったのかは分からないけど。
リムル達がそれを食べていくと。
「っ!これ、すっごく美味いぞ!」
「確かに…………結構美味いな」
「美味しい…………!」
「こんなに美味しいとは……………悔しいです!」
「何対抗心燃やしてんの……………?」
リムル達はそんな風に話す。
上手く行ったみたいでよかった。
俺たちがそんな風にしている一方、
尤も、豚頭族の侵略に恐れをなしたゴブリン達が、勝手に軍門に下ってるだけだが。
「う〜ん………。これで、総勢7千匹になりましたな」
「さっすが、ガビル様!交渉も上手!」
「いやいや、精一杯やって、たまたま結果が出ているだけの事」
ガビルは部下の褒めに、謙遜した態度をとる。
すると、別の部下が口を開く。
「謙遜すんなよ。実力だよ。」
「そうですよ!もっと自信を持ってくださいよ!」
「然り。次期、蜥蜴人族の首領なのだからな」
「そ………そうか?」
部下からそう言われたガビルは考える。
『やっぱり、我輩………いけてるのかもしれん!』
ガビルはそんな風に思い、部下達に話しかける。
「あ〜。それで、次はどこに向かうのだ?この辺りに、他に村はあるのか?」
「もう一つ、集落があるって話ですよ」
「しかし、先ほどの村の者が、おかしな事を言っておった」
「おかしな事?」
ガビルの問いに部下はそう答える。
ガビルが、三人の部下の真ん中の青色の蜥蜴人族に尋ねる。
「何でも、牙狼族を操るゴブリンの集落だとか」
「はあ?ゴブリンが牙狼を?そんな訳ないだろう」
「ごもっとも。更に言えば、そのゴブリン達の親玉、スライムと人間だという」
「はあ?」
ガビルは、その言葉に耳を疑った。
スライムは、色んな魔物の食糧になり、人間が魔物と一緒にいるのは聞いた事がないからだ。
「状況がよく分からぬが………。ならば!そのスライムと人間を支配下に置けば、牙狼族をも支配出来るという事だな」
「おおっ!」
「一石二鳥!」
「なんて奥深い考えだ!やはり、あんたについてきて良かったぜ!」
「フフッ。我輩に任せておくがいい!」
「いよっ!ガビル様!あっ、そ〜れ!」
『ガビル!ガビル!ガビル!ガビル!』
「フフフ………!フフフフ………!ヌア〜ハッハッハッ‼︎」
部下達がガビルコールをして、手拍子をガビルが乗っている竜もする。
それには、ガビルは高笑いを浮かべる。
俺たちの村に向かうようだ。
一方、俺とリムルは、カイジンと黒衛兵が話し合うのを見ていた。
「へぇ〜………。焼き入れんの時の温度、勘なのかい?」
「んだ。火の色を見れば、大体分かるだよ」
「俺は、測るなあ………」
「おらも戻しの時は、きちっと測るだよ」
「ああ。外が寒いと、粘りが出ねぇからな」
職人達は、そんなふうに盛り上がっていた。
それを見ていた俺とリムルは。
『黒兵衛、すっかりカイジンと意気投合してるよな』
『ああ。二時間も専門的な会話が続くくらいにはな』
「あっ、それだったら、おらがいい土を教えてやるだ」
「それはありがてぇ」
そんな俺たちは、うっかり中座するタイミングを逃して、今に至る。
すると、カイジンと黒兵衛は、こちらを見てくる。
「なっ?」
「鍛造って、面白いべ」
「おっ………おう」
「そうだな」
カイジンと黒衛兵は、そんなふうに言い、再び専門的な会話に戻る。
すると、リグルドが入ってくる。
「リムル様とタオリン様はいらっしゃいますかな?」
「ナイスタイミング!」
「どうした?リグルド」
「リムル様、タオリン様。蜥蜴人族の使者が訪ねてきました」
蜥蜴人族の使者が遂に、この村にも来たか。
俺とリムルは、リグルドと共に使者がいる場所に向かおうとすると。
「リムル様、タオリン様」
「ん?」
「俺たちも同席して構わないか?蜥蜴人族の思惑が知りたい」
「勿論だ」
「ああ」
さて、蜥蜴人族は、何を考えているのか。
敵なのか味方なのかを、見定めなければならないな。
俺は、リムル、リグルド、紅丸、紫苑、シズさん、絆翔、白老と共に、蜥蜴人族の一団がいる場所へと向かう。
そこには、蜥蜴人族が並んでいたが、使者が居ない。
「どいつが使者だ?」
「ん?」
すると、蜥蜴人族達は、槍で地面を突く。
すると、先頭に居た三人の後ろにいた蜥蜴人族達が、二つに分かれて、その奥から、竜みたいなのに乗った蜥蜴人族が現れる。
随分と芝居かかった登場だな。
すると、その使者が槍で地面を突くのをやめさせて、大きくジャンプする。
「我輩は、蜥蜴人族のガビルである。お前らも配下に加えてやろう。光栄に思うが良い!」
「よっ!ガビル様!」
「最高!」
「かっこいい!」
「いかしてる!」
「「「「「「「「はあ?」」」」」」」」
ガビルは、部下に盾の光の反射で自分を光らせるという、少し痛い演出をする。
ていうか、配下に加わる?
俺たちが?
すると、1人の蜥蜴人族の部下が口を開く。
「ご尊顔をよ〜く覚えておくがよいぞ。このお方こそ、次の蜥蜴人族の首領となられる戦士!」
「ふ〜ん!」
「頭が高い!」
「「「「「「「「はぁ?」」」」」」」」
なんだアイツ、偉そうに。
何様のつもりだ。
すると、リムルの方からミシミシという音が聞こえてきた。
「えっ………ちょ………紫苑さん、やめて!スライムボディーが、スリムボディーになっちゃう〜‼︎」
「うう〜………!はっ………」
「うっ………」
「すみません、すみません!」
紫苑は、リムルを潰しそうになり、紅丸にリムルを持たせて、高速で謝る。
何やってんだか。
一方、リグルドは、ガビルに話しかけていた。
「ゴホン!恐れながら、ガビル殿と申されましたかな。配下になれと突然申されましても………」
「やれやれ。皆まで言わねば分からんか?貴様らも聞いておるだろう?」
「豚頭族の侵攻に関してか?」
「どうやら、人間にしては、話が分かる奴が居るようだな」
やっぱり、そんな所か。
どうやら、蜥蜴人族達も、豚頭族の事を脅威に感じているみたいだな。
とはいえ、なぜこんな奴が使者なんだか…………。
あと、俺見下されてるのかな?
「しからば、我輩の配下に加わるが良い。このガビルが、貧弱なお前達を、豚頭族の脅威より守ってやろうではないか!貧弱な……貧弱……貧弱………ワオ〜」
ガビルは、俺たちを見ながら、そう言う。
まあ、この村は、貧弱な奴は居ないからな。
ちなみに、ガビルは、紫苑のおっぱいを見て、ワオと言った。
すると、ガビルはしゃがみ、部下達と話し合う。
「ゴブリンが居ないようだが………」
「あれ〜?」
「ここは確かに、ゴブリンの村のはず………」
「っていうか、貧弱な奴が誰も居ないよ」
そんな風にガビル達は話し合っていた。
俺とリムルは、思念伝達で話し合う。
『どう思う?リムル』
『まあ、豚頭族が攻めてくるのなら、蜥蜴人族との共闘ってのも、選択肢の一つではあるんだが………』
『アイツに背中を預けるのはなぁ………』
『真に恐れるべきは、有能な敵ではなく、無能な味方であるって………ナポレオンの言葉だっけ?』
『うん。その言葉は、ナポレオンの名言だな。』
そんな風に話している中、ガビルが咳払いをする。
「ああ〜ゴホン!聞けばここには、牙狼族を飼い慣らした者達が居るそうだな。その2人は幹部に引き立ててやる。連れてくるがいいぞ」
そんな風に言うと、紫苑が再びリムルを強く握りしめる。
すると、紅丸が良い笑顔で。
「コイツ、殺して良いですか?」
「フッ………良いよ。」
「何許可出してんの⁉︎ストップ!」
紅丸がそんな風に言うもんだから、俺は必死に抑える。
一方、それを見ていたシズさんと絆翔は。
「お調子者なのかな……………」
「そうじゃね?」
そう呟いていた。
「えっと………」
「牙狼族を飼い慣らしたっていうか、仲間にしたのは、俺たちなんだけど………」
「スライムと人間が?冗談を言うでない」
「ん………」
「嵐牙」
「はっ!ここに!」
俺とリムルがそう言うと、ガビルはそんな風にバカにするように言う。
リムルが嵐牙の名を呼ぶと、紫苑の影から、嵐牙が現れる。
それも、本来の大きさの。
「お前に話があるそうだ」
「聞いて差し上げろ」
「御意!ふん!」
嵐牙は、スキル・威圧を発動して、周囲の蜥蜴人族は威圧に怯える。
「あれっ?あんなにデカかったですかね?」
「アレが本当の大きさなんだよ」
「まあ、威嚇するには、あのサイズの方が何かと都合が良いから」
「なるほどな…………」
紅丸の疑問に、俺とリムルがそう答えると、絆翔が納得する。
嵐牙は、ガビルに話しかける。
「主達より、お前の相手をする命を受けた。聞いてやるから、話すが良い」
「…………貴殿が、牙狼族の族長殿か?」
へぇ。
他の奴が萎縮してる中、平然としているな。
根性があるのか、鈍いかのどちらかだが。
「美しい毛並み。鋭い眼光。流石、威風堂々たる佇まい。しかし………主がスライムと人間とは、些か拍子抜けであるな」
「ああん?」
「あ?」
どうやら、後者の方だな。
鈍い奴だ。
嵐牙も怒っているのか、目を細める。
「どうやら、貴殿は騙されておるようだ。よかろう。この我輩が、貴殿を操る不埒者を、倒して見せようではないか!」
「ガビル様、かっけ〜!」
「見せてやって下さいよ!ガビル様!」
「ガビル無双を!」
「あっ、そ〜れ!」
『ガビル!ガビル!ガビル!ガビル!』
部下達が、ガビルコールをして、ガビルはポーズを取る。
すると、嵐牙が呟く。
「蜥蜴風情が………!我が主達を愚弄するか………!!」
(あっ、やばい)
(アイツ、死んだな)
ガビルがポーズを取る中、嵐牙は周囲から赤いオーラを出しつつ、目を光らせて、ガビルに迫っていく。
すると、後ろから鼻歌が聞こえてくる。
「て〜ん、てってって〜ん!」
「グワァァァ!!」
嵐牙が咆哮を出す中、ゴブタが後ろから現れる。
「お〜おいっ、何やってるんっすか?」
「ゴブタ⁉︎」
「お前、生きてたのか?」
「死んだかと思った…………」
「ま〜たまた、酷いっす。ちゃんと生きてるっすよ」
どういう事?
そう首を傾げていると、技術者が伝える。
『告。個体名紫苑の手料理に抵抗して、毒耐性を獲得したようです』
え、毒耐性?
という事は、紫苑の料理は、毒があるのか?
ていうか、俺とリムルは、毒耐性なんて持ってないのにな。
そんな風に青褪めていると、嵐牙がゴブタを咥える。
「いい所へ来たな」
「えっ?」
すると、嵐牙はゴブタに槍を持たせ、ガビルの前に置く。
「えっ?へっ?何すか、この状況⁉︎」
「蜥蜴」
「ええっ?」
「この者を倒せたのなら、貴様の話、一考してやろう」
「な………何で?」
嵐牙、意外と冷静だな。
まあ、嵐牙が相手をすると、高確率でガビルが死ぬからな。
すると、ガビルがゴブタを侮ったのか、口を開く。
「構いませんぞ。部下にやらせれば、恥はかきませんからな。なあ、スライム殿に人間」
「ムカッ」
「(ゴチゾウ達の鳴き声)!」
よし、言ったな。
じゃあ、ゴブタには、遠慮なく行かせてあげよう。
ちなみに、足元にはゴチゾウ達がいて、怒りの感情を露わにしていた。
「ゴブタ!遠慮はいらん!やったれ!」
「ええっ!何なんすかもう………」
「お前が勝ったら、黒衛兵に頼んで、お前専用の武器を作ってやるよ!」
「ああっ!ほんとっすか?ちょっとやる気出たっす」
「負けたら、紫苑の手料理の刑な!」
「それだけは勘弁っす〜!」
リムルの言葉に、ゴブタは、オーラを出してやる気になる。
その言葉に、俺、紅丸、リグルド、シズさん、絆翔が顔を青褪め、当の本人は。
「何やら、非常に不愉快な会話です」
そう言われたもんだから、紫苑はリムルを捻る。
今のは、リムルが悪い。
ていうか、紫苑の奴、自分の料理が最悪なのを自覚してないのか⁉︎
ガビルは、槍を振り回す。
「ふ〜ん!」
『ガビル様〜!』
「準備は良いかな?」
「おお〜!」
「では、始めろ!ワオ〜ン‼︎」
嵐牙は、試合開始の咆哮を出す。
ガビルは、ゴブタを侮っていた。
にフッ………。偉大なるドラゴンの末裔たる我ら、蜥蜴人族が、ホブゴブリンなんぞに………」
「ふ〜ん!」
「ん?」
そんな事を口にする中、ゴブタは自分が持つ槍を思いっきりぶん投げる。
「ぬおっ⁉︎」
その槍は、ガビルには当たらずに、部下達の目の前の地面に突き刺さる。
「おのれ!小癪な!」
ガビルはそう言って、槍をゴブタに向かって振るうが、既にゴブタは居ない。
「あっ………。バカな、消え………たあァァァァァ!!ァァァァ………ふん」
ガビルは、背後に現れたゴブタの回し蹴りを頭にくらい、そのまま気絶する。
部下の蜥蜴人族達は、呆然とする。
まさか、ゴブタの奴、影移動を使いこなしているとはな………。
「ハァ〜………」
「終わりだな。勝負あり!勝者ゴブタ!」
「おっしゃ!」
「よ〜し!」
「やった!」
すると、嵐牙とリグルドが、ゴブタを胴上げする。
「わっしょい!」
「アハハ………!」
「わっしょい!」
「高いっす!」
「さすがは、ゴブタ!我が見込んだだけの事はある!」
「ようやった!ホブゴブリンの力を、よくぞ見せつけた!」
「見直したぞ。私に対する先ほどの失礼な発言は、聞かなかったことにしてやろう」
「俺たちと戦った時より、強くなっている様だな」
「鍛えがいのありそうな才能を持っている様ですじゃ」
「やるじゃねぇか」
「凄いよ!強いわね!」
どうやら、皆、ゴブタの勝利を確信してたみたいだな。
それを見ていた俺たちは、思念伝達で話し合う。
『まさかゴブタが勝つとは……。俺はてっきりいちゃもんつけてボコボコにするのかと』
『俺も。まあでも、良いじゃん。勝ったんだし』
『ああ。俺は空気の読める男だから、期待通りだったことにしよう』
そんな風に話し合って、俺はゴブタに声をかける。
「よくやった!約束通り、黒衛兵に武器を頼んでおく!」
「やったっす!」
「お前ら、勝負はゴブタの勝ちだ!」
『…………ハッ⁉︎』
リムルがそう声をかけると、固まっていたガビルの部下達は、動き出す。
「豚頭族と戦うのに協力しろという話なら、検討しておくが、配下になるのは断る」
「今日の所は、さっさとそこのソイツを連れて帰れ!」
俺とリムルがそう言うと、部下達は、ガビルを抱える。
「い、いずれまた来るぜ!」
「然り、これで終わりではないぞ」
「きっ!お………覚えてろ〜‼︎」
そんな、三流の悪役が言うような捨て台詞を吐きながら、蜥蜴人族達は、走り去っていく。
「さてと…………」
「俺たちも、今後の方針を立てないとな」
その夜、豚頭族を偵察しに行っていた蒼影、リグルド、レグルド、ログルド、リリナを始めとするゴブリン、カイジンを加え、会議をする事に。
蒼影の報告に、俺たちは驚く。
「20万の豚頭族。その本隊が、大河に沿って北上している。そして、本隊と別動隊の動きから予想できる合流地点は…………ここより東の湿地帯」
「つまり、蜥蜴人族の支配領域、と言う事ですな?」
「うむ」
「20万か………」
「かなり多いな………。それにしても、豚頭族の侵攻目的はなんだ?」
その言葉に、全員が考える。
カイジンが口を開く。
「う〜ん………。豚頭族はそもそも、あまり知能の高い魔物じゃねぇ。この侵攻に、本能以外の目的があるってんなら、何かしら、バックの存在を疑うべきだろうな」
「バックの存在だべか?」
「例えば………」
「魔王とかか?」
カイジンがそう言うと、黒兵衛、俺、リムルはそう言う。
その言葉に全員の視線が、俺たちに向く。
「紅丸達の村に来た魔族、ゲルミュッドが関係しているなら………」
「………まっ、今の所、なんの根拠も無いが」
そう言って、俺たちはシズさんを見て、シズさんの意見を聞く。
「シズさんと絆翔的には、この状況はどう思うんだ?」
「何度か、
「俺も。こんな大軍の豚頭族とは戦ったことねぇな」
俺がそう聞くと、シズさんと絆翔はそう答える率
シズさんと絆翔からしても、異常だと思うか。
すると、紅丸が口を開く。
「魔王が絡んでいるかどうかは、分からん。だが………」
「だが?」
「
「確か、数百年に一度、豚頭族の中から生まれる、ユニークモンスターだったよね?」
「はい。20万もの軍勢を、普通の豚頭族が統率出来るとは思えませんから」
「ふむ………」
紅丸はそんなふうに言う。
紅丸の言葉を聞いていると、ルグルドが口を開く。
「居ないと楽観視するよりは、警戒するべきだと思います」
「そうだな」
「じゃあ、今後の方針も、豚頭帝が居ると仮定して、進めるべきだろうな。」
ルグルドの意見に、俺たちが頷いていると、蒼影の様子が変わる。
「あっ!」
「どうした?」
「偵察中の分身体に、接触してきた者が居ます」
「接触?」
「リムル様とタオリン様に、取り次いでもらいたいとの事。いかが致しましょう?」
「誰だ?」
「ガビルみたいな変な奴は、もうごめんだよ」
「変………ではありませんが、大変珍しい相手でして。その………
『あっ………!』
「樹妖精⁉︎」
「樹妖精って確か………」
ゲームだと、木の精霊みたいな存在だったな。
すると、周囲が騒つく。
「樹妖精様が最後に姿を見せたのは、数十年以上前では無かったか?」
「か………構わん」
「大丈夫なら、呼んでくれ」
「はっ」
すると机の中心に強い風が起こる。
紫苑、朱菜、シズさん、絆翔が俺たちの前に立つ中、蔦が伸びてきて固まり、そこから、1人の女性が現れる。
鬼人達が俺たちの前で警戒する中、その樹妖精は口を開く。
「魔物を統べる者と、人と魔の力を持つ者、及びその従者たる皆様。突然の訪問、相すみません。私は、樹妖精のトレイニーと申します。どうぞ、お見知り置き下さい。」
「俺は、リムル=テンペストです。で、そっちが………」
「タオリン=テンペストです。えっと……トレイニーさん。いったい、なんの御用向きで?」
俺とリムルは名乗り、俺がトレイニーさんに用件を聞く事に。
トレイニーさんは、口を開く。
「本日は、お願いがあって、まかり越しました」
「お願い?」
「それは、何ですか?」
「リムル=テンペスト……魔物を統べる者、タオリン=テンペスト……人と魔の力を持つ者よ。貴方方に、豚頭帝の討伐を依頼したいのです」
トレイニーさんは、そう言った。
今回はここまでです。
今回は、トレイニーさんがやってくるまでです。
紫苑の料理の腕は、壊滅的でした。
それを見て、シズさんや絆翔もドン引きすると言う。
そして、ガビルとトレイニーさんがやってきました。
いよいよ、豚頭族との戦いが近づいてまいりました。
果たして、どうなるのか。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。