突然現れた、
それは、俺たちに
「豚頭帝の討伐?」
「ええと………俺たちがですか?」
「ええそうです、リムル=テンペスト様、タオリン=テンペスト様」
俺たちの質問に、そう答えるトレイニーさん。
すると、紅丸が俺たちの前に出て言う。
「ん?」
「紅丸?」
「いきなり現れて………随分身勝手な物言いじゃないか。樹妖精のトレイニーとやら。なぜ、この町へ来た?ゴブリンよりも強い種族は居るだろう」
紅丸の質問に対して、トレイニーは閉じていた目を開きながら言う。
「そうですわね。
「おっ………」
「まあ、そうであったとしても……この方々の存在を、無視する事は、できないのですけれど」
「ん?」
「……………」
「我々の集落が豚頭帝に狙われれば、樹妖精だけでは抵抗出来ませんの。………ですから、こうして強き者に助力を願いに来たのです」
なるほどな。
それにしても、仮説だった豚頭帝が、実際に存在するとはな………。
「豚頭帝が居るって事自体、俺たちの中では仮説だったんだけど………」
「よく、豚頭帝が居るって事が、分かりましたね」
「樹妖精は、この森で起きた事ならば、大抵把握しておりますの。……居ますよ、豚頭帝」
俺たちの問いに対して、トレイニーさんはそう言って、机の上に置いてあったポテチを食べる。
それを聞いた一同は、騒めき出す。
「樹妖精様がお認めに………!」
「ならば、本当に………」
リグルドとカイジンは、そう話す。
俺たちは、それを聞いて考え、答えを出す。
「返事は少し待ってくれ」
「ああ。鬼人達の援護はするが、率先して、藪を突くつもりはないんだ。情報を整理してから、答えを出させてくれ。こう見えても、ここの主なんでな」
「あっ………フフッ………」
俺とリムルがそう言うと、トレイニーさんは笑う。
そうして、トレイニーさんも会議に参加する事になった。
だが、リグルドとカイジンの間に座ったので、その2人が気まずそうにしている。
「会議を続けるぞ」
「
俺たちがそう言うと、朱菜が声を出す。
「あ………。思い当たる事が一つあります」
「うん」
「何だ?」
俺たちが朱菜にそう問うと、朱菜は蒼影に質問をする。
「蒼影。私達の里、調査してきましたか?」
「はい」
「その様子では………やはり、無かったのですね」
「はい」
「ん?」
「同胞の物も、豚頭族の物も、ただの一つも」
「まさか………死体か?」
「そうです」
その言葉に、俺はやはりと思った。
少し、引っかかっていた事があったのだ。
オークといえば、食欲旺盛なのがお約束なのだ。
すると、紅丸が口を開く。
「20万もの大軍が食えるだけの食料を、どうやって賄っているのか疑問だったが…………」
「それって、まさか………」
「豚頭族も、襲った種族の物も関係なく、食べてるって事だろうな。今、進軍中の豚頭族達は」
俺がそう言うと、周囲が驚く。
そんな中、トレイニーさんが口を開く。
「ユニークスキル、
「飢餓者………」
「それは、具体的には、どんなスキルなんだ?」
俺の質問に、トレイニーさんが答える。
「世に混乱を齎す災厄の魔物、豚頭帝が生まれながらにして保有しているスキルで、豚頭帝の支配下にある全ての物に影響を及ぼし、イナゴの様に、周囲の物を食べ尽くす。食らった相手の力や能力までも取り込み、自分の糧とするのですわ。………リムル様の捕食者と似ていますわね」
そう言いながら、俺たちを見る。
それは、かなり厄介なスキルだな。
確かに、リムルの捕食者と似ているスキルだな。
ていうか、俺たちの保有しているスキルの事も知ってるのかよ。
それなら、俺がガヴの力を持っているのを知っているというのも頷けるか。
トレイニーさんは、話を再開する。
「飢餓者の代償は、満たされる事のない飢餓感。豚頭族達は、果てしない飢えを満たし、力を得る為だけに進むのですわ。ただそれだけが、彼らの王の望み故に………」
そう言って、お茶を飲む。
俺とリムルは、思念伝達で話し合う。
『リムル。豚頭族達の狙いは…………』
『ああ。大鬼族や
『そう考えるのが、妥当だろうな』
そうなると、ここも安全ではない。
リムルが伸びをして、口を開く。
「さて、となるとだな。うちも安全とは言い難いな。
「確かに、味はともかく、豚頭族達の欲しがりそうな力を持った餌だらけだな」
リムルと俺がそう言うと、紅丸が苦笑しながら言う。
「1番、奴らの食いつきそうな餌を、忘れてやいませんか?」
「あ〜?」
「居るでしょう。最強のスライムと、それと同等の力を得つつある人間とグラニュートという種族のハーフが」
「…………どこにだ?」
「ハハッ………」
紅丸の指摘に、俺たちは受け流す。
そりゃあ、俺って、仮面ライダーだけど。
でも、俺は、味はかなり不味いんじゃないか?
そんな中、トレイニーさんが口を開く。
「それに………豚頭帝誕生のきっかけとして、魔人の存在を確認しております。あなた様方は、放っておけない相手かと思いますけど」
「魔人か………」
「いずれかの魔王の手の者ですからね」
「うむ…………」
さっき、トレイニーさんは、森で起きた事は、大抵把握していると言っていたな。
という事は、イフリートが暴走して、それをリムルが捕食して、俺がビターガヴを移植してシズさんを助けた事や、絆翔がヴァレンの力を獲得したのを把握している事になる。
食えない姉ちゃんだな。
すると、トレイニーが立ち上がる。
「リムル=テンペスト様。タオリン=テンペスト様。改めて、豚頭帝の討伐を依頼します。暴風竜ヴェルドラの加護を受け、牙狼族を下し、鬼人を庇護するあなた様方なら、豚頭帝に後れを取ることはないでしょう。」
「「う〜ん…………」」
トレイニーさんはそう言う。
確かに、鬼人を庇護しているのは間違いない。
だが、戦力差が否めない。
『技術者、どう思う?』
『樹妖精は、ジュラの大森林の管理者。不届きな者、森に対し害意を持つ者に対し、天罰を下す存在とも言われています』
『天罰………。でも、相手は20万だしなぁ………』
俺と技術者はそう話す。
すると、紫苑の声が聞こえる。
「当然です!」
「うえっ………」
「ん……………?」
「リムル様とタオリン様ならば、豚頭帝など、敵ではありません!お二人ならば、豚頭帝を倒してみせるでしょう!」
「うわぁ!やはり、そうですよね」
紫苑は、勝手に………!
俺とリムルは、思念伝達で話し合う。
『リムル。これは………腹を括るしかないよな』
『だな………』
リムルはスライムとしての姿に戻り、紫苑がキャッチする。
「分かったよ。豚頭帝の件は、俺たちが引き受ける」
「皆も、そのつもりで居てくれ」
「はい!勿論です!リムル様!タオリン様!」
「どうせ、最初からそのつもりだ」
「ええ」
「やってやるか」
「俺たちゃ、旦那達を信じて着いていくだけさ」
「その通りですぞ!我らの力を、見せつけてやりましょう!」
『おう!』
「フフッ」
俺とリムルがそう言うと、朱菜、紅丸、シズさん、絆翔、カイジン、リグルドはそう言う。
皆がそう盛り上がっている中、俺とリムルは、話し合っていた。
『な〜んて、格好つけて、負けたらどうしよう………』
『もうこの際、腹を括るしかないな。』
俺たちは覚悟を決めて、会議を進める。
「豚頭族20万の軍勢を相手取るとなると………蜥蜴人族との同盟を前向きに検討したい所だが………」
「使者が、あれじゃなぁ………」
あんなアホじゃあ、不安でしかない。
どうにか、話が通じるやつと交渉したいところなのだが………。
すると、蒼影が立ち上がる。
「リムル様、タオリン様」
「ん?」
「どうした、蒼影?」
「蜥蜴人族の首領に、直接話をつけても宜しいですか?」
「蒼影。出来るのか?」
「はい」
蒼影はそんな風に言う。
確かに、それが良いだろうな。
それより、今の蒼影は出来る男みたいな感じがするな。
なら…………!
「蒼影。こいつも連れて行ってくれ」
「エージェントか」
俺はそう言うと、エージェントを一体出す。
俺も強くなっていっているのもあってか、強さは蒼影と同等になっている。
「交渉に使えるかもしれないからな。頼む」
「はっ」
「……分かった。蒼影。蜥蜴人族への使者を頼む。決戦は蜥蜴人族の支配領域である湿地帯になるだろう、これは蜥蜴人族との共同戦線が前提条件だ。頼んだぞ!」
「お任せを」
俺がエージェントにそう言う中、リムルがそう言うと、蒼影とエージェントは影移動で蜥蜴人族が支配している湿地帯へと向かう。
首領が話が通じる奴だと助かるんだがな。
一方、気絶していたガビルは、やっと目を覚ました。
「んっ………。うわっ!あっ、あ…………」
「わ〜!」
「ん?」
「ガビル様〜!」
「ぐわ〜!」
ガビルが目を覚ますと、部下の1人が泣きながらガビルに飛びつく。
残りの部下もやって来る。
「起きたかよ」
「ガビル様〜!」
「こ………ここは?」
「良かったよ〜ほんと、ううっ………」
ガビルの目の前には、蜥蜴人族の部下達が集まっていた。
1人、蜥蜴人族ではないのが混じっているが。
ガビルは、どうしてこうなったのかを思い出した。
「そっ、そうだ!我輩は………。あのふざけた顔の男に………!うぬ。すっかり騙されたわ」「ど………どういう事?」
ガビルの言葉に、泣きついていた部下が首を傾げる。
ガビルは、立ち上がって説明をする。
「簡単な事よ。我輩を制したあの者こそ、あの村の本当の主に違いない!」
「「「なんと!」」」
ガビルは、ゴブタが主だと勘違いしていた。
その言葉に、部下達は集まって話し合う。
「あれが?」
「そうじゃないと、ガビル様、負けたりしないよ。」
「然り!」
「汚い!騙してガビル様の油断を誘うだなんて!」
「卑怯なり!」
「ふざけんな!」
ガビルの部下達は、そんな風に話し合う。
そんな部下達に、ガビルは話す。
「まあ、落ち着け。弱者なりの知恵という奴だろう。あっ………ハッ」
「器の大きさ、山の如し!」
「流石、ガビル様!」
「いよっ!次期首領!」
「いや〜かっこええなぁ、ガビルはん」
「いやいや、我輩など、それ程でも……って、誰、なん⁉︎」
「最初から居たよ、この人」
ガビルは、やっと蜥蜴人族ではない者の存在に気づいた。
その道化師の服を着た男は、ガビルを褒め称える。
「聞いた通り、偉い男前やないか。わいは、ラプラスという者です」
「ラプラス?」
「ゲルミュッド様の使いで、アンタに警告をしに来たんや」
「おお!ゲルミュッド様の!」
ガビルは、少しラプラスに警戒していたが、ゲルミュッドの使いと聞いて、警戒を解く。
部下達は、話し合う。
「ゲルミュッド様って?」
「ガビル様に名を授けて下さったというお方だ」
部下達は、ゲルミュッドの事について話す中、ガビルは、ラプラスに労いの言葉をかける。
「ご足労をおかけしたな。………して、ゲルミュッド様の警告とは?」
「これがまた、偉い事になっとるんですわ!」
「ん?」
ガビルがそう言う中、ラプラスは回転しながら、ある事を伝える。
「今回の豚頭族の軍勢、どうやら、本当に豚頭帝が率いてるらしいでっせ。」
『豚頭帝?』
「うっ………」
ラプラスが言った、豚頭帝という単語に、周囲はどよめく。
ラプラスは、話を再開する。
「蜥蜴人族の首領は出来たお人やけど、もうかなりのお年やし………正直なとこ、お父上には、荷が重いんとちゃいます?」
「ん…………」
ラプラスの言葉に、ガビルは考え、答えを出す。
「豚頭族軍撃退の後に、首領の座を受け継ごうと思っていたが………それでは、間に合わん様だな!」
「せや、せや」
ガビルがそう叫ぶと、ラプラスはそう頷く。
ガビル達は、竜に乗り、移動を開始しようとする。
ガビルは、ラプラスに声をかける。
「ラプラス殿。挨拶もそこそこだが、我輩達は…………」
「ええって、ええって。湿地帯に戻りはるんやろ?早、行った方がええで」
「かたじけない!………出発するぞ〜!」
「おお!」
ガビル達は、湿地帯へと出発する。
それを見ていたラプラスは。
「……………せいぜい頑張りや、ガビルはん」
そんな風に言う。
ラプラスは、何を企んでいるのか。
一方、豚頭族軍は、湿地帯を進んでいた。
「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ」
そんな風に言いながら、湿地帯を進んでいた。
その頃、蜥蜴人族達は。
「……………首領、いかが致しましょう?」
「豚頭族軍が迫っています」
「……………籠城しかあるまい。20万の豚頭族どもと戦う術はあるまい」
「「はっ」」
親衛隊長と副隊長がそう聞くと、首領はそう答える。
すると。
「首領…………首領‼︎」
「何事だ?」
「侵入者です! 鍾乳洞の入り口にて首領に会わせろと…………」
「…………会おう。連れて参れ」
見張りが駆け込んできて、そう言う。
それを聞いた首領はそう言う。
すると、親衛隊長と副隊長が口を開く。
「っ⁉︎首領、危険では…………」
「そなた達も感じるか、この
「ええ…………只者ではありません。これは
親衛隊長達はそう話す。
するとそこに、蒼影とエージェントが現れる。
首領は、蒼影とエージェントに声をかける。
「失礼。今、取り込んでおりましてな。おもてなしも出来ませぬ」
「気遣いは無用だ。俺達は単なる使者」
「我が主の言葉を伝えに来たのでな」
首領がそう言うと、蒼影とエージェントはそう答える。
警戒心を緩める中、首領は蒼影とエージェントに問う。
「……………して、要件は?」
「我が主は、蜥蜴人族との同盟を望んでいる」
「同盟?はて。そなたの主を、わしは知らんのだがね。」
「我が主は、リムル=テンペスト様とタオリン=テンペスト様だ。樹妖精より直に要請を受け、豚頭族軍の討伐を確約されている」
蒼影のその言葉に、首領のすぐ横にいる2人の蜥蜴人族が驚く。
それは、首領も同じだった。
「森の管理者が、直接………⁉︎」
「豚頭族軍を率いているのは、豚頭帝だという」
「豚頭帝?」
「この意味を踏まえて、よく検討されたし」
「うう………」
首領は、驚いていた。
どうやら、首領は豚頭帝が出現しているかもしれないと推測していた様だ。
すると、首領の部下の1人が、声を出す。
「ふ………ふん!リムルにタオリンだと?聞いた事もない!どうせ、そいつも、豚頭帝を恐れて、我らに泣きついて来たんだろう?素直に助けてくれと言えばいい物を………」
「やめろ!」
「えっ?」
「口を塞ぐのだ」
「しゅ………首領!その様な態度では、舐められ………!」
部下はそんな風に言う。
首領が止める中、部下がそこまで言うと、その部下の首に、糸が巻き付けられていた。
蒼影だ。
それと、エージェントは銃を突きつけていた。
蒼影は糸の一本を下ろそうとし、エージェントはトリガーを引こうとすると。
「待て、同族の非礼を詫びよう。離してやってもらえないだろうか、これは対等の申し出なのだろう?」
首領がそう言うと、2人は指の動きを止めた。
そして軽く動かし兵の首から糸を外した。
解放された兵はその場で尻餅をついた。
「失礼。脅すつもりはなかったが、主を愚弄されるのは好まぬ」
「同じく」
(よく言う…………止めねば迷わず首を刎ね、殺害しようとしただろうに)
蒼影とエージェントがそう言う中、首領はそんな風に思う。
そんな中、首領が口を開く。
「……………ジュラの大森林に暮らす魔物で森の管理者を騙る愚か者はいない。見た所、そなたの
「今は違う。主より、蒼影の名を賜った折、鬼人となった。」
「鬼人?」
「鬼人って………!」
「ええ。大鬼族の中から、稀に生まれるという、上位種族………!」
「ならば、其方に名を与えた主とは…………それ以上の存在と言うわけか」
蒼影にそう聞くと、蒼影はそう答える。
それを聞いた隊長と副隊長がそう反応する中、首領はエージェントに問いかける。
「それで、貴殿は…………見た目は人間に近いが、その
「我はタオリン=テンペスト様の眷属。名はエージェント。タオリン=テンペスト様より生み出された存在だ」
「っ⁉︎なんと、そなたの主は命を創り出したというのか………」
「そんなことが…………⁉︎」
「マジか…………⁉︎」
首領がエージェントにそう聞くと、エージェントはそう答える。
それを聞いて、隊長と副隊長が唖然となる中、首領は。
(
何かを考え込んでいたが、しばらくすると、顔を上げる。
「蒼影にエージェントとやら。一つ条件がある」
「…………聞こう」
首領がそう言う中、蒼影はそう答える。
その頃、俺たちは。
「ありがとう、絆翔。手伝ってくれて」
「気にすんなって。材料の調達は苦労したけど、必要なんだろ?」
俺は絆翔にそうお礼を言う。
絆翔は、俺からブルキャンのバイクを借りて、色々と材料を仕入れてもらったのだ。
ケーキやブッシュ・ド・ノエルの作成の為に。
「それにしても…………ケーキングとブシュエルの為に用意したんだろ?」
「それもあるけど…………気合いを入れたいって思ってさ」
「うん?」
「これから行われるのは、本格的な戦闘だから、後悔しない為にも、気合いを入れる為に」
絆翔はそう聞いてくる。
確かに、ケーキングやブシュエルの為にというのもあるけど、気合いを入れる為に作ろうと決めたのだ。
すると。
「私も手伝うよ」
「シズさん」
「私も………皆を守りたいから」
「……………ありがとう」
そこに、シズさんがやってくる。
俺はシズさんと絆翔にも手伝ってもらって、ケーキを作っていく。
『…………皆にも気合いを入れてほしいし、絶対に守ってみせる』
そんな思いを込めて。
ちなみに、オーブンなどは、カイジンと黒兵衛に頼んで作ってもらった。
しばらくすると……………。
「完成だな」
「うん」
「それじゃあ、皆の元に持っていきましょう」
ホールケーキとブッシュ・ド・ノエルが完成した。
俺たちはケーキを持って、リムルの方へと向かう。
すると。
「リムル………どういう状況だ?」
「あ、いや、これは……………」
「聞いたんだけど…………リムルさん、皆の着せ替え人形にされてみたい」
そういう事か。
俺がそう思う中。
「それ…………ケーキか?」
「うん。皆にも気合を入れて欲しいって思ってさ。せっかくだから食べて」
「美味しそうです…………!」
「そうだな!食べよう!」
リムルがケーキに気づくと、俺はそう言う。
そうして、皆でケーキやブッシュ・ド・ノエルを食べていく。
すると。
「(ゴチゾウの鳴き声)」
「絆翔。ドーマルと一緒に使って」
「おう。サンキュー」
ブシュエルゴチゾウが出てきたので、ブシュエルゴチゾウの一体を渡す。
すると、ガヴフォンに連絡が入る。
「どうしたの?」
『タオリン様。
「そっか…………」
『ただ、一度、タオリン様とリムル様に出向いて欲しいとの事ですが…………いかが致しましょうか?』
ガヴフォンに出ると、電話の主はエージェントだった。
どうやら、首領は話が通じるみたいだな。
それを聞いて、チラリとリムルを見ると、リムルも蒼影と思念伝達で話をしている様だった。
「…………分かった。準備と移動にかかる時間を考慮して…………7日後に向かうって伝えて」
『はっ』
俺はそんな風に答える。
エージェントはそう言うと、通信を切る。
一方、蒼影とエージェントは。
「…………では、我等は準備を整え、7日後にこちらに合流する」
「その時こそ、我が主リムル様とタオリン様に目通りしてもらうとしよう。それまでは決して先走って戦を仕掛けることのないように」
「うむ、承知した。(聞き入れてもらえたか……………)」
エージェントと蒼影がそう聞くと、首領は頷く。
話を終え去ろうとする蒼影だったが、その途中で足を止めた。
「最後にひとつリムル様より伝言がある。〝背後にも気をつけろ〟とのことだ」
「……………?そうしよう」
蒼影がそう言うと、首領は首を傾げながら頷く。
そうして蒼影とエージェントが去った後、首領は玉座に座った。
「「…………首領」」
「……………どうにか光明が見えたようだ。皆を集めよ」
隊長と副隊長がそう聞くと、首領はそう言う。
首領が仲間を集めて、口を開く。
「豚頭族軍は既に、この地下大洞窟のそばまで迫ってきている。………だが、恐れる事はない!七日後には、強力な援軍が見込める!それまでは、我々は籠城し、戦力を温存するのだ。間違っても、攻撃に打って出ようなどと思うな!戦死すれば、餌になり、奴らの力が増すと思え!それが、豚頭帝を相手に戦うということだ!………援軍と合流した後、反撃に転じる!その時まで、耐えるのだ!誰1人、死ぬ事は許さん!」
「おお!」
こうして、首領の指示により、蜥蜴人族は俺たちが来るまで、籠城する事になった。
それから四日後。
ある蜥蜴人族達は、侵入してきた豚頭族と交戦していた。
三人でかかり、倒す事が出来た。
それを見て、戦士達は呟く。
「これが、本当に豚頭族なのか?まるで、大鬼族とでも戦っている気分だ」
「ゾッとするな………。こんな奴らが20万も居るだなんて………」
「それが、豚頭帝の能力なんだろう。あと、三日も守り通せるだろうか」
「守ってばかりでは、疲弊するだけだ」
「おおっ、あなたは………」
そこに、ガビルが戻ってきて、首領の元に向かう。
「親父殿」
「「「ん?」」」
ガビルの声に、首領、親衛隊長、副隊長がガビルの方を向く。
「おお、戻ったか!………して、ゴブリンからの協力は、取り付ける事が出来たのか?」
「はっ!その総数、7千匹。待機させております」
「うん」
「しかし………豚頭族相手に籠城とは、どういうつもりなのです?とても、誇り高き蜥蜴人族の戦い方とは思えませんな」
「お前が居ない間に、同盟の申し出があったのだ。その者達と合流するまでは、防衛に徹するのが最善だ」
首領の問いにそう答えながら、ガビルはそう聞く。
首領の言葉を聞いたガビルは呟く。
「ハァ…………老いたな、親父」
「何?」
ガビルがそう言うと、立ち上がり、合図を出す。
すると、ガビルの配下達が一斉に入ってくる。
「「「なっ!?」」」
「天然の迷路を利用し、大軍と戦うのは、良い策かもしれん。………だが、それでは数多ある通路に戦力を分散させすぎて、戦力の集中による迎撃が出来ぬ」
そう言いながら、合図を出して、ガビルの部下が、首領に槍を向ける。
「なっ………!?」
「ガ………ガビル殿!」
「これは、どういうつもりだ!?」
「落ち着け!親衛隊長に副隊長。危害を加えるつもりはない」
「しかし………うっ!」
「手荒な手段になってしまった事は、後で詫びる。窮屈な思いをさせるが、我輩が豚頭帝を討つまで、辛抱してくれ」
ガビルは、部下に指示を出して、首領、親衛隊長、副隊長、そして、首領の側近を拘束した。
「息子よ!勝手な真似は許さんぞ!」
「ガビル殿………いえ、兄上!目を覚まして下さい!」
「ガビル!何を考えているんだ⁉︎」
「ええい!放せい!放さんか!放すのだ!勝手な真似は許さん!」
首領、親衛隊長、副隊長がそう叫ぶ中、彼らは、牢獄へと連れて行かれた。
ガビルが顔を俯かせていると、部下の1人がガビルの方にやって来る。
「ん?」
「ガビル様、これを」
「親父殿の………」
ガビルは部下から、首領が持っていた槍を受け取る。
すると、槍とガビルが光り出す。
「こ、この力は………
水渦槍は、ガビルを主と認めた様だ。
その背後から、部下達が大勢やって来る。
「各部族長の掌握が完了したぜ。若い連中には、この防衛戦に疑問を抱いていた者も多かったからな」
「そうか」
「皆、アンタについていく。頼むぜ、ガビル様」
部下達は、ガビルに跪く。
ガビルは、口を開きながら移動する。
「良いだろう。我輩が、蜥蜴人族の真の戦い方を見せてやろうぞ!時が来たのだ!」
「おお!」
ガビルはそう叫ぶと、部下達は答える。
こうして、ガビル達は俺たちの合流を待たずして、動き出してしまった。
「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ」
湿地帯を埋め尽くす豚頭族の大軍。
その一角から、ざわめきが生じた。
「ううっ………!」
一体の豚頭族が、蜥蜴人族の攻撃を受けて、倒れた。
「豚どもを必要以上に恐れる事など無い!湿地帯は我らの領域!素早い動きで豚頭族どもを撹乱するのだ!ぬかるみに足を取られるのろまに後れは取らん!」
「やった!」
「攻撃が効いてるぜ!」
「然り!」
「豚頭族など、我ら蜥蜴人族の敵ではない!よし!一旦離脱!」
ガビルの実力は、仲間達が認める物だった。
だが。
「ああっ………うわぁ!」
「ん?」
ガビルが、部下の悲鳴に、何事かと豚頭族の方を見ると、豚頭族が豚頭族を食べていたのだ。
「何だ?」
ただ一つ、誤算があるとすれば、ガビルは知らなかった。
豚頭帝の恐怖を。
「豚頭族が、豚頭族を食っている………!?」
首領は知っていた。
豚頭帝の恐怖を。
その違いが今、結果となって、ガビルに牙を剥く。
「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。食べた仲間の力を我が物に!食べた獲物の力を我が物に!」
ガビル達が唖然となる中、大鬼族の里にも響いたその声が、湿地帯にこだまする。
今回はここまでです。
今回は、豚頭族との戦闘前です。
ケーキやブッシュ・ド・ノエルを作って、気合いを入れました。
エージェントも、蒼影と同等のオーラを出していました。
そんな中、ガビルが謀反を起こしてしまう。
豚頭帝の恐怖を身をもって経験する事になる。
いよいよ、豚頭族との戦闘が始まります。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
今後の展開などでリクエストがあれば、活動報告から承っております。