転生したら赤ガヴだった件   作:仮面大佐

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第11話 狂いゆく歯車

 突然現れた、樹妖精(ドライアド)のトレイニーさんは、俺たちに依頼をする。

 それは、俺たちに豚頭帝(オークロード)を討伐して欲しいとの事だ。

 

「豚頭帝の討伐?」

「ええと………俺たちがですか?」

「ええそうです、リムル=テンペスト様、タオリン=テンペスト様」

 

 俺たちの質問に、そう答えるトレイニーさん。

 すると、紅丸が俺たちの前に出て言う。

 

「ん?」

「紅丸?」

「いきなり現れて………随分身勝手な物言いじゃないか。樹妖精のトレイニーとやら。なぜ、この町へ来た?ゴブリンよりも強い種族は居るだろう」

 

 紅丸の質問に対して、トレイニーは閉じていた目を開きながら言う。

 

「そうですわね。大鬼族(オーガ)の里が健在でしたら、そちらに出向いていたでしょう」

「おっ………」

「まあ、そうであったとしても……この方々の存在を、無視する事は、できないのですけれど」

「ん?」

「……………」

「我々の集落が豚頭帝に狙われれば、樹妖精だけでは抵抗出来ませんの。………ですから、こうして強き者に助力を願いに来たのです」

 

 なるほどな。

 それにしても、仮説だった豚頭帝が、実際に存在するとはな………。

 

「豚頭帝が居るって事自体、俺たちの中では仮説だったんだけど………」

「よく、豚頭帝が居るって事が、分かりましたね」

「樹妖精は、この森で起きた事ならば、大抵把握しておりますの。……居ますよ、豚頭帝」

 

 俺たちの問いに対して、トレイニーさんはそう言って、机の上に置いてあったポテチを食べる。

 それを聞いた一同は、騒めき出す。

 

「樹妖精様がお認めに………!」

「ならば、本当に………」

 

 リグルドとカイジンは、そう話す。

 俺たちは、それを聞いて考え、答えを出す。

 

「返事は少し待ってくれ」

「ああ。鬼人達の援護はするが、率先して、藪を突くつもりはないんだ。情報を整理してから、答えを出させてくれ。こう見えても、ここの主なんでな」

「あっ………フフッ………」

 

 俺とリムルがそう言うと、トレイニーさんは笑う。

 そうして、トレイニーさんも会議に参加する事になった。

 だが、リグルドとカイジンの間に座ったので、その2人が気まずそうにしている。

 

「会議を続けるぞ」

豚頭族(オーク)達の目的について、何か、意見がある人は居ないか?」

 

 俺たちがそう言うと、朱菜が声を出す。

 

「あ………。思い当たる事が一つあります」

「うん」

「何だ?」

 

 俺たちが朱菜にそう問うと、朱菜は蒼影に質問をする。

 

「蒼影。私達の里、調査してきましたか?」

「はい」

「その様子では………やはり、無かったのですね」

「はい」

「ん?」

「同胞の物も、豚頭族の物も、ただの一つも」

「まさか………死体か?」

「そうです」

 

 その言葉に、俺はやはりと思った。

 少し、引っかかっていた事があったのだ。

 オークといえば、食欲旺盛なのがお約束なのだ。

 すると、紅丸が口を開く。

 

「20万もの大軍が食えるだけの食料を、どうやって賄っているのか疑問だったが…………」

「それって、まさか………」

「豚頭族も、襲った種族の物も関係なく、食べてるって事だろうな。今、進軍中の豚頭族達は」

 

 俺がそう言うと、周囲が驚く。

 そんな中、トレイニーさんが口を開く。

 

「ユニークスキル、飢餓者(ウエルモノ)

「飢餓者………」

「それは、具体的には、どんなスキルなんだ?」

 

 俺の質問に、トレイニーさんが答える。

 

「世に混乱を齎す災厄の魔物、豚頭帝が生まれながらにして保有しているスキルで、豚頭帝の支配下にある全ての物に影響を及ぼし、イナゴの様に、周囲の物を食べ尽くす。食らった相手の力や能力までも取り込み、自分の糧とするのですわ。………リムル様の捕食者と似ていますわね」

 

 そう言いながら、俺たちを見る。

 それは、かなり厄介なスキルだな。

 確かに、リムルの捕食者と似ているスキルだな。

 ていうか、俺たちの保有しているスキルの事も知ってるのかよ。

 それなら、俺がガヴの力を持っているのを知っているというのも頷けるか。

 トレイニーさんは、話を再開する。

 

「飢餓者の代償は、満たされる事のない飢餓感。豚頭族達は、果てしない飢えを満たし、力を得る為だけに進むのですわ。ただそれだけが、彼らの王の望み故に………」

 

 そう言って、お茶を飲む。

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

『リムル。豚頭族達の狙いは…………』

『ああ。大鬼族や蜥蜴人族(リザードマン)といった森の上位種族を滅ぼす事ではなく、その力を奪う事………か?』

『そう考えるのが、妥当だろうな』

 

 そうなると、ここも安全ではない。

 リムルが伸びをして、口を開く。

 

「さて、となるとだな。うちも安全とは言い難いな。嵐牙狼族(テンペストウルフ)に鬼人、ホブゴブリン」

「確かに、味はともかく、豚頭族達の欲しがりそうな力を持った餌だらけだな」

 

 リムルと俺がそう言うと、紅丸が苦笑しながら言う。

 

「1番、奴らの食いつきそうな餌を、忘れてやいませんか?」

「あ〜?」

「居るでしょう。最強のスライムと、それと同等の力を得つつある人間とグラニュートという種族のハーフが」

「…………どこにだ?」

「ハハッ………」

 

 紅丸の指摘に、俺たちは受け流す。

 そりゃあ、俺って、仮面ライダーだけど。

 でも、俺は、味はかなり不味いんじゃないか?

 そんな中、トレイニーさんが口を開く。

 

「それに………豚頭帝誕生のきっかけとして、魔人の存在を確認しております。あなた様方は、放っておけない相手かと思いますけど」

「魔人か………」

「いずれかの魔王の手の者ですからね」

「うむ…………」

 

 さっき、トレイニーさんは、森で起きた事は、大抵把握していると言っていたな。

 という事は、イフリートが暴走して、それをリムルが捕食して、俺がビターガヴを移植してシズさんを助けた事や、絆翔がヴァレンの力を獲得したのを把握している事になる。

 食えない姉ちゃんだな。

 すると、トレイニーが立ち上がる。

 

「リムル=テンペスト様。タオリン=テンペスト様。改めて、豚頭帝の討伐を依頼します。暴風竜ヴェルドラの加護を受け、牙狼族を下し、鬼人を庇護するあなた様方なら、豚頭帝に後れを取ることはないでしょう。」

「「う〜ん…………」」

 

 トレイニーさんはそう言う。

 確かに、鬼人を庇護しているのは間違いない。

 だが、戦力差が否めない。

 

『技術者、どう思う?』

『樹妖精は、ジュラの大森林の管理者。不届きな者、森に対し害意を持つ者に対し、天罰を下す存在とも言われています』

『天罰………。でも、相手は20万だしなぁ………』

 

 俺と技術者はそう話す。

 すると、紫苑の声が聞こえる。

 

「当然です!」

「うえっ………」

「ん……………?」

「リムル様とタオリン様ならば、豚頭帝など、敵ではありません!お二人ならば、豚頭帝を倒してみせるでしょう!」

「うわぁ!やはり、そうですよね」

 

 紫苑は、勝手に………!

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

『リムル。これは………腹を括るしかないよな』

『だな………』

 

 リムルはスライムとしての姿に戻り、紫苑がキャッチする。

 

「分かったよ。豚頭帝の件は、俺たちが引き受ける」

「皆も、そのつもりで居てくれ」

「はい!勿論です!リムル様!タオリン様!」

「どうせ、最初からそのつもりだ」

「ええ」

「やってやるか」

「俺たちゃ、旦那達を信じて着いていくだけさ」

「その通りですぞ!我らの力を、見せつけてやりましょう!」

『おう!』

「フフッ」

 

 俺とリムルがそう言うと、朱菜、紅丸、シズさん、絆翔、カイジン、リグルドはそう言う。

 皆がそう盛り上がっている中、俺とリムルは、話し合っていた。

 

『な〜んて、格好つけて、負けたらどうしよう………』

『もうこの際、腹を括るしかないな。』

 

 俺たちは覚悟を決めて、会議を進める。

 

「豚頭族20万の軍勢を相手取るとなると………蜥蜴人族との同盟を前向きに検討したい所だが………」

「使者が、あれじゃなぁ………」

 

 あんなアホじゃあ、不安でしかない。

 どうにか、話が通じるやつと交渉したいところなのだが………。

 すると、蒼影が立ち上がる。

 

「リムル様、タオリン様」

「ん?」

「どうした、蒼影?」

「蜥蜴人族の首領に、直接話をつけても宜しいですか?」

「蒼影。出来るのか?」

「はい」

 

 蒼影はそんな風に言う。

 確かに、それが良いだろうな。

 それより、今の蒼影は出来る男みたいな感じがするな。

 なら…………!

 

「蒼影。こいつも連れて行ってくれ」

「エージェントか」

 

 俺はそう言うと、エージェントを一体出す。

 俺も強くなっていっているのもあってか、強さは蒼影と同等になっている。

 

「交渉に使えるかもしれないからな。頼む」

「はっ」

「……分かった。蒼影。蜥蜴人族への使者を頼む。決戦は蜥蜴人族の支配領域である湿地帯になるだろう、これは蜥蜴人族との共同戦線が前提条件だ。頼んだぞ!」

「お任せを」

 

 俺がエージェントにそう言う中、リムルがそう言うと、蒼影とエージェントは影移動で蜥蜴人族が支配している湿地帯へと向かう。

 首領が話が通じる奴だと助かるんだがな。

 


 

 一方、気絶していたガビルは、やっと目を覚ました。

 

「んっ………。うわっ!あっ、あ…………」

「わ〜!」

「ん?」

「ガビル様〜!」

「ぐわ〜!」

 

 ガビルが目を覚ますと、部下の1人が泣きながらガビルに飛びつく。

 残りの部下もやって来る。

 

「起きたかよ」

「ガビル様〜!」

「こ………ここは?」

「良かったよ〜ほんと、ううっ………」

 

 ガビルの目の前には、蜥蜴人族の部下達が集まっていた。

 1人、蜥蜴人族ではないのが混じっているが。

 ガビルは、どうしてこうなったのかを思い出した。

 

「そっ、そうだ!我輩は………。あのふざけた顔の男に………!うぬ。すっかり騙されたわ」「ど………どういう事?」

 

 ガビルの言葉に、泣きついていた部下が首を傾げる。

 ガビルは、立ち上がって説明をする。

 

「簡単な事よ。我輩を制したあの者こそ、あの村の本当の主に違いない!」

「「「なんと!」」」

 

 ガビルは、ゴブタが主だと勘違いしていた。

 その言葉に、部下達は集まって話し合う。

 

「あれが?」

「そうじゃないと、ガビル様、負けたりしないよ。」

「然り!」

「汚い!騙してガビル様の油断を誘うだなんて!」

「卑怯なり!」

「ふざけんな!」

 

 ガビルの部下達は、そんな風に話し合う。

 そんな部下達に、ガビルは話す。

 

「まあ、落ち着け。弱者なりの知恵という奴だろう。あっ………ハッ」

「器の大きさ、山の如し!」

「流石、ガビル様!」

「いよっ!次期首領!」

「いや〜かっこええなぁ、ガビルはん」

「いやいや、我輩など、それ程でも……って、誰、なん⁉︎」

「最初から居たよ、この人」

 

 ガビルは、やっと蜥蜴人族ではない者の存在に気づいた。

 その道化師の服を着た男は、ガビルを褒め称える。

 

「聞いた通り、偉い男前やないか。わいは、ラプラスという者です」

「ラプラス?」

「ゲルミュッド様の使いで、アンタに警告をしに来たんや」

「おお!ゲルミュッド様の!」

 

 ガビルは、少しラプラスに警戒していたが、ゲルミュッドの使いと聞いて、警戒を解く。

 部下達は、話し合う。

 

「ゲルミュッド様って?」

「ガビル様に名を授けて下さったというお方だ」

 

 部下達は、ゲルミュッドの事について話す中、ガビルは、ラプラスに労いの言葉をかける。

 

「ご足労をおかけしたな。………して、ゲルミュッド様の警告とは?」

「これがまた、偉い事になっとるんですわ!」

「ん?」

 

 ガビルがそう言う中、ラプラスは回転しながら、ある事を伝える。

 

「今回の豚頭族の軍勢、どうやら、本当に豚頭帝が率いてるらしいでっせ。」

『豚頭帝?』

「うっ………」

 

 ラプラスが言った、豚頭帝という単語に、周囲はどよめく。

 ラプラスは、話を再開する。

 

「蜥蜴人族の首領は出来たお人やけど、もうかなりのお年やし………正直なとこ、お父上には、荷が重いんとちゃいます?」

「ん…………」

 

 ラプラスの言葉に、ガビルは考え、答えを出す。

 

「豚頭族軍撃退の後に、首領の座を受け継ごうと思っていたが………それでは、間に合わん様だな!」

「せや、せや」

 

 ガビルがそう叫ぶと、ラプラスはそう頷く。

 ガビル達は、竜に乗り、移動を開始しようとする。

 ガビルは、ラプラスに声をかける。

 

「ラプラス殿。挨拶もそこそこだが、我輩達は…………」

「ええって、ええって。湿地帯に戻りはるんやろ?早、行った方がええで」

「かたじけない!………出発するぞ〜!」

「おお!」

 

 ガビル達は、湿地帯へと出発する。

 それを見ていたラプラスは。

 

「……………せいぜい頑張りや、ガビルはん」

 

 そんな風に言う。

 ラプラスは、何を企んでいるのか。

 


 

 一方、豚頭族軍は、湿地帯を進んでいた。

 

「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ」

 

 そんな風に言いながら、湿地帯を進んでいた。

 その頃、蜥蜴人族達は。

 

「……………首領、いかが致しましょう?」

「豚頭族軍が迫っています」

「……………籠城しかあるまい。20万の豚頭族どもと戦う術はあるまい」

「「はっ」」

 

 親衛隊長と副隊長がそう聞くと、首領はそう答える。

 すると。

 

「首領…………首領‼︎」

「何事だ?」

「侵入者です! 鍾乳洞の入り口にて首領に会わせろと…………」

「…………会おう。連れて参れ」

 

 見張りが駆け込んできて、そう言う。

 それを聞いた首領はそう言う。

 すると、親衛隊長と副隊長が口を開く。

 

「っ⁉︎首領、危険では…………」

「そなた達も感じるか、この妖気(オーラ)を…………」

「ええ…………只者ではありません。これは蜥蜴人族(リザードマン)の精鋭百体以上でかかったとしても敗北するかも知れません………」

 

 親衛隊長達はそう話す。

 するとそこに、蒼影とエージェントが現れる。

 首領は、蒼影とエージェントに声をかける。

 

「失礼。今、取り込んでおりましてな。おもてなしも出来ませぬ」

「気遣いは無用だ。俺達は単なる使者」

「我が主の言葉を伝えに来たのでな」

 

 首領がそう言うと、蒼影とエージェントはそう答える。

 警戒心を緩める中、首領は蒼影とエージェントに問う。

 

「……………して、要件は?」

「我が主は、蜥蜴人族との同盟を望んでいる」

「同盟?はて。そなたの主を、わしは知らんのだがね。」

「我が主は、リムル=テンペスト様とタオリン=テンペスト様だ。樹妖精より直に要請を受け、豚頭族軍の討伐を確約されている」

 

 蒼影のその言葉に、首領のすぐ横にいる2人の蜥蜴人族が驚く。

 それは、首領も同じだった。

 

「森の管理者が、直接………⁉︎」

「豚頭族軍を率いているのは、豚頭帝だという」

「豚頭帝?」

「この意味を踏まえて、よく検討されたし」

「うう………」

 

 首領は、驚いていた。

 どうやら、首領は豚頭帝が出現しているかもしれないと推測していた様だ。

 すると、首領の部下の1人が、声を出す。

 

「ふ………ふん!リムルにタオリンだと?聞いた事もない!どうせ、そいつも、豚頭帝を恐れて、我らに泣きついて来たんだろう?素直に助けてくれと言えばいい物を………」

「やめろ!」

「えっ?」

「口を塞ぐのだ」

「しゅ………首領!その様な態度では、舐められ………!」

 

 部下はそんな風に言う。

 首領が止める中、部下がそこまで言うと、その部下の首に、糸が巻き付けられていた。

 蒼影だ。

 それと、エージェントは銃を突きつけていた。

 蒼影は糸の一本を下ろそうとし、エージェントはトリガーを引こうとすると。

 

「待て、同族の非礼を詫びよう。離してやってもらえないだろうか、これは対等の申し出なのだろう?」

 

 首領がそう言うと、2人は指の動きを止めた。

 そして軽く動かし兵の首から糸を外した。

 解放された兵はその場で尻餅をついた。

 

「失礼。脅すつもりはなかったが、主を愚弄されるのは好まぬ」

「同じく」

(よく言う…………止めねば迷わず首を刎ね、殺害しようとしただろうに)

 

 蒼影とエージェントがそう言う中、首領はそんな風に思う。

 そんな中、首領が口を開く。

 

「……………ジュラの大森林に暮らす魔物で森の管理者を騙る愚か者はいない。見た所、そなたの妖気(オーラ)は、南西に暮らす大鬼族であろう?」

「今は違う。主より、蒼影の名を賜った折、鬼人となった。」

「鬼人?」

「鬼人って………!」

「ええ。大鬼族の中から、稀に生まれるという、上位種族………!」

「ならば、其方に名を与えた主とは…………それ以上の存在と言うわけか」

 

 蒼影にそう聞くと、蒼影はそう答える。

 それを聞いた隊長と副隊長がそう反応する中、首領はエージェントに問いかける。

 

「それで、貴殿は…………見た目は人間に近いが、その妖気(オーラ)はただ者ではない。私の知る限りそなたのような種族は、このジュラの大森林にはいなかったはずだが?」

「我はタオリン=テンペスト様の眷属。名はエージェント。タオリン=テンペスト様より生み出された存在だ」

「っ⁉︎なんと、そなたの主は命を創り出したというのか………」

「そんなことが…………⁉︎」

「マジか…………⁉︎」

 

 首領がエージェントにそう聞くと、エージェントはそう答える。

 それを聞いて、隊長と副隊長が唖然となる中、首領は。

 

豚頭帝(オークロード)の出現…………この局面において強者達からの同盟の申し出…………断る理由はないな。だが…………)

 

 何かを考え込んでいたが、しばらくすると、顔を上げる。

 

「蒼影にエージェントとやら。一つ条件がある」

「…………聞こう」

 

 首領がそう言う中、蒼影はそう答える。

 


 

 その頃、俺たちは。

 

「ありがとう、絆翔。手伝ってくれて」

「気にすんなって。材料の調達は苦労したけど、必要なんだろ?」

 

 俺は絆翔にそうお礼を言う。

 絆翔は、俺からブルキャンのバイクを借りて、色々と材料を仕入れてもらったのだ。

 ケーキやブッシュ・ド・ノエルの作成の為に。

 

「それにしても…………ケーキングとブシュエルの為に用意したんだろ?」

「それもあるけど…………気合いを入れたいって思ってさ」

「うん?」

「これから行われるのは、本格的な戦闘だから、後悔しない為にも、気合いを入れる為に」

 

 絆翔はそう聞いてくる。

 確かに、ケーキングやブシュエルの為にというのもあるけど、気合いを入れる為に作ろうと決めたのだ。

 すると。

 

「私も手伝うよ」

「シズさん」

「私も………皆を守りたいから」

「……………ありがとう」

 

 そこに、シズさんがやってくる。

 俺はシズさんと絆翔にも手伝ってもらって、ケーキを作っていく。

 

『…………皆にも気合いを入れてほしいし、絶対に守ってみせる』

 

 そんな思いを込めて。

 ちなみに、オーブンなどは、カイジンと黒兵衛に頼んで作ってもらった。

 しばらくすると……………。

 

「完成だな」

「うん」

「それじゃあ、皆の元に持っていきましょう」

 

 ホールケーキとブッシュ・ド・ノエルが完成した。

 俺たちはケーキを持って、リムルの方へと向かう。

 すると。

 

「リムル………どういう状況だ?」

「あ、いや、これは……………」

「聞いたんだけど…………リムルさん、皆の着せ替え人形にされてみたい」

 

 そういう事か。

 俺がそう思う中。

 

「それ…………ケーキか?」

「うん。皆にも気合を入れて欲しいって思ってさ。せっかくだから食べて」

「美味しそうです…………!」

「そうだな!食べよう!」

 

 リムルがケーキに気づくと、俺はそう言う。

 そうして、皆でケーキやブッシュ・ド・ノエルを食べていく。

 すると。

 

「(ゴチゾウの鳴き声)」

「絆翔。ドーマルと一緒に使って」

「おう。サンキュー」

 

 ブシュエルゴチゾウが出てきたので、ブシュエルゴチゾウの一体を渡す。

 すると、ガヴフォンに連絡が入る。

 

「どうしたの?」

『タオリン様。蜥蜴人族(リザードマン)の首領は、同盟に関しては前向きな姿勢でした』

「そっか…………」

『ただ、一度、タオリン様とリムル様に出向いて欲しいとの事ですが…………いかが致しましょうか?』

 

 ガヴフォンに出ると、電話の主はエージェントだった。

 どうやら、首領は話が通じるみたいだな。

 それを聞いて、チラリとリムルを見ると、リムルも蒼影と思念伝達で話をしている様だった。

 

「…………分かった。準備と移動にかかる時間を考慮して…………7日後に向かうって伝えて」

『はっ』

 

 俺はそんな風に答える。

 エージェントはそう言うと、通信を切る。

 


 

 一方、蒼影とエージェントは。

 

「…………では、我等は準備を整え、7日後にこちらに合流する」

「その時こそ、我が主リムル様とタオリン様に目通りしてもらうとしよう。それまでは決して先走って戦を仕掛けることのないように」

「うむ、承知した。(聞き入れてもらえたか……………)」

 

 エージェントと蒼影がそう聞くと、首領は頷く。

 話を終え去ろうとする蒼影だったが、その途中で足を止めた。

 

「最後にひとつリムル様より伝言がある。〝背後にも気をつけろ〟とのことだ」

「……………?そうしよう」

 

 蒼影がそう言うと、首領は首を傾げながら頷く。

 そうして蒼影とエージェントが去った後、首領は玉座に座った。

 

「「…………首領」」

「……………どうにか光明が見えたようだ。皆を集めよ」

 

 隊長と副隊長がそう聞くと、首領はそう言う。

 首領が仲間を集めて、口を開く。

 

「豚頭族軍は既に、この地下大洞窟のそばまで迫ってきている。………だが、恐れる事はない!七日後には、強力な援軍が見込める!それまでは、我々は籠城し、戦力を温存するのだ。間違っても、攻撃に打って出ようなどと思うな!戦死すれば、餌になり、奴らの力が増すと思え!それが、豚頭帝を相手に戦うということだ!………援軍と合流した後、反撃に転じる!その時まで、耐えるのだ!誰1人、死ぬ事は許さん!」

「おお!」

 

 こうして、首領の指示により、蜥蜴人族は俺たちが来るまで、籠城する事になった。

 


 

 それから四日後。

 ある蜥蜴人族達は、侵入してきた豚頭族と交戦していた。

 三人でかかり、倒す事が出来た。

 それを見て、戦士達は呟く。

 

「これが、本当に豚頭族なのか?まるで、大鬼族とでも戦っている気分だ」

「ゾッとするな………。こんな奴らが20万も居るだなんて………」

「それが、豚頭帝の能力なんだろう。あと、三日も守り通せるだろうか」

「守ってばかりでは、疲弊するだけだ」

「おおっ、あなたは………」

 

 そこに、ガビルが戻ってきて、首領の元に向かう。

 

「親父殿」

「「「ん?」」」

 

 ガビルの声に、首領、親衛隊長、副隊長がガビルの方を向く。

 

「おお、戻ったか!………して、ゴブリンからの協力は、取り付ける事が出来たのか?」

「はっ!その総数、7千匹。待機させております」

「うん」

「しかし………豚頭族相手に籠城とは、どういうつもりなのです?とても、誇り高き蜥蜴人族の戦い方とは思えませんな」

「お前が居ない間に、同盟の申し出があったのだ。その者達と合流するまでは、防衛に徹するのが最善だ」

 

 首領の問いにそう答えながら、ガビルはそう聞く。

 首領の言葉を聞いたガビルは呟く。

 

「ハァ…………老いたな、親父」

「何?」

 

 ガビルがそう言うと、立ち上がり、合図を出す。

 すると、ガビルの配下達が一斉に入ってくる。

 

「「「なっ!?」」」

「天然の迷路を利用し、大軍と戦うのは、良い策かもしれん。………だが、それでは数多ある通路に戦力を分散させすぎて、戦力の集中による迎撃が出来ぬ」

 

 そう言いながら、合図を出して、ガビルの部下が、首領に槍を向ける。

 

「なっ………!?」

「ガ………ガビル殿!」

「これは、どういうつもりだ!?」

「落ち着け!親衛隊長に副隊長。危害を加えるつもりはない」

「しかし………うっ!」

「手荒な手段になってしまった事は、後で詫びる。窮屈な思いをさせるが、我輩が豚頭帝を討つまで、辛抱してくれ」

 

 ガビルは、部下に指示を出して、首領、親衛隊長、副隊長、そして、首領の側近を拘束した。

 

「息子よ!勝手な真似は許さんぞ!」

「ガビル殿………いえ、兄上!目を覚まして下さい!」

「ガビル!何を考えているんだ⁉︎」

「ええい!放せい!放さんか!放すのだ!勝手な真似は許さん!」

 

 首領、親衛隊長、副隊長がそう叫ぶ中、彼らは、牢獄へと連れて行かれた。

 ガビルが顔を俯かせていると、部下の1人がガビルの方にやって来る。

 

「ん?」

「ガビル様、これを」

「親父殿の………」

 

 ガビルは部下から、首領が持っていた槍を受け取る。

 すると、槍とガビルが光り出す。

 

「こ、この力は………水渦槍(ボルテックススピア)よ。我輩を主と認めてくれるのか!」

 

 水渦槍は、ガビルを主と認めた様だ。

 その背後から、部下達が大勢やって来る。

 

「各部族長の掌握が完了したぜ。若い連中には、この防衛戦に疑問を抱いていた者も多かったからな」

「そうか」

「皆、アンタについていく。頼むぜ、ガビル様」

 

 部下達は、ガビルに跪く。

 ガビルは、口を開きながら移動する。

 

「良いだろう。我輩が、蜥蜴人族の真の戦い方を見せてやろうぞ!時が来たのだ!」

「おお!」

 

 ガビルはそう叫ぶと、部下達は答える。

 こうして、ガビル達は俺たちの合流を待たずして、動き出してしまった。

 

「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ」

 

 湿地帯を埋め尽くす豚頭族の大軍。

 その一角から、ざわめきが生じた。

 

「ううっ………!」

 

 一体の豚頭族が、蜥蜴人族の攻撃を受けて、倒れた。

 

「豚どもを必要以上に恐れる事など無い!湿地帯は我らの領域!素早い動きで豚頭族どもを撹乱するのだ!ぬかるみに足を取られるのろまに後れは取らん!」

「やった!」

「攻撃が効いてるぜ!」

「然り!」

「豚頭族など、我ら蜥蜴人族の敵ではない!よし!一旦離脱!」

 

 ガビルの実力は、仲間達が認める物だった。

 だが。

 

「ああっ………うわぁ!」

「ん?」

 

 ガビルが、部下の悲鳴に、何事かと豚頭族の方を見ると、豚頭族が豚頭族を食べていたのだ。

 

「何だ?」

 

 ただ一つ、誤算があるとすれば、ガビルは知らなかった。

 豚頭帝の恐怖を。

 

「豚頭族が、豚頭族を食っている………!?」

 

 首領は知っていた。

 豚頭帝の恐怖を。

 その違いが今、結果となって、ガビルに牙を剥く。

 

「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。食べた仲間の力を我が物に!食べた獲物の力を我が物に!」

 

 ガビル達が唖然となる中、大鬼族の里にも響いたその声が、湿地帯にこだまする。




今回はここまでです。
今回は、豚頭族との戦闘前です。
ケーキやブッシュ・ド・ノエルを作って、気合いを入れました。
エージェントも、蒼影と同等のオーラを出していました。
そんな中、ガビルが謀反を起こしてしまう。
豚頭帝の恐怖を身をもって経験する事になる。
いよいよ、豚頭族との戦闘が始まります。
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