ある夏の日。
リムルは逃げ回っていた。
「うわ〜〜〜っ!何でこんな服装ばっかなんだよ‼︎」
…………バニーガール姿で。
その背後には、女物の服を持った朱菜、紫苑が居て、2人の背後にはシズさんがいた。
「よくお似合いですよ!リムル様〜!」
「まだまだありますよ〜!」
「や〜だ〜〜〜〜っ!」
「もうやめて〜〜〜っ!」
女物の服を持った朱菜と紫苑がリムルを追いかけていき、リムルは逃げ回り、シズさんは赤面しながらそう叫んだ。
どうしてこうなったのか。
それを語るには、かなり遡らなければならない。
ある日、皆を広場に集めて、俺たちは言う。
「という訳で、明日と明後日は、”お盆休み”という街の祝日にする!」
リムルは皆に向かってそう叫んだ。
そう。
リムルがお盆休みを制定しようとしていた。
それを聞いたゴブタが質問する。
「お盆休み?何すか?それ」
「お盆ってのは、ご先祖様に感謝して、家族や一族の絆を確認する日だ」
「タオリンの言う通りだ。うちは歴史の浅い街だが、暮らしている皆には、歴史があるだろう?」
「おお……………確かにな。」
「うむ。」
「そうだな。」
ゴブタの質問に対して、俺とリムルはそう答える。
まあ、この街の住人は、最初に会った時に居たゴブリン達を除くと、移り住んできた者が多いからな。
実際、牙狼族に大鬼族、猪人頭族、蜥蜴人族といった感じに。
リムルが口を開く。
「一年に一度くらいは、家族や一族で宴を開き、自分たちの種族の成り立ちや家族、兄弟同士の昔話をしたりしてみてくれ」
「一族で!」
「宴!」
「そして、別々の種族でも、今は同じ街の家族だ。自分たちの過去を知ったら、それを教え合い、今の仲間達とも絆を深めて欲しいんだ」
リムルがそう言うと、リグルドとリグルがそう叫び、俺がそう締めくくる。
すると、皆が歓声を上げる。
「流石、リムル様にタオリン様!」
「リムル様〜!タオリン様〜!」
どうやら、受け入れそうだな。
すると、ゴブタが口を開く。
「リムル様、タオリン様。ところで、お盆ってどういう意味っすか?」
そういえば、お盆ってどういう成り立ちだったんだ?
前世では、自然と定着してたし。
すると、リムルが口を開く。
「えーっと……………あれだ!お盆にたくさんの料理を乗せて、家族と楽しむ!的な!」
「素晴らしい!なんて分かりやすいんだ!」
リムルはそんな風に言う。
まあ、分かりやすいのも良いかもな。
すると、技術者が口を開く。
『告。お盆とは、太陰暦の7月に、先祖の霊を迎え、もてなし、送るまでの行事です。』
『へぇ〜……………』
そんな感じか。
まあ、詳しくは知らなかったけど、知れて良かったよ。
その後、俺とリムルと紫苑とシズさんと絆翔は、ある場所に向かっていた。
そこは、リムルの庵と俺の庵があり、それの受け渡しがあった。
隣同士にあり、俺は片方の庵に入る。
「良いねぇ……………こういうの」
「街のどの家よりも小さいけど、大丈夫なの?」
「良いんだよ。こういう場所でのんびり過ごすのも」
「確かにな。なんか…………一人暮らしをしてた時みたいな気分になるな」
俺がそう呟く中、シズさんがそう聞くと、俺はそう答えて、絆翔もそう言う。
そう。
こういう場所が欲しかったのだ。
それにしても、この狭さは、一人暮らしを始めた時に住んでたアパートみたいな感じがするよな。
もしかしたら、忘れられないのかもな。
あの感じを。
「良いねぇ………………」
「タオリン……………感慨に耽ってんな」
「そうだね」
俺がそう呟く中、シズさんと絆翔はそんな風に話をしていた。
一方、ゴブタと白老は、川で釣りをしていた。
カワセミの鳴き声が響く。
そんな中、ゴブタがぼやく。
「あ〜あ。せっかくの休みなのに、師匠と釣りなんて……………。さっきから、全然当たりが無いっすよ〜」
「それは、お主に邪念があるからじゃ」
ゴブタがそう文句を言うと、白老は釣り糸を垂らしながらそう言う。
「剣の道と釣りは、通ずる物がある。己を自然と一体化し、魔力の流れに溶け込むのじゃ。さすれば、魚はおろか、目の前の敵すらも、お前を捉えられは……………ん?」
白老はそう言いながら、空を見上げる。
ふと気づき、ゴブタの方を向くと、そこには、胸元に『オサラバっス』と書かれた板がぶら下げられている案山子があった。
それを見て、白老は目を見開き、驚く。
「なっ………………⁉︎あのゴブタが、わしの目を欺くとは……………」
白老はそう言いながら、手を顔に当てる。
「はぁ……………弟子の成長は、嬉しくもあり、寂しくもあるのう……………。明日からの修行の量は、成長に合わせ、10倍じゃな」
「冗談っす!ここに居るっす!!」
白老がそう言うのを聞いて、ゴブタが草むらから出てくる。
修行が厳しくなるのを避けたいのか。
一方、俺たちは、部屋に入る。
そこには、紅丸が木の板と睨めっこをしていた。
紅丸も、随分と変わったよな。
最初に会った時は、野武士みたいな感じだったのに、今や、立派な軍司令官だな。
そう思っていると、リムルが紅丸に声をかける。
「よっ。何してんだ?」
「部隊の編成を見直しています」
「大変だな」
「街も大きくなって、人員も増えましたし」
紅丸はそう言って、木の板を揃えて、カップを持って、洗い場に行く。
「白老のしごきのおかけで、皆の腕もメキメキ上がっています。大きな戦のない今こそ、小さな穴も見逃さず、無敵の軍団を!」
紅丸はカップを洗い、机を拭く。
紅丸も、頼もしいよな。
すると、ドアがノックされる。
「失礼します」
「ん?」
「お茶をお持ちしました」
「ありがとう」
朱菜が入ってきて、洗い場の方に向かう。
リムルは、紅丸に向かって言う。
「お前、変わったな。」
「ハッハハ。俺は今も昔も変わらず、俺ですよ」
「そっか」
リムルの言葉に、紅丸はそう返す。
すると、朱菜が笑う。
「フフフ」
「ん?」
朱菜の反応に、紅丸が振り向くと、朱菜は棚の上を指で擦る。
埃が溜まっていたようだ。
「うわぁー……………!!」
紅丸がそれを見ると、即座にその棚の方に向かい、布巾で拭く。
「いや、変わったよ」
それを見て、俺はそう呟く。
確実に朱菜の尻に敷かれてるよな。
突然だが、隠密の仕事は多岐に渡る。
護衛、密偵、そして調査と暗殺。
私情を挟まず、音もなく、冷徹に、完璧に。
全ては、主人のために。
それが、隠密の定め。
そんな蒼影は、蒼華を連れて、歩いていた。
「コボルトの集落の抗争だが……………会話のニュアンスも正確に報告する必要がある。内容は覚えているか?」
「はっ!一言一句、漏らさずに」
「では、西の族長と東の族長。お前はどちらをやる?」
蒼影の質問に、蒼華がそう答えると、蒼影はそう聞く。
「は?え?えっと……………では、西の族長を」
「……………ツッコミ役か。随分と自信家になったな。では、ボケは任せろ。語尾はワンだ!」
「え?分かりました」
「ツ……………ツッコミ?は…………はい!ですワン……………」
そう言って、蒼影達は、俺たちがいる部屋の中に入る。
ちなみに、俺とリムルには大ウケした。
その後、鬼人達が集まっていた。
そこには、大鬼族の里の同胞達の墓があった。
墓の前には、途中で折れ、ボロボロの刀が飾ってあった。
紅丸達は、お供えをした後、お酒を飲み、朱菜が作ったおせちを食べる。
白老は、酒を飲み終えると、口を開く。
「うんっ…………はぁ……………若のお姿、亡き殿に似てまいりましたな」
「んだ。紅丸様は、里にいた頃より、ずっと逞しく見えるだよ」
「煽てるなよ。全て、リムル様とタオリン様のおかげさ」
白老と黒兵衛がそう言う中、紅丸はそう答える。
紅丸は、置いてある刀を見て、白老に質問する。
「なあ、白老。父上は若い時、どのようなお人だったのだ?」
「……………あの頃は、まだ里も小さく、そして殿は……………ホホホホホ。若とは比べ物にならぬほど、とんでもないワルでした」
紅丸の質問に、白老はそう答える。
それを聞いた紅丸と朱菜は、驚きながら口を開く。
「えっ!?」
「あっ………………そんなお話、聞いたこと……………」
「無いでしょうなあ。何せ、お二人が生まれるずっと前の話じゃ。フッホホホ……………。いやあ、まったく。良い日和じゃ」
紅丸と朱菜がそう言うと、白老は笑う。
そして、そう言う。
何を思ったのか。
一方、ブルムンド王国のカフェでは。
「ふぅ………………」
「どうしたでやんす?」
「うーん…………なんだろ。シズさん、元気かなあって。久しぶりにシズさんの夢を見たから」
「そうだな…………。夢に関しては、俺も見た」
「あっしもでやすよ」
「あ……………」
三人はそう話す。
シズさんへの思いを馳せているのか。
しばらくして、三人は歩き出す。
「そういや、夢ん中のシズさん、どうだった?」
「えーっとねぇ。バニー姿で、魔物に追っかけられてた」
「あ〜。ふっ。似合ってたな」
「そういう趣味だったんでやんすね〜」
三人は、そんな風に話していた。
一方、俺、リムル、シズさん、絆翔、ラキア、コメルで食事をしていると、シズさんが震える。
「っ⁉︎」
「うん?どうしたんだ、シズさん?」
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。なんか………………とんでもない風評被害を受けた様な気がして……………」
「うん?」
「おおかた、あの3人がなんか噂してんじゃねぇの?」
「知るか」
シズさんがそう言うのを見て、俺達は首を傾げた。
ちなみに、ラキアとコメルがいる理由は、シズさんは学校でたまに教師をやっていて、コメルから誘われたからだ。
一方、シス湖にある
「ほう。お盆とな。素晴らしい祝日だな」
「はい」
「そして、我が一族の逸れ者より、こちらを」
「近う寄れ」
「「はっ!」」
アビルはお盆について、素晴らしい祝日だと感じていた。
蒼銘は、ガビルから受け取っていた完全回復薬を取り出す。
アビルがそう言うと、蒼銘が持ってたフル・ポーションを配下が受け取る。
「そうか。元気でやっているのだな」
「はい。相変わらずですが、イキイキと働いています」
「ふん。全く、あいつは……………。大儀であった!」
「はっ!それでは、私達はこれにて。」
アビルはフル・ポーションを見てそう聞くと、蒼銘はそう答える。
それを聞いたアビルはそう呟くと、二人を労った。
蒼華達が下がろうとすると、アビルが声をかける。
「待て。時に蒼華」
「あっ………………!」
「あっ」
「そなたに縁談が。そなたに縁談が……………」
アビルがそう言うと、蒼華は振り返る。
ただし、蒼華の目から、光が消えていた。
アビルは配下から木の板を受け取り、蒼華に見せる。
「ほれ!この男など、どうだ?」
アビルが見せた絵には、薔薇の花を咥えた蜥蜴人族が居た。
それを見た蒼華は。
「ご辞退申し上げます」
『即答だなぁ……………』
「んんんん⁉︎それなら……………これで!」
「結構です」
「ダメか!じゃあ、こっち!やっはー、いやいや、こいつもなかなか……………!うーん……………あっ、えーい!もう好きなの一枚抜いてみいよー‼︎」
蒼華が即答したのを見て、蒼銘がそう思う中、アビルは別の人の絵を見せていく。
だが、蒼華は容赦なく断っていき、アビルはヤケクソと言わんがばかりにそう叫んでいた。
アビルがそう叫ぶ中、蒼華は思った。
『これだから帰りたくないんだよなあ……………』
『蒼華。モテモテだねぇ』
『揶揄わないで』
蒼華がそう思う中、蒼銘は思念伝達で揶揄う。
一方、傀儡国ジスターヴでは。
「『この世界には、魔物を統べる王、魔王が居る。そう。私こそが、このジスターヴを統べる……………王だ。』フフフフ……………」
クレイマンが笑う中、雷鳴が轟き、時計が不気味な声を出す。
クレイマンは時計を止めると、椅子から立ち上がる。
「そろそろ、
クレイマンはそう言って、部屋から出る。
しばらく歩くと、厨房に入る。
中に入ると、自動的に灯りが灯される。
クレイマンはお茶の準備をしながら、ある事を考えていた。
「『魔王カリオンは、粗野だが、本物を見極める目と、素直な感性がある。急遽参加のフレイ。女性らしさと繊細さは、私と共感出来るだろう。そして……………ミリム・ナーヴァ。最古参の魔王とはいえ、既にその嗜好は念入りに調査済み。』対策は万全だ。さあ、早く来い魔王達よ。私の野望の為に!」
クレイマンはそう言いながら、ミトンとエプロン、バンダナを付ける。
カリオン、フレイ、ミリムという3人の魔王の嗜好を調べていたのだ。
「ふ〜んふんふん。『お手製の美味しいスコーンも、もうじき焼きあがる!』」
クレイマンは鼻歌を歌いながら、スコーンを焼く。
それを見ていたティアは。
「……………楽しそうだね、クレイマン」
そう呟いた。
クレイマンのスコーン製作は続いていたのだった。
一方、俺は突然、震えがした。
「っ⁉︎」
「どうしたの、タオリン君?」
「何かあったのか?」
「なんか……………誰かに目をつけられた気がするな……………。ちょっと、水を飲んでくる」
「あ?」
寒気がして震え上がると、シズさんと絆翔はそう聞いてくる。
それに対して、俺はそう答えると、ラキアは首を傾げていた。
なんか、ついでに見定めるみたいな感じををされた気がするな。
喉も渇いたので、井戸水を飲みに行くことに。
途中、リムルと合流して、井戸の方に向かう。
井戸には、リグルが居た。
「あっ!リグル〜!」
「ん?あっ、リムル様、タオリン様!」
「水をもらえないか?」
俺たちがそう言うと、リグルはコップに水を入れて渡す。
「どうぞ。地下水だから、冷えてますよ」
「サンキュー!」
「ありがとう」
俺たちは、水を飲む。
暑い日には、冷たい水は良いよな。
すると、リグルが口を開く。
「いやぁ……………街も立派になりましたね」
「ん?」
「ちょっと前からは、考えられない光景ですよ」
リグルはそう言う。
確かに、この街は発展していっている。
すると、リムルが口を開く。
「なあ、思ったんだけど………」
「ん?」
「どうした?」
「森でお前達に最初に出会った時にさ……………。あの時、リグルが俺に話しかけてくれなかったら、この街は出来てなかったかもしれないんだなあって」
「そう言われれば、そうなんですかね?」
確かに。
森でリムルと会った時、口を開いたのはリグルだった。
そういう意味では、リグル達との出会いが、この街を作ったんだなと思うな。
運命みたいな感じがする。
「そう思うと、面白いよな」
「そうですよね」
「アッハハハハ……………だろ?大事にしなきゃ」
「ええ。何せ、今日はゴブリン邂逅祭ですから」
「そうだったな」
そういえば、そんな感じだったな。
その夜、俺たちは宴会を始める。
俺とリムルは、挨拶をする。
「えーっと……………今日はなんだっけ……………」
「第一次都市計画完了!大浴場開設!第三農場開墾!」
「あと、黒兵衛鍛治工房新設!ヒポクテ草栽培ノルマ達成!第6回ゴブリン邂逅祭!えーっと…………その他諸々の記念で……………まあ、とにかく乾杯だ!」
リムルが言う事を忘れる中、俺がフォローして、乾杯の音頭をする。
祭りの会場からは、賑やかな声が多く響く。
それを、シズさんはにこやかに見守っていた。
その翌日、リムルは鏡を見ていた。
シズさんの肉体を、リムルはコピーさせてもらった。
シズさんの体をコピーさせてもらったからには、情けない真似は出来ないというのを聞いた事がある。
そう思う中、リムルはある事に気づく。
「うわっ……………って!なんだこの服⁉︎」
リムルは自分の姿を見て、そんな風に叫んだ。
そう。
バニーガール姿だった。
リムルが戸惑う中、朱菜、紫苑が現れる。
「とーってもよくお似合いですよ!」
「もっとたくさんお着替えしましょうね〜!」
そう言って、朱菜はメイド服、紫苑は、スク水を持ちながら迫ってくる。
それを見て、リムルは。
「いや!や〜だ〜!!」
リムルはそう叫んで逃走する。
それを見ていたシズさんは。
「お願い、やめて〜〜っ‼︎」
「アハハハ……………」
シズさんはそう言って、顔を赤くしながら駆け出していき、俺は苦笑する。
シズさんの外見に似ているので、ある意味で自分が着せ替え人形になっていると感じて、悶えていた。
その後、俺たちはお供えをしていた。
これは、シズさんからのお願いで、シズさんのお母さんと、シズさんが出会い、殺めてしまったピリノという少女を弔う物だそうだ。
「シズさん、これで良いかな?」
「うん。ありがとうね。2人とも」
「線香に似た物は作れたよ」
「うん」
俺たちはそう話す。
なんとか、線香に似た物を作る事ができたのだ。
線香を入れると、俺たちは手を合わせて、目を閉じる。
『お母さん、私、元気でやってるよ。ピリノちゃんも、ごめんね。私のせいで、あなたを死なせてしまった。あなたの分まで、私は生きていく。リムルさんとタオリン君の為にも』
シズさんはそんな風に思っていた。
俺たちの背後に何かが居る気配がした。
その気配は、2人いて、その2人は、シズさんの方を笑顔で見ていた…………気がした。
すると、シズさんは振り返る。
「……………っ」
「シズさん?どうしたんだ?」
「今……………誰かいたような…………」
「……………………」
シズさんはそう言う。
もしかしたら、お盆で来ていたのかもしれない。
2人の魂が。
そんな不思議な事があった、お盆の日だった。
今回はここまでです。
今回は、お盆の話です。
ゴチゾウはあまり出せなかったです。
色々と不思議な話もありました。
そして、次回はガゼル王がやってくる話になります。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
今後の展開などでリクエストがあれば、活動報告から承っております。
一応、タオリンもリムルと一緒にイングラシアに向かう予定です。