転生したら赤ガヴだった件   作:仮面大佐

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第4話 英雄王ガゼル・ドワルゴ

 俺たちは、夜の蝶という店で打ち上げをしていた。

 その店に、カイジンの笑い声が響く。

 

「ナッハッハッハッ!しっかし、恐れ入ったよ。俺の渾身の一振りが、あっという間に量産されるとはね!」

「カイジンのオリジナルが素晴らしかったからなぁ。俺はそれを解析して、魔鉱塊を使ってコピーしただけだ」

「………もしかして、余計なお世話でした………?」

 

 カイジンが笑いながらそう言うと、リムルはそう言う。

 俺がそう言うと、カイジンは複雑そうな表情を浮かべる。

 そりゃあ、自分が苦労して作った物を、あっさりと量産されたら、嫌な気持ちになるだろう。

 すると。

 

「………正直、思う所はあるが、今度は、旦那が真似出来ない様な物を作るってもんだ!腕が鳴るぜ!」

「そっか…………」

「そうこなくっちゃ!ママさん、おかわり!」

「俺も、お願いします」

 

 俺とリムルは、カイジンの一言を聞いて、安心して、お酒のおかわりを頼む。

 ちなみに、果実酒の類の様で、結構美味しい。

 すると、リムルの向かい側に座っているエルフが話しかける。

 

「ねえねえ、スライムさんにお兄さん、これやってみない?」

「「ん?」」

 

 そのエルフのお姉さんはそう言って、手を動かす。

 あの手の動きと、足元に置かれている硝子玉から察するに………。

 

「私これ得意なんだよ?結構すごいって評判なんだから」

「へ、へぇ………」

「もしかして、占いですか?」

「正解!」

 

 リムルが変な事を考えている様な反応をする中、俺がそう聞くと、そのお姉さんはそう答える。

 リムルの奴、何を考えていたんだ?

 十中八九、ろくでもない事か。

 それにしても、占いか…………。

 

「何を占う?」

「そうだな………」

「ねえねえ、折角だから、スライムさん達の『運命の人』を占ってみない?」

「「運命の人?」」

 

 運命の人ねぇ………。

 俺に、嫁なんて出来るとは思えないけどな………。

 人間とグラニュートとハーフである俺に。

 まあ、聞くだけ聞いてみるか。

 すると、エルフが手を動かすと、硝子玉に何かが映し出される。

 それは、白い服を着たマントを羽織っており、子供達に囲まれた黒髪の女性が映っていた。

 見た目は、完全に日本人だ。

 

『なあ、アレって、日本人だよな』

『だろうな………』

 

 俺とリムルは思念伝達でそう話す。

 すると、カイジンが声を上げる。

 

「おい、その人もしかして………爆炎の支配者、シズエ・イザワじゃねえか?」

「有名なのか?」

自由組合(ギルド)の英雄で見た目は若い人間の娘さんだが、何十年も活躍してたんだ。今は引退して、どっかの国の若手を育てるって聞いたなあ」

 

 カイジンはそんな風に言う。

 シズエ・イザワ………。

 完全に日本人だな。

 漢字にすると、井沢静江か?

 恐らく、昭和の頃の日本人かもしれない。

 静江なんて、現代日本ではあまり聞かない名前だからな。

 そんな風に考えている中。

 

「綺麗な人だったなぁ。赤くなってるぞ」

「え⁉︎………って色変わんないって」

「スライムさん、運命の人が気になるんだ」

「ずるーい。浮気者〜」

「いや。気になることは気になるんだが……」

 

 カイジンにリムル、エルフのお姉さん達はそんな風に話をしていた。

 すると、とある人物の声が聞こえてくる。

 

「良いんですか?こんな所でのんびりとしてて。………カイジン殿?」

 

 そんな声が聞こえてきて、俺たちは声のした方を向く。

 すると、一人の男性がこちらを向いていた。

 その人物に気づいたカイジンは、笑みを消して、苦々しく口を開く。

 

「………大臣のベスターだ」

「アレが噂の………」

「いかにも、嫌な奴って感じだな」

 

 カイジンが小声でそう言うと、俺とリムルも小声でそう言う。

 確かに、アレは………嫌な奴だ。

 ねちっこく話してきそうだし。

 俺がそう思う中、ベスターはこちらに近寄ってくる。

 

「遊んでいる場合なのですかな?確か、ロングソードの納品の期限は………」

「さっき、納めてきた」

「期限に間に合わなければ………えっ?納めてきた?」

「ああ。きっちり、20本」

「そ、そんな………」

「納品書を確認するか?」

「うぅん!そうですか………。受けた仕事を期日内にやるのは、当たり前の事です」

 

 ベスターがそう言う中、カイジンがそう答えると、ベスターは狼狽える。

 やっぱり、無理だって分かって言ってきたのか。

 かなり動揺している。

 カイジンとベスターは、かなり仲が悪そうだよな。

 すると、今度はリムルの方を見てくる。

 

「それよりも………それですよ、それ」

「えっ………?」

「リムルの事?」

「いけませんなぁ………。こんな上品な店に、下等な魔物を連れ込むなんて………。気分が悪くなる」

 

 ベスターは、店の中にスライムであるリムルがいる事に対して、ハンカチで口を抑える。

 だったら、そっちが出ていけば良いだろ。

 そう思ったが、相手は大臣だ。

 堪えろ………。

 すると、ベスターは店主さんに話しかける。

 

「おい、この店は、魔物の連れ込みを許すのか?」

「魔物といっても、無害そうですし………」

「はぁ?魔物だろうが、違うのか?スライムは魔物と違うとぬかすのか?」

「い、いえ………そういう訳では………。まあまあ、大臣さん。一杯、いかがですか?」

 

 ベスターがそう聞くと、店主さんはそう答える。

 ベスターは、それに対して、難癖をつけてこようとすると、店主さんはそう言って、お酒を渡す。

 ベスターは受け取ったその酒を飲んだ………わけではなく。

 

「………フン。魔物には、これがお似合いよ」

 

 そう言って、リムルにかけてきた。

 リムルに酒がかかるが、エルフの人の服は濡れていなかった。

 

「スライムさん!大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だよ」

「よかった。」

 

 エルフのお姉さんがそう聞くと、リムルはそう答えて、俺はそうホッとする。

 正直、かなりイラついている。

 だが、相手はクソであっても、この国の大臣なのだ。

 下手に喧嘩を売って、カイジン達やこの店のエルフ達に迷惑をかける訳にはいかない。

 

『果実酒。アルコール濃度、7%』

『いや、技術者さん。そんな情報は求めてないから。』

 

 すると、突然、果実酒の解析をしだした技術者にツッコミを入れてると、落ち着いた。

 ありがたいよ。

 だが、カイジンがベスターを殴る。

 

「ぐはっ………⁉︎」

「ベスター!俺の客達に舐めた真似しやがって!覚悟はできてんだろうな!」

「きっ………貴様………!私に対してその様な口を………!」

「黙れ‼︎」

「カイジンさん………!」

「程々にね………」

「顔はダメだよ、ボディだよ」

「あまりやりすぎちゃダメですよ」

 

 カイジンはベスターを殴ると、そんな風に言う。

 ベスターが殴られた場所を抑えながらそう言うと、カイジンはそう叫んで、ベスターの方に向かう。

 俺たちがそんな風に言う中、カイジンはもう1発ベスターを殴り、後ろにいた従者を巻き込んで倒れる。

 俺とリムルは、カイジンに話しかける。

 

「良いの?そいつ大臣でしょ?」

「面倒な事になりそうですけど……」

「…………リムルの旦那に、タオリンの旦那。腕の良い職人を探してるんだろう?……俺じゃあ、ダメかい?」

「ええっ⁉︎良いの⁉︎」

「カイジンさんが良いなら、こっちも大歓迎です!よろしくお願いします」

「ああ!」

 

 俺とリムルがそう聞くと、カイジンはそう言う。

 それを聞いた俺とリムルは、そう答える。

 こうして、カイジンが来てくれる事になったのだった。

 だが、大臣を殴った事は、やっぱり、ただで済む筈が無く。

 カイドウ達がやって来て、俺たちは手錠をかけられ、リムルは鎖で拘束される。

 

「兄貴、一体何やったんだい?」

 

 カイドウは、そんな風に呆れ顔で聞いて来た。

 それに対して、カイジンは顔を背けながら口を開く。

 

「………フン!そこのバカ大臣が、リムルの旦那の旦那に失礼なことをしやがるもんだから、ちぃとお灸を据えてやっただけよ」

「えぇ〜………。大臣相手にそれはまずいだろ。とにかく、こっちも仕事だから、裁判まで拘束させてもらうぜ」

「「裁判?」」

 

 カイジンがそう答えると、カイドウはそんな風に言う。

 俺たちがそう首を傾げる中、俺たちは牢屋の中へと入れられた。

 そこには、ゴブタが居た。

 

「「ロングスリーパーかい!」」

 

 ていうか、寝過ぎだろ。

 一体、どれくらい寝てるんだ?

 そんな中、カイジンが口を開く。

 

「………俺が短気を起こしちまったばっかりに……お前達まで巻き込んじまったな。………すまない」

「大丈夫。問題ないさ」

「そうそう!親父さんが気にする事無いって」

「ウンウン」

「「喋れよ!」」

 

 カイジンがそう謝ると、ガルム達はそんな風に答える。

 やっぱり、こんな状況でも、喋らないのな、ミルドは。

 リムルが、カイジンに質問をする。

 

「………俺たちは、裁判を受ける事になるのか?」

「そうなるな。まあでも、死刑にはならんさ。罰金くらいで済むだろ。アッハッハッハッ!」

「なら、良いが………」

「それにしても、あのベスターって大臣、カイジンの事を、目の敵にしてるみたいだったけど………」

 

 リムルがそう聞くと、カイジンは笑いながらそう言う。

 俺はそんな風にカイジンに聞く。

 実際、ベスターは、カイジンの事を目の敵にしている様に見えたからだ。

 俺がそう言うと、カイジンは理由を話し始めた。

 カイジンは、この国の王、カゼル・ドワルゴに仕えていて、7つある王宮騎士団の内の一つの総長だった様だ。

 ベスターは、その時の副官だったらしく、庶民出のカイジンが面白く無く、よく衝突してたらしい。

 そんな時、功を焦っていたベスターが当時進めていた計画の一つ、魔装兵計画が失敗した。

 ベスターは、全ての責任をカイジンになすりつけた。

 他の軍の幹部を抱き込み、偽の証言まで作った上で。

 

「…………で、俺は責任をとって軍を辞めたってわけだ。あいつは未だに俺を目の敵にして、何かと無理難題を吹っかけてくる。まあ、今回の件もそうだが」

「しょうもない奴だな」

「そうだな。ただ、彼奴は別に悪人って訳じゃないんだ。俺とは馬が合わなかったが、元々研究熱心で努力家だ。功を焦ったのも、王の期待に応えようとした結果だしな。俺がこの国を出ていけば少しはマシになるだろうな」

「そんなもんかな…………」

 

 カイジンはそんな風に語る。

 それを聞いたリムルは、呆れた様にそんな風に言うと、カイジンはベスターをフォローする様にそう言う。

 すると、カイジンは立ち上がり、俺とリムルを見る。

 

「リムルの旦那、タオリンの旦那。世話になるぜ」

「ああ」

「宜しく」

 

 カイジンはそう言って、手を差し出すので、俺とリムルはその手を握る。

 すると。

 

「それなんですけど…………俺達もカイジンさんについて行きます」

「えっ?」

「そうっす!カイジンさんと一緒に働けるなら、何処にでも行きます」

「うんうん!」

「お前達…………」

 

 すると、ガルム達もそんな風に言う。

 やっぱり、ミルドは喋らなかった。

 ガルムは、俺とリムルに話しかける。

 

「リムルの旦那、タオリンの旦那、俺達が追って行ったら迷惑かい?」

「皆纏めて面倒みてやるさ!こき使うから覚悟しとけよ!」

「むしろこれだけの職人が来てくれるんだ。頑張ってほしい」

「「おう!」」

「うんうん!」

「「「「「「あははは!」」」」」」

 

 ガルムの問いに対して、俺とリムルがそう答えると、俺たちは笑う。

 そして、夜、カイジンとドワーフ三兄弟が眠った中、ゴブタが目を覚ます。

 

「あれ………リムル様、タオリン様………。何かあったんすか………?」

『呑気すぎるな………』

 

 ゴブタは目を覚ますと、そんな風に聞いてくる。

 俺がそう思うと、リムルが口を開く。

 

「俺たちは、ちょっと野暮用があるから、このまま置いていって良いか?」

「…………えっ?」

「抜け出したかったら、相棒の嵐牙狼族(テンペストウルフ)でも召喚してね」

「えっ⁉︎ちょっ!酷くないっすか⁉︎」

「安心しろ。用事が済んだら、すぐに迎えに来るから」

 

 俺とリムルは、ゴブタにそう話しかける。

 リムルはそう言って、リムルは粘糸を使って、ゴブタの口を塞ぐ。

 まあ、ゴブタは無関係だからな。

 裁判に巻き込むのは、酷だろう。

 そうして、二日後、裁判が始まった。 

 俺たちが待っている中、とある人物が入ってくる。

 

「ガゼル・ドワルゴ王の、御出馬である!」

 

 そんな声が響くと、俺たちは跪く。

 入ってきたのは、武装国家ドワルゴンの王、ガゼル・ドワルゴだった。

 その存在感はかなり強く、彼が強者だというのが、嫌でも伝わってくる。

 今の俺では、勝つのは厳しいだろう。

 というか、ガゼル王は、なんか俺をじっと見つめている気がする。

 

「これより、裁判を始める!一同、起立!」

 

 そうして、裁判が始まった。

 武装国家ドワルゴンの裁判では、王の許しがない限り、当事者ですら発言は許されない。

 発言した瞬間、即有罪なんて当たり前らしい。

 冤罪も何もあったもんじゃない。

 おっかない事この上無い。

 日本と同じく、俺たちには弁護人が必要となる。

 なのだが…………。

 

「…………とこのように、店で酒を嗜んでいたベスター殿に対し、カイジン達は複数で暴行を加えたのです」

『えっ…………?そんな事してない…………』

「…………買収されたな」

「えっ?弁護してくれるんじゃなかったのか?」

 

 弁護人は、俺たちを弁護しようとせず、そんな風に言う。

 俺が困惑する中、カイジンはそう呟き、リムルはそう呟く。

 カイジンはベスターが悪人ではないと言っていたが、悪人だと思う。

 ていうか、ベスターの奴、そこまで重傷じゃなかった筈。

 

「それは事実であるか?」

「はっ!間違いございません」

 

 裁判長がそう聞くと、弁護人はそう答える。

 やばい…………このままじゃ、罰金で済まなそうだ。

 ベスターが畳み掛ける様に、ガゼル王に進言する。

 

「ガゼル王よ!お聞き届けいただけましたでしょうか?この者たちへの厳罰を申し渡して下さい!王よ!」

 

 ベスターはそんな風に訴えかける。

 それを聞いたガゼル王は、特に答えるわけでもなく、じっと見つめていた。

 その後、裁判長が木槌を叩く。

 

「これより、判決を申し渡す!…………主犯、カイジン。この者には、鉱山での強制労働20年に処す。その他、共犯者共には、鉱山での強制労働10年に処す。これにて、この裁判を閉廷!」

『リムル、これ、やばくね?』

『ああ。かなりまずい』

 

 判決を聞き、俺とリムルが思念伝達でそう話す。

 強制労働はまずい。

 このままでは、鉱山に向かってしまう。

 すると。

 

「待て」

 

 これまでずっと黙っていた王が口を開き、その場に居る全員の視線が王に集中する。

 ガゼル王は、頬杖をやめていて、真っ直ぐに見つめていた。

 すると、ガゼル王は口を開く。

 

「……………久しいな、カイジン。息災か?」

「ハッ!」

 

 ガゼル王がそう聞くと、カイジンはそう答えながら跪く。

 それを見て、俺たちも再び跪く。

 裁判長が口を開く。

 

「カイジン。答えてよろしい」

「はっ!王におかれましても、ご健勝そうで何よりでございます」

「………カイジンよ。余の元に戻ってくる気はあるか?」

「っ!」

 

 裁判長が許可を出すと、カイジンはそう答える。

 すると、ガゼル王はカイジンにそう問いかけて、ベスターは驚愕の表情を浮かべる。

 どうやら、ガゼル王は、カイジンの事を気に入っているみたいだな。

 何とか、カイジン達だけでも………。

 すると、カイジンが口を開く。

 

「…………恐れながら王よ。私はすでに新たな主達を得ました。この契りは、私にとって宝であります。この宝、例え王命であっても、手放す事はありません!」

「無礼な!」

 

 カイジンはそんな風に答える。

 カイジンの言葉に、周囲にいた兵士達が、武器をこちらに向ける。

 オーラを少し出して、牽制でもしようかと思ったのだが。

 

「…………で、あるか」

 

 カイジンの事を見つめていたガゼルはそう言うと、周囲の兵士達に武器を向ける事をやめさせる。

 そうして、王自ら、判決を言う。

 

「判決を言い渡す!カイジン及びその仲間は国外追放とする。今宵、日付が変わって以降、この国に滞在することは許さん。余の前より消えるが良い!以上である!」

 

 ガゼル王は、そんな風に判決を言い渡した。

 そうして、国外追放で済んだ。

 俺たちは、退室するのだが、ガゼル王の寂しそうな表情が目に入る。

 ガゼル王も、寂しいんだろうな。

 

「これにて、閉廷!」

 

 カイジンも、涙を流す中、裁判長のそんな声が響き渡る。

 その後、俺たちは、カイジン達の荷造りを手伝う事に。

 その頃、俺たちは知る由も無かったが、ベスターがガゼル王に呼び出された様だ。

 

「さて、ベスター。何か言いたい事はあるか?」

「お、王よ………。私は………そ、その…………」

 

 ガゼル王はベスターにそう問いかけると、ベスターはしどろもどろになる。

 すると、ガゼル王は口を開く。

 

「…………残念だ。余は、忠実な臣を一人、失う事になった」

「な、何を仰います………!カイジンなど…………あの様な者、王に忠誠を誓うどころか、どこの馬の骨とも知れぬスライムに謎の魔人と………!」

「ベスターよ。お前は勘違いをしている」

「えっ…………?」

「余が失う忠実な臣。それは…………」

「…………ッ⁉︎」

 

 ガゼル王がそう言うと、ベスターはそんな風に言っていく。

 すると、次のガゼル王の言葉に、ベスターは訝しげな表情を浮かべ、ガゼル王は無言でベスターを見つめる。

 ガゼルの沈黙に、ベスターは全てを悟った。

 ガゼル王の言う失う忠実な臣が、自分である事を。

 ベスターが呆然としていると、ガゼル王は口を開く。

 

「余は、お前に期待していたのだ。ずっと待っていた。魔装兵事件の際も………真実を話してくれるのを………」

「お、恐れ………恐れながら………」

「そして、今回も。それを見よ」

 

 ガゼル王はそう言う。

 魔装兵事件の真相を悟っていた。

 だが、ガゼル王はベスター自らが真実を話してくれる事を待ち続けていたのだ。

 それを聞いて、ベスターがしどろもどろになると、ガゼル王はベスターに裁判長の方を見る様に促す。

 ガゼルがベスターに見せたのは、裁判長が持つ、一つの瓶だった。

 それを見た途端、ベスターの表情が変わる。

 

「それが何か分かるか?ヒポクテ草から作られた完全回復薬…………フルポーションだ!」

「そ、そんな………⁉︎ドワーフの技術の随意を集めても、98%の抽出が限界の筈………!一体………どうやって………⁉︎」

「それを齎したのは、あのスライムと魔人なのだ」

「…………ッ!」

 

 ベスターが驚く中、ガゼル王はそう言う。

 ドワーフの技術では、作りえない物を目の前にして、ベスターがそう言うと、ガゼル王はそう言う。

 それを聞いた途端、ベスターの顔は青褪める。

 自分がしでかした事を悟ったのか。

 ガゼルが椅子から立ち上がると、口を開く。

 

「お前の行いが、あの魔物達との繋がりを絶った。何か言いたい事はあるか!」

「…………な、何も………ございません………王よ…………」

 

 ガゼル王は立ち上がりながらそう聞くと、ベスターはそう言って、その場に崩れ落ちる。

 その間、ベスターは自問していた。

 なぜ自分は自身が仕える王に問い詰められているのか?

 まだ幼い日に見た、この国へ凱旋した王を見た時、自身に誓いを立てた。

 『この王に仕え、役に立つのだ。』

 そう誓いを立てたはずなのに。

 自分はいつ道を誤ったのだろうか?

 カイジンに嫉妬した時から?

 ………それとも、もっと以前から?

 ベスターの心は、そんな風に自問自答を繰り返していた。

 すると、ベスターは泣きながら口を開く。

 

「私は道を誤ったのか…………。カイジンに嫉妬した時から…………。あるいは…………もっと前から…………王の期待を裏切ってしまい………申し訳ありません…………」

 

 ベスターは泣きながら、そんな風に呟く。

 ガゼル王の期待に応えるべく頑張っていたはずが、悉くガゼル王の期待を裏切ってしまった。

 そんな後悔が、ベスターの胸中を占めていた。

 すると、ガゼル王は口を開く。

 

「…………ベスター。其方の王宮への出入りを禁止する。二度と余の前に姿を見せるな!………最後に一言、其方に言葉を送ろう。大義であった‼︎」

 

 ガゼル王はそう言い残して、去っていく。

 ガゼル王は、ベスター王宮への出入りを禁止したものの、これまでのベスターの働きについて、労いの言葉をかけた。

 ガゼル王が去る中、裁判所にはベスターの泣き声が響くのであった。

 一方、俺たちは、カイドウ達に見送られる事になっていた。

 

「兄貴、元気でな」

「迷惑をかけたなぁ。お前も元気で」

「………リムルの旦那にタオリンの旦那。兄貴を頼む」

「ああ」

「心配ない。こき使うだけさ」

「………判決に則り、カイジン及びその一味は国外追放とする。早々に立ち去れ!」

 

 カイドウは、カイジンとそんな別れの挨拶をして、俺とリムルにそう言う。

 俺とリムルがそう答えると、カイドウは笑みを浮かべると、そう言って、カイドウ達警備隊は門の内側に戻り、門は閉じられた。

 

「…………さて、行こう」

「森の入り口で俺の仲間たちが待ってるから」

「…………ああ」

 

 そうして、トラブルはあったが、最高の職人を連れて帰る事に成功した。

 そういえば、何かを忘れてる様な………。

 

「リムル様ーーー!タオリン様ーーー!ひどいっすーーー‼︎」

「あっ。ゴブタ忘れてた」

 

 そんな叫び声が聞こえてきて、俺はそう呟く。

 ゴブタを宥めるのを、リムルに任せて、俺はドワルゴンの方を見ていた。

 何か、あのガゼル王は、俺とリムルを見ていた様な気がするが、気のせいかな。

 そうして、俺たちはゴブリン村への帰路へと着いた。

 一方、ガゼル王は。

 

「…………代理人は捕らえたか?厳罰に処せ。あのスライムと魔人の動向を監視せよ。決して気取られるなよ。絶対にだ!」

「は!」

 

 ガゼル王は背後に現れた人物にそう言うと、その人物は姿を消す。

 すると、ガゼル王は口を開く。

 

「あの様な魔物が解き放たれていたとは………。あれは化け物だ!まるで『暴風竜ヴェルドラ』の如し!それに…………あのスライムと行動を共にするあの男…………。あれもとてつもない存在だ」

 

 ガゼル王はそんな風に呟いた。

 そんな風に目をつけられてしまったのは、今の俺たちには、知る由もなかった。




今回はここまでです。
今回は、ドワルゴンからゴブリンの村に戻るまでです。
タオリンの運命の人は、ベスターが乱入した事で、有耶無耶になってしまいました。
そして、裁判を終えて、カイジンたちが仲間になりました。
ただ、ガゼル王に目をつけられた事には気づかず。
次回はいよいよ、シズさんが登場します。
あと、シズさんの弟子の一人として、ヴァレンに変身するキャラも出す予定です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
アンケートは、締め切らせていただきます。
という訳で、タオリンのヒロインに関しては、ヒナタ、悪魔三人娘、シズさん、クロエのハーレムという形になりました。
どんな感じにくっつけて欲しいとか、今後の展開などでリクエストがあれば、活動報告から承っております。
ガヴもいよいよ最終回ですね。
果たして、どんな結末を迎えるのか。
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