咎物語   作:四十三

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くくりタートル 其ノ参

003

 

「括裏さん? うん。知ってるよ。でも珍しいね、阿良々木君が戦場ヶ原さん以外の女の子の事調べるなんて」

 

「その戦場ヶ原本人から頼まれたんだよ。括裏くくりのことを調べてくれってさ」

 

 戦場ヶ原の家で勉強をした翌日の放課後。

 僕は、忍野が根城にしているあの廃塾に向かう途中、羽川から括裏くくりについての情報を収集していた。

 

「括裏さん……括裏さん……。うーん、でも彼女について私が教えられることってそんなにないと思うよ?」 

 

「そうなのか? 戦場ヶ原はお前に聞けば分かるみたいな言い方してたけど。そうか、知らないのなら仕方ないよな……」

 

「んー。知らないっていうより教えるような特出した部分がないって言った方が適切かな。特に教えなきゃいけないような要素がない子なんだよね、括裏さん」

 

 特出した部分がない?

 それは一体どういうことだ?

 

「いや、でもそいつ一言もしゃべらないんだろ? だからこそ、こうやって本人じゃなく周りの人から情報を集めてるんだけど……」

 

 忍野に彼女の今置かれている現状が怪異による影響なのかどうか。その真偽を推測してもらうため、僕なりの情報収集だったんだが。

 その収集の結果が「普通の女の子でした」じゃ締まりが悪すぎる。

 

 そんなことしたら忍野に「元気がいいね。何かいいことでもあったのかい?」と言われるのが関の山だ。

 

 嫌だ。嫌すぎる。

 

「一言もしゃべらない? 括裏さんが? そんなことないと思うよ、彼女普通にしゃべるし」

 

「はあ!?」

 

「私、彼女がしゃべってるところ見たことあるもん。っていうか阿良々木君も見たことあるはずだよ。彼女のしゃべる姿」

 

「え!? 僕も!? 本当に!?」

 

「うん。阿良々木君どころか現直江津高校三年次生なら全員見てるはず。まあ、二年前の話だけどね」

 

 

 二年前?

 二年前、僕を含め現直江津高校三年次生つまり元一年次生が全員彼女がしゃべったところを見ている? 

 そんなことがありうるのだろうか?

 

「彼女、入学式で私が辞退した後に新入生代表としてあいさつしてくれてたんだけど……。覚えてない?」

 

「あぁ、そう言えば言ってたな。お前、最優秀合格者がするあの代表挨拶の話を辞退したって。じゃあ、その代わりとして出たのが括裏だったのか」 

 

「うん、そう。思い出した?」

 

 いや正直、そんなに興味なかったから覚えてない。

 

「ああ、完全に思い出したよ。ありがとう羽川」

 

「今度上手な嘘のつき方教えてあげるね、阿良々木君」

 

 何故ばれた!? 

 

 しかも何? 上手な嘘のつき方って? 

 今後の僕の人生ですごく役に立ちそうなんだけど!!

 

「でもそうなると、当時その代表挨拶を聞いていた全生徒が括裏がしゃべることができると証言できる証人なんじゃないか?」

 

「そうなるね」

 

 どういうことだ、戦場ヶ原。

 お前の言っていたことと全然噛み合わないぞ。

 

 もしかして僕、戦場ヶ原につままれた?

 もしくは、化かされた?

 

「あ、でもしゃべらないっていうのもあながち嘘じゃないんだよね」

 

「嘘じゃない?」

 

 なんだ?

 さっきから入ってくる情報が多すぎて僕の残念な頭じゃもうそろそろ覚えられなくなって来たぞ。

 もう少し頑張れよ、僕の脳!! 受験勉強はまだまだこれからなんだぞ!!

 

「括裏さん、つい最近まで全くしゃべってなかったから。そういう意味ならしゃべらなかったとも言えるよね」

 

「でも要は、今はしゃべってるってことなんだろ? そういう意味になるよな」

 

「まあ、結局はそうなるね」

 

 なんだ、結局僕の労力は無駄だったのか。

 とんだくたびれ儲けだよ……。

 

「悪かったな、羽川。いろいろ付き合って貰って」

 

「うん? いや大丈夫だよ。でも、阿良々木君? 彼女さんの御願いを聞くのも大事だけど自分が受験生だってことも忘れちゃだめだよ?」

 

「わかった、肝に銘じるよ」

 

「じゃあね、阿良々木君。あ、それと最後に……」

 

 別れ際に羽川は、意味深な言葉を残して行った。

 

「括裏さんのことを知りたいなら私じゃなくて神原さんに聞いた方が生きた情報が手に入ると思うよ」

 

「生きた情報?」

 

「うん。だって戦場ヶ原さんと括裏さん中学時代……」

 

 それはわが耳を疑う内容だった。

 

 

「大の仲良しだったんだから」

 

 

 これを意味深と言わずなんというのだ。

 

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