咎物語   作:四十三

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くくりタートル 其ノ漆

007

 

「話は分かりました。つまり戦場ヶ原さんは、その括裏さんと言う方を忍野さんに会わせるためいろいろと根回しをしていたわけですね」

 

「ああ、だが分からないことがある。戦場ヶ原は、既に忍野から悟し亀の対処法を聞いたということだよな? それで括裏は、しゃべれるまで回復した。そこまでは分かる」

 

 

「と、言いますと?」

 

 

「なぜ再び僕に括裏の怪異について調べさせるような回りくどいことをさせるんだ?」

 

 

 戦場ヶ原との約束。

 お互いに怪異に関しての秘密を持つことを禁ずる。

 

 括裏の件を秘密にすることはこれに抵触するが、普通に教える分には何も問題ないはずだ。

 

 こんな回りくどいことしなくてもありのまま、在ったことを話せばいい。

 何故それをしなかったのかが分からない。

 

「僕は戦場ヶ原に信用されていないのだろうか……」

 

「うーん。話さないのではなくて話せなかったのではないでしょうか?」

 

「話せなかった?」

 

「はい。戦場ヶ原さんは話したくても話せなかったのです。お話によると忍野さんもその悟し亀と言う怪異についての情報をある程度制限して伝えていたみたいではないですか。ですのでお二人とも話せる範囲で阿良々木さんに伝わるようヒントのようにしていたのではないですか?」

 

「ヒント……」

 

 そう言われれば確かにそうだ。

 僕が括裏の件に興味を持つように誘導した戦場ヶ原。

 

 戦場ヶ原がこの件の仲介人だとさりげなく伝えようとした忍野。

 

 思い返してみればいたるところにヒントが散りばめられているじゃないか。

 

「じゃあ、この回りくどいやり方をする理由は?」

 

「もしかしたらそれが怪異、悟し亀の対処法なのではないですか? もしくは、お二人の約束を守るための苦肉の策だったという可能性もあります」

 

 対処法、苦肉の策。

 

「悟し亀の対象に及ぼす影響は『罪悪感』つまり咎が関係している。その咎により括裏は、声を失った」

 

「恐らく彼女括裏さんは、戦場ヶ原さんに嘘を付いたのではないでしょうか? どんな嘘を付いたのかは分かりませんが、その咎めとして声を取られたとしたら説明が付きます」

 

 どんな嘘か。

 

 重し蟹に重さを取られ豹変した戦場ヶ原に何も知らないその友人、括裏が付いた嘘。

 

 

『大丈夫きっと治るよ』『また昔みたいに陸上できるって』『軽いって良いじゃん、羨ましいなぁ』『お母さん、すぐにそんな教団辞めるよきっと』『詐欺師に騙された? 大丈夫?』『何も怖いことないからさ、頑張ろうよ』『今日も病院? 早くよくなってね。ほら修学旅行とかあるしさ』『え? 離婚した? 大丈夫きっといいことあるからさ。元気出してよ』『ずっと一緒に居てあげるからさ』

 

 

 

 

『私たちずっと友達だよ』

 

 

 

 

 当時の戦場ヶ原にとって優しい言葉は全て毒でしかなかったはずだ。

 そんな彼女がいつかは神原同様に括裏に毒牙を突き立てても何もおかしくは無い。

 

 そんなことを繰り返せばいつか括裏の心は折れる。

 そして最後は嘘を言ってしまったのだろう。

 

 そして彼女に怪異「悟咎め」が宿った。

 罪悪感を持ってしまった。

 

 

「悟咎めは罪悪感が元になっている。ならその対処法はその罪悪感を解消すること……」

 

 そして戦場ヶ原と括裏が取った手段それは……。

 

「二人の関係を解消すること、か……」

 

「そうでしょうね……」

 

 親友をやめ、友人をやめ、知り合いをやめ、赤の他人になること。

 

「言葉の上でならいくらでも謝罪の言葉は言えますが、きっと奥深い罪悪感は消すことができないでしょうからね」

 

 だからこそ罪悪感の根源である二人の関係自体を無かったことにした。

 

 その結果、今現在括裏は声を取り戻した。

 

「そして、その一連の事件を僕に伝えるためこんな回りくどいやり方をしたのか。戦場ヶ原本人からは言うことができないからいろいろ根回しをして……」

 

 信用してないどころじゃない戦場ヶ原は、僕の信頼に全力で答えていたのだ。

 

 

「これは確かに僕の出る幕は無い訳だ……」

 

 

 何も起きないミステリー。

 

 

 始まった時には既にすべてが終わっているミステリーか……。

 

 

「なんだ、ちゃんと物語になってるじゃねぇかよ、戦場ヶ原」

 

 

 僕の完敗だ。

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