※宙羽視点です。
私が、8度目のターン終了を宣言して。
私のターンの終了時に働く【人馬の魔女ルクバト】と、向こうのターン開始時に働く【世界の狭間】の付与効果を合わせて、予定通り、香澄は手札のカード枚数が上限に達してデッキの1番上にあったカードを捨てることになった。
……そうして始まった、香澄による後攻8ターン目。
香澄は、手札の10枚のカードの中の1枚に手を伸ばして、その指で触れる。
その青い瞳からは、未だに迷いが感じられない。
「……【ハマル】を召喚する」
そんな香澄は。
……まずは、コスト2のエンティティの召喚からのスタート。
……攻撃力2、体力1の、小型エンティティ。名前は【白羊の魔女ハマル】。
召喚時に、自分自身に『不可視』を付与する効果。
──そして、攻撃時。エンティティカードに対しての攻撃をしたら『盤面のすべてのカードを-1/-1する。この効果によって自壊したなら、墓所ではなく手札に加わり、お互いのソーサラーは、次の相手のターン開始時まで、『自分のターン終了時、すべての自分の盤面のカードを-1/-1する』を持つ』という効果が働くらしい。
……まあ、いくら『不可視』をつけたところで。
【宙の先】の自壊効果付与に対して耐性がないのと、私が盤面に【虚無を翔ぶ探索者】しか出さない以上、どう転んだところで、あれの攻撃時効果が働くことはない。
──まあ、もちろん。
そんなことは、多分あっちもわかっているはず。
だから、その意図としては。
……次のターンに向けた布石、とかじゃないはず。
「……【アンタレス】の召喚。召喚時効果は【ハマル】を対象にする」
……次のエンティティカードの、召喚。
【天蠍の魔女アンタレス】。あのカードは、この試合中2度目の登場。
やっぱり、と言うべきか。
【白羊の魔女ハマル】の召喚意図は、生け贄だった。
……召喚時効果で、『被破壊時、【天蠍の魔女アンタレス】を1枚盤面に出現させる』を自身に付与。そして、【白羊の魔女ハマル】を破壊して、『受けるダメージを-2する』を自身へと付与し、コストを2回復した。
「……【アンタレス】を召喚。対象は【アンタレス】」
……続け様に、同じエンティティカードの召喚。
召喚時効果も、当然同じ効果が働いて。
その生け贄に、つい先ほど召喚したばかりの、【天蠍の魔女アンタレス】が選択された。
そして、被破壊時効果が起動し。
──さらに盤面に【天蠍の魔女アンタレス】が現れた。
「……【ハマル】を召喚」
──そして、最後の2コスト。
香澄はまた【白羊の魔女ハマル】を召喚して、それでコストを使い切った。
「……ターンを終了する」
ターン終了時、【宙の先】の付与効果の起動により、盤面のエンティティ3枚が破壊され、1枚の【天蠍の魔女アンタレス】の被破壊時効果が機能して。
……盤面に【天蠍の魔女アンタレス】1枚が、残った。
──もちろん、これにも【宙の先】の効果付与は発生するけど。
その自壊効果は、そのエンティティから見ての次の『自分のターン終了時』。
一応、私があれを破壊できなければ。1ターン行動できる余地がある。
──ただ、それは。
……私が、考えている間に。ターン終了時の【ターモイル・プラネット】の効果で、墓所のカードが1枚回収されていく。
……これで、デッキ枚数16枚の、手札枚数6枚。
今のターン。香澄の狙いは……。
……【不可避の一矢】によるダメージは後からでも変わらないと判断して、盤面に行動可能なエンティティカードを置くことによるダメージソースの確保を狙っている、ということ?
……いや、それはない。
もしそういうつもりだとしたら、香澄は私が前のターンに使った【不可思議との邂逅】の効果を忘れていることになる。
……じゃあ、あとは。
今の行動は手札の枚数を減らすのが主目的で、次のターンもまた手札に【不可避の一矢】を加えたいのかも知れない。
それとも、もしかしたら。自壊回数が不足していると判断して、無理矢理自壊回数を稼いだ……とか。
香澄のレジェンダリーは、《分類:星辰の魔女》を持つエンティティが自分のカードの効果の影響によって破壊されるたびにコストを下げる効果を持ってるから、それを狙うコースに乗り換えた、というのはありそう。
ただ、あのカードが勝利効果を発揮するのは被破壊時だったはずで、あれ自身は【宙の先】による自壊効果を受け付けない能力を持っている。
……理論上は、勝利効果の起動自体は、おそらく先攻であるこっちの方が早いはず。
──ターン開始時、手札に【虚無の記録】が1枚加わって。そして、ターン開始時のドロー。
これで、手札は5枚。
……内3枚は、10ターン目……つまり、次のターンに使うカードで。
それからもう1枚は【彼方への探査】。あとは、【虚無の記録】。
捨てていいカードが無いから、今【虚無の記録】を使うわけにはいかない。
「……コスト7。【彼方への探査】」
だから今回は、【彼方への探査】をそのまま使う。
……カードの効果で、盤面に【虚無を翔ぶ探索者】が現れた。
──そして。
──付与効果によって、それは攻撃力が0に……というのは元からだからいいとして。
『3回攻撃できる』ようになり、それから『攻撃時、自分の盤面に他のエンティティが存在しないなら、相手の盤面のランダムなエンティティ1枚を破壊する』を持った。
……まあとりあえず、今やりたいことと言えば。
盤面に残っている【天蠍の魔女アンタレス】の除去と、あとはできれば、【不可避の一矢】が手札に加わることの阻止。
「……【虚無を翔ぶ探索者】で3回、ソーサラーに攻撃」
──攻撃時効果が働き、【天蠍の魔女アンタレス】が破壊される。
そして、さらに。
【虚無を翔ぶ探索者】によって3回の攻撃が行われたことで、お互いにカードを3枚引き。それから私の体力が3回復して19になって、そして墓所の【宙の先】が3枚増えて10枚に。
3枚分のドローで、私の手札の枚数は7枚になった。
……そして。
3度の『カードを引く』効果が働いたけど、その上で香澄のデッキの残り枚数は、13枚。
【ターモイル・プラネット】の回収分も考えると……予想してたことだけど、やっぱりこのルートでの勝ちは無理そう。
だから、残るルートは【宙の先】を墓所に30枚貯めるルート。
……そう考えるのなら、今は。
香澄の手札の枚数は、9枚。
……このままだと、【人馬の魔女ルクバト】の効果で、また【不可避の一矢】が手札に加わる。
体力19もあれば簡単に削り切られるとは思わないけど。2コスト3ダメージが手札に2枚ある状況を作るのは、リスクが大きい。
──ターンが始まるタイミングでは、割り切って諦めることしかできなさそうな手札だったけど。
……ついさっき引いたカードのおかげで、ここも何とかできそうだから。
「……コスト2。【文明の到達】」
温存していたカードではなく、ついさっき引いたうちの1枚を選んで捨てる。
……それから、お互いに『デッキから最もコストの低いカードを1枚加える』効果が働く。
これで、私の手札は残り6枚。香澄の手札は、10枚になった。
「……ターンを終わる」
……ターン終了時。
またも香澄は【ターモイル・プラネット】の効果を使って、デッキ枚数を13枚へと戻した。
そして、【人馬の魔女ルクバト】が手札に【不可避の一矢】を加えようとするけど、手札にそれが入る隙間はなくて。
……今度は、香澄のターン開始時。
付与効果によって【虚無の記録】が手札に加わろうとして、ターン開始時のドローもするけど。……両方とも、墓所へ。
……一応、今となっては数える意味があるかはわからないけど、念のため。
香澄のデッキの枚数は、残り12枚。