※宙羽視点です。
「……【アクベンス】の召喚」
9度目の香澄のターン。
召喚されたのは【巨蟹の魔女アクベンス】というエンティティ。
元々のコストは9だけど、召喚する時に7コストしか使っていないから、まだ2コスト分、自由に使えるコストが残っている。
……だけど、【巨蟹の魔女アクベンス】自身には、コストを変動させる効果はない。
と、言うことは。
……おそらく6ターン目に【磨羯の魔女アルゲディ】の効果で引いてコストを下げた、ということ。
【巨蟹の魔女アクベンス】は、『挺身』を持つエンティティカードで、攻撃力が6、体力が9。
……ただ、『神速』や破壊効果への耐性は、ない。
それから、召喚時効果。
『自分の盤面に【歪なる友愛ヒュドラ】がいないなら、【歪なる友愛ヒュドラ】を自分の盤面に出す』という効果によって、盤面に更にエンティティカードが現れる。
……出てきたのは、コスト10のエンティティカード。
攻撃力9、体力1。それから『致命』を有したエンティティ。
それから改めて、今度は2枚の常在効果。
まず、【巨蟹の魔女アクベンス】は、自分の盤面の【歪なる友愛ヒュドラ】が破壊されるたびに、それを墓所から盤面へと呼び戻す効果。
それから、【歪なる友愛ヒュドラ】は、自分の攻撃や効果でエンティティを破壊した時に、自分の体力を+1、破壊したエンティティが《分類:星辰の魔女》を持ってたなら追加でコストを1回復する効果がある。
そして、体力7以下なら自分の盤面にエンティティカードが出てくるたびに破壊。それから、体力8以上なら自分に『猛進』の付与。9以上なら『ターン終了時、相手のソーサラーに9ダメージを与え、自分の手札が6枚未満なら6枚になるまでカードをデッキから引く』という効果を自分に付与。
……ダメージソースとしてかなり優秀そうなカードだけど、設計としては8から9への体力の増強は、『猛進』による相手エンティティの破壊でしか達成できない。
そして。私の盤面にエンティティカードは今、存在しない。
「……【不可避の一矢】。対象は【ヒュドラ】」
……どうダメージを出すつもりなのかと思って見てたら、【不可避の一矢】の効果で、【歪なる友愛ヒュドラ】を選択した。
【不可避の一矢】は、自分のエンティティを対象にしたら、3ダメージを与えるのではなくて、破壊する、という効果になる。
……そしてその代わりに、コストを3回復する。
だから、それ自体のコストとの差し引きで。コストは1だけ回復することになる。
コスト回復が優秀なのはわかるけど、手札に今1枚しかないはずの【不可避の一矢】を、そんなに雑に使っていいのだろうか、と、思う。
……かと言って、自壊回数を稼ぎたいのかと言われれば、多分そうじゃない。
【歪なる友愛ヒュドラ】には《分類:星辰の魔女》はなくて《分類:なし》ということになってる。
香澄のデッキのレジェンダリーカードの自壊回数によるコスト減算は、あくまで《分類:星辰の魔女》を持つエンティティが破壊された時、だったはず。
「……【カストル】」
私が小さく首を傾げている間に、香澄は次のエンティティカードを召喚した。
……この試合の中では、2度目の使用。
コスト2、【双児の魔女カストル】。召喚時に【双児の魔女ポルクス】を出現させるエンティティカード。
──召喚時効果も含めて、現れた2枚のエンティティを、【歪なる友愛ヒュドラ】が捕食する。
そして、2枚の【双児の魔女】被破壊時効果が働いて、カードを1枚引き、デッキに【双児の魔女カストル】が1枚加わる。
「……【サダルメリク】」
さらに、次のエンティティカード。
……こっちは、3度目の使用になるカード。
コスト1。召喚時効果でカードを1枚引いて、その後に手札のカード1枚をデッキに戻す。
……召喚時効果が働いた後に、またも捕食が行われて。
被破壊時効果で、カードを1枚引く。
「……【アルレシャ】」
また、3度目の使用になるカード。
コスト2。召喚時効果で自分自身をもう1枚盤面に出す。
……こういうカードは、墓所に行く時に元の2倍の枚数が入ることになるから、墓所回収で引っかかりやすい、のかも知れない。
盤面に現れた2枚の【双魚の魔女アルレシャ】もまた、まとめて【歪なる友愛ヒュドラ】の糧になる。
そして、被破壊時効果。
コストの最も低いカードを1枚引く効果。……それが、2枚分。
……香澄のデッキ枚数は、残り9枚。
「……【カストル】」
……そして、さらに。
【双児の魔女カストル】の召喚。
明らかに、【双魚の魔女アルレシャ】の効果で引いてきたような位置からカードを使用した。
……おそらく、コスト1のカードは引き切ってて。
今『コストの最も低いカード』に当てはまるのは、コストが2のカードになってる、ということなんだと思う。
……そして、これで上限。
たった今【歪なる友愛ヒュドラ】の体力は8に達したから、これでもう自分の盤面に出てきたエンティティカードを破壊できない。
「……【カストル】」
……だと言うのに、香澄は更に【双児の魔女カストル】を召喚した。
これもまた、【双魚の魔女アルレシャ】の効果から引いてきたらしきカード。
……【双児の魔女カストル】の召喚は、もう4度目。本来、デッキには同名のカードは3枚しかないはずだけど。
あのカードは、被破壊時効果でデッキに加わるから。
……そこはもうあまり関係がないと言えるかも知れない。
……そして、今召喚された【双児の魔女カストル】と、効果で出現した【双児の魔女ポルクス】は【歪なる友愛ヒュドラ】の生け贄にはならず。
このターン、使えるコストは残り1。
「……【レグルス】」
……そんな状態で召喚されたのは。
コスト1。【獅子の魔女レグルス】。
召喚時効果で、盤面のエンティティ全てを破壊。それから、破壊したエンティティカードのコストの合計の半分だけ、自分の攻撃力に加算。
破壊されたエンティティカードの被破壊時効果も働くけど、それは一旦いいとして。
……加算されるのは7と10と2と2の合計の半分……10.5。
ただ、端数切り捨てとあるので、つまり、10。
それが、元の攻撃力である1に加算されて、11。
……そして、【宙の先】の効果によって、ターン終了時に働く自壊効果が付与される。
被破壊時効果で攻撃力と同じ値だけ相手ソーサラーにダメージを与える、というものがあるから。
ターン終了時、これで私は一気に11のダメージを受けることになる。
「……【拒絶の魔法】対象は【レグルス】」
……だけど。
香澄は、さらにカードを使う。
──コスト0のカード。だけど、元のコストは30。
選択した対象に『カードの能力によって破壊されない』を付与して、それから盤面のエンティティ全てを破壊するマジックカード。
……つまり、今。
【獅子の魔女レグルス】は【宙の先】の自壊効果を克服した。
──その上で、考えると。
【獅子の魔女レグルス】は、常在効果として、自分の攻撃力と同じ値だけ、受けるダメージを減算する効果を持っているから。
こうなると、あれを処理するのは極めて困難。
「……ターンを終了する」
……そうして、ターンの終了。
手札の枚数が9枚で、それから。
……香澄が墓所のカードをデッキに加えて、デッキの枚数が、10枚。
──ターンが移り、私の番。
10ターン目だから、使えるコストは10。
ターン開始時効果で手札に【虚無の記録】。それから、ターン開始時のドロー。
……これで、私の手札は6枚。
「……コスト8。【彼方への探査】」
……【虚無の記録】は、捨てていいカードが無いから、もう使えない。
それから、【獅子の魔女レグルス】をどうにかできるカードも、こっちにはない。
……破壊耐性があるだけならなんとかできた、けど。
【光速の世界】
コスト8。マジック。《分類:軌跡の終点》
お互いの盤面の『神速』を持たないエンティティ全てに8ダメージを与える。その後、『神速』を持つエンティティ全てに4ダメージを与える。
お互いのソーサラーは自分の手札のカードを2枚捨て、カードを2枚引く。
──例えば、このカード。
破壊が通らない時の除去手段として持ってたけど。
11ものダメージ減衰を持たれてしまっては、効果がない。
……かと言って。
このターンだけで10枚もカードを引かせるのは、できない。
本当は、それを狙えるならそうしたいところだけど。手札のカードが、少なすぎる。
──だから、ここでは。
次のターンが来たら勝てる状況を作ることしか、私にはできない。
「……【虚無を翔ぶ探索者】でソーサラーに3回、攻撃」
カードを3枚、お互いに引く。そして【宙の先】が墓所に3枚増えて、13枚。
……3度の【宙の先】の被破壊時効果で体力が3回復して残り体力22。
【獅子の魔女レグルス】の攻撃によるダメージを鑑みても、11残る。
……次のターンは、耐えられるはず。
「……コスト2。【果てへの到達】」
……そして、これが私のデッキの最終的な手段のひとつ。
元のコスト10の、マジックカード。
【果てへの到達】
コスト10。マジック。《分類:軌跡の終点》
自分はコストを5回復する。その後、自分のデッキに【果てへの到達】を1枚加え、自分の墓所にあるフィールドカード全てを複製し、デッキに加える。
……墓所にあるのが13枚だから、デッキの中に13枚の【宙の先】が加わっていく。
それから、使用可能なコストが5になって。
「……もう1枚。【果てへの到達】」
更に、同じカード。
「……最後。コスト7。【不変なる記録】」
……そして、もうひとつ。
これもまた、試合を終わらせる為のカードの1枚。
元のコストが15で、自力でコストを変動させる効果がないから。
……実質的に、【果てへの到達】と組み合わせなければ使用できないカード。
【不変なる記録】
コスト15。マジック。《分類:軌跡の終点》
自分のデッキのカード全てを捨てる。その後、自分の手札のカード全てを複製してデッキに加え、それから、自分の手札のカード全てを捨てる。
……デッキのカード全てが、捨てられる。
つまり、20枚の【宙の先】が含まれた、カードたちが。
そして、手札のカードも捨てるから、これで終わり。
……できることは、もう何もない。
「……ターンを終わる」
ただ、墓所の【宙の先】は、39枚……つまり、条件の30枚に達したから。
──次のターンが回ってくれば。
そのターンの開始時に、私の勝ちで試合が終わる。