カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※三人称視点?です。



112話 支配の魔法

 

 サダルメリクが去った後。

 ……スピカたちは、未だに飛行による旅を続けていた。

 

 瞬き動く赤い星々が、あまりの速さによって、まるで幾多の線のように伸びる景色の中を。ただ、ひたすらに進んでいく。

 

 ……そうして。

 しばし、変わり映えのしない光景が続いた後。

 

 目の前に巨大な岩の山が現れ。

 一行は、まるで、慣性など存在しないかのように。ぴたりと、急に停止した。

 

 ……そうした理由は、もちろん、単に目の前に障害物があったから、ではない。

 もし、目の前にあるのがただの岩山であったのなら、その上を飛び越えるなり迂回するなり、進み続ける方法はあるだろう。

 

 けれど、そうしなかった。

 

 ──その、理由は。

 

 「──ここは通さない!十二宮の【乙女座の魔女】……と、よくわからない2人!」

 

 目の前に、少し前にサダルメリクと話をした、例の『魔法少女』が現れたからだ。

 

 ……それも、複数。

 

 完全に、包囲されている。

 ……どころか。上空から地平まで、どこを見ても『魔法少女』。

 

 

 「……えっと、通りたいのですが、ダメですか……?」

 

 「──だから、ダメだって、言ってるでしょ!」

 

 目の前で喋る少女が、ステッキを振るうと。

 

 ──二つの大きな土の槍が生成され。

 そして同時に、スピカの首元の辺りへ向かって飛翔する。

 

 ……そして、槍が貫通する、と。

 

 ──そう思われた、その瞬間。

 

 

 「……えっと、すみません。通していただけるなら、こんな事、しなくて済むのですが……」

 

 ……突然に、スピカの目の前に生成された二本の大きな土の槍が飛翔し、スピカの元へと飛んでいたものと、正面からぶつかり合う。 

 

 そうして、それは。

 ……一瞬たりとも、拮抗することはなく。

 

 スピカの生み出した槍が、一方的に相手の槍を打ち砕き。

 

 ──少女が、その槍に身体を貫かれた。

 彼女は一瞬、何が起こったのかを把握しきれていない様子で、目を見開き。

 

 ……そして、光の粒子のようなものへと変換され、瞬く間に消失した。

 

 その様子を見て、スピカたちを取り囲む少女たちに、動揺が走る。

 

 

 ……対して、当のスピカはと言えば。

 

 「あっ……えっと、すみません。その、急いでいたので、少し加減を間違えてしまいました……」

 

 

 申し訳なさそうな声色で、呟いた。

 

 

 「……なるほど。魔女やその幼体が絶命するとそのエネルギーが世界のリソースへと還元されるのか」

 

 「アルケー、せっかくわたしのアイデアが採用されたんだから、やっぱりここは『魔法少女』って呼ぶようにしようよー!」

 

 「……長いし面倒。それから、わかりにくい」

 

 

 包囲する少女たちが、そのまま、距離を保ち。

 各々の魔法で、一斉にスピカへと攻撃しようと構えている中。

 

 アルケーとテロスは、それ自体にはあまり興味を示さず、むしろ、消失していった少女の方へと興味を向けていた。

 

 ……もっとも、ここでスピカに情報を求めずに自分たちで考えるという判断をしているところから。

 やはり中立を破りかねない行動をする意思はなく、それから、状況を認識していないというわけでもないと考えて良いだろう。

 

 ……そして。

 

 「……あ、あの!アルケーさんとテロスさん。……その、守る必要は、ありますか?」

 

 

 「いらない。……それと、わざわざこっちに気を回さなくていい」

 

 「うんうん。わたしたちは傍観者なんだから、こういう時は、いないものと思ってもらわないと」

 

 

 「──っ、はい。わかり、ました!」

 

 ……スピカが、言い終えると同時。

 

 四方八方、などという言葉ではとても生ぬるいと言わざるを得ないほどに、全方位から。

 

 炎が、水が、暴風が、閃光が、形を持った影が。

 それから、音、植物、重力……おおよそ考えられる、様々な魔法攻撃が、スピカへと迫る。

 

 ──あとは、それから。

 スピカの近くにいる、アルケーやテロスをも巻き込むような軌跡を描くものも、いくつかあった。

 

 ……そして。

 それに対して。

 

 スピカもまた、同じく、炎、水、風、光、影、音、植物、重力……と、目に見える魔法攻撃と全く同じものを出現させ、それを、手当たり次第といった様子で射出し、ぶつける。

 

 それは、同じもの同士をぶつけることによる相殺を狙ったようなものではなく、ましてや、相性の良い魔法攻撃を狙ってぶつけたというようなものではない。

 

 ──それは、最低限、定められた照準はあれど……しかし同時に、それはあまりにも乱雑で粗末なものだった。

 それはまるで、どれをどのようにぶつけたところで自分の放つ魔法の方が強い、とでも言わんばかりで。

 

 ……そうして。

 スピカの、適当な魔法が。そこに飛来してきていた、魔法少女による魔法とぶつかっていく。

 

 

 ──その、結果。

 自分へと向かってきた全ての魔法を撃ち落とし、逆に、ほぼ全ての魔法少女を無力化する結果となった。

 

 ……ただ、スピカが狙いを定めず適当に魔法を放った結果か。

 

 所々で、相性によるブレが生じた様子で、被弾こそしたもののまだ「負傷した」という程度で済んでいる者もいれば、呆気なく消失する羽目になった者もいた。

 

 ……あとは、それから。

 

 自分へと命中しないと判断して、スピカが無視した魔法攻撃の内。

 ……アルケーとテロスへと向かった攻撃は。

 

 その全てが、まるで最初から存在すら無かったかのように、命中する前に消滅した。

 

 「……えっと、すみません。その、もう一度やりますので。──今度は、ちゃんとみなさん、避けて、くださいね……?」

 

 ……そして。

 攻撃の結果生じた被害を確認する間も、なく。

 

 スピカが再び、先ほどと全く同じ魔法攻撃を。

 ……予備動作のひとつもなく。全方位に向けて放った。

 

 ……見る者によれば。

 もしかしたら、その様はまるで「花火のようだ」と、映ったのかも知れない。

 

 そして。

 

 ……その花火を抜け出すように、三つの線。

 それは、少女たちが自身へと向けて飛んでくる魔法攻撃へと身構えている隙をついて包囲を脱出した、スピカとアルケー、テロスだった。

 

 ……そうして。

 

 魔法が着弾し。

 少女たちは、回避が間に合った者、回避はできなかったが防御が間に合った者、防御をしたものの防御魔法の出力が足りずにその身を守りきれなかった者、そして、一切の反応ができずに力尽きた者……。

 

 ──その時点で、逃走したスピカを追える者は。

 この場の、どこにも存在しなかった。

 

 

 ……。

 

 ……そうして。

 

 一方的な戦闘を終え。

 ……旅はまた、続いていく。

 

 ……空を、飛び。

 

 また、先ほどよりは数の少ない、別な魔法少女たちと、遭遇し。

 

 それを、突破し。

 さらにまた、進んでいく。

 

 ……そうして、しばらくの時が経過して。

 

 彼女たちは、そこに、辿り着いた。

 

 ──そこは、小さな洞穴だった。

 

 「……っ、何故、何故……!ここまで辿り着くことができたのです!わたくしの愛しい子供たちは……」

 

 ……そして。そこに、隠れ潜んでいたのは。

 

 笛のようなものを持ち、それから、多くの小さな蛇を従えた。

 痩せ細った、背丈の小さい……魔女だった。

 

 「……えっと、あなたのことは、よく知りません。ですが……ですので、少しだけお話を、してもいいですか?」

 

 「……っ!」

 

 痩せた魔女はスピカの言葉に肩を跳ねさせ、様子を伺う。

 ……その姿勢を見て、スピカは、言葉を続けることにした。

 

 「……えっと、その。この頃、未成熟段階の魔女が、完成し切る前に収奪されて……それで、不当な方法で、その意思を奪われる出来事が、頻発しています。……その、単刀直入に言いますが……あなたが──」

 

 ──スピカが、そう言いかけた瞬間。

 

 スピカの背後から、それから、頭上から。

 とにかく、死角となる位置から多数の魔法攻撃が着弾し。

 

 ……そうして、小規模な爆発が起こった。

 

 「──ほ、ほほほほっ!ゆ、油断するからです!……さあ、わたくしの子供たちよ!この魔女をわたくしの新たな子供へと加えるためにもっと弱らせて、紋よ……う、を」

 

 その様子を見て、痩せた魔女は、歓喜の声を上げる。

 

 ──が、しかし。

 

 煙が晴れ。そこには傷ひとつないスピカの姿があり。

 ……痩せた魔女は言葉を失った様子だった。

 

 「……えっと、その。方法について、既に、調べはついています。あなたは、『その時自分より弱い相手に対して、支配して、それから、以降その意思と力を、制御可能な範囲から外に出ないよう抑制する』という……あなたにしか使えない、固有の魔法を持っています。……それでその力で、未成熟な魔女を未成熟な状態のまま支配して。そうして、ここまでの数を集めてきた、と、いうものです。……違いますか?」

 

 「……っ、て、手の内を敵に明かすバカが、どこにいますか!こ、子供たちよ!じ、時間を稼ぐのです!」

 

 激しい動揺を見せながらも、痩せた魔女は洞穴の奥へと走り。

 そして、その奥から出てきた少女たちに、スピカとの間に割り込ませる。

 

 ……だが。

 

 すぐに、痩せた魔女の目の前には、スピカが立っていた。

 

 「……えっと、でしたら。こちらは、『自分の中で判明している範囲で、その場にいる存在の使用できるあらゆる魔法を模倣する』ことができます、ので。──試して、みますね……?」

 

 ……痩せた魔女の眼前に立つスピカが、そう言うと。

 どこからともなく、無数の蛇が現れた。

 

 ……これは、余談だが。

 この世界において、魔法は、本人の魔力の質が優れていれば優れているほどに、その威力を増す特性がある。

 

 その上で、スピカは十二宮に数えられる魔女である。

 もっとも、相手が彼女と同じ十二宮であったのならば、同じ魔法を使えたところであまり有利になることはないのだが……。

 

 この場合は、相手は無名の魔女であり。

 その力の差は、歴然である。

 

 

 ……そうして。

 スピカの魔法によって生み出された蛇は、一目散に、痩せた魔女へと飛びかかり。

 

 ──それらは、そのまま痩せた魔女の身体へと巻き付くと。

 少しの間を置き。溶けるように、消えていった。

 

 ──それから。

 痩せた魔女の身体から全ての蛇が消えた、その後。

 

 ……そこには。

 

 膝をつき、虚な目でスピカを見上げる……痩せた魔女の姿があった。

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