カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※宙羽視点ですが、途中で視点変更があります。



115話 防衛あるいは援軍

 

 『魔法少女』が世界中に出現して、少し時間が経って。

 

 今、学校はひとつの戦場となっていた。

 

 「──宙羽さん、現在、そちらはどうでしょうか」

 

 ……スマホから、天柄副会長からの声が聞こえてくる。

 

 「……大丈夫。まだ、そこそこ余裕はある」

 

 私が、スマホを使って通話をしている間。

 

 私の『カードの精霊』である、ヒト型の機械が飛び回り、そしてその軌道に、墨汁を垂らしたような黒い空間が発生する。

 

 そうして、彼女たち……『魔法少女』たちをそこに巻き込むと。

 それらは、形を維持できないほどに強い負荷を受けるような様子で、霧散していく。

 

 ……ただ、さっきから、どうにも巻き込まれてから消えるまでの時間が少しずつ長くなってきてる。

 

 もしかしたら、いつかは、耐えられるようになってしまうかも知れない。

 

 もし、そうなったら……。

 

 「──わかりました。あまり余裕がないようですので、そちらにも人員を割り振りましょう」

 

 「……えっ、私は……」

 

 「……貴女が1人で抱え込みがちな性格をしていることは、入ってきたばかりの1年生はどうかわかりませんが……少なくとも、2年生や3年生の生徒会役員であれば、みんなが把握していることです。それに、こちらの人員を減らすということではなく、つい先ほどこちらに合流してきた人員を、そちらに割り振るというだけですので──」

 

 「──そうやで!こういう時なんやし、ウチらやって手伝わせてな!」

 

 「うん。お姉ちゃんの言う通り。……同じ2年生で同じ生徒会なんだから、ここは一緒に協力しよう」

 

 電話の向こう側の天柄副会長の言葉の途中で、こちらにやって来た人員……天岳姉妹が、割り込むように言葉を発した。

 

 彼女たちの言う通り、私たちは確かに同じ生徒会……ではある、けど。

 

 あまり。関わり合う機会自体は、多くなかった。

 

 ……これは別に、仲が悪いとか、喧嘩をしているとか、そういった理由があるわけではない。

 

 ただ単純に、私が、人と関わり合うことを苦手としていて。

 そして彼女たちが、そんな私に気を遣ってか、あまり踏み込まないようにしていたから。

 

 ──それでも、必要な時は会話をすること自体は、あった。

 だけど、どうにもお互い、機会を詰められる機会を失ってしまったような感じで……それで今まで、宙ぶらりんな感じだった。

 

 だから、彼女たちが私に協力すると言うことには少し驚いたけど……。

 同時に少しだけ、嬉しいと、思った。

 

 「……学校は今、避難所として使用しています。どこか一方でも崩されたら、そのままここ全体が占領される事態に陥りかねません。ですので今だけは、弱音を吐くことに遠慮をしないでください」

 

 ……スマホから、つい先ほどは天岳姉妹によって遮られた、天柄副会長の言葉が、続けられる。

 

 ──確かに、言われてみたら、そうだ。

 今は、強がっていいタイミングじゃない。

 

 ……状況を一度、考える。

 

 向こう……体育館側は今、水無川会長と天柄副会長が2人で防衛していたはず。

 ……彼女たちは、少なくとも『ファントムビルド』は私よりも強い。

 

 そして、この現象に対して、今私たちが使っている『カードの精霊』は。

 ……どうやら、『ファントムビルド』の強さによって、決まるみたい。

 

 ──だから、そう考えるなら。

 向こうのほうに避難者がより多く集まっている分狙われやすいとは言え……私1人で守っていた学校正門よりは、余裕があるはずと思っていいのかも知れない。

 

 「……わかった。なら、2人とも。私の足、引っ張らないでね」

 

 「──当たり前や!」

 

 「……そう言う朱理ちゃんこそ、ちゃんと僕たちに合わせてね」

 

 私の言葉に、姉の方、理音は、豪奢なローブを身に纏った老人の姿をした『カードの精霊』を顕現させ。それから、妹の方、舞は、空を飛ぶ大きな龍の姿をした『カードの精霊』を顕現させて。

 

 ──そして、理音の『カードの精霊』は、まるで虹のような極彩色の眩いほどの魔法を放ち、舞の『カードの精霊』は、咆哮を上げ空間そのものが揺らいだ……ような気がした。

 

 そうして。一気に、迫っていた多数の『魔法少女』が一度リセットされ、少しばかり、余裕が生まれる。……けど。

 

 まだまだ、『魔法少女』は出現して、すぐにこちらへと迫ってくる。

 

 ……かなり、気持ちとしては楽になった、とは言え。

 夜は、未だ、明けそうにない。

 

 ……。

 

 

 ──────────

 

 

 ……。

 

 「……やはり、向こうも少し危なかったようです。こちらもそろそろ危うくなって来ましたので、もう少し、会長が頑張ってくださればいいのですが……」

 

 「──ええい!お前も頑張るんじゃい!……いや、まあ、頑張ってるけど……。わしもほら、ね?一生懸命、頑張ってるから……」

 

 「でもー……たしかに、これは中々大変かもー……」

 

 『魔法少女』に追われながら、どうにか『カードの精霊』を使って振り払いつつこちらへと走ってくる生徒を、体育館の入り口へと誘導しながら。

 自分の『カードの精霊』に、付近の『魔法少女』を一掃させつつ。

 ……同時に、近くにいた生徒会長に軽口を叩いて、心を癒します。

 

 ──全て、同時にやらないといけないのは、やはり、少しばかり骨が折れますね。

 

 私の『カードの精霊』は、元になっているレジェンダリーカード……【叛乱の機構ルシフェル】と同じ姿をしていて、それから、その攻撃手段も『ファントムビルド』でバトルをする時の演出的なものと一致しています。

 

 ──つまり、私の役割としては。

 狙いを定めて、ミサイルやビームのようなものを射出する、固定砲台です。

 

 ……どうやら『カードの精霊』はあまりソーサラーの元を離れることができないようですので。全員が後ろから指示を出す、ということはできそうにありません。

 

 後衛として状況をコントロールする役割ですから、狙撃だけでなく、避難者の誘導や、宙羽さんや天岳さんたちに任せた向こう側の戦況の確認も、逐一行う必要があり……。それも含めると、それなりに大変です。

 

 ──特に先ほどまでは、前衛が会長だけでしたので、心細い思いをしていました。

 

 ……いえ、まあ、前衛が会長1人だけだと不安定だった、というのは冗談ですが。まあ、ですが、それでも。

 

 ……不安が全くなかったと言えば嘘になりますので。

 先ほど奈々実さんと合流できたのは、なんだかんだ、かなり大きいです。

 

 密林のような幻影空間を展開して、そこから、次から次へと飛び出す【捕食者】と呼ぶべき姿をした『カードの精霊』が、数で『魔法少女』に対抗していく様子は、確かな安定感があります。

 

 しかし、それでも一度に展開できる数には限りがあるようで。

 拠点防衛として考えるなら、それなりにカバーは必要なようです。

 

 私の支援砲撃が光りますね。

 

 

 ……あと、それから。

 会長は、今。

 

 空に浮かぶヒト型の『カードの精霊』が、太陽のように、照らし。

 ……その光の範囲に入った『魔法少女』を、容赦無く焼き焦がしています。

 

 非常に不本意ですが。

 ……なんだかんだ、彼女が味方にいると頼もしいのは、事実です。

 

 それは、今のような『ファントムビルド』の腕が必要になる時だけではありません。

 

 生徒会としての学校運営や、書類の整理。

 そういったものも、彼女は上手くこなします。

 

 言ってしまえば、事実として。幼稚園の時、私が彼女と同じ幼稚園に転入してから、私が1番になったことは、あらゆる分野において一度もありません。

 

 ……まあ、ですが。

 

 ──その瞬間、彼女の『カードの精霊』が作り出す光の外側から、魔法攻撃が放たれ、彼女の不意をついて迫りました。

 

 ……が。

 それはちょうど、私の『カードの精霊』のミサイルによって、撃ち落とされました。

 

 ……一番になれない私でも、せめてサポートくらいはこなしましょう。

 勝てないからと、ライバルに全てを任せるなど、言語道断です。

 

 それに。

 

 ──彼女は、どうせ忘れているでしょうが。

 

 幼稚園に転入したばかりの頃。

 ……いじめられた私を守ってくれた、あの時。

 

 私は、常に。彼女を守ると決めていますので。

 

 

 ……まあ、それでも。

 やはり、私は同時に、彼女のライバルを自称しています。

 

 ──そして、それから。

 生徒会長としてのお仕事はかなり多く、見ていて少しだけ、ほんの少しだけ、不安になりますので。

 

 

 ライバルとして。

 いつか、その立場を奪ってしまおうと画策しているものですから。

 

 ……中々隙を見せない彼女に、困る時も、あるのですが。

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