カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



116話 収穫あるいは種まき

 

 「──どうやら、目を覚ましたようだね」

 

 「……目を覚ましたも何も、ここは一種の精神世界。世間一般的には、まだ目を覚ましていないと言うべきだろう」

 

 ……えっと。

 

 あたしは、目を覚ますと、見知らぬ場所にいました。

 ……より正確には。それは、場所、と言うのも少し違う、ただひたすらに真っ白な、そんな空間です。

 

 もっとも、その言い方は目の前にいる赤い目のヒトいわく、ここは精神世界のようなものであり、目が覚めた、というのは違うみたいですが……。

 

 感覚的には、眠りから目覚めたときのような感じなので、そう表現します。

 

 ──と、言いますか。

 

 赤い目のヒト。

 このヒト型の人では無い何かは、アルケーさん……ですね。

 

 そして、最初にあたしに声をかけてきた方は、テロスさん、です。

 

 これは、2つのデッキの2枚のレジェンダリーカードで見覚えがあるから……と、いうのもそうですが。

 

 ……もう一つ、心当たりと言いますか。

 

 「……さて、物思いに耽っているところ悪いけど、確認をさせてほしい。──君は思い出した、で、いいのかな?」

 

 「……はい。えっと、元々あたしは、自分には今の世界とは違う世界で生きていたという感覚的なものは元々ありまして……あ、いえ。えっと、ここは精神世界の一種、なんでしたっけ……ではその、えっと……」

 

 「……ここは、『雲田香澄』という人間の精神世界みたいなもの。だから、『ファントムビルド』と呼ばれるカードゲームが存在する世界のことを言いたいなら、『この世界』という表現でも問題ない」

 

 「そうそう。大は小を兼ねるって、言うしね」

 

 「……あ、はい。えっと、それで。──あたしには、いわゆる『前世の記憶』……みたいなものが、ものすごく朧げではありましたが、ですが、最初から、あったんです」

 

 話していて。

 なんだか、自分のことながら、変に遠回りした言い方をしてしまっているということには、薄々気がついていますが。

 しかし、うまく表現するのがなんだか難しいことであるような気がして、つい、遠回りをしてしまいます。

 

 ……これは、後から考えたら、簡単なことで。

 この時あたしは、少しだけ、頭の整理が追いついていなかった、と言うことなのでしょう。

 

 あたしがそうしている、その間。お二方は、特に何を言うでもなく、黙って、あたしの言葉を待っているようでした。

 

 ……やっぱり、あたしはこの光景に見覚えがあります。

 

 情報として知った、ということではなく、何らかの映像か何かで見た、というわけでもなく。誰かから聞いた、というものでもなく。

 

 他人事ではなく自分事として、覚えがあるのです。

 

 ──本来、あたしはことヒトたちと、初対面であるはずなのに。

 それを自覚して。ようやく少し、この状態が理解できてきて。

 

 あたしは、ちょっとだけ、気持ちを落ち着けることができました。

 

 「……その、はい。思い出しました。あたしの前世の記憶。……それは、明けることのない夜の世界に『スピカ』という名前で存在していた、時のことです」

 

 「まあ、そうだろう」

 

 「……困ったね。つまり、本来なら理論上実現不可能な、『デッキのレジェンダリーカードの本体を現実世界に降ろす儀式』本人にはもはやそのつもりはなさそうだったけど、現実として。それが成立しちゃったってことだ。……よりにもよって、って感じだけど」

 

 あたしの、質問に対する答えを得て。

 ……お二方は、なんだか呆れているような様子です。

 

 「……まあ、起こっちゃったことは仕方がないね。元々、タイミングの問題であって、いずれはこうなる予定だったし」

 

 「──少し早まるだけだから、特に何もしなかった。……言い訳じみているが、実情として、そんなところだ」

 

 ……なる、ほど?ですね。

 その、よくわかりませんが……。

 

 ……いえ、よくわかりませんので。少し、整理してみましょう。

 

 「……えっと、まず。お二方は、あたしのデッキのレジェンダリーカードをしている方々……ですよね……?」

 

 ……とりあえず、あたしがまず最初にそれを尋ねますと。

 

 「お、もしかして。推理ショーみたいな感じかな?」

 

 「……テロス、あまり茶化すな。だとしたら、わたし達は犯人役ということになる。そうであるなら、こういう時犯人は神妙になって話を聞くものだろう」

 

 諌めているようで、大分ノリノリですね。

 ……じゃあ、なくて、です。

 

 あたしは、情報を、きちんと確認したいのです。

 

 「……えっと、それで。お二方は、あたしの……『スピカ』の元いた世界を滅ぼしたヒトたち、ですよね?」

 

 「うん、その通りだよ」

 

 「……厳密に言うなら、少し違うが概ね合っている。正確には、その『世界』は圧縮され、形を変えただけ。存在そのものは残っている」

 

 「……そう、なんですか?」

 

 「そうそう。それは君の心の中に……と、いうのが嘘でも茶化しでもない事実として、ね」

 

 「……もっと言うなら、お前自身がそれと同化した、とでも言うのだろう。不本意なことだが、これを、してやられた、とでも言うべきなのだろうな」

 

 ……えっと。

 少しだけ、認識が違うような。もしくは、単に表現が違うだけのような。

 

 ……そんな感じですが、『そのつもりがあり、そのように実行した』と言うところまでは事実みたいなので、話を進めます。

 

 「……理由を、お聞きしても、よろしいですか?──その、どうして世界を滅ぼそうとするのか。……あとはそれから、この世界も滅ぼすつもり、なのですか?」

 

 「──そうだね。順に答えよう。思えば、『スピカ』はあまり、わたし達に質問らしい質問をしてくれなかったから、なんだか新鮮な感じがするよ」

 

 「……まあ、そうだな。とは言え、あまりこちらが思い出に浸るのは迷惑だろう」

 

 「確かにね。……じゃあ、まずは一つ目から。最初に、前提として。世界は、同時に幾つも存在している。ただ、世界と世界がたくさんある空間にも、限りがあってね」

 

 「──まあ、一つの部屋に複数の植物を育てているようなイメージだ。そのまま育てば、いずれ異なる世界同士が衝突する」

 

 なんだか慣れた雰囲気で、テロスさんの言葉にアルケーさんが付け足します。

 

 ……仮にもし、そうなったら、どうなるのでしょうか。

 なんだか怖いような気になるような、そんな気持ちです。

 

 「……だからそうなる前にわたし達が世界をどれか滅ぼして、スペースを確保する。それが、第一の理由だね」

 

 ……第一の理由。

 ということは、他にも理由があるのでしょうか。

 

 「──世界は、放っておいてもいずれ滅びる。植物での例えを継続するなら、ある時、急に枯れる。だから、世界同士の衝突は、そうそう起こることではない」

 

 「……『可能性の枯渇』。寿命みたいなものだよ。──『前世の記憶』を取り戻したのなら、覚えはあるだろう?」

 

 ……それは。

 

 ……確かに、そうです。

 あの戦いも、それを回避するために始まった、ものでした。

 

 「あの時。わたし達はあの世界を広く見て回ったよ。……それこそ、最初の方に話してくれた、『箱庭』も見た」

 

 「──ああ、『箱庭』。たしか……実体は、冷凍保存された人間が1人、機械の中に押し込められていたところだな。それで、それ以外に生物は確認できなかった」

 

 「……そう、ですね」

 

 ……あの時。

 あたしは、それを知りませんでした。

 

 ですが、今ならわかります。

 

 ……『世界』の全部が、あたしの中にあるというのは、きっと本当に文字通りで。だから、今のあたしは、『スピカ』が知らなかった情報も含めて、あの世界のことが全部、わかります。

 

 ……たしかに、終わっていた。先が無かった。

 

 それは、確かにその通りなのです。

 

 「……だからまあ、あの世界はもはや『一人芝居』もいいところでね。あと少ししたら、枯れ果てて消滅していただろう」

 

 「……そこで。わたし達が世界を滅ぼす、二つ目の理由」

 

 困ったように苦笑いを浮かべながら、バツが悪そうに話すテロスさんと、淡々と先へと進めていくアルケーさんは、ようやく、その話に移るようです。

 

 「──世界を記録して、記録として保存する。そしていつか、その記録を参照して思い出せるような世界を創る」

 

 「……それが、わたし達の、わたし達自身の望みで、目的だ」

 

 ……記録を参照して、思い出せる世界。

 おそらく、それは。

 

 「──カードバトルが面白そうだ。世界を誰がどのくらい理解して、その力と共鳴できるか。競い合えたらいいかもね、なんて。この世界は、そうして設計されたんだよ」

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