カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



119話 意思あるいは選択

 

 これから、どうするか。

 それは、『雲田香澄』と『スピカ』。そのどちらの『過去』を、あたしが自分自身であると、そう定義するのか。

 

 問われていることは、つまり、きっと、そういうことです。

 

 そして、提示されているのは2択で。つまり、どちらかを選べというお話でもあります。

 

 ……学校のテスト等とは異なり、この質問にはきっと正解なんていうものはありません。

 

 その上で、敢えて『どちらが正しい』という視点で考えるのなら。

 その場合、どちらも正しくて、そして、どちらも間違いです。

 

 ……強いて言うのなら、どちらか一方を選ぶことそのものが、正解と、そう捉えることもできるかも知れません。

 

 正誤が存在しないのなら。つまりこれは、あたしの選択を問われている、ということで。

 

 ……であるのなら、私の答えは一つです。

 あたしの、選択。あたし自身の、意思。

 

 「……あたしは、人として、この世界を生きたいです」

 

 ──あたしは、意を決して、口を開きました。

 ただ真っ直ぐに。アルケーさんとテロスさんの、その両方を視界に収めて、精一杯に力強く、言葉を繋げていきます。

 

 「──そして、『スピカ』として在った過去と、あたしが今内側に抱える世界を抱えたままに、存在し続けることを望みます」

 

 ……わかっています。

 それは、言ってしまえば『間違い』と呼ぶべき答えです。

 

 どちらも望むのなら、どちらも叶わないことでしょう。

 

 ──人として生きることを望むのに、世界を抱えたままであれば、人と、同じようには生きられません。

 そして、自分の世界の継続を望むのに、個として生きるということは、世界はあたしの中にのみ存在する記録、あるいは記憶へと、変わり果てる事になります。

 

 「……それはつまり。そのどちらも望む、ということかい?」

 

 ……それでも。

 あたしは迷う事なく、首を縦に振りました。

 

 「──それがどういう事かは、理解しているのか?……世界と完全に接続された状態となれば、それは人間と呼ぶ事などできない。生命体とすら呼べないだろう。そして、人ならざるモノとして在るというのに、人としての自我や精神を待つとすれば。その歪みに、苦しむ事になるだろう」

 

 そして、睨みつけるような視線を向けながら。アルケーさんが、さらにあたしに尋ねてきました。

 

 「……それでも、です。あたしは、雪菜さんや有栖さん、生徒会のみんなと出会えて、とても良かったって、思ってます。そして、あたしは、『スピカ』として、意思や正しさを求めたことも、そうして見つけられなかった、という結果も、あたし自身の事だと思っています」

 

 ……対して、あたしも答えが決まっていますので。

 その目線に、正面から向かって、言葉を返しました。

 

 「なるほど。ならもう一つ聞く。……そんな選択が、許されるとでも思うか?」

 

 一歩も譲るつもりのないあたしの言葉に対して。

 さらに、一歩詰め寄るような言葉が、投げかけられます。

 

 「……許されるとは、思っていません。ですが、許されないのなら。あたしは、力の限り抗います」

 

 プレッシャーに、気圧されそうになりながら。

 あたしは、無意識のうちに後退りしそうな足を踏ん張って、その場に留まり。

 

 ……そして。気が付けば。

 あたしの周りに。矢が番られた弓が何個も浮かび上がり。

 そしてそれらは、全てアルケーさんとテロスさんへと、向けられていました。

 

 「よくわかったよ。それが、君の意思ということか。なら、わたしからも聞こう。その望みを正当なものとする、根拠はあるのかい?」

 

 テロスさんが、矢を向けられながらもまるで怯んだ様子はなく。

 いつもの調子で、あたしに問いを、投げてきました。

 

 「ありません。ただ、あたしが、そうしたいって……思っているだけです」

 

 ……自覚は、あります。

 こんなのは、開き直りもいいところです。

 

 そもそもの話、考えようと思えば、どうにか理屈を付けることもできたかも知れません。

 ……ですが。いろいろと理由を後付けで考えて、自分自身の意思を誤魔化すのは、なんだか違う、と。

 

 ──ただ、なんとなく。そんな、気がしました。

 

 

 「……いいだろう。よくわかったよ」

 

 「そして、それが答えと言うのなら。示して貰う。お前の覚悟を。そして、その意思の強固さを」

 

 ……あたしの答えを受けて。

 アルケーさんとテロスさんの両方から感じる圧力のようなものが、より一層、強まります。

 

 ──それは、まるで、激しく吹き荒れる暴風の只中にいるかのような。

 もしくは、強い重力で押し込められているような。

 あるいは、深海の水圧に潰されている最中のような。

 

 ……そんな、気分です。

 そんな、思考がまとまらない、中で。

 

 あたしは、咄嗟に。

 浮遊する大剣を創り出し、その刃先を、お二方へと向けていました。

 

 しばらく、無言で、向き合いまして。

 

 

 ──そして、その直後。

 

 ……突然に、圧力が霧散しました。

 

 

 「……よくわかった。なら、最後の試練だ。譲りたくない意思があるなら。この世界に生きることを望むのなら」

 

 「この世界のルール。己が掲げる世界の強さで以って、その意を示す方法。……それを、あなたは既に理解しているはず」

 

 何を言いたいのかは、わかります。

 ……この世界には、色々なものがありますが。

 

 その中で……これまであたしが生きてきた中で。その条件に該当するものは一つです。

 

 ……これは、余談と言いますか、どうでもいいことですが。

 アルケーさんは、何となく、下に見ている相手を呼ぶ時や、あまり機嫌が良くない時に相手を指す言葉として、『お前』という二人称を用います。

 

 つまり。ここに来てそれを辞めたということには。

 ……多少なりとも、意味があると考えても、いいのかも知れません。

 

 「……はい。これが、初陣にはなりますが。しっかりと、応えてみせます!」

 

 ──あたしが、手を伸ばして。そうすると、辺り一面を覆うように、星が降る夜空が生まれ。そして、それは一点へと収束し。最終的に、そこには40枚から成るカードの束が、生成されました。

 

 ……そして。

 それが、カードの形を取ると同時に。

 

 強い光を発し、強い力を帯びて、カードが変容していくのを、感じます。

 その光景は、なんとなく。

 

 ──雪菜さんが奈々実さんとバトルしていた時に、最後の方で見たものと、重なります。

 

 もしかすると、これが『カードの成長』と言うものなのでしょうか。

 ──もし、そうだとすれば。

 

 ……あたしが、そんなことを考えている一方で。

 向こう側も、40枚のカードを、創り出します。

 

 ……どうやらあちらは、二人一組といった様子で、合わせて40枚、1デッキのカードの生成、ということみたいです。

 

 ──当然、カードの中身は、まだ一枚も見えていませんが。

 しかし何となく、そのカードの束から、強い力を感じるような。そんな、気がします。

 

 ……あたしのデッキも、負けていない……と、思いたい、ですが。

 

 カードが突然40枚一度に成長した、ということは。

 ……つまり。あたしは今、自分のデッキのカードの内容が、どんなものになっているのか、知らないという事になります。

 

 確か、昔の人が言った言葉……なのか、ことわざなのか、よく知りませんが。

 彼を知り己を知れば、百戦……なんとか……というものが、あったような気がします。

 

 それで言えば、あたしは、彼も己も知らない状態ですが、大丈夫でしょうか……?

 

 ……そんな、あたしの焦りとは裏腹に。

 状況は、進んでいきます。

 

 あたしが投げたコインの結果、どうやら、先攻はあちら側になるようです。

 基本的に、『ファントムビルド』は先攻の方が勝率が高いことくらいは知っていますので、先攻がいいなと思いながらコインを投げたのですが、上手くいきませんでした。

 

 その、確か、ここってあたしの精神世界みたいな感じだったと思うのですが……えっと、明晰夢を見ているときみたいには、できないんですね……。

 

 ……冷や汗が頬を伝っていくような感覚を、精一杯に、誤魔化しながら。

 あたしは、初期の手札のために、カードを5枚引きました。

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