※香澄視点です。
カードを引きつつ、ある意味では、弱音とも取れるような、そんな言葉を向けてきたテロスさんとアルケーさんでしたが。
しかし、実際にはそういう意図があったわけでは無いようで、未だ力強い視線で、こちらをじっと見てきます。
……そう、ですね。
まだ試合は始まったばかりです。
という事は、つまり。更なる出力の強化を持っていたのがこちらだけだなんて。そんなことは、見通しが甘いとしか言いようがないような……楽観が過ぎる考え、なのかも知れません。
「……ただ、こちらも。それなりに札は整いつつある」
「君にとって、これはせっかくの初バトルなんだからね!わたし達も、ちょっとくらいはいいところを見せないと……ってね!」
あたしが、漠然とした嫌な予感に思わず考え込んでしまうのと、同時に。
……アルケーさんとテロスさんが、何やら不安なことを言い出しました。
「じゃあ、カードの公開を宣言するよ!」
「……公開するカードは【ルシフェル】」
そして。4ターン目の初動。まずはカードの公開が行われます。
そして、その、公開されたカードは。あたしにも、聞き覚えのあるものでした。
……そのカードの、正式名称は【叛乱の機構ルシフェル】というもので。
それは、生徒会の副会長である、天柄さんのレジェンダリーカードです。
えっと、確か。
……それを最初に見たのは、まだ雪菜さんや有栖さんと出会ったばかりの頃。有栖さんが地方の『ファントムビルド』の大会に出場していて、あたしや雪菜さんが観戦をしていた時。その時に、決勝で有栖さんと天柄さんとぶつかって、天柄さんがそのカードを使った時の、事でしたね……。
──その時は、まだ、カードの効果を読みながら試合を観戦すると流れについていけないくらいでしたが……。
今はもう、そんな事はありません。
そう考えると、なんだかんだで成長する事ができていた、という事なのでしょうか。
【叛乱の機構ルシフェル】
コスト10。エンティティ。攻撃力10、体力10《分類:叛乱の機構》
自分のターン中、手札にあるこのカードを任意のタイミングで公開してよい。
公開時、自分の盤面に【機構の尖兵】を2枚出現させ、それらに『防衛』を付与する。その後、自分のソーサラーに、『ターン中に3回まで、自分の《分類:機構の天使》を持たないエンティティが与えるダメージを+1する(この効果は重複しない)』を付与する。
公開されたこのカードが手札にあるなら、自分のターン終了時、自分の盤面の《分類:機構の天使》を持つエンティティを破壊するか、自分の手札の《分類:機構の天使》を持つカードを墓所へと送ってよい。
上記2つのうち、どちらかの効果を発動したなら、自分のソーサラーを2回復する。
どちらも発動したなら、2回復ではなく4回復する。
自分のターン終了時、このカードが墓所にあるなら、手札に戻り、その後、自分の領域に【創造者無き世界】を生成して設置する。
『防衛』
召喚時、自分の墓所に《分類:機構の天使》を持つカードと《分類:機構の天使》を持たないカードが20枚以上ずつあるなら、これは『自分のターン開始時、この試合に勝利する』を持つ。
自分のターン終了時、自分のソーサラーの体力を5回復する。
……そして、カードの公開と同時に。
向こうの盤面に、両腕が刃のようになっている人型の機械兵が、2体現れました。
【機構の尖兵】
コスト1。エンティティ。ファントム。攻撃力1、体力1《分類:なし》
攻撃時、攻撃対象が《分類:機構の天使》を持たないなら、自分の攻撃力を+1する。
被破壊時、お互いのソーサラーに1ダメージ。
しかしやはり、【機構の尖兵】というエンティティカードは、かなり面倒なカード……だと思います。
『猛進』や『拙速』、『神速』などの即時攻撃可能な効果こそ持っていませんが、被破壊時に1ダメージを与える効果がある上に、攻撃時に攻撃力を1上昇させる効果も持っているので、無視もしづらいです。
そして、それに。
なんと言っても、【叛乱の機構ルシフェル】の公開時効果によってソーサラーに付与された、『ターン中に3回まで、自分の《分類:機構の天使》を持たないエンティティが与えるダメージを+1する』という効果によって、被破壊時効果が、1つにつき2ダメージになる点も、大きいでしょう。
「……次。エンティティカードの召喚を行う」
「召喚するカードは【終末の祈祷者アルクスノクティア】召喚時効果は、【無名の魔女】を選択するよ!」
……召喚されたカードは、あたしの知らないカードでした。
──それは、膝をつき、手を合わせて。まるで、何かに対して静かに祈りを捧げ続けているかのような、そんな、ただの非力な人間の少女に見えました。
もし、これまでの流れがなければ。きっとあたしは、それがレジェンダリーカードのエンティティだなんて、思いもしなかったことでしょう。
そして、それが盤面に現れると同時に。
……薄暗く、どこか寒気がするような。そして、どこか寂しさを感じさせるような。そんな、静かで、そして果てしない墓地が、広がっていたのでした。
【終末の祈祷者アルクスノクティア】
コスト2。エンティティ。レジェンダリー。攻撃力2、体力4《分類:静寂の祈念》
これは攻撃できない。
召喚時、相手の盤面のエンティティカード1枚を選択し、それに次の相手のターン終了時まで『これは攻撃できない』を付与する。その後、自分の盤面に【彼方なる霊園】がないなら【彼方なる霊園】を1枚設置する。さらに、自分の墓所にエンティティカードが10枚以上あるなら、自分の手札に【手向けの鐘】を1枚加える。
自分のターン終了時、自分の盤面に他にエンティティカードが存在しないなら自分はカードを1枚引き、自分のソーサラーを2回復させる。その後、それが10ターン目以降で、自分の盤面に【手向けの鐘】が4枚以上あったなら、この試合に勝利する。また、もし上記の条件を満たしていなかったなら、これは手札に戻る。
カードの召喚に反応して発動した、【エンドレス・プラネット】のドロー効果でカードを引いているアルケーさんとテロスさんを脇目に、状況について考えます。
……召喚時効果は、あたしの盤面には現状【無名の魔女】が1枚しかないので、それを対象にしたのでしょう。
しかし、その効果は、1ターンの行動不可なので……相手のターン終了時に自動的に除外される【無名の魔女】には、効果のないものです。ですので、これは一旦、無視をします。
次に見るべきは……フィールドカードの【彼方なる霊園】ですね。
【彼方なる霊園】
コスト4。フィールド。ファントム。《分類:静寂の祈念》
お互いのソーサラーは、ターン中に3回まで、自分の盤面のエンティティカードが破壊された時、自分の体力を1回復する。
自分の盤面のエンティティカードが破壊された時、それが相手のターン中なら、自分の盤面に【手向けの鐘】を1枚出現させる。
……これは、ぱっと見の感覚ですが。
おそらく、回復に特化したフィールド……であるように見えます。
「──さらに、次のカードを召喚するよ!」
「……召喚するカードは【遡る聖剣使い】」
……そして、続いて。
今度は、持っている剣は立派なものの、見るからに腰が引けている剣士が、そこに現れました。
【遡る聖剣使い】
コスト2。エンティティ。レジェンダリー。攻撃力2、体力2《分類:廻天の途絶》
『拙速』
『防衛』
召喚時、これが召喚された回数が10回目以降なら、これは直接墓所へと送られ、代わりに自分の盤面に【担い手無き聖剣】を1枚出現させる。
これが除外された時、自分の手札にこれを加える。
被破壊時、自分の領域に【逃れ得ぬ崩天】を設置し、これは墓所ではなく手札に加わる。
「……そのまま、攻撃行動を宣言する」
「『拙速』効果を利用して、【遡る聖剣使い】でソーサラーに直接攻撃をするよ!」
またも、エンティティを召喚したことにより、カードを引いて。その後に、先にアルケーさんが、その口を開きました。
……攻撃力が2。そして、『拙速』による攻撃なので。その攻撃は、攻撃力の値が1となってのものにはなりますが。
しかし、それは《分類:機構の天使》を持っていないので、ダメージ+1が加わり……結果、2のダメージになりました。
「それからさらに、今度は【綴じられた世界アカシック・インデックス】の効果使用を宣言するよ!」
「……こちらの盤面のエンティティカード全ての《分類》を消去。そして、新たに《分類:原生の侵食》の付与を行う」
《分類:原生の侵食》の付与、というのは。
向こうの手札で公開されているカードの内、【侵食の大地】は《分類:原生の侵食》を持つエンティティ10枚の破壊を条件に、自動的に領域へと設置されますから、おそらくそれを狙ってのこと、でしょう。
「これで、ターンの終了を宣言する」
「ターン終了時、【綴じられた世界アカシック・インデックス】の効果で、カードを捨てることを宣言するよ!」
──そうして、ようやく。ターンの終了が宣言されまして。
まず、ターン終了時効果によって、【終末の祈祷者アルクスノクティア】が手札へと戻っていきます。
そして、その次に【侵食の大地】の効果によって、【原生の捕食者】が1枚、向こうの盤面に出現しますが、その後に【不沈の太陽アッシズ・ラー】の効果が働いて、盤面のエンティティ全てに2のダメージが与えられまして。
……結果として、盤面には体力が3以上のエンティティカードが存在していないため、一掃されます。
さらにその後に、アルケーさんとテロスさんはカード……【叛乱の機構ルシフェル】を捨てまして。
そうして今度は、破壊された【機構の尖兵】が、アルケーさんとテロスさんに、ダメージ軽減によって1ダメージを2回、そして、ダメージ軽減のないこちらに2ダメージを2回与えてきました。
そしてその上、【遡る聖剣使い】は被破壊時にフィールドカードを設置して手札に戻る効果がありますが、フィールドは設置する場所がないので設置されずに墓所へと送られ、ただ、手札には戻っていきます。
……それらの後に、次は【彼方なる霊園】の効果で、ターン中に3回、なので3回、向こう側が体力を1ずつ回復して、そして、こちらも【無名の魔女】が破壊されたことによる回復がありますので……。
──向こうの体力が20、そしてこちらの体力が45と、なりました。
そこに加えて、さらに補足をしますと。墓所のフィールドカードの種類が7つで、そして、向こうの手札の枚数が8枚……といった感じです。
……何と言いますか、1ターンの間に色々起こりすぎて。
正直、あたしがちゃんと状況を飲み込めたのは。ターンが回ってきてから、しばらく、考え込んだ、後のことでした……。
※【終末の祈祷者アルクスノクティア】のカード効果について、効果処理タイミングの描写ミスが発覚しましたので、描写の方を優先し、カードの効果の方を変更して勝利効果の発生及び手札帰還効果の発生を『相手のターン開始時』から『自分のターン終了時』へと追加する形に致しました。
紛らわしい形になってしまい、大変申し訳ありません……。
また、ミスに気づいて教えて下さった方については、本当にありがとございました……!