※香澄視点です。
時間が経つのは、案外とあっという間で。
ターンの循環も、7度目を迎えるところです。
そして、ターン開始時。
燃え残った瓦礫の山が、大きな本の1ページへと収められ……つまり、【残火の戦場跡地】が墓所へと送られていきまして。
また、それから。私の盤面に、2枚の【無名の魔女】が現れます。
ある意味で、これはもはや見慣れた光景……と、言ってもいいかも知れません。
……そして、そんな中。
周囲の光景には目も向けず、テロスさんが唐突に口を開いて、こちらに話しかけてきました。
「──さて。そろそろ、終盤に差し掛かろうかという頃だけど。ひとつ、確認しておかなきゃいけないことを忘れるところだったから、いいかな?」
「……?あ、はい。なんでしょうか……?」
……不意を突かれたあたしは、その言葉に対して。
特に何も考えず、反射的に頷きました。
「──この戦いが終わった、後のこと。もし仮に、あなたが内にあるその世界を受け入れて、スピカと香澄の両方を肯定するとした場合」
「少なくとも、君は寿命という観念を持たない存在になるだろう。夜天の世界を内に抱え、その上で人として生きたいと言ったけど……その後。人としての生の範疇を越えることを、受け入れることができるかい?」
……世界そのものと同化したら、何をどうしたところで、人という存在の枠を超える事になる。そして、それが最も明確な形で現れるのが、寿命という概念……と。つまり、アルケーさんとテロスさんの言うそれは、そういうことで。
そして確かに、それはとても大事なことだと思います。
……が、しかし。
あたしにとっては、それはあまりにも今更な問いと言って、いいでしょう。
「……あたしは。それも理解した上で、そうしたいと決めたつもり、です」
ですので、あたしは。
目を逸らさずに。お二方の顔を見ながら、そう断言しました。
「……まあ、そっか。やっぱり、意思は変わらない、と」
「もっとも、こちらとしても、わかっていて聞いた側面はある。……ただ、後から話が違うとなるのは、わたし達としても本意ではない」
テロスさんとアルケーさんは、それだけ言うと。
ターン開始時のドローを行いました。また、その時。【綴じられた世界アカシック・インデックス】の効果も働きますので、カードが1枚溢れる事になりますが……手札のカードを1枚だけ捨てて、引いたカードを手札に加えることを優先したようです。
「──確認は済んだ。バトルを再開する」
「さっきも言った事だけど、ここからは終盤戦。あの盤面があっさり返された事には、流石にわたし達も驚いているけど。考えてみれば、何が起こってもおかしくない頃合いだ!」
そんなアルケーさんとテロスさんの言葉に、あたしも気持ちを切り替えます。
先ほどは確認などをされましたが。
……結局のところ、勝って証明する必要があるのは変わりません。
「それじゃあ、エンティティカードの召喚を宣言するよ!」
「……召喚するカードは【デウスエクスディーバ】」
そうして、召喚されたエンティティは。
綺麗な顔を、していました。それは、不思議な魅力を持っている……と言うわけではなく。ただひたすらに、『整った顔』でして。
……その、なんと言いますか。人のような姿をしていて、人のような顔をしていますが。
しかし同時に、それが作り物……機械でできたものであると、一目で理解できました。
【機械仕掛けの偶像デウスエクスディーヴァ】
コスト6。エンティティ。レジェンダリー。攻撃力4、体力8《分類:心奪の熱狂》
『誘引』
これは攻撃されない。
これは自分のカードの効果で破壊されない。
召喚時、自分の手札のカード1枚を捨て、自分の手札に【不朽の円盤】を1枚加える。その後、自分の領域に【オンステージ!】を設置する。
自分のターン終了時、ランダムな相手の盤面のエンティティカード1枚に『これは攻撃できない』と《分類:心奪の熱狂》を付与する。自分のデッキに【不朽の円盤】を1枚加える。
攻撃時、相手の盤面のランダムなエンティティカード1枚に『これは攻撃できない』と《分類:心奪の熱狂》を付与する。その後、お互いのソーサラーは手札のカードを1枚捨て、それぞれの手札に【不朽の円盤】を1枚加える。
被破壊時、お互いの盤面の『これは攻撃できない』と《分類:心奪の熱狂》の両方を持つエンティティカード全てを破壊し、相手ソーサラーに2ダメージを与える。
……そして、召喚時効果。
向こうは手札のカードを1枚捨て。代わりに、【不朽の円盤】というカードを、手札に加えたようです。
それで、捨てられたカードはと言いますと。公開されていたカードだったので、何が捨てられたかはすぐにわかりました。
それは、フィールドカードの、【侵食の大地】でした。
……そうして、それから。
召喚されたそれが、手に持ったマイクをおもむろに口元へと運び。
それから、まるで人間のような所作で口を開いて、歌を……音を発した、その瞬間。
辺りが、突然暗くなり。
色とりどりの眩いライトが、それを、強く照らし出しました。
【オンステージ!】
コスト8。フィールド。ファントム。《分類:心奪の熱狂》
これが領域にあるなら、お互いのソーサラーは、『ターン開始時、直前のターンに【機械仕掛けの偶像デウスエクスディーヴァ】によって直接攻撃されていたなら、自分の使用可能な残りコストを1減少する』と『自分の盤面に【機械仕掛けの偶像デウスエクスディーヴァ】が出現した時、自分の体力を2回復し、それに『猛進』を付与する』を持つ。
これが領域に設置された時、自分のソーサラーはコストを3回復し、代わりに『このターンの間、カードを引くことができない』を持つ。
自分のターン開始時、自分の手札に【不朽の円盤】を1枚加える。
自分のターン終了時、自分の手札のカードが全て【不朽の円盤】であり、お互いの盤面に《分類:心奪の熱狂》を持たないエンティティカードが存在せず、自分の盤面に【機械仕掛けの偶像デウスエクスディーヴァ】があるなら、自分の手札の【不朽の円盤】1枚を【黄金比の目配せ】へと変化させる。
……ライブ会場のようなそれが、展開された瞬間。
向こうのコストが3回復したことで、残りの使用可能コストが4になりました。
「……次、再度エンティティカードを召喚する」
「召喚するのは【花園の皇女プセウド・フィリア】!」
【花園の皇女プセウド・フィリア】
コスト2。エンティティ。レジェンダリー。攻撃力2、体力2《分類:造花の庭園》
召喚時、自分のデッキにあるランダムなマジックカードを2枚複製して墓所に加える。その後、自分の手札に【造花の剪定】を1枚加える。それから、自分の墓所に同名のカードが2枚以上あったなら、【偽りの花園】を自分の領域に設置する。
自分のターン終了時、これが11ターン目以降で、墓所にあるカードが11種類以上重複していたなら、この試合に勝利する。
被破壊時、自分の手札のカード2枚を複製してデッキに加え、手札のそれらを捨てる。その後、これを複製して手札に加える。
……それから、今度は。
煌びやかな格好をしているにも関わらず、俯いて目を伏せた少女が、現れました。
それで、召喚時効果が働きまして。墓所のカードが2枚増えて、それから手札のカードが、1枚増えます。
……その後、フィールドカードが設置されようとした様子ですが、すでに向こうの領域にはカードが設置できない状態ですので、それはそのまま、墓所へと送られていったようです。
「……それから、コストを2使って【不朽の円盤】を使用するよ!」
「効果の対象は【プセウド・フィリア】を選択する」
それから。
最後の2コストで使用されたカードは、【機械仕掛けの偶像デウスエクスディーバ】が手札に加えたカード、ですね。
【不朽の円盤】
コスト2。マジック。ファントム。《分類:心奪の熱狂》
手札にあるこのカードは捨てられず、デッキに戻されず、除外されない。
自分の盤面のエンティティカード1枚を選択し、それに『被破壊時、自分の盤面に【機械仕掛けの偶像デウスエクスディーヴァ】を出現させ、それの攻撃力を1、体力を4にする』を付与し、その後、破壊する。
……カードの効果によって、【花園の皇女プセウド・フィリア】は破壊されて、代わりに、攻撃力と体力が低めの【機械仕掛けの偶像デウスエクスディーヴァ】が、そこに現れました。
そして、それによって。【オンステージ!】の効果が働きますので、向こうの体力が2回復して、新しく出てきたばかりの【機械仕掛けの偶像デウスエクスディーヴァ】に『猛進』が付与されます。
あとは、それから。
破壊された【花園の皇女プセウド・フィリア】によって、カードがデッキへと複製された後に、捨てられまして。そして、自分自身もまた複製して、手札へと加わっていきました。
「これで、ターンを終了するよ!」
「……それから、ターンの終了時。【アカシック・インデックス】によって手札のカードを1枚捨てる」
……そうして。
『猛進』が付与された【機械仕掛けの偶像デウスエクスディーヴァ】での攻撃は、行わず。ターンを、終了するようです。
つまり、最終的に。
これで、向こうの残り体力は19で。
それから、墓所にあるフィールドカードの種類が……14種類、となりました。