※香澄視点です。
……向こうのターン終了時、2枚の【機械仕掛けの偶像デウスエクスディーヴァ】によって、向こうのデッキに【不朽の円盤】が、合計2枚加えられ。
そして、宣言通りにカードが捨てられた、後。
──7度目の、こちらのターンです。
向こうの盤面に【無名の魔女】が2枚現れ、そして、私の周囲に浮かぶ弓に矢が装填されて。それから、【ルクバト】さんの効果が起動します。
ただ、手札の枚数が19枚ですので、【ルクバト】さんのカードの内両方を手札に加えるには、【インフィニティ・プラネット】の効果を使ってカードを1枚捨てる必要があります。
ですので、とりあえず。【アルゲディ】さんの効果で複製した事によって手札に2枚存在している【サダルメリク】さんを、捨てる事にします。
そうして、ランダム発動効果に反応して矢が飛んでいき、向こうの体力が18になったのを、横目に。
とりあえず、ターン開始時のドロー、ですね。
……これは、先ほど手札に加えたカードではありますが。流石に、手札に4枚もいらない気がするので、【人馬の一矢】を1枚捨てます。
……これで、ようやくあたしのターン、ですね。
──ですが、えっと。ターンの行動を始める前に、ひとつだけ。
ここまでやってきて、少しだけわかってきた事が、あります。
……単純なお話ですが、それは、デッキの相性について……です。
その、あたしのデッキ……というよりは、レジェンダリーカードの【インフィニティ・プラネット】の効果についてのことですが。
まず、前提として。向こうのデッキは、レジェンダリーカードが40枚で作られたデッキ……なんだと思います。
全てのカードを見たわけではないので、そう言い切れるだけの根拠があるわけではありませんが……しかし、ここまでの流れから、おそらくそうなのではないかと考えています。
……それで、その。
40種類のレジェンダリーカードでできたデッキ、というのは。
多分、本当なら。40パターンの『勝利効果』を、相手に合わせて狙いやすいものを狙うようにする、という事ができるのが強みなんだと思います。
……ですが、あたしの【インフィニティ・プラネット】がある事で。
向こうは今、本来の強みを全く活かせない戦い方を強要されているような状態にあるように見えます。
……もっとも、だからどう、という事があるわけではないのですが。
その、何が言いたいかと言いますと。
つまり、今になって。自分が「どうにかして早く削り切らないと」と意味もなく焦って、視野が狭まっていた事に気付いた……というだけのことです。
──もっと言えば。早い話、体力を削り切る事に執着しなくても、あと何ターンかかけて、《分類:極夜の魔女》を持つマジックカードをあと11種類使って。それで【インフィニティ・プラネット】の効果で手札に【可能性の萌芽】を加えてしまえばいい……のではないでしょうか。
例えば、そのサブプランとして。ついでに、向こうの体力を削ることも無理のない範囲で狙ってみる、とか。
……そんな感じでやってみても、いいような気がします。
そう、ですね。
とりあえず、やってみない事には、始まりません。
……これは【綴じられた世界アカシック・インデックス】の効果と体力を削り切る事以外に向こう側に勝ち筋がないことを前提としたプランになりそうですので。
つまり、まだ見えていないカードがたくさんある都合上、大きなリスクを背負う事にもなりそうですが。
──恐れているばかりでは、進めません。
「……コストを7消費して、エンティティカードを召喚します。──行きましょう、【アクベンス】さん」
……そうして。迷い悩んだ末に出したそれは。
大きなダメージを狙うため、【アルゲディ】さんの効果で事前にコストを-2しておいた、大型コストのエンティティカード、です。
【極夜の巨蟹宮アクベンス】
コスト9。エンティティ。攻撃力1、体力9《分類:極夜の魔女》
『防衛』
自分の盤面の【奔放の傀儡ヒュドラ】がダメージを受けた時、それの体力を最大まで回復する。自分の盤面の【奔放の傀儡ヒュドラ】が盤面から離れた時、自分の盤面に【奔放の傀儡ヒュドラ】を出現させる。
召喚時、自分の盤面に【奔放の傀儡ヒュドラ】を1枚出現させる。その後、①と②の効果の中からランダムに1つ発動する。
『①自分の手札に【巨蟹の指揮】を1枚加える』
『②自分の手札に【竜頭蛇尾】を1枚加える』
……そして、召喚時効果によって。
盤面に、竜とも蛇とも言い難いような、9つの頭を持った奇妙な化け物が現れました。
【奔放の傀儡ヒュドラ】
コスト10。エンティティ。ファントム。攻撃力9、体力9《分類:極夜の魔女》
『猛進』
『致命』
自分のターン終了時、これの攻撃力と同じ値のダメージを相手の盤面のエンティティと相手ソーサラーに古いエンティティから順に割り振って与える。
……さらに、それから。召喚時効果はまだありますから、それも発動しまして。
手札に、2枚のカードが加わろうとします……が、しかし。
手札は19枚ですので、このままでは、どちらか片方しか手札に入りません。
ので、また、【人馬の一矢】を1枚捨ててしまいます。
──そして。
ランダム発動効果が働いたので。また矢が一つ、飛んでいきまして、向こうの体力は、17になりました。
また、召喚に反応してカードを引く効果も働きますが……この際は、それをそのまま捨ててしまう事にします。
「……それから、そのまま手札に加わった【巨蟹の指揮】を、【奔放の傀儡ヒュドラ】を選択して、使います」
【巨蟹の指揮】
コスト0。マジック。ファントム。《分類:極夜の魔女》
自分の盤面のエンティティカード1枚を選択し、それに、『拙速』を付与する。その後、自分のソーサラーに、『このターンの間、6回まで、カードを使用した時コストを1回復する(この効果は重複しない)』と『このターンの間、デッキからカードを引く事ができず、体力を回復する事ができない』を付与する。
「次に、【天秤の偏重】を、【奔放の傀儡ヒュドラ】を選択して、使います」
【天秤の偏重】……つまり、【ズベン・エル・ゲヌビ】さんから加えた、コスト0のマジックカードを使いまして。【奔放の傀儡ヒュドラ】の体力を-2する代わりに、攻撃力を+2します。
そして、さらに。
コスト0ではありますが、確かにカードを使用しましたので。
【巨蟹の指揮】による1ターン限定の付与効果により、コストが1回復します。
「それから、コストを1使いまして……【竜頭蛇尾】を、また【奔放の傀儡ヒュドラ】を選択して、使います」
【竜頭蛇尾】
コスト1。マジック。ファントム。《分類:極夜の魔女》
自分の盤面のエンティティカード1枚を選択し、それの体力を1にし、代わりに攻撃力をそれの元の体力の半分の値(端数切り捨て)だけ加算する。
……これで、さらに【奔放の傀儡ヒュドラ】の攻撃力が増えまして。
その攻撃力は15、となりました。
──と、言いますか。その、このターン、ここまで使えるカードを手当たり次第使っていただけ、ではありますが。
えっと、これは。
……もしかして、勝っているのではないでしょうか?
……ターンを始める前に散々色々考えておいて、という気持ちはありますが。
しかし、多分、間違いありません。
心の奥に、少しだけ。
なんとも言い難い、奇妙な申し訳なさのようなものを、感じながら。
……あたしは、たった今見えた、勝ちへのルートを辿る方向に、路線を変更する事にします。
「……【奔放の傀儡ヒュドラ】で、ソーサラーに攻撃します」
元々の効果には、攻撃可能になる特性はありませんが。
しかし、【巨蟹の指揮】の効果で『拙速』が付与されていますので。
攻撃力を半分……つまり7にして、攻撃します。
とりあえず、これで。ダメージ軽減の上からなので、1少なくなって、6のダメージが入りましたから。残りは11……です。
「そして、【獅子奮迅】で【奔放の傀儡ヒュドラ】を選択します」
コスト1。【レグルス】さんの効果から、手札に加わったカードです。
……どこかで使えるかな、と思ってなんとなく持っておいていたのですが。持っていてよかった、です。
その効果によって、【奔放の傀儡ヒュドラ】の攻撃力と同じ値のダメージがソーサラーに対して与えられまして。
それから、【奔放の傀儡ヒュドラ】が、手札に戻ります。
【奔放の傀儡ヒュドラ】の攻撃力は、『拙速』で攻撃した事によって、7になっているので……つまり軽減の上から6のダメージ、ですね。
そして、【奔放の傀儡ヒュドラ】が盤面から離れた事で。
それに反応した【アクベンス】さんの効果で、再び盤面に【奔放の傀儡ヒュドラ】が現れました。
「……それから、エンティティカードを召喚します。──終わらせましょう、【レグルス】さん」
……そして、召喚時効果。
自分の盤面のエンティティカード全てを手札に戻して……そして、【レグルス】さんの攻撃力を、手札に戻したエンティティカードのコストの合計値の半分だけ、端数を切り捨てて加算します。
──つまり。
7と10を足して2で割って余りを切り捨てて1に足すので……攻撃力は、9です。
そうして、それから。
手札に【獅子の猛撃】と【獅子奮迅】が、1枚ずつ加わります。
対して、ランダム発動効果に反応して飛んでいった矢も含めまして。
……向こうの残り体力は、4ですから。
「……【獅子奮迅】で、【レグルス】さんを選択します」
──宣言した、直後。
【レグルス】さんの大剣が、向こう側へと、綺麗な直線を描いて飛んでいき。
……そして、8のダメージが与えられ。
あたしの初試合は。あたしの勝利という形で、その幕を下ろしました。