カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



135話 乙女の魔女と蛇使いの魔女

 

 「……ここまで、か」

 

 無限の軍勢を相手に、こちらは体力にも集中力に限界がある。

 そんな中では、相当に耐え忍んだ方ではあると思うが……残念ながら、そんな抵抗も、どうやらここまでのようだ。

 

 ……既に姉は倒れ伏し。

 ここでは、戦えるのは私だけ。

 

 場所を移せば、他で戦っている者と合流できるかも知れないが……そんな余裕は、既に無い。

 

 ──囲まれている。

 

 どこを向いても、例の《魔法少女》。

 やはり、世界全体に影響を与えるような存在を相手に抵抗など、土台無意味なものであった、か。

 

 ……弱気な考えをどうにか振り払うように、『カードの精霊』を使って、横一閃の雷を発生させて。広い範囲を薙ぎ払おうとした……が。

 

 ──耐えられた。

 

 今の攻撃で倒れた者は、ほとんどいない。

 ……時間が経つほどに力を増していくその脅威は、私の体力や集中力の持続力を考慮しなかったとしても、もはや手に負えないものになっていた。

 

 「……チッ」

 

 ……どうしたものか。

 やはり、どうしようもないのか。

 

 どうしようもない状況に苛立ち、に舌打ちをするが。

 しかし、打開策など何も浮かばない。

 

 

 「……おやおや。まさしく、威勢が良かったのも最初だけ、ですねェ。このまま抵抗など辞めて、この世界に築く、わたくしの玉座の礎になればよろしいのです」

 

 

 ──全く、腹立たしい限りだ。

 空の上からふんぞりかえっているやつも、鬱陶しいことこの上ない。

 

 

 「──そんなもん、願い下げだ」

 

 苛立ちのままに。

 余裕そうに見下すそいつの顔面に雷を飛ばしてはみたが……。

 

 「……ふぅむ。はて。埋められない力の差とは、やはり残酷なものですねェ」

 

 ……まるで、ダメージを受けた素振りすらない。

 

 「本当なら、この世界に生きるあなた方も、わたくしの子供たちの中へと加え入れたいところなのですが……。残念な事に、今のわたくしは一種の幻のようなものであるようでして。力の差を定義できない都合上、わたくしの魔法が機能しないものですから、ただ、贄とする事しかできず。申し訳ありませんねェ」

 

 その言葉に呼応するかのように。じりじりと、私を包囲している虚ろな目の少女達が、迫り寄る。

 

 「……さて、ここでのおしゃべりはおしまいです。──やってしまいなさい。わたくしの子供たちよ」

 

 

 ──四方八方から、様々な魔法攻撃がこちらへと向かう。

 私としても、できる限りの防御を試みたが……やはり、防ぎ切れるはずもなく。

 

 ……意識が、遠のいていく。

 

 ──魔法攻撃もまた幻だからか、痛みはなく。

 それが、強い眠気に襲われるかのような感覚だったのは、不幸中の幸いと言えるだろうか。

 

 ……そんな、無念を抱いて瞼を閉じる、その刹那。

 どこからともなく、白い霧が漂ってきたような気もしたが……。

 

 それが何なのかということを考えるよりも先に。

 ……私は、意識を手放した。

 

 

 ──────────

 

 

 ……アルケーさんやテロスさんとのバトルを終えて。

 少しだけ、お話をした後に。

 

 あたしは、意識を取り戻して、目を覚ました……の、ですが。

 

 ……その。

 何だか、すごい事になっていました。

 

 まず、あたしが倒れていた場所は、どこかの病院、というよりは、何らかの研究所……みたいな感じでした。

 

 そして、扉……は、鍵がかかっているようで開かなかったので、【ハマル】さんの力を再現して、白い霧を出現させて、実体の輪郭を曖昧にする事で壁を抜け、それから廊下を抜けて。

 

 ──そうして、少し移動をしてみますと。

 そこには、行方不明になっていたはずの月城先生と、月城さんのお姉さんが、倒れていました。

 

 ……さらに、その周りを取り囲むように、《魔法少女》たちがいて。

 それから、痩せ細った《魔女》が、その部屋の天井のあたりで、何かいいことでもあったのか、嬉しそうに高笑いをしていました。

 

 ──果たして、ここで何が起こっているのか。

 あたしは、よくわかりませんでしたが。

 しかし、さながら名探偵のように、頭の中で要素を繋ぎ合わせることで。何となく、わかってきました。

 

 ……結局、あの後。

 

 あたしが、行方不明になった月城先生を探そうとしていた月城さんのお姉さんを止めようとした、その後。

 きっと、月城先生を見つけ出して、救出する事に成功したのでしょう。

 

 ……そうして、それから。

 

 あたしがスピカとして生きていた頃の記憶を取り戻し、ある種の封印のようなものが解かれた、その瞬間。

 こぼれ落ちたカケラのようなものがあって、それが、1つの力の塊となってしまい、どういうわけか暴れ出してしまった……という事では、ないでしょうか。

 

 

 「……な、なぜ。ど、どうして貴様がここに……!?わたくしは、逃げおおせたはず、なのに……」

 

 あたしの顔を見て、目を見開いて何かをぶつぶつと呟き、固まってしまった、痩せ細った魔女……【ラサルハグェ】さんを横目に、考えます。

 

 ……えっと、その。この状況は。

 もしかして、あたしのせい……なのではないでしょうか。

 

 「……まあ、そうだろうね。1から10まで君のせいにするのは少し気の毒だけど……何割かは、君に責任があるだろう」

 

 「──もっとも、10割からその『何割か』を差し引いた時に残る割合は、こうなる事を防ぐ事ができなかったという点で、わたし達のせい……という事になるのだろうけど」

 

 あたしの心の声を読み取ったかのように。

 テロスさんとアルケーさん……っぽいデフォルメされた小さめのヒト型の何かが、ふわふわと浮かびながら、そんな事を言ってきました。

 

 何と言いますか、妖精か何か……みたいですね。

 

 「……まあ、妖精、というのもあながち間違いではない」

 

 「正確には、精霊……と言うべきかな。君も、聞いた事自体はあるはずさ」

 

 ……精霊。聞いた事が、ある。

 うーん、もしかして……『カードの精霊』と呼ばれるやつでしょうか?

 

 

 「……急に忌々しい姿が目の前に現れたかと思えば。わたくしに目もくれずおしゃべりですか……!いい度胸です。──子供たちよ!以前のようにはいかぬと、教えて差し上げなさい!」

 

 

 あたしが、デフォルメバージョンのアルケーさんとテロスさんについて、考えていますと。

 

 どうやら、無視をしているみたいになってしまったことで機嫌が悪くなった様子で、【ラサルハグェ】さんが周囲の《魔法少女》たちに命令を出して、攻撃を仕掛けてきました。

 

 「……すみません、ミニアルケーさんとミニテロスさん。ちょっとだけ、こっちに集中しますので、その……」

 

 「……理解している。わたし達のことは一旦忘れて、目の前のことに向き合うといい」

 

 「あれは君の世界から出てきたもの。……そして君は、あの世界そのものを背負って生きると、わたし達にそう言った。つまり。あれは君自身が向き合うべき問題だ。わたし達は邪魔をしないから、しっかり向き合って、そしてどうするのかをじっくりと考えてくるといい」

 

 ……言い残して、お二方は。姿を消してしまいました。

 しかし、消えたのは姿だけで。変わらずそこにいるのは、何となく感じ取る事ができます。

 

 とりあえず、そうですね。

 ……一旦は、目の前のことに集中しましょう。

 

 【蛇使いの魔女】……魔女の幼体である、《魔法少女》たちの支配者。

 

 彼女に対して。

 スピカは……あたしは、その行いは『世界の意思に反している』から、と。

 一方的に追い立て、最終的に、その命を奪うに至りました。

 

 ……そうして、それから。

 それが、本当に正しいことだったのか、そもそも、『正しいこと』とは何なのか。それについて考え、しかし、答えは出ず。

 

 それから、アルケーさんやテロスさんと一度別れ、旅に出たこともありました。

 

 ……それでも、結局答えは出せず。

 最終的に、それをきっかけにアルケーさんとテロスさんは、あの世界を滅ぼすに至った……のでした。

 

 覚悟を問われ、意思を証明し、その先に。

 ──あたしが、向き合うべき問題。

 

 そういう意味では、常に傍観者であり続けた二人組よりも、彼女はそれに相応しい相手……なのかも知れません。

 

 ……ひとまず、【ハマル】さんの霧の力の範囲を広め、《魔法少女》たちの攻撃魔法を掻き消しまして。

 

 「──すみません、【ラサルハグェ】さん。確かに、あたしは無視をしていました。目を、逸らしてもいました。……だから。やり直しましょう。あの日、あの時を。あたしも、ずっと、心残り……だったんです」

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