カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



141話 様子見と不意打ち

 

 「……まあ、いいでしょう。本当なら、あなたがこんなところにまで現れて……わたくしとしては、不愉快極まりないところですが」

 

 ……あたし達は、最初。

 お互いに、水面下で有利な状況を整えながら。様子を伺うように、見つめ合っていましたが。

 

 ──しびれを切らした、とでも言うのでしょうか。

 

 とにかく、先に攻撃を仕掛けてきたのは、向こうから……でした。

 

 「──しかし、いいでしょう。ここであなたを消せば……わたくしは遂に、己の意義を果たせるのですから!」

 

 ……そんな風に、【ラサルハグェ】さんは、力強い声で言いながら。

 その瞬間に、彼女のその背後から現れた2人の《魔法少女》に、魔法攻撃を行わせてきました。

 

 ……本人はあくまで何もせず、自分の手下に攻撃させるという、それ自体は。

 ハッキリ言って、予想通りでしたし、そもそも、これまでに同じような攻撃を何度も見てきました。

 

 ……が、しかし。

 その直後に、それが、これまでのそれとは異なるものである事に、気が付きました。一言で言うのなら、単純に。込められたエネルギーの量が、まるで違います。

 

 今までは、どうせまともに受けたところで大した事がないくらいのものでしたが。しかし、今のこれは。多分、まともに受けたら大変な事になりそうです。

 

 ……あたしと同じくらいの力を持っている、ということは。

 頭の中では理解できていたつもりでしたが。しかし、実際は。この瞬間まで、それを、しっかりと認識できていなかったみたいです。

 

 「……っ!」

 

 ……ただ、注意深く様子を見ていたことと、それから、見つめ合いながら事前準備をしていたおかげで。

 

 一目見て、そこまでのことに気付く事ができ、それから【ハマル】さんの霧の力を使い、『そこにいなかった』事にすることで、回避することに成功しましたが……。

 

 「……ほう。躱しましたか。あんなにもギリギリのタイミングで、よく間に合いましたねェ。──察するに、わたくしのことを侮っていたようですが……。どうですか?怖いですか?……己を脅かしうる存在が目の前にいて、その命を狙っているのですよ?」

 

 事実として、【ラサルハグェ】さんの言う通り。

 ……かなり、タイミングとしてはギリギリでした。

 

 ……そして。

 こうして使ってみると、やはり【ハマル】さんの力は、ほとんど何でもできると言ってもいいくらいに便利なものですが。

 

 ……しかし、欠点はあります。

 それは、霧を広げた範囲の中でしか力を発揮しないため、霧を広げるという工程を挟んでからでないと力を発揮しない、というものです。

 

 「ですが、今のでひとつ、わかりましたよ?……その魔法の起点は、この霧ですね?手品というものは、タネが割れてしまえば呆気ないものですからねェ」

 

 どこか、自嘲気味に。【ラサルハグェ】さんが、そう言いながら手を前にかざしまして。

 ……そうして、そこに現れた《魔法少女》が。杖を、地面……いえ、月面……?に突き立てますと。

 

 ──そこから、強い風が吹き荒れて。

 そうしたら、あっという間に。あたしがこっそりと広げておいた、目に見えるか見えないかくらいの、薄い霧が……綺麗さっぱり払われてしまいました。

 

 ……もっとも、別にこの状態でも。

 また、霧を出すこと自体は可能ではありますが。

 

 この状況のまま【ハマル】さんの霧の魔法を使うには、かなりの濃度で霧を発生させてその瞬間に魔法を使うしかないので、タイミングが分かりやすくなってしまいますし、わざわざ霧の出力を上げる必要が出てくる分、消耗も大きくなります。

 

 ……ですので、つまり。

 少なくとも、先程のような。不意をついての霧の魔法の行使や、雑なタイミングでの霧の魔法の使用は、難しいでしょう。

 

 「……そう、ですね。はい。あたしは、あなたのことを、怖い相手だと思っています。……明確な脅威だと、理解しています。ですが。あたしは。ここで退く気は、ありません」

 

 ……ただ、不意打ちの札を1枚失ったのは、向こうも同じです。

 こっちは、霧の魔法を、そして向こうは、これまでと同じに見えて明確に違う出力の大きさを。

 

 それだけなら、むしろ向こうの失った情報アドバンテージの方が大きそうに見えるかもしれません。

 

 ……が、しかし。残念ながら。

 不意打ちという面で霧の魔法以上に使いやすい魔法は、あたしの使える魔法の中にはありませんので。結局、互いに同じくらいの情報アドバンテージを喪失したという形になりそうです。

 

 ですので、むしろ。

 現状としては、どちらかが損をした、という見方ではなく。互いの前提の共有が済んだだけ、とでも見るべきかも知れません。

 

 ……と、そんな風に。

 あたしが、考え事に耽っていると。

 

 ──唐突に、【ラサルハグェ】さんは大きく距離を取りまして。

 

 

 「そうですか!……なら、この場でわたくしが、斃して差し上げることといたしましょう!」

 

 またも、仕掛けてきたのは向こうでした。

 ……今度は。とにかく数を増やして押し潰す作戦に出たようで。

 

 ずらりと、たくさんの。

 数え切れないほどの《魔法少女》が、【ラサルハグェ】さんの周り……つまり、あたしの前に現れました。

 

 

 見た目こそ、華やかな格好をした少女たちではありますが。

 しかしこう……あれだけの数で並ばれると、中々に圧力がありますね。

 

 「……数で戦うのは、あなたの特権では、ありません」

 

 対して。あたしも、同じく数で対抗するために。

 【アルデバラン】さんの力を使い、たくさんの大きな牛を出現させてみましたが……。

 

 ……まあ、単純な数では向こうの方が多そうです。

 

 「……ええ、そうでしょう。あなたの力は、その手札の多彩さにこそありますからねェ。理解していますが……そうして無理矢理にでも相手の土俵で戦おうとするのは、あなたの悪癖ですよねェ!」

 

 ──そして。

 たくさんの魔法攻撃が。まるで色とりどりに装飾された壁が迫ってくるかのように、一斉にこちらへと飛来し。

 

 ……それから、それとほぼ同時に。

 こちらの牛の群れが、向こう側へと突っ込んで行きました。

 

 

 ……その、結果として。

 こちらの牛は魔法攻撃を正面から受けながらも、かなりの数が、足を止めることなく。順調に、その足を進めているようですが。

 ……しかし、大量の牛の群れによる壁の、その隙間から漏れた魔法攻撃が。あるいは、倒れた牛が受けられなかった、魔法攻撃が。

 

 ──こちらに向かって、飛んで来ます。

 

 しかし、とめどなく射出される魔法攻撃の数々ではありますが。

 ……おそらく、牛の群れが向こうに到達すれば、攻撃は止まるでしょう。

 

 

 ──なんて。そこまで考えたところで、ちょうど。

 ひとつ目の魔法攻撃……炎の球が。そろそろ、こちらに到達するくらいの、そんなタイミングでした。

 

 ……ですので。

 あたしが【レグルス】さんの魔法を用いて出現させた、浮遊する大剣によって、その火球を真っ二つに切断し。まずはひとつ、無力化しました。

 

 そして、向こう側では。既に向こうへと到達した牛の群れによって、その攻撃の元は潰せている様子です。

 

 ……が、しかし。

 

 こちらへと飛んでくる魔法攻撃は、これひとつでは終わりません。

 ふたつ、みっつ。と、段々と、その数を増していきます。

 

 

 ──これは、かなり今更ですが。

 魔法攻撃は、基本的には撃ってしまえば、それで終わりで……そしたら、また次を撃てますから。

 

 だからこそ、こちらに届く弾の数を、確保するために。

 魔法を撃つ砲台がすぐに潰されてしまわないよう、【ラサルハグェ】さんはわざわざ一度距離を取った、ということなのですね。

 

 ……向こうの狙いを、ようやく理解したところで。

 到達した、第二第三波を。

 

 浮遊する大剣を、思考によって操作して。それで、魔法攻撃へと対処しつつ。

 それと同時に、自分の手で持った鞭のような剣を振るい……そのマルチタスクによって、どうにか、捌き切りました。

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