カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



143話 理屈と無謀

 

 ……結局のところ。

 色々と考えてみて、それから、試してみた結果……ではあるのですが。

 

 しかし、それでもやっぱり身も蓋もないお話として。あたしも、今の状況の中でひとつだけ、考えた事がありました。

 

 ──それは、と言いますと。

 結局、向こうにとって有利な状況での戦いに、こだわる意味なんて無いのではないか……と、いうことです。

 

 向こうに何ができるのか、それから、こっち側にどう言う事ができるのか、というのは、もうある程度わかってきましたので。

 今度は、向こう側ができないであろうことを、本当にできないか、確認していくのがいいのではないでしょうか。

 

 ……すみません。

 回りくどい言い方になってきてしまっていますが。

 

 つまり、そうですね。これはあくまで例えば──の、お話ですが。

 

 ……まず、前提として。これまで、【ラサルハグェ】さんは、《魔法少女》を突然無から呼び出し、それに対して命令を行う形で、戦闘行為をしています。

 

 それで……ここからがその、例えば、のお話ですが。

 【ラサルハグェ】さんは、自身では、そういった魔法などを使ったり、剣を振るったりする事が、できない……のではないでしょうか。

 

 そんなことを考えたあたしは、不意打ちであたしの首を直接狙ってきた刺客を、一旦、あえて放置しまして。

 

 それから、【レグルス】さんの浮遊する大剣を携えて、そして、【アンタレス】さんの鎧を身に纏い、そこにセットの剣も、手に持って。

 

 ……そうしたら、あとは。

 向こうに対応され、散らされるのを想定した上で、高出力で【ハマル】さんの霧を展開し。

 ……もちろん、案の定。風の魔法によって、霧は払われましたが、その直前に、それは役割を果たしましたので、問題なし……です。

 

 ──【ハマル】さんの霧の魔法によって、【ラサルハグェ】さんの目の前まで転移したあたしは。

 先ほどやられたことをやり返す意図も多少込めて。剣で直接、首の辺りを狙ってみました。

 

 ……が、残念ながら。手に持っていた笛のようなものでの防御が間に合い。仕留めるには至りませんでした。

 

 「……っ!おやおや……随分と容赦のないことですねェ……!あなたらしくもない」

 

 ……しかし、その様子を見るに。

 どうにか咄嗟の反応でギリギリ受け止める事ができた、という様子で、その表情には、まるで余裕がありません。

 

 「……そう、ですね。あたしが、ただ『スピカ』であったなら、こんな事はしなかったと思います。……ですが」

 

 ──笛と剣がぶつかり合っている内に。

 今度は、浮遊していた【レグルス】さんの大剣による追撃を仕掛けます。

 

 ……が、今度は。

 それを後ろに飛び退る事で、回避されてしまいました。

 

 ──そして。

 

 おそらく笛と剣がぶつかり合っていた間に、【ラサルハグェ】さんが自身の後方に作り出したであろう《魔法少女》が。

 ……極めて正確な狙いで、【ラサルハグェ】さんには当たらず、あたしに当たるように、氷の魔法を放っていたらしく。

 

 ──こちらに、比較的小さめな氷のナイフのようなものが、飛んで来ました。

 

 ……一応。

 こちらは、【アンタレス】さんの鎧を身に纏ってはいますが。

 

 しかし、命中すれば。これまでに戦った【ラサルハグェ】さんのニセモノによって作られていた《魔法少女》によるものとは違って。

 

 ……込められた魔力量の関係上、ダメージ自体は免れないでしょう。

 なんて。あたしは、それを。力いっぱい足を前に踏み出しながら、考えていました。

 

 そして、それから少し、遅れて。

 案の定、その氷のナイフが命中しまして。

 

 ……それなりに痛かったですが、無視して進み。

 さらに、手に持った剣を振るっての直接攻撃を、仕掛けました。

 

 

 ……多分、ですが。その、側から見ると。

 急に策も何もない力押しを始めたように見えるかと思いますが、一応……考えがあってのこと、ではあります。

 

 少なくとも、とりあえず。今の一連の流れで、「なんとなくこれはできないんじゃないかな」と、思っていた事を、確認することは、できました。

 

 ──まず、ひとつ。やっぱり、【ラサルハグェ】さん自身は、戦闘における攻撃行為も防御行為も、単独ではほとんどできないという認識で間違いなさそう……です。

 

 そして、あとは、それからもうひとつ。

 ……あそこで、わざわざ正確な狙いをつけて。自分自身には命中しないようにこっちに魔法攻撃を仕掛けたということから、ですが。『味方の攻撃でも命中すれば自身へのダメージに繋がる』という事です。

 

 そう考えるのなら、結局。その過程で攻撃を受ける事は承知の上で、そのまま【ラサルハグェ】さんの懐に入り込み、剣を振るい続けるのが。多分、1番リスクの少ない戦い方……に、なるでしょう。

 

 ……。

 

 ……と、いうのが。

 あたしなりに、考えた理屈になります。

 

 これは、先ほども少しだけ言いかけた事ではありますが。

 あたしが、ただ『スピカ』であったなら、しなかったであろう事、です。

 

 ……それは、リスクとか、リターンとか、そういうお話ではなく。

 単に、考えもしなかった……と、いう意味です。

 

 なにせ、相手の手札を模倣し、相手の土俵で戦い……それで、問題なく戦いの中を生き抜いていたのですから。わざわざ、『相手にない手札で、相手に不利な戦いを押し付ける』なんてことは。考えようとすら、したことがありませんでした。

 

 「……なぜです!なぜ、怯まないのです……!どうして、そこまで……」

 

 ……ひたすらに足を進め。

 愚直なまでに、真っ直ぐに剣を振るいながら。そうして、どんどん追い詰めていく、あたしですが。しかし、実情としては、そこまで有利でもありません。

 

 こちらの行動を理解した【ラサルハグェ】さんは、的確に笛を使って剣を防御し、大剣を回避していますが、その一方で、あたしは遠隔の攻撃に、されるがままとなっています。

 

 ただ、一応。わざわざこちらで一挙手一投足を制御する必要のない、牛や【ヒュドラ】さんを放って。

 遠巻きの《魔法少女》を狩るよう指示を出しているので、完全に受けるがままというわけでもないのですが……。

 

 それでも、飛んで来た魔法攻撃に対して、防御や回避といった行動をとっていないため、やはり、確実に消耗しているのを感じます。

 

 

 ……と。まあ、そういった形ですので。

 このまま、向こう側の防御が一度も崩れなければ。多分、息切れを起こして先に倒れるのはこちらでしょう。

 

 そもそもの話、あたし自身、剣を使った技術に詳しいわけでもなく。結局、ただ力任せに振り回しているだけでもありますので。こうなる事は、予想できて然るべき……かも知れませんが。

 

 「……怖くても、正しいことかわからなくても。それでも、進むって決めたんです……!あたしは、あたしの意思で前に進みます。……あなたは、このまま、後ろに退がるばかりで、いいんですか?」

 

 「──?!道理に反していますねェ……。理ではなく、ただの己の意思だけで、今こうして、わたくしと戦っているとでも……?」

 

 ──攻撃の手を、休めず。つまり、がむしゃらでなんの技術も知識も伴っていない突撃を繰り返しながら、放った、あたしの言葉に。

 ……【ラサルハグェ】さんは、まるで理解できないとばかりに、目を大きく見開き困惑したような表情を見せました。

 

 「……はい!そうです。あたしは、『あの世界』の全部を背負って、今を……未来を生きるって、決めたんです……!当然、あなたやあなたの操るみんなも、例外なんかじゃありません」

 

 ──思いもよらない言葉を放たれたことによる動揺から……でしょうか。

 

 一瞬、【ラサルハグェ】さんの防御が、僅かに遅れまして。

 ……それによって、生じた隙に。あたしは、どうにか剣先を捩じ込みます。

 

 ──そして。

 ついに、【ラサルハグェ】さんが防御に使っていた笛が弾けて、その手から離れ。

 

 驚愕によって見開かれながらも、こちらを睨みつける【ラサルハグェ】さんの目を正面から見つめ返しながら。

 

 

 「──だから、あなたの持ってる全てをください!あなたの全部が、今のあたしには欲しいんです」

 

 

 ……あたしは、言い放つように。

 自分の気持ちを、ぶつけることにしたのでした。

 

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