カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



145話 エピローグとプロローグ

 

 「──さて、これにて一件落着……と、言いたいところだけれど」

 

 「……まだ、後始末が残っている。だから、世界中に展開されたその幻影を仕舞うのは、もう少し待ってほしい」

 

 ……【ラサルハグェ】さんの消失を確認して。

 あたしが、世界を元に戻そうと思った、ちょうどそのタイミングに。

 

 ミニテロスさんとミニアルケーさんが現れて、あたしに声をかけて来ました。

 

 後始末、がどういった意味合いのものを指すのかよく分かっていないので一旦置いておきまして……思えば、最初から。

 この世界の異変に対して。それはあたしと……この状況を防ぐことのできなかった自分たちの責任だ、と言っていました。

 

 今にして思えば、その言葉は。その時あたしが受け取った意味合いとは少し違って、もっとストレートで、ある意味ヒントでもあった……のかも知れません。

 

 ……と、すみません。

 話が少しずれてしまいましたが、お2人の顔を見たら……つい、ふとその時の言葉を思い出してしまいまして。

 

 「──それを思い出したのなら、丁度いい。香澄は、自分の責任を果たした。だから、あとはこれを防げなかった、わたし達が残りの責任を果たす」

 

 「……まあ、これで君が自分の責任を果たし切ったって言うのは少し甘いかも知れないけど……あれも試練の1つだったという事で、ね。実際、君は自分自身の、目を逸らしたいであろう悪徳さえも、しっかりと自分のものとして受け入れると示すことができたわけだし」

 

 ミニアルケーさんとミニテロスさんが、棘のない声色で。一方は、肩をすくめて仕方がないとばかりに。そしてもう一方は、小さく、あたしに笑いかけながら。

 そう、言葉を続けてきました。

 

 「もっとも、君にやってもらうことはまだあるんだけどね。……今のお話は、ただ単純に、ここからはわたし達がサポートしてあげるっていう、それだけなんだ」

 

 ……。

 

 ……と、そんなこんなで。

 色々と、サポートをしてもらいながら……と言うより、ほとんど言われるがままに、色々としまして。

 

 えっと、そうですね。

 その、色々……の部分について説明をしますと。

 

 まず、ミニアルケーさんとミニテロスさんは、現在その『本体』とも言える存在が『あたしの世界』の内側に閉じ込められてしまっているような状態……らしく。

 まあ、元はといえば、アルケーさんもテロスさんも、あの世界の存在ではないですし、お2人も、分離して自由の身にして欲しいとのことで。

 

 ……あたしの作業は、『あたしの世界』から、アルケーさんとテロスさんを引っ張り出すところから、始まりました。

 

 そして、それから。

 今度は、【ラサルハグェ】さんが齎した物理的な被害について、でした。

 

 ……なんでも、【ラサルハグェ】さんやその手下の《魔法少女》は、幻影であり、物理的な存在ではない為、被害と言っても気を失うだけで、それも幻影を仕舞えば元に戻る……らしいのですが。

 

 ただ、それだと人が気を失った事による影響は、そのまま残ってしまう事になるそうで……。

 例えば、あたしでも分かりやすいところで言えば。車の運転の最中に気を失った人が多いことから、今、道路はあちこちで大変な事になっているようで。

 

 はっきり言って、そう言った間接的な影響だけでも、死傷者の数はそれなりのものになってしまうそうです。

 

 ──ですから、そこで。

 その時のテロスさんの言葉を借りますと、確か……『幻影と現実の境が曖昧になっている今だからこそできる事なんだけどね。つまり、今回起こった事を、全部幻だった事にしてしまえばいいのさ』との、事でした。

 

 ……最初は、何を言っているのか、よく分かりませんでしたし、何なら、今でもその原理がよく分かっていないのですが。

 

 実際に、幻影として世界中に広がっている『あたしの世界』のカケラを回収する際に、お2人に言われるがままに、ちょっとした細工……?を加えたりしていったところ……。

 

 ──世界が元通りになった時には、本当に、あの出来事なんて無かったかのように、何もかもが元通り……に、なっていました。

 

 ……まあ、とは言っても。

 

 完全に無かった事にした、と言うわけではなく。

 あくまで、幻影だった事にした、と言う理屈らしいので。

 

 あの一件は一切の物理的証拠はありませんが。

 しかし、みんなの記憶には。その鮮明さに違いはあれど、残っているみたいです。

 

 ……特に、雪菜さんや有栖さん、それから、生徒会のみんなは、最後まで気を失う事なく戦い抜いた事もあり、かなり鮮明に覚えているみたいです。

 

 あとは、それから。

 ……そうですね。これは世界が元通りになった後のお話にはなってしまうのですが。

 

 結局、この件については。世界中のみんなが、納得しきれないように首を傾げたものの、集団幻覚という形に落ち着きまして。

 

 ……そして、あたしは。

 『カードの精霊』では無く、本当の、この世界の神様みたいな存在になったアルケーさんやテロスさんとは、一度、お別れする形になりまして。

 とは言え、あたしはこの件の前まで『カードの精霊』を見ることができませんでしたので……よくよく考えてみると、これも元通り、なのかも知れませんが。

 

 そして、その時に。

 別れ際、アルケーさんとテロスさんは、あたしに、一種の封印を施したそうです。

 

 ──いえ、封印、と言ってもあまり大層なものではない……と、言いますか。

 『有する力の大きさから、本当の意味での封印は不可能』というアルケーさんの言葉もありましたので、実際には少し違うようですが、とにかく。

 

 『ファントムビルドでカードを扱う際、カードの出力を大きく抑える』ような封印を施したらしいです。

 ……とは言え、それはその気になれば簡単に解くことができるようなものです。ですが、ただその代わりに。10段階くらい、それをかけているのと、解いても『ファントムビルド』が終わったらまたかかるようにしてあるとか何とか、というのが特徴みたいで。

 

 ……まあ、要するに。

 これもテロスさんのお言葉を借りる形ではありますが、『ファントムビルドをする時に段階的に出力を調整できるようにした』ということみたいです。

 

 言葉を借りると言えば、『まだ◯段階の変身を残している……とか言えばそれっぽいからおすすめ』とか言っていたアルケーさんは、あたしのことをRPGゲームのボスにでもしたいのでしょうか……?

 

 ……。

 

 ……まあ、それはともかくとして。

 そうして、後始末まで終えて。本当の意味で、この一件は解決した……と、いう事になりました。

 

 

 

 ──────────

 

 

 ……そして。

 ここから先のお話は、それからのことについて、です。

 

 ……。

 

 ……時間が経つのは、あっという間で。

 激動の2日間を経て、夏休みもすっかり終わって。

 

 つまり、時はそこそこに大きく進み。

 先に言ってしまうと……今日は色々と忙しい1日になりそうです。

 

 まず。お別れした……とは言っても、なんだかんだで、関わりのあるテロスさんから、急に来た──。

 

 『君の世界のカードを使いたいから、ちょっとだけアクセスさせてもらってもいい?……そこを何とか……ほら、大丈夫、減るものじゃないからさ』

 

 ……みたいな連絡から、今日という日は始まりまして。

 

 それから、今。

 澄み渡った空の下。あたしは大きなスタジアム……の、陸上選手が走るトラックのようなところにいます。

 

 『レジェンダリーカップU18杯』。

 ……結局、なんだかんだで出場回避できなかった、と言うか、自分で『ファントムビルド』ができるようになって、出場を避ける理由が無くなった、大規模な『ファントムビルド』の大会です。

 

 「……いよいよね。私自身は別にこの大会に何かを賭けてるってわけじゃないけど、この大会には、多分、例の『マジカル☆スピカ』も出場する筈……」

 

 「……あー。そうだね。雪菜ちゃん。もしかしたら……いや、うーん」

 

 何やら、考え事をしているみたいに呟く雪菜さんと。

 それから、その言葉を聞いて、何度か気まずそうにこちらに視線を向ける有栖さんを横目に見ながら。

 

 あたしたちは、それぞれが、選手の1人として。

 

 大会の開会式へと、向かいます。

 

 ……そう言えば、雪菜さんはまだ。

 あたしとその『マジカル☆スピカ』とか言う人が一応の同一人物であると言うことを知らないん、でしたね……。

 

 ……その事について、有栖さんとこっそり目を合わせながら。

 あたしは、どうしたものかと、考えていましたところ。

 

 

 「……おや?わたしの名前を呼んだかい?わたしこそが、その『マジカル☆スピカ』さ!──君は、中学生の時に全国大会で会ったよね!久しぶりじゃないか!」

 

 

 ……赤い目の。

 そして、あたしの顔をした派手な格好のヒトが、急に声をかけてきました。

 

 あたしと『マジカル☆スピカ』が同一人物である事を知っているからこそ、逆に理解が追いついていないようで。困惑と衝撃のあまり、固まってしまった有栖さんを、横目に。

 

 あたしは1人、状況を理解しました。

 ……このヒト。テロスさん、ですね。

 

 ……まあ、中学生の時の全国大会は、テロスさんがあたしの身体とデッキを使ってバトルをしていたので、まあ、本人と言えなくもない……かも知れませんが。

 

 

 「──それで、君は初めまして、かな?」

 

 もちろん、気配からも間違いなく。

 このヒトは確実にテロスさんなので、初めましてなわけがありません。

 

 ですが、落ち着いてよくよく考えてみると。

 ……状況をよく理解できていないであろう雪菜さんや有栖さんが、ここにいて。

 

 ……そして、あとは『マジカル☆スピカ』とあたし、『雲田香澄』という人間は、一応、互いに初対面……という事になりますので。

 

 つまり、敢えてここでテロスさんが「初めまして」と言ったのは……。

 

 

 ──おそらく、ここでは『テロス』さんではなく。

 あくまで、『マジカル☆スピカ』という人として扱って欲しい……という、遠回しのメッセージ、なのでしょう。

 

 ……それに対して。

 あたしは、少しばかり理解が遅れ、やや困惑しましたが。

 

 あたしに対して、返事の言葉を促すような、テロスさんの……もとい『マジカル☆スピカ』さんのウインクと。

 それから、観客席で呆れたような仕草を見せるアルケーさんを、見つけることができて。

 

 ……しっかりと、その意図を理解できましたので。

 

 

 「……はい。えっと、初めまして……?です。あたしは、雲田香澄、と言います。……その、よろしくお願いします」

 

 

 あたしは、できる限りの笑顔で。

 ……そう、言葉を返しました。





この145話を以て、本作品は本編完結となります。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

初投稿作品ながらに、ここまで漕ぎ着けることができたのは一重に本作品を読んでくださった皆様のおかげです。改めて、ありがとうございました!

本編は完結しましたが、後日談のようなものを追加で3話ご用意しております。
本編とは別という扱いではありますが、そちらの方もお楽しみいただけたらと思っておりますので、もう少々の間、お付き合いいただけたら幸いです!
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